クラウドサービスの提供によりRPAの普及は加速するか

掲載日:2018年6月25日

2018年6月19日、RPAツールを開発・提供するRPAテクノロジーズが新たにクラウドサービスの提供を開始すると発表した。これによりRPAの導入ハードルは下がるのだろうか。

クラウド型RPAで導入ハードルを下げ中小・中堅企業の導入を目指す

RPAテクノロジーズは、新たにクラウドサービス「BizRobo! DX Cloud」を2018年6月30日から提供開始すると発表した。(→リリース

RPAとは、ロボットと呼ばれるプログラムにより定型的なホワイトカラー業務を自動化するしくみのことだ。システムへの入力業務やマニュアル化された定型作業を効率化する手段として注目されている一方で、利用までのハードルがあり採用まで至らない企業も少なくない。

まず考えられるのは導入・運用コストだ。主要なツールの利用料は年間数十万~数千万円。サーバー経由で利用する場合にはサーバー代や保守費用も乗る。また既存業務を自動化するための設計ができる人材やプログラム作成スキルを身につけるための教育も必要になる。

そこでRPAテクノロジーズでは、教育コンテンツやロボットの汎用機能を提供することでノウハウを持たない企業でも内製しやすくするほか、使用しない時期はコストを抑えられるよう従量課金制を採用した。導入ハードルを下げ、労働力不足に悩む中堅・中小規模の企業での導入を目指す。

ツールに月額数十万円かけるのは高いとも感じられるが、スタッフの人件費だと捉えれば安いとも言える。今まで3名で行っていた業務がRPA導入により1名でできるようになればコスト削減として見合うだろう。

人材派遣会社でRPA教育に力を入れる理由

最近では、派遣会社が登録スタッフ向けのRPA教育に力を入れだしている。派遣会社のヒューマンリソシアは、スタッフ向けRPAトレーニングを本格的に開始、2020年までに業務で活用できるスタッフ12,000人の輩出を見込む。(→リリース

またツールを提供するRPAテクノロジーズ、教育プログラム開発のMAIA、女性向け人材派遣のWaris、クラウド環境を提供するブイキューブの4社では、子育てや介護などで離職した女性の復職を支援する「RPA女子プロジェクト」を2018年5月より開始している。RPAスキルを身につけた女性とRPAを活用したい企業をマッチングすることで、時短や在宅勤務など多様な働き方を希望する女性を支援する取り組みだ。

背景にはRPA需要に伴う新たな人材ニーズがある。RPAで業務を自動化するためには、事前に業務内容に沿って作業を実行するプログラム作成が必要だ。環境変化により作業フローが変更した場合にはプログラム修正も必要になる。

プログラム作成やメンテナンス、トラブル対応するスタッフは常駐である必要はなく、派遣スタッフの活用も選択肢になりえる。今から派遣会社がRPAスキルを身につけたスタッフを育成して就業機会を提供するメリットは大きいだろう。

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大手企業が多額のコストをかけてRPAを導入し大きな削減効果があったという事例がニュースとして取り上げられることが多い。しかし人材不足は人数規模が小さい会社のほうが深刻だ。

ニーズの高まりに合わせて手軽にリーズナブルにRPAを利用できるツールが次々と登場することで、選択肢が増え導入ハードルも下がる。AIなどの技術を組み合わせながらロボットに任せられる仕事を増やし、人間がより上流の仕事に専念できる環境が整うことが理想的だろう。

小さなことでも「この作業は自動化できないか」と考えることが初めの一歩ではないだろうか。「人間がやってもたいした手間ではない」と考えるのではなく。

(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)

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