デジタル化で変化するニュースの読まれ方~2025年

掲載日:2025年11月12日

SNSによる「無意識のニュース接触」によって、ニュースと消費者の関係は変化していくのか。(数字で読み解く印刷産業2025その9)

「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」への加速度的なシフト

ロイタージャーナリズム研究所は、2012年以来、デジタル化がメディア環境やニュースの利用にもたらす影響を世界各地で調査しています。「ロイター・デジタルニュースリポート2025」では、2025年1月中旬から2月末に、日本を含む48の国と地域で実施された調査結果から、定点調査している「ニュースへの信頼」などのほか、AIの利用拡大がニュースの利用に与える影響など幅広いテーマを紹介しています。

エビデンスに基づく分析的なジャーナリズムが求められる世界情勢にもかかわらず、テレビ、新聞、ニュースサイトなどの「組織的ジャーナリズム」の影響力はむしろ低下しています。その一方で、ソーシャルメディアや動画プラットフォーム、(複数の情報源のニュースを集めて提供する)アグリゲーターへの依存度は増しています。

アメリカでは「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を主なニュース源とする割合(54%)が急増し、テレビ(50%)やニュースサイトまたはアプリ(48%)を初めて上回りました。
48の国と地域で「ソーシャルメディアや動画ネットワーク」を利用する割合は、18~24歳の44%、25~34歳の38%に上ります。
一方、日本では依然としてテレビ(2015年73%→2025年50%)が最も多くの人に利用されており、SNS経由のニュース接触は緩やかな上昇(2015年21%→2025年24%)にとどまります。ただし、SNSによる「無意識のニュース接触」によって、信頼や課金意欲につながらないという構造的問題もあります。

ニュースへの信頼度は安定しているか

毎年調査している「ニュースへの信頼」は、10年前と比べると明らかに低下していますが、全体平均はこの3年間、40%程度で安定しています。フィンランドが67%と最も高く、ギリシャとハンガリーが22%で最も低くなりました。

日本は2024年は15位、43%で平均をわずかに上回っていましたが、2025年は23位、39%となりました。「ソーシャルメディアの影響力の高まりと、伝統的メディアのスキャンダルによって、若年層を中心に信頼の低下がうかがえる」と分析されています。

オンラインニュースの何が本物で何が偽物かという不安は、回答者の半数以上(58%)で去年と同水準ですが、2022年と比べると4ポイント上昇しました。

また、ジャーナリズムにおけるAIの使用法では、十分な監督なしにAIで作成されたコンテンツについて不安という回答が大部分を占めました。これに対して、文字起こしや翻訳などのジャーナリストの仕事を補助する目的での使用は容認されています。

『印刷白書2025』(2025年10月末発刊)では、 「デジタル時代に進化する新聞~信頼を強みに新たな役割へ」において、新聞の存在意義やジャーナリズムについて考察しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT 研究・教育部 吉村マチ子)