印刷会社が発行するフリーペーパー研究を通じて

掲載日:2018年6月11日

page2018では第4回となる印刷会社発行のフリーペーパー展を開催した。展示フリーペーパーは年々増えて過去最高の44紙誌。フリーペーパーは、地域資源の再発見、地域ネットワークの形成、記事制作能力の向上、自社保有能力の訴求など複合的な役割を持つことが多い。

 

全国の印刷会社フリーペーパーを調査・分析・展示

page2018(2月7~9日・東京)では、全国の印刷会社が発行するフリーペーパー44紙誌を展示した。今回も多くの人が訪れた。フリーペーパーは、印刷会社の地域における役割の本質、単に製造業にとどまらない現代印刷会社の事業領域の広がり、そして印刷メディアの魅力を訴求するのに向いている。企画力・営業力・デザイン力・取材力・技術力など総合力の産物であるからだ。提供されたフリーペーパーは業界内外の様々なところで紹介に活用させていただいている。
(写真:「page2018(東京)」におけるフリーペーパー特設展示の様子,18/2/7-9)

印刷会社のフリーペーパーが示す地域企業の役割の変化

印刷会社のフリーペーパーからは、顧客の原稿を注文どおり印刷物に仕上げる従来型の製造業的姿勢ではなく、コンテンツの創造側にまわるような地域情報発信の担い手としての地位を築きつつある様子が見えてくる。印刷会社のフリーペーパーを一言で表現するなら「多彩」であろう。記事は各地の地域性を反映、収入源は広告費以外にも求められ、紙誌面には地域活性への貢献意欲が強く現れ、地域社会との連携によるビジネスモデルも見られる。
(写真:「地域おこしめっせ2017(大阪)」におけるフリーペーパー特設展示の様子,17/9/27-29)

フリーペーパーが伝える印刷会社のポテンシャル

フリーペーパーは地域の広告費を発行原資とし、地域の記事をコンテンツとし、地域の印刷会社によって生産され、地域の読者によって読まれる、文字どおりの地域メディアである。地域密着産業として全国に25000事業所を展開する印刷会社が各地で発行するフリーペーパーは興味深い。フリーペーパーからは、印刷会社の地域社会における新たな可能性が見えてくる。大学など業界外で印刷会社のフリーペーパーについて講義すると、その反響は予想以上に大きい。印刷会社が企画から配送までワンストップでフリーペーパーを発行できる体制を持つと知っている大学生は本当に少ない。
(写真:「早稲田大学フリーペーパー講座」における講義の様子,17/10/31)

フリーペーパーは地域社会との関係性を考える大切な手がかり

全国的な流通網を持つマスメディア(新聞・雑誌)の部数が減少し続けるなか、補うように地域メディアに寄せられる期待は大きくなっている。しかしフリーペーパーを持続的に発行するのは意外に難しい。持続性あるフリーペーパーとはどのような特性を持っているのか。企業が地域とともに成長するには、つまり、収益性と社会性はどのように両立していくべきなのか。今後も研究調査を重ね、JAGAT会員企業への情報発信を通して、広く社会に印刷会社と印刷メディアの地域社会における役割の本質を訴求していきたい
(写真:JAGAT印刷総合研究会「フリーペーパービジネスの最新動向2018」の様子,18/4/27)

(研究調査部 藤井建人)

参考ページ
JAGATによる地方創生/地域活性ビジネス研究