【マスター郡司のキーワード解説2021】レストアサービス(BNPL)

掲載日:2021年12月23日

アメリカの決済サービス大手PayPal(ペイパル)が日本の新興BNPL(Buy Now Pay Laterの略で、EC市場で拡大している後払い決済のこと)Paidy(ペイディ)を2021年10月に買収したことが注目を集めた。そこで今回は、BNPLの周辺について語ってみたい。

 

私にとってPayPalは、個人や仲間で作ったソフトを売買するのに便利だというイメージである。海外が相手だと、特に便利だった。PayPalは1998年の設立以来、デジタル決済を革新してきたシリコンバレーのフィンテック(英語でFinTechと書いた方が分かりやすいかも。金融=Financeと技術=Technologyを組み合わせた造語)カンパニーで、eBayと並ぶシリコンバレーらしくないシリコンバレー発祥の会社だ。シリコンバレーの代表的な企業であるGoogleもスマホ送金アプリpring(プリン)を買収しており、シリコンバレーが先進IT技術だけではない、金融や販売の中心地になる日が来るのかもしれない。

 

Paidyは、ECサイトで買い物をした代金を翌月にまとめて支払う、後払いサービスのBNPLだ。後払いなら日本ではクレジットカードが一般的だが、クレジットカードは与信審査の点から若年層は所持しづらい。一方、BNPLの後払いサービスはクレジットカードと比べて与信審査が厳しくないため、若年層には身近な存在である。例えばPaidyは、ECサイトでの購入時にメールアドレスと電話番号、認証コードを入力するだけで、購入代金を後払いできる。そうした手軽さが受け入れられ、Paidyは2014年のサービス開始以降、利用者をどんどん増やし、現在アカウント数は600万を超えている。国内の競合サービスとしては、ネットプロテクションズ(日本の大手)の「NP後払い」などがある。

 

このような手軽さから、欧米ではクレジットカードがBNPLに置き換わっている。クレジットカードには金利が発生するが、欧米のBNPLサービスは4分割程度までは金利がかからない(Paidyも同様)。従って欧米では金利面の理由から、クレジットカードを保有していてもBNPLを使っているのだ。他方、東南アジアでもBNPLの利用が伸びているが、東南アジアのクレジットカード保有率は8%にすぎず、銀行口座保有率も55%しかない。そんななかでスマートフォンだけは一人1台以上普及しており、スマホ決済と合わせてBNPLが便利に使われているというわけである。

 

このように、お国柄によって状況はさまざまなのだが、日本ではほぼ全員が銀行口座を持っているし、87%がクレジットカードも保有している。そんな日本でBNPLが伸びているのは、「信用の問題」だといわれている。しかし、私はこれには懐疑的だ。私が高齢なこともあるのだろうが、どうしてもAMEXのゴールドカードやDinersに信頼を寄せてしまう。確かに、中国などでクレジットカードを使うと「何なんだ、これは!?」という明細も混じってくる。すぐさま電話すると「ああ、そうですか」とアッサリ認められてしまう潔さにも困ったモノで、この手のトラブルには慣れきっている。こうした不安感から、「クレジットカードを持っていても使わずに、BNPLを利用しているのではないのか」ということなのだが、若者の利用数が数字を押し上げているのではないかと思っている。

 

私が無類のカード好き(ゴールドカード好き。実際のメリットは空港ラウンジくらいだが)なのは、昔、中東(ドバイの近代的なイメージとは程遠い)に出張する際、ゴールドカードを数種類持っていかないと命に関わったからなのだ。普通のカードではホテルに泊まれないし、1種類ではすぐに上限リミットになってしまって、ホテルを追い出されてしまう。そんな経験からか(?)、私はクレジットカードに対する信頼度や優越感が強いのだが、今の若い人にはこんな気持ちは理解できないだろう。

 

以下、BNPLのメリットをまとめておく。

①分割払いに手数料が生じない
2020年7月にアメリカのBNPL利用者1862人を対象として行われた調査によると、BNPLを利用する理由は「クレジットカードの金利・手数料を払いたくない」が最初に挙げられている。

②与信審査がない
BNPLが人気なのは、手軽に始められるからだ。こう考えるとどんどん新しい決済方法が生まれ、置き換わっていくのかもしれない。

③加盟店舗側のメリットは
新規顧客層の開拓と離脱防止。BNPLは、手数料なしで分割払いを手軽にできるのが特徴。また、ECサイトにおける支払いの課題の一つが「情報入力時の離脱」だったが、BNPLなら電話番号・郵便番号やメールアドレスなど、その場で簡単に入力できる情報のみで利用できるため、離脱を防止につながるのだ。

(専務理事 郡司 秀明)