「所有」から「共有・利用」に ~シェアリングエコノミー~

掲載日:2016年9月14日

最近よく耳にするようになった言葉のなかに”シェア”がある。これは、「共有」「共同でもつ」という意味のシェアである。ルームシェア、カーシェア、ワークシェアリングなど一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。JAGAT西部支社(大阪市都島区)でも、カーシェアを利用する場合がある。事業所の近くにステーションがあり、15分単位で利用できるためメリットがある。

シェアリングエコノミー

「シェアリングエコノミー」とは、個人が所有する自動車や住宅などの資産をインターネット経由で貸し借りするサービスであり、欧米を中心に広がりを見せている。米国では、2008年「民泊」を仲介する「Airbnb(エアビーアンドビー)」が設立し、2009年には配車サービス「Uber(ウーバー)」がサービスを始めた。
Airbnbは、日本を含む世界的な規模でサービスを提供しており、空き部屋の登録件数は100万件を超えるという。貸主は、空き部屋の情報や料金を同社のサイトに登録し、借りる側は気に入った物件を探すことができる。AirbnbのCTO兼共同創設者ネイサン・ブレチャージク氏は、「当社のサービスは始まったばかりで、事業規模は現在の100倍になってもまだ小さいと考えている」と述べている。

一方、リフト社が提供するのは自動車の相乗りを仲介する「ライドシェア」サービスである。2012年に創業し、現在は米国内のみサービスを提供している(2015年3月には楽天が3億ドルを出資すると発表)。 同じライドシェア(配車)サービスには米国「Uber(ウーバー)」があり、同社は2014年すでに日本上陸を果たしている。いずれも見知らぬ者同士が部屋や自動車の移動サービスを貸し借りするものだ。
リフト社の共同創業者兼社長ジョン・ジマー氏は、「ライドシェアは渋滞の緩和や移動コストの削減に寄与できる新しいサービス。まだリフトを提供しているのは米国だけだが、日本にもぜひ進出したい」と述べる。

新たな価値、ビジネスを生み出す

日本は、シェアリングエコノミーという新たな文化が根付く可能性はあるのか。政府は、シェアリングエコノミーを受け入れるための規制緩和やルール整備を進めている。たとえば、東京都大田区では2016年1月から民泊が解禁された。これにより、旅館業法で義務付けられているフロントの設置や寝室の面積基準などを満たさなくても認定を受ければ営業できる。
日本国内には、いろいろなシェアリングエコノミー関連のサービスが生まれている。たとえば、自動車の貸し借りから自動車の移動(ライドシェア、配車サービス)、自宅の駐車場貸し出し、知識やスキルの貸し出し(売買)など、ハードからソフトに至るまで範囲の広がりを見せる。

これらのサービスは、大量生産・大量消費の従来型経済とは異なる市場を切り開くと期待を集める。また、眠っている資産を有効活用するという意味でも、シェアリングエコノミーは有益なシステムといえる。もちろん、貸主、借主のトラブルや法律上の問題点など課題もある。しかし、評価システムによる信頼性向上やシェアリングエコノミーに伴う法整備によって課題解決の道もある。

利用者が「所有」から「共有・利用」にシフトする傾向は否定できない。ビジネスを考える上では、「何を共有するとより有益か」、また「シェアリングエコノミーを活用して新たな価値を生み出す」など、今までにない考え方やサービスが今後さらに重要になる。とくに印刷業界では、人材不足や採用・定着など人やスキルに関する課題を聞くことが多い。今後、業界における人的資源の共有やマッチングのあり方などを考えていきたい。

(西部支社長 大沢昭博)

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