印刷機上でニスコーティングする機構はどうなっているのでしょうか。

掲載日:2014年8月11日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:オフセット印刷

Q:印刷機上でニスコーティングする機構はどうなっているのでしょうか。

A:現在の印刷機には印刷ユニットの後にニス専用のコータユニットを装着しているものが多いです。ここで使用されているニスには乾燥機構から、水性ニスとUVニスの2種類があります。
 水性ニスは塗布した後にIR、つまり熱風により水性ニスの水分を蒸発させ、エマルジョンや樹脂を固化させて乾燥させます。UVニスをコータにより塗布する場合、下地インキにはUVインキ、ハイブリットインキ、油性インキが選択できます。印刷機上でニスコーティングする機構にはロールコータ方式とチャンバーコータ方式があります。
 ロールコータ方式は湿し水装置と同様にニス舟にニスを満たし、そこに浸ったニス元ローラからそれに接触するその他のローラの回転によってニスを転移させていくのが一般的な方法です。ニス元ローラの回転数を変えることにより無段階にニスの盛りを変化させることができる利点があります。しかし盛り量をあまり多くできないという問題があり、ローラが複数ありニス舟を含めて洗浄に時間がかかります。
 チャンバーコータ方式はニス着けローラ自体にニスを供給する方式で、ローラに接するチャンバー(小部屋)にニスを送り込みローラ表面に形成された均一で微細なセル(小孔)にニスを入れ転移さていく方式です。このローラをアニロックスローラといいます。チャンバーにはブレードが取り付けられており、チャンバーからのニスの漏れを防ぐとともにアニロックスローラ表面のニスを均一にします。これはニスの盛り量がロールコータよりも多く盛れる点であり特にロールコータでは難しかった金や銀、蛍光色などのニスの厚盛りにはチャンバー方式が向いています。

両機構の特長は以下のようになっています。
●ロールコータ
①1種類でいろいろなニッフが調整できる。
②ニップを変えることにより塗布量を変えられる。
③ニップの固定が不安定にためニップの調整が難しい。
④ゴムロールの変化があるため、経時や温度により膜厚の変動、塗布量の不安定が予測される。
●チャンバーコータ
①塗布量の安定性。
②塗布量の調整(アニロックスローラの交換により)が容易。
③複数のアニロックスローラが必要であため経費と置き場が必要。
④アニロックスローラの交換に手間がかかる。
⑤アニロックスローラのセルの深さが決まっているので塗布ニス膜厚が固定される。

 現在はチャンバーコータが主流になっており、印刷機メーカーは複数のアニロックスローラ交換手間がかからないような装置の開発が行われています。品質面では膜厚を一定にすることが重視されているので、新台のほとんどがチャンバーコータ方式を採用しており、水性ニス・UVニスの両方に対応しています。
   参考資料「オフセット印刷技術(作業手順と知識)」日本印刷技術協会編

 

(2009年2月9日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)