「工業統計調査」は廃止、「経済構造実態調査」の一部となる

掲載日:2022年5月17日

経済産業省「工業統計調査」は2020年調査(2019年実績)で廃止となり、「経済構造実態調査」における製造業事業所調査として実施されることが4月1日に発表された。 (数字で読み解く印刷産業2022その2)

「工業統計調査」と「経済センサス‐活動調査」

製造業を対象とする「工業統計調査」の歴史は非常に古く、1909年(明治42年)に「工場統計調査」として開始されました。1939年(昭和14年)から「工業統計調査」となり、1953年(昭和28年)から各統計編に分割され、産業編に品目編が加わりました。
1955年(昭和30年)には全事業所での調査を開始し、以降1980年(昭和55年)まで毎年全事業所での調査を実施してきました。1981年(昭和56年)以降は西暦末尾3、5、8 、0 年は全事業所、それ以外の年は従業者4人以上の事業所が対象となり、2009年(平成21年)以降は標本調査(従業者4人以上の事業所対象)となりました。

「工業統計調査」が全数調査を実施しなくなったのは、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」が2012年(平成24年)にスタートしたことによるものです。全事業所・企業を対象に5年に1回実施され、産業横断的集計と産業別集計が公表されます。製造業に限った調査ではないので、同一時点での全産業の比較が可能で、既存の統計調査では把握できなかったサービス業の実態もわかるようになりました。
「経済センサス‐活動調査」の実施年には「工業統計調査」は中止となり、製造業に関する産業別集計によって、工業統計の該当項目を把握することになりました。また、「工業統計調査」は毎年12月31日に実施されてきましたが、「経済センサス‐活動調査」に合わせて、2017年(平成29年)調査から6月1日に変更になりました。

「工業統計調査」との時系列比較を可能とするために、「経済センサス‐活動調査」の製造業についての産業別集計では、以下のすべてに該当する製造事業所について集計しています。
・管理、補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと
・製造品目別に出荷額が得られた事業所であること
ただし、「工業統計調査」は前年の調査名簿を母集団として、準備調査を行い整備した独自名簿による調査です。これに対して、「経済センサス‐活動調査」は事業所母集団データベースを母集団としていて、両者には明らかな断層があります。
ちなみに事業所母集団データベースは、経済センサスなどの大規模な統計調査の結果や行政記録情報から情報を収集し、総務省でデータ突合・審査の上記録するもので、毎年更新されています。

「経済構造実態調査」 の一部になる「工業統計調査」

「経済構造実態調査」は、国民経済計算の精度向上等に資するとともに、5年ごとの「経済センサス‐活動調査」の中間年の実態を把握することを目的に毎年6月1日現在で実施されています(活動調査の実施年を除く)。
これまで実施されていた3つの統計調査(サービス産業動向調査の拡大調査、商業統計調査、特定サービス産業実態調査)を統合・再編し、2019年に調査を開始しました。
さらに2022年調査から、全産業に属する一定規模以上の法人企業が対象になるとともに、これまでの「工業統計調査」を「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施することになりました。

経済構造実態調査実施事務局ホームページ より

調査名簿が事業所母集団データベースに切り替わることで、 これまでの「工業統計調査」 に比べて、対象事業所数は増加しますが、増加する事業所は従業者4~9人の事業所が大半を占め、出荷額ベースでの影響は小さいものとなります。
また、これまで別の時期に実施されていた「経済産業省企業活動基本調査」と同時実施し、両調査に共通する項目については、片方の調査票への回答は不要とする処理等を行っています。

なお、「令和3年経済センサス‐活動調査」(2021年6月1日実施)は、2022年5月31日に速報が公表されます。
「2022年経済構造実態調査」(2022年6月1日実施)の製造業事業所調査は、2023年7月に公表される予定です。

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計調査」 「経済センサス‐活動調査」 「経済構造実態調査」 「経済産業省企業活動基本調査」などから、印刷産業の現状を分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)