【マスター郡司のキーワード解説2019】コロナ処理

掲載日:2019年1月22日

今回は「コロナ処理」について取り上げる。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

コロナ処理

前回は表面張力について、界面化学(そんな小難しい話ではないが)のこと、つまり界面活性剤、濡れについて解説した。

この話題を選択した背景は、長らくオフセット印刷の天下が続き、水を使ったオフセット印刷方式で一番適しているコーティングや前処理が当たり前になっていたのだが、インクジェットタイプのデジタル印刷機が台頭してくると、今までのオフセット一辺倒の前処理に対して疑問視する風潮が見受けられるからである。もちろん今でも「オフセット用紙が絶対だ!」と言っている人が多いが、「そんなの関係ない(ねぇ)♪」「なんでインクジェット印刷機にオフセット用紙を使わなければいけないんだ?!」などの意見もちらほら聞こえだしている。

そして紙ではなくてプラスチックフイルム等、軟包装材への印刷のほうが良い(紙は価格競争が激しくてレッドオーシャン市場)といって新市場に飛び出していき、その会社が紙以外の新市場で成功すると俄然注目を集め出して、これからは「紙以外への印刷だ」ということで多くのオフセット印刷会社が殺到するという状況も容易に想像できる。今までの印刷業界がそうだったからである。

紙と印刷は切っても切れない関係にあるが、紙以外への印刷も軟包装や文房具等で需要が高まっている。

しかし、想像してもらうだけでも分かると思うが、プラスチックフィルムに印刷するには、そのままではフィルムがインクをはじいてしまっていろいろ大変だ。インキの組成を調整したり(界面活性剤)、フィルム表面に処理を施して濡れやすくしたりすることが最低限必要なのである。

その表面処理の代表としてコロナ処理がある。コロナ処理とはプラスチックフィルム、紙、金属箔などの処理基材表面をコロナ放電照射により改質させる表面処理技術だ。高周波電源装置から発振された高周波・高電圧が処理ステーションの電極-処理ロール間に印加されるとコロナ放電が生じる。コロナ放電とは電場の強いところで部分的な絶縁(この場合の絶縁物は空気)が破壊されて生じる発光放電のことをいう。皆既日食で見られるコロナに似ていることからコロナ放電と命名されたようだ。コロナ放電下を処理基材(フィルムや金属箔)が通過することでコロナ処理が施され、一般にぬれ性が向上、同時に印刷特性、コーティング特性、貼り合わせ特性等が著しく改善される。紙以外の被印刷体に印刷するには、必然的な技術である。

コロナ処理の用途として考えられるのは以下の6つである。

1. 印刷の前処理 デジタル印刷機の場合には、コロナ処理装置がインラインで装備されているシステムも多い。しかし、いろいろな種類の素材を扱う場合には、コロナ処理をオフラインで設計する必要も出てくる。

2. 接着(ラミネーション)の前処理 出版印刷では表紙にラミネートすることも多く、今後紙以外の素材も多くなってくるので、印刷業界の人には常識として知っておいてもらいたい。

3.コーティングの前処理 コーティングも印刷業界に馴染みがあるが、コロナ処理と合わせて表面処理する場合も多い。

4.油膜除去(アルミ箔など) この辺はフィルムを扱う業界の常識である。

5.防曇効果

6.添加剤の表面ブリード促進、等 プラスチックは一般に表面(自由)エネルギーが小さく不活性なため塗料、印刷用インキなどの塗工性で劣っている(ノリ難い)。プラスチックフィルムの二次加工においては表面改質が求められるのだ。コロナ処理では基材表面に極性官能基を導入させることで親水性を向上させ(水性インキのノリを易くする)、塗工・印刷の不良を解決するわけである。金属箔の油膜除去、プラスチックボード等の防曇効果、添加剤の表面ブリード促進効果などを目的としたアプリケーション等、多くの用途で利用されている。 近年では表面(自由)エネルギーが小さい機能性フィルムが数多く登場し、コロナ処理の重要性はより高まっている。 更に、コロナ処理だけにとどまらず、ガスプラズマ処理に代表される新技術(応用技術が多数開発)へと新たな広がりを見せている。 また、コロナ放電処理の特性より、金属箔の油膜除去、プラスチックボード等の防曇効果、添加剤の表面ブリード促進効果などを目的としたアプリケーション等、多くの用途で利用されている。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)

(会報誌『JAGAT info』 2018年11月号より抜粋)