中小印刷会社の業績開示を考える(後編)

掲載日:2015年4月23日

中小零細印刷会社は従業員への経営状況の開示をどのように考えるべきか。業績を高めるための経営状況の開示について、過去5年の調査結果から考える。

業績開示のやり方で業績が変わる

JAGAT印刷産業経営動向調査では、「経営状況を全正社員に開示していますか」という問いと、「①全正社員に開示している」「②全正社員に開示しているわけではない」という選択肢を設け、業績と選択の相関をみている。2009年度から2013年度にかけて5年間の結果をみると、①を選んだ会社は57~62%で推移、中小印刷会社の約6割が全正社員に開示していることがわかっている。一方、業績との相関をみると5年連続で、「②全正社員に開示しているわけではない」中小印刷会社の業績が「①全正社員に開示している」中小印刷会社を上回っている。

業績を高めるための業績共有と開示の仕方を考える

この設問では、いくら業績を隠したい経営者がいるとしても、業績を誰にも開示しないことは不可能なので「開示しているか否か」ではなく、「全正社員に開示しているか否か」を問うている。何かを一律に開示して共有すれば会社としてはラクだろうが、そうではない選択をしている企業の業績の方が高い。つまり開示の仕方に業績を左右するノウハウがあると考えられ、例えば役職別などで開示内容を変えたり、部門別の競争を促しつつ未然にセクショナリズムを防いで協力をさせ合うような工夫こそが、真に業績を左右する要因ではないかと考えられる。

業績を高めるための業績共有と開示の仕方を考える

調査結果は、経営の透明化といってもなんでも開示すれば良いのでなく、開示が逆効果になる場合もありうることを示唆している。たとえば「値引きを10%した場合の最終利益へのインパクトは●●%」のように、管理会計的に企業活動を計測、企業活動と業績の相関を単純化した係数感覚として全従業に実感させ、日々何をすると利益がどれだけ増減するかを納得させる仕組みが肝要なのである。業績開示はしたほうが良いに決まっているが、月次決算書をなんの工夫もなく渡してもせっかくの業績開示の意味は少ないだろう。

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