「HPイノベーション経営セミナー」速報

掲載日:2018年6月27日

プレIGASが開催される時期になって来た。2018年6月26日(火)は数社のメーカーでIGAS前の発表会が行われたのだが、HPの「イノベーション経営セミナー」に参加したので簡単に報告させていただく。

場所は東京秋葉原のUDXシアターで、スピーカーが数多く登場して、ユーザー事例やマーケティングの話をみっちり詰め込んだものだった。正直、製品の話は5分もなかったのではなかろうか?実に最近のHPらしいイベントであった。

1.)トップバッターは日本HPの執行役員である小池亮介氏のオープニングから始まった。簡単にIndigoの歴史に触れ、「印刷がどこへ行くのか?」という問いかけからスタートした。

2.)二番手は日本郵政株式会社部長の鈴木睦夫氏である(写真1)。今までのデジタル化から少し変化し出しているということで、「紙をデジタルマーケティングの中に折り込んでやると効果が著しい」と力説している。正直な話、デジタル完結で、プッシュメディアとして EーMAILを送っても、その開封率は想像通りだ(極端に低い)。

写真1

HPの小池執行役員も言われていたのだが、これからマーケティング対象になるリード(対象顧客)はデジタルネイティブなのだ。私も大学で教えているので分かるのだが、学生達には紙メディアが大変魅力的なのである。これは我々オッサン世代には全く分からない感情と言える。

鈴木氏の講演の中で、私が一番インパクトを受けたのは、「今までは、仕掛ける側の事業者がタイミングのトリガーを引いていたのだが、デジタルマーケティングではトリガーを引くのはユーザーである」ということだ(写真2)。これを理解すればデジタル印刷ビジネスにもスンナリ入ることが出来る(逆にこれを理解するまでにはかなり苦労するが・・・)。そしてデジタルとアナログを上手く使って強力なデータ・ドリブン環境を実現させるのが、原題のデジタルマーケティングだと言っている(写真3)。

写真2

写真3

3.)三番手がウィル・コーポレーションの若林圭太郎社長(写真4)だ。若林圭太郎社長に代わってからデジタル化への舵を大きく切っており、ロールタイプのインクジェット印刷機を本社地区と関東工場に4台(旗艦はWebプレス490が本社北国工場にあり、原子力空母級)これにIndigo10000をプラスして、大量に近い(ウィルさんの場合はオフセット輪転の仕事が主なので、大量に近いと表現させていただいた。普通の会社なら大量ロットも可能だ。)仕事にも対処していけるというわけである。

写真4

ウィル・コーポレーションはDM等にノウハウを持つ会社で、JAGATのpageパンフ(商標名「レスポン君」と言っている)もウィルに頼んでいる。従ってDMや大量パンフに新たな仕事としてデジタル印刷機での小ロット出版を指向している。「DM」「商業印刷」「出版」とかつては馴染まなかった製品アイテムがデジタル印刷機なら、ちょっとの工夫で一台の機械でやることができるのだ。

4.)4番手がJAGAT会長会社の錦明印刷だが、林誠英副部長(写真5)が、新人が発掘した仕事等を説明した。デジタル印刷はしがらみがない方がスンナリ受注に結びつくのだ。もちろん出版は錦明の柱だが、小ロットの復刻等や写真集等デジタル印刷機を利用する場合も少なくない。

写真5

商業印刷もデジタルマーケティングが絡むとデジタル印刷機の独壇場になってくる。新人がしがらみない気持ちで、それを商品化すると顧客も喜ぶ商品になるのだ。要するに印刷会社が考えている顧客のニーズと実際には乖離があるということだ。そして、フォトブックはデジタル印刷機の独壇場だ。このような三本柱で錦明印刷はビジネスを行っている。

5.)5番手が小松総合印刷の小松社長(写真6)である。信州の伊那に本社を置きながら、仕事は東京等から引っ張っている。まるでスタジオジブリのアニメに出てきそうな会社である(「ハウルの動く城」のよう?)。もっとも小松総合印刷さんの場合は、小高い丘の上に本社があるので、天空のラピュタと呼ばれている?(これはJAGATだけ?でも、とても素敵なところ)。圧着ハガキやクジ、等の景品ものには相当の力を入れているし、営業は販促EXPOやpage等の展示会で自分の技術やMA等の得意分野を最大限アピールして、成功している会社である。

写真6

6.)少し休憩時間を入れてパネルディスカッションである。モデレーターは日本HP執行役員の小池亮介氏(写真7では右端、司会役位置)、スピーカーに凸版印刷九州事業部部長の八城康平氏(写真7では三人の中で右端)、金羊社浅野晋作社長(三人の中で真中)、グーフCEOの岡本幸憲氏である。

写真7

ディスカッション内容はハッシュタグ風にスマホから挙がってくるキーワードについて議論するものだが、何といっても真ん中に大きく目立っていたのが「コスト」であった。これは大きな問題なのだが、スピーカー全員の意見として、デジタル印刷はアナログ印刷の置き換えとして考えているウチは、コストの問題から逃れられない。「デジタル印刷はアナログ印刷とは異なった商品なのだ。」というのが、とても力強い言葉だった。おそらくデジタルマーケティングと結びついて、マーケティングツールとしての紙、それもデジタルマーケティングというデータ・ドリブンの世界での商品ということなのだろう。確かにその通りだと思った次第である。

その後、小池氏の方からIGASについての説明があったのだが、商品説明というより、様々なデジタル印刷事例を展示する ブースのイメージだ。そして日本HPのテーマは「紙、復活」である。長くかかったとは思うが、ついに日本もデジタル印刷の夜明けが来そうな気配になって来たと強く感じている(ぜよ)。

とても内容を詳しくは紹介できないので、今回は速報で勘弁いただきたい。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)