印刷ビジネスにつなげるカスタマージャーニーマップ

掲載日:2017年9月20日

カスタマージャーニーマップ作成プロセスを解説する。

これまでカスタマージェーニーマップはどういうものか?ペルソナはどういうものか?について説明してきたが、「このペルソナに対しての戦術を練ること」や「カスタマージャーニーマップに従って印刷物を作成すること」が(印刷)ビジネスになりそうだということは分かっていただけたと思う。

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では具体的にどんなビジネスなのだろう。一言で表現すれば、カスタマージャーニーマップを作成するなど、MA(マーケティングオートメーション)を活用するためのコンサルビジネスなのだが、こういう目に見えないものを売るのは、印刷業界が苦手にしていることだ。「確実な製品(商品)をトラブルなく、安く、納期どおりに納品する」というのが、印刷会社が本来得意としているビジネスだったからだ。

それではカスタマージャーニーマップ作成等をビジネスにするためには、どうしたらよいのだろうか? 闇雲にローラー作戦で営業しても意味がないだろうし、手当たり次第にPR しても効果は低いだろう。そこで、よく行われる方法として「セミナーをキッカケにするビジネス」であり、セミナーに参加した人とのやりとりを深めて、的を絞っていくという営業プロセスである。

一般的にカスタマージャーニーマップを作成する場合には、プロジェクトチームが集まって模造紙や付箋(商品名の方が有名?)を駆使してアナログ的に作成していくのだが、それをセミナーとして、特にワークショップ的に参加者と一緒に行うことで、大きな宣伝効果を上げている会社がある(印刷会社も存在している)。

参加者にもその効果が歴然となるし、ワークショップの時にスタッフから受けたサジェスチョンが当を得ていると、「やっぱりプロに頼むと違う」という実感(経験)でコンサルを頼むきっかけ作りにもなる。

簡単にカスタマージャーニーマップ作成プロセスを紹介しよう。商品やサービス、そしてブランドイメージなどによって異なるが、一定の法則があり5 ステップに分けることができる。

ペルソナの設定

自社の製品やサービスに対して、興味・関心を持つ顧客、つまりペルソナを設定する。ペルソナの設定を詳細にするほど、ニッチな製品やサービスになっていくが、ユーザーの消費者行動がイメージしやすくなり、具体策が立てやすくなる。

ペルソナの行動を文章化する

ペルソナの行動を、具体的にイメージしながら文章化する。例えばペルソナを60 代の金融会社をリタイヤしたOB とすれば、『インターネットに興味はあるが知識は不確か。いろいろなことに挑戦したいが経験は乏しい(得意分野以外)。時間は十分にある。金銭的な余裕はある』などというように人物像を固めていく。次に「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」「評価(口コミなど)」「継続購入」といった基本フェーズに分けて行動を文章化していく。この作業は想像力のない人間には不得意分野だ(IT 化が進むと、能力の中で創造性が重要になる)。

顧客参加型の仮説検証

ペルソナの設定、およびその行動として想定した内容が正しいのかを、検証する。検証方法は、直接意見を聞くことが一番だが、アンケートツールやクラウドソーシングが普及しているので、こちらが活用されることが多い。しかし印刷業界の場合は直接も不可能なことではない。そしてペルソナの行動を修正し直す。

フレームワークを決定する

カスタマージャーニーマップのフレームワークを決定する。横軸は基本フェーズとして、「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」「評価(口コミなど)」「継続購入」等を用いて、縦軸に「思考」「感情」「行動」「タッチポイント」等を設定する。タッチポイントとは、その行動を起こすにきっかけである。例えばFacebook の「いいね!」をきっかけに行動するユーザーは、Facebook がタッチポイントになる。

カスタマージャーニーマップ完成

完成段階でフレームもワークに今まで検討してきた内容を入れ込む。関係者の共通認識を深めるためにも図や絵を用いて、視認性が高く、分かりやすいカスタマージャーニーマップを作る。

このようなビジネス自体は印刷業界が目指すものだが、ここまでやらないとしてもマーケティングビジネスの一翼になれなければ、印刷ビジネス自体を失う可能性があることだけは忘れてはならない。
日本での成功例としてLEXUS(トヨタの高級ブランド)やANAが挙げられるが、後者はAdobeマーケティングクラウドのユーザーということが知られている。

(『JAGAT info』2017年6月号より)