「あなた好みの情報」を提供するキュレーション

掲載日:2015年1月21日

「ニュースキュレーション」と呼ばれるコンテンツ配信サービス、アプリの盛り上がりが著しい。

代表的な サービスは、グノシースマートニュース、経済ニュースに特化したニュースピックス、タグベースで記事を収集、自動要約するビンゴー、雑誌風レイアウトで 表示するアンテナなどがある。それぞれ数十~数百万単位のユーザーを獲得し、最近では大手キャリアと資本提携したり、TVCMで大々的に広告を打つなど、 各社でユーザーの獲得に注力している。

もともとキュレーションとは、図書館や美術館などで、キュレーターと呼ばれる専門家が、ある軸に沿って、膨大な作品から整理したおススメの作品を紹介する意味で使われていた。転じてインターネット上では、ユーザーの好みや志向に沿った情報を自動で収集し、表示するサービスを指すようになった。データを解析し、独自のアルゴリズムでその人の興味・関心にあったニュースや情報をWeb上から選別、提供するしくみだ。

特徴的なのは、独自にコンテンツを作らない点だ(ニュースピックスは独自コンテンツを配信)。コンテンツホルダーである大手メディアと提携し、コンテンツを配信する。

ニュースキュレーションが増えてきた、もっとも大きな理由は、「短時間で、自分に合った情報がほしい」というニーズの変化だろう。今までは、検索エンジン で自分の関心があるキーワードを入力し、検索結果から、能動的に自分の読みたい情報を得ていた。最近では、スマートフォンからWebを閲覧することが増え、移動などの隙間時間に情報をチェックする機会も増えた。小さな画面で検索結果をいちいち探すよりも、アプリを起動すれば自分向けの情報が表示される キュレーションアプリのほうが勝手がよく、ユーザーの支持を得た。

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出版ビジネスにおいても、「あなた好みのコンテンツ」をユーザーがつくれるサービスがある。JTBパブリッシングが開始した電子書籍販売サイト「たびのたね」だ。
旅行ガイドブックで、「1冊まるごとは必要ないが、一部の記事だけがほしい」というニーズを捉え、1冊のうち一部分のみを抜粋版として販売、さらに複数の 抜粋版を1冊にまとめてオリジナルガイドを作れるようにしたものだ。電子書籍ならではの取り組みとして注目され、電子出版アワードの大賞も受賞した。
 いまはユーザーが好きなコンテンツを選ぶかたちだが、将来的には、自動でおススメのコンテンツを1冊にまとめた電子書籍を配信するサービスが登場するかもしれない。

(研究調査部 中狭亜矢)

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