日本の季節と色と形(5)

掲載日:2025年5月20日

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインについて紹介する。

会員誌『JAGAT info』の表紙のデザインは、印刷文化を語る上で欠かせない、色と形をテーマにしており、現在は「日本の形シリーズ」として、本誌の発行時期の歳時や風物をモチーフを主体にして、季節感と日本情緒が感じられるようなものとしている。

参考:『JAGAT info』バックナンバー 

では最近のバックナンバーから、表紙に描かれたモチーフについて解説し、制作手法を紹介しよう。

2025年2月号 「タンチョウ」

JAGAT info 2025年2月号表紙

ツルの仲間の中でも大型の種である。一時は絶滅したと考えられていたが、大正時代に再発見された。現在は環境省第4次レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類(VU)(絶滅の危険が増大している種)に登録されており 、また国の特別天然記念物に指定されている。

北海道の釧路湿原などに生息しており、冬場には雄と雌が互いに頭を掲げて翼を広げる求愛のダンスが見られる。つがいができると、春にヨシの茎で湿原の中に巣を作り、産卵する。

制作に当たっては、タンチョウを色鉛筆で手描きし、スキャンし、ptohoshop上で和紙のテクスチャーと雪輪文様を組み合わせた。雪輪の中に南天・椿・梅のイラストを描いた。

2025年3月号 「桜餅」

JAGAT info 2025年3月号表紙

関東風の桜餅と、道明寺と呼ばれる関西風の桜餅を並べて描いた。
関東風は小麦粉の生地をクレープのように薄く焼いてあんを巻いたもので、関西風はもち米を原料とする道明寺粉を蒸してあんを包んだものである。いずれも桜の葉の塩漬けを巻いているので、春らしい香りを楽しむことができる。
この葉は一般的にオオシマザクラが使われている。桜の葉は塩漬けにすることで、クマリンという成分が生成され、これが独特な香りのもとになる。クマリンは大量に摂取すると肝機能に影響を及ぼすが、桜の葉と一緒に食べる程度なら問題ないという。

制作に当たっては、色鉛筆で手描きした後、スキャンし、ptohoshopで色調を調整した。

2025年4月号 「ツバメ」

JAGAT info 2025年4月号表紙

春になるとよく見かけるツバメをテーマにした。
ツバメは春に東南アジアなどの南方から日本に渡り、子育て後、夏にまた南方に帰る。日本では複数の種が見られるが、身近でよく見るツバメは、喉と額が赤茶、背が黒で、民家や駅などの建物の屋根の下に巣を作ることが特徴である。人のいる場所に巣を作るのは、外敵から身を守るためであると考えられている。
浮世絵や着物の柄などでは、しばしば初夏の情景として柳と組み合わせて描かれてきた。

制作に当たっては、さまざまなポーズを組み合わせて色鉛筆で手描きした後、スキャンし、ptohoshopで色調を調整した。


このように、表紙絵では、植物・動物・食べ物など、さまざまな素材をテーマに描いている。素材について調べる中で日本文化の歴史や他国との関係などを知ることができ、対象となるものを観察することで思わぬ発見もある。

今後もさまざまな題材を通じて、日本の風物の魅力を伝えていきたい。多忙な日々を送る読者の方々が、本を手に取る一瞬にホッと一息ついていただければ幸いである。

(『JAGAT info』制作担当 石島 暁子)

関連ページ

印刷・メディアとデザイン