これからのDMは「選ばれた人への、特別なご案内」に

掲載日:2017年7月3日

自社の商品・サービスをPRするにはメール、Web広告、ダイレクトメール(DM)、ポスティング(チラシ)など、さまざまな手段があります。

メールやWeb広告と比べると制作ハードルが高くコストもかかるDMは、費用対効果を考えると敬遠されがちでした。しかし最近ではWebの行動履歴から対象や内容を最適化したDMを送付できるようになったことで、改めてDMの価値が見直されてきています。そこで本記事では、Webの情報を利用して最適化したイマドキのDMについて紹介します。

 既存顧客に再来(再購入)してほしいときのDM

ダイレクトメール(DM)を送付する企業の多くは、「既存顧客に対して再購入(再来)してもらう」「新規顧客に購入(訪問)してもらう」という目的を持っています。

既存顧客に再購入してもらう目的では、自社で保有している顧客リストに対してDMを送ります。

顧客数が多い場合は、すべての人にDMを出すと膨大なコストがかかります。そのため、過去の購入回数や購入頻度で顧客を絞り込んだりしていました。

最近では購入可能性が高いお客さんを効率的に抽出するMA(マーケティングオートメーション)や、DMPという、Web閲覧データを分析・活用できるデータベースと連動することで、「1ヶ月にN回以上商品ページを閲覧した」かつ「過去にN回以上商品を購入している人」を抽出することができるようになりました。

またその人ごとに異なるおすすめ情報を導き出すレコメンド技術も進化し、ひとりひとり印刷する内容を変えられるバリアブル印刷と組み合わせたパーソナライズDM・カタログもできるようになりました。

そうなると、「過去5回以上商品の購入履歴がある」かつ「直近1年間1度も購入してくれていない」、つまり前まではたくさん買ってくれていたけれど最近は離れてしまったと思われるユーザーにだけ、クーポン付きのDMを送ったり、購入履歴に基づくお勧め商品を掲載したDMを送ることができます。

国内アパレルブランドのニューヨーカーが自社ECで商品購入した人向けに、パーソナライズされたお勧め商品カタログを送付したところ、再注文率が25%から46%に向上したという事例もあります。→参考情報

新規顧客に訪問(購入)してほしいときのDM

では、新規顧客に訪問してもらう目的の場合はどうでしょう。DMを送付するためには住所や名前が必要です。

自社サイトで会員登録していない、または自社サービスを一度も利用したことがない人に向けてアプローチするにはオンラインではターゲティングしたWeb広告、オフラインではエリアを特定したチラシや無宛名便など、住所や名前を必要としない方法でアピールすることになります。

ただ宛名が自分の名前ではないDMは開封率が下がる傾向があります。自分が登録した企業からのDMは約8割が受け取ってもよいと考えているのに対し、無宛名では約1割と受取意向が激減するという調査結果もあります。(→出典:DMメディア実態調査2016)

最近では新しい流れとして、会員システムから紹介された顧客リストを最適化したDMがあります。これは、DMPと自社が保有していない顧客リストを組み合わせてターゲティングしたDMです。

もともとポイントカード会社や大手通販会社などでは、自社で保有している何百万という規模の顧客リストを使って、広告を出したい企業の代わりにDMを送付するというビジネスがあります。

ちょっとわかりにくいですが、クレジットカード会社から「○×カード会員さまへの特別なお知らせ」というDMが来て、開けて見ると化粧品のDMだった、みたいな話です。

ただその場合は「女性」「東京都」など絞り込める属性が限られているので、商品購入につながるようなお客さんの条件を絞ることが難しかったりします。

そこで、DMPという仕組みが威力を発揮します。

DMPは、何億というたくさんの人(細かくはブラウザ)が、どんなWebサイトを見たのかという情報をコツコツ蓄積しているデータベースです。このデータベースとカード会社の顧客リストをつなげることで、「〇×という化粧品サイトを訪問したことがある」「コスメ関連のWebサイトへ月N回以上訪問している」「40歳以下」という条件に一致した人だけに化粧品のDMを送付できるようになるのです。

商品購入可能性が高く、数も絞ることができるため、クーポンを付けたり、素敵なデザインにしたりとコストをかけて送ることもできます。自分の名前宛に届いているので開封率も高くなり、内容が自分にマッチしているので相乗効果があります。

送る側にとって費用対効果が高いだけでなく、受け取る側にとっても、自分に合ったDMは「選ばれた人への、特別なご案内」となり、価値を感じてもらえます。顧客リストの最適化やバリアブル印刷など送る側の仕組みも整った今、今後はこのようなDMを目にする機会が増えるでしょう。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)

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