スクリーン印刷について教えてください。(スクリーン線数)

掲載日:2014年8月14日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:スクリーン印刷について教えてください。(スクリーン線数)

A:【スクリーン版のスクリーン線数】 
  版(スクリーン)は、一本の糸で編まれていて布地状になっています。日本ではインチが一つの規格になっており、1インチ角というマスの中に何本の糸が通っているかということで、1インチあたり何線といういい方をしています。 
  しかし、それもスクリーン版の場合は変動します。紗として売られている表示としてはそうとしても、実際に版にテンションをかけて固定するので、引き伸ばされていてスクリーン線数は減っているのが現実です。あくまで便宜上よんでおり、本当に定規で正確に測ると決して表示通りではないということです。 
  通常のスクリーン印刷で一番粗い線数が70線です。細かいのになると、460線というところまでできます。通常のテトロン繊維のスクリーンでは、460線が限界といわれています。しかし、今はステンレススクリーンというのもあり、500線以上の細かいスクリーン線数が可能です。そのようなスクリーンは、コンピュータなどの半導体や電気製品の基板などに用いられています。

 【スクリーン版のスクリーン線数の種類】
  現在一般的に使われている孔版のスクリーン線数は以下の通りです。
70、80、100、120、150、180、200、(225、230)、250、(270、280)、300、330、350、380、420、460 
  もしかしたら他にもあるかもしれません。表示の仕方が細かくなっており、225線と230線、270線と280線とを一括している場合もありますので( )書きにしました。以前は40線といったもっと粗いスクリーンもあったようです。 

 【スクリーン線数の使い分け】 
  70~80線までは、糸も太く紗の目が開いています。そこからインキが大量に出てしまいます。スクリーン印刷は、通常のインキだけではなくラメ粉など大きな粉体を混ぜるケースがあります。その時にスクリーンの紗の目を通過しなければなりませんので、必然的に粗いメッシュを使います。

  100~180線までが特に隠蔽性といって下を隠したい場合、厚盛りにしたい場合などの用途ではこの線数です。この線数の範囲までは、印刷物を見たときにインキが盛られている感覚が得られます。これ以上だと糸が細くなってきますから、盛られている感覚は得られません。このクラスまでは糸径が太いものが使われています。 

  200~250まではスクリーン印刷で一般的に使われている線数です。もっと鮮明度が求められてくるとやはりスクリーン線数を細かくしていかなければなりません。このスクリーン線数を使った一般的な例としては、オフィスビルの中にある「消火器」や「非常口」等といった表札があります。最近はこういった単純な絵柄の中でも輪郭の部分を細かく見るユーザーが多いようです。

  版は紗に乳剤が定着しているだけなので、拡大してみると紗の桝目に沿って乳剤が付いているだけです。要するに、直線とはいっても完全に直線ではなく、紗の目に対してギザギザです。そうすると「消火器」のような柄でも輪郭を見られてギザギザが出ると駄目という場合もあります。  こうした場合は、乳剤の膜厚を上げてみるのも一つの方法です。薄いと紗の影響を受けやすいので、もう少し紗と紗を対角線でつながるように乳剤の膜厚を厚くするというわけです。それ以外には単純に線数をあげています。そうすると、もっと桝目が小さくなり、肉眼で見ると直線のように見えて、ギザギザがより目立ちません。 
  逆に線数があがりすぎると、皮膜が薄くなります。線数があがるということはそれだけ糸が細くなることになるので、膜厚が薄いとインキの出が少なくなりスクリーン印刷らしい盛りという迫力が感じられなくなります。 

 【スクリーン印刷での連続階調】 
  スクリーン版のスクリーン線数とポジフィルム上でのスクリーン線数との関係について、ポジフィルムの線数がいくつだからそれに対してスクリーン版の線数はいくつが適当であかという法則が公式というよりも経験値としてあります。 
  例えば、ポジフィルムの網の線数が60線だとすると、60線×5=±少々端数がでるぐらいのカウントが適当といわれています。そうすると60線×5=300線ということになります。  通常60線の網点に対して300線のメッシュを選びます。300線を選んで張りますので実際には270線ぐらいになっています。そうすると×5のちょっとプラスマイナスでマイナスの割り切れないくらいの数字になってきてちょうどいいといったところです。 

  ということはスクリーン印刷で連続階調を表現するにしても、ポジフィルム画像のスクリーン線数がだいたい100線ぐらいが限界なのかという疑問が出てきます。 
  たしかに今まではそうでした。しかし、現在はポジフィルムのスクリーン線数が175線でも印刷しています。175線クラスが平版オフセットの通常の線数ですが、そうした高線数の印刷をスクリーン版でもできないと勝負できない世の中になりつつあります。前途の法則でいくと、175×5でやると今度はえらい高い線数になり、不可能ということになります。しかし、実際のところ420線や460線というスクリーン版でなんとか印刷しているというのが現状です。ではどうやって印刷しているのかについては、各会社のノウハウになるでしょう。 

  実際、あるスクリーン印刷会社では、カレンダーをスクリーン印刷した際に、ポジフィルム画像の線数で300線という高線数のものを印刷しています。 
  これは印刷が非常に大変です。スクリーンの場合はインキが抜けてベチャっとなりがち、もしくは目詰まりを起こしがちで、画像が細かくなればなるほど顕著にでてきます。この場合、UVインキで印刷することになります。UVインキであれば目詰まりすることはありませんし、あとは業界で使われる用語で「泣く」と言っていますが、にじんでしまう事を防げれば可能です。 
  仮に175線というレベルの高線数のスクリーン印刷が可能になったというのも必ずしも版だけではなく、それをずっと印刷し続けることができるインキが開発されていないとだめだし、あとは印刷機やスキージ等すべての要素がある条件を満たさないとできません。 

 

(2003年2月24日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)