『印刷白書』で振り返る印刷業界動向 その4(2016-2020)

掲載日:2020年10月9日

業界初の白書として1994年に発刊以来、『印刷白書』は、26年にわたり印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅・掲載する唯一の存在である。最新版の『印刷白書2020』は、特集に「コロナウイルスで変わる社会と印刷」を取り上げ、10月23日に発刊する。

2014年の印刷製品出荷額は5兆5365円で7年連続のマイナス成長となった。ただし、前年比では0.2%減で、減少幅は4年連続で縮小している。
JAGATが毎年実施している経営動向調査において、会員印刷会社が最も重視している事業領域は現在も将来も「総合化」が最多であるが、収益性と成長性が高い会社ほど「専門性」を重視し、将来的には「脱印刷」を重視すると回答している。
印刷物は、情報伝達メディアの王者として君臨してきたが、インターネットの台頭により、いよいよ「ワン・オブ・ゼム」の手段に後退し、印刷会社は「脱印刷」の先にどのようなビジネスを展開すべきかが大きな課題として認識されつつあった。

そこで2016年10月発行の『印刷白書2016』では、特集のテーマを「デジタルイノベーションと新ビジネス」とした。
前年に翻訳出版したジョー・ウェブ博士の『未来を創る』をきっかけとして、JAGATが提唱し始めた「デジタル×紙×マーケティング」の具体的施策を考察し、マーケティングオートメーションを始めとするデジタルマーケティング手法を取り入れた、いかに費用対効果の高いメディア提案をするかなどについて提言した。
また、AIやIoTの最新トレンドにも触れ、次世代のビジネスモデルを検討している。

2017年5月、JAGATは創立50周年をむかえ『印刷白書2017』は50周年記念誌と二分冊で10月に発刊した。特集は「印刷産業の50年とイノベーション」をテーマとし、50年間の印刷産業を取り巻く社会の変化と技術革新を振り返るとともに、印刷ビジネスの未来を切り開くための展望と、それを実現するために必要な人材育成の重要性に言及した。

2015年の出荷額は5兆3571億円(経済センサス)。企業の広告宣伝費は拡大を続けているが、購買行動の多様化など市場環境は大きく変化し、紙媒体の減少傾向は依然として止まらない。

『印刷白書2018』(2018年10月)の特集はずばり「デジタル×紙×マーケティング」である。
2018年度、JAGATは調査研究、pageやJAGAT大会を始めとするイベント、セミナーなどの教育の共通テーマとして“デジタル×紙×マーケティング”を掲げ、デジタルマーケティング全盛の時代における、紙メディアの担うべき役割、強みが活きるストーリー、シナリオ創りを追求すべく、さまざまな情報提供に本格的に取り組み始めた。
印刷白書でも、デジタルと紙を組み合わせてコミュニケーションを行うこと、デジタルマーケティングで生きる紙メディアのあり方などの現状分析と課題解決を目指した。

2016年の出荷額は前年比3.4%減の5兆2753億円で、減少幅はこの5年で最も大きく、下げ止まりつつあった出荷額は再び下げ足を早めた。
インターネット広告費は4年連続2桁成長を遂げる一方、デジタルファーストが浸透し、新聞・雑誌、折込などの紙媒体は減少を続けている。

JAGATは2019年度も共通テーマを継続し、より実践的(飯の種となる)印刷の新たな価値を追求すべく「デジタル×紙×マーケティング for Business」とした。
『印刷白書2019』でも特集に取り上げ、page2019の基調講演をベースにパーソナルDMの可能性や、各種の先端技術を応用して実践している印刷会社を紹介するなど具体的な考察を行った。

2017年の出荷額は5兆2378億円(前年比0.7%減)で10年連続の減少となった。日本の広告費は7年連続プラス成長だが、印刷メディアのシェアは縮小を続ける一方、インターネット広告は5年連続2ケタ成長。

2018年、印刷産業の出荷額は1982年以来36年ぶりに5兆円を切り、4兆9829億円(前年比4.9%減)となった。
そして2020年、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、あらゆる人々の生活と産業に大きな影響を及ぼした。その収束が見えない中で、ニューノーマルといわれる“with/afterコロナの時代”を踏まえ、『印刷白書2020』では「コロナウイルスで変わる社会と印刷」を取り上げ、コロナ禍に対応するビジネスと印刷のあり方についての議論を特集している。
現在、10月23日発刊予定で編集の最終段階まで来ており、JAGAT会員各社には例年通り献本するのでぜひご期待いただきたい。

(JAGAT CS部 橋本 和弥)

【関連情報】
『印刷白書』で振り返る印刷業界動向(1994-2005) 

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