「Print4.0」的な 考え方

掲載日:2016年9月29日

印刷版Industry4.0ともいえる「Print4.0」について解説する。

drupa2016のテーマは「タッチ・ザ・フューチャー(今回のdrupa で未来にタッチできたかどうかは?)」であり、drupa2016では印刷、包装、マルチチャネル・コミュニケーション、3D 印刷、機能性印刷、グリーン・プリンティングの明日のトレンドが示された。

メッセ・デュッセルドルフのドーンシャイト社長をはじめとして、関係VIP(特にドイツ人)が決まって口にするのがPrint4.0 である。確かにdrupa2016 のメガトレンドは、デジタル印刷、包装などの個別化、個人化を可能にするPrint4.0 となっている。

印刷の第四次産業革命をめざす

正直に言うと私もPrint4.0 についての明確なイメージはなく、Industry4.0、これが大本のキーワードであり、この印刷版キャッチをPrint4.0 といっているくらいにしか思っていない。

Industry4.0(ドイツ語ではIndustrie 4.0)とは、ドイツ政府が推進する製造業の高度化を目指す戦略的(国策的)プロジェクトであり、情報技術を駆使した製造革新のこと、つまり第四次産業革命のイメージである。

第一次産業革命はワットの蒸気機関を主動力としていた機械化のことだったし、第二次産業革命は電気を主動力として使用したマスプロダクトだった。第三次産業革命はコンピューターエレクトロニクスを応用したオートメーション化だったし、第四次産業革命はこれに続きインターネットやIT 技術をフルに活用して工業、特に製造業を高度にデジタル化することにより、製造業の様相を根本的に変え、マスカスタマイゼーションを可能とし、製造コストを大幅に削減することを主眼に置いた革命といえる。

すべての機器がインターネットによってつながり(IoT)、またビッグデータを駆使しながら、機械同士が連携して動くことはもとより、機械と人とが連携して動くことにより、製造現場が最適化されると想定している。

このようにIndustry4.0 のポイントはマスカスタマイゼーションであり、この路線を印刷業に置き換えて定義したPrint4.0 もマスカスタマイゼーションを基本にしている。印刷でいうマスカスタマイズはもちろんPOD であり、そこにはギャンギングやJOB ギャンギング等のソリューションも組み込まれてPrint4.0 が実現されていくことになる。

現在ドイツの電子機器メーカーや自動車メーカー、IT・通信企業が中心となり、「スマートファクトリー」について取り組んでいる。工場を中心にインターネットを通じてあらゆるモノやサービスが連携することで、新しい価値やビジネスモデルの創出を目指した取り組みであり、ドイツ以外の北米や日本にもその考え方が波及している。また印刷業でも「スマート・プリントショップ」等が言われている。

この辺で整理しておきたい。どうもIoT、Industry4.0、Print4.0は同レベルで使われているワードのようであり

1. ハードウエアとソフトウエアの融合
2. 産業機器とビッグデータをつなぐ、オープンでグローバルなネットワーク
3. データの収集・解析による顧客価値の提供

こういうことを推進していくのがPrint4.0 ということである。そしてドイツを代表する印刷機メーカーであるハイデルベルグは第四次産業革命(Print4.0 のイメージも包含)のことを

1. マスカスタマイゼーション
2. 省人化
3. 省工程化
4. 生産総量に依存しない低コスト化

と定義している。

1 と4 は同じことともいえるが、マスカスタマイゼーションは正直に言って並大抵の努力では成功しない大きな目標(壁)である。

しかし現状でも、連帳インクジェットを大量に設備することでマスカスタマイズに近い形を現実にしているのも事実である。正しく努力の賜物なのだが、どうもハイデルは徹底した省人化(自動化)がマスカスタマイゼーションの成功につながると考えているようである。

(JAGAT 専務理事 郡司 秀明/全文は『JAGAT info』2016年7月号に掲載)