マスター郡司のキーワード解説:ブランディング(前編)

掲載日:2026年3月4日

BPOとしてのブランディング

小ロット化により、印刷会社は印刷物の受注・生産だけをやっていればよい時代ではなくなってしまった。印刷物それ自体が売り物になる出版やパッケージを除き、商業印刷はBPOというか、関連ビジネスを取り込んでいかないと売上高が少なくなってしまうのである。そのため、商業印刷におけるBPOは、主として“マーケティング活動のお手伝い”ということになるが、もう少し掘り下げると、ウェブや動画の製作、それもVRなどに手を伸ばしてみたものの、「今ひとつビジネスにならない」つまり「儲からない」と悩んでいる印刷会社は多いと思う。
大阪を本拠地にしている(株)大伸社(現在、グループ会社の多くは東京を拠点に活躍)では、さまざまな経験をもとに、ブランディングに絞ってビジネスを展開している。そのブランディングビジネスの中心になっている会社が(株)大伸社コミュニケーションデザインであり、『手にとるようにわかるブランディング入門』という書籍を同社の金子大貴チーフと一色俊慶CEOが執筆し、かんき出版から2022年に刊行した。そこで今回と次回で、「印刷業界がブランディングビジネスのお手伝いをしていくには?」という観点からブランディングについて述べてみたい。一般的なメーカーも価格戦略だけではビジネスにならないことから、ブランディングで差を付けることができれば無意味な値引き競争が必要なくなる。

ブランドの5階層

ブランディングといっても抽象的な言葉であるが、半欠けリンゴマークに代表されるブランドロゴや、創業者のスティーブ(昔は「ン」が付いたのだが?)・ジョブスが唱える「ファッション」「イノベーション」「オリジナル」「ミニマリズム」と聞くと、Appleのイメージが感じられる(今や本人そのものがブランド化している)。そして、パソコンがMac(かつてはMacintoshと呼んでいたが、よりブランド化を狙ったのか? Macと再定義された)、スマートフォンがiPhone、腕時計がApple Watch、そしてタブレットがiPad等々、製品個別のブランド化にも成功している。失敗といったらスマートスピーカー(Google Homeに代表される高機能スピーカー)のHomePodくらいだと思う。
ブランドには五つの階層があり、ユニクロを例に説明してみたい。表1をご覧になればお分かりいただけると思うが、コーポレート・ブランドと事業・ブランドは区別がしにくい。ユニクロの場合は、ユニクロとユニクロLife Wearコンセプトを区別するのかも(?)しれないが、そんなの関係ねえ♪くらいにユニクロが巨大ブランド化している。

表1

イメージカラーとロゴマーク

ブランド戦略では、やはり先述のAppleがダントツなのだが、ブランド戦略にはイメージカラーが必須である。IBMブルーやコカコーラレッドは、インク屋さんで販売されている(北米では特色を使用するのが常識)。ロゴマークも重要で、日 本では三菱グループのスリーダイアが有名だ。創業者・岩崎彌太郎の家紋「三階菱」と、出身地である土佐藩の藩主・山内家の家紋「三ツ柏」を合わせてデザインしたとされている(ちなみに郡司家もミツガシワ)。
日立グループのマークも有名だ(った)が、若い方には「この〜木、何の木♪」の木の方がずぅーっと有名だろう。この辺は日立も重々承知でロゴの変更に至ったということだが、新しいロゴが何の変哲もないので、「長く通用するかどうか?」は不確かだ。
その点、Appleの半欠けリンゴは、もともとはレインボーだったのを白黒にしたのだが、しょうもないことにこだわる私は「レインボーの方がAppleらしい」と文句を言っていた。だが、その後の展開を見ていると、レインボーをやめた意味は大きかったと深く反省している。このように、印刷業がブランディングに関わるのは、デザイン的要素も含めて非常に意義のあることだといえるが、次回は具体的な事例も含めて述べていきたい。

(専務理事 郡司 秀明)