印刷会社とフリーペーパービジネス、その新たな可能性

掲載日:2017年4月20日

地域メディアとしてのフリーペーパーの発行主体になることは、地域密着産業としての印刷会社にとって様々な意味を持つ。クラウドファンディングのような新たな資金調達手法は新たな印刷発注や地域ビジネスの原資として市場を創造する可能性を秘めている。

 

フリーペーパー発行主体としての印刷会社

JAGATは印刷会社が発行主体のフリーペーパーについて興味深い研究領域と考えている。フリーペーパーは地域の広告費を発行原資とし、地域の記事をコンテンツとし、地域の印刷会社によって生産され、地域の読者によって読まれる、という文字どおりの地域メディアである。地域密着産業として全国に26000事業所を展開する印刷会社は各地でフリーペーパーにどのように取り組んでいるのだろうか。明らかにする過程で印刷会社の地域社会における新たな可能性が見えてくるだろう。印刷会社はフリーペーパーの発行主体として独立資本・新聞社に次ぐ3番目の多さという調査結果はあるが、具体的な発行実態は明らかになっていない。

フリーペーパー調査の意義

フリーペーパーは出版取次を介した全国的な流通網に乗らないため、配布エリア以外の実態や全体像を掴みにくい。印刷会社がフリーペーパーの受託印刷をするのは製造業として当たり前だが、発行主体としてどのような存在なのだろうか。実際にどのようなフリーペーパーがあるのか、どのようなビジネスモデルの裏付けによる発行なのか。そして創刊と休廃刊が容易な、つまり新陳代謝の激しいフリーペーパー市場において中長期持続的に発行できているフリーペーパーの平均像と特性はどのようなものか。定量的・定性的に捉えるべく、第3回目となる調査を行った。

印刷会社が発行主体のフリーペーパーの特徴

印刷会社が発行主体の全国のフリーペーパーからは、顧客のコンテンツを注文どおり美しい印刷物に仕上げる従来型の製造業的姿勢ではなく、印刷会社が創造的にコンテンツの制作側にまわるような地域情報発信の担い手としての地位を築きつつある様子が浮かび上がる。印刷会社のフリーペーパーを一言で表現するなら「多彩」であろう。記事は各地の地域性を反映、収入源は広告費以外に幅広く分散、発行の目的は営利もあるが地域活性への貢献意欲も強く、地域社会との連携によるビジネスモデルなども少なくなく、フリーペーパービジネスの新たな可能性さえ感じさせる。
フリーペーパー集合写真

フリーペーパーは雄弁に語る

page2017(2月8~10日・サンシャインシティ)では、全国の印刷会社から提供いただいたフリーペーパー39紙誌を展示した。多くの人が訪れ、立ち止まり、手に取った。フリーペーパーには、印刷会社の地域における役割の本質、単に製造業にとどまらない現代印刷会社の事業領域の広がり、そして印刷メディアの魅力など、企画力・営業力・デザイン力・取材力・技術力・マーケティング力が凝縮されている。このような地域メディアの全国からの集積は、pageに来場する多くの一般の方々に現代印刷業界が地域社会でどのような役割を担っているか、印刷以外にどのような能力を保有しているか印刷業界外の方に訴求するのに最適な印刷物の一つである。 
IMG_1818 IMG_1795

フリーペーパー、分析と新たな取り組みから考える可能性

4月27日のJAGAT印刷総合研究会では、印刷会社のフリーペーパー制作発行に関する分析結果を報告する。各フリーペーパーの特徴、そして版型・ページ数・発行回数・発行サイクル・収入構成・デジタルメディア連携・通巻などの平均像。読者に支持される連載記事の代表例、ユニークなフリーペーパーのビジネスモデル、そのヒト・カネ・情報の結びつきなどについて考察する。また、印刷業界内外のフリーペーパー全体動向、印刷物の新たな発注原資となる可能性を持つクラウドファンディング、全国640万部発行を誇る事例などを聞き、フリーペーパーなど地域メディアビジネスの新たな可能性を考える。
 
2017年4月27日(木) 「フリーペーパーの最新動向2017」 (JAGAT印刷総合研究会)
  
image3