印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。「接続産業連関表」で2011年から2020年の推移を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2025その6)
5年に1回公表の「産業連関表」
「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。多種多様な統計資料を用いて、10府省庁が共同で5年ごとに作成する加工統計なので、精度に優れ各種資料のベンチマークとなっています。ただし、公表時期は対象年次から4年後となり、「令和2年(2020年)産業連関表」(2024年6月公表)が最新のものです。
また、産業連関表の完成後には過去2 回の産業連関表を同一の部門概念で推計し直した接続表が作成されます。こちらは「平成23-27-令和2年接続産業連関表」が最新のもので、2025年7月11日に公表されました。
接続産業連関表で2011年から2020年の推移を見る
『印刷白書2024』では、「令和2年(2020年)産業連関表」を中心に、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。
例えば、「印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。
『印刷白書2024』の関連資料ページには、統合中分類の「印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の上位10産業を掲載しています。この時点では名目値での時系列比較でしたが、最新の接続産業連関表を使って、実質値で比較してみました。
「原材料等の調達先上位10産業」を実質値で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占めています。印刷市場の縮小を反映して2011年から2020年にかけて取引額はトータルで40.4%減少しました。金融・保険だけは増加し、電気と物品賃貸サービスは横ばいです。

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、映像・音声・文字情報制作(出版、新聞など)、金融・保険、研究、商業の4産業の構成比は10%を超えています。2011年から2020年までの間に取引額はトータルで24.7%減、研究以外の9産業で減少し、特に印刷・製版・製本の減少幅が大きくなっています。

『印刷白書』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。
(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)