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【クロスメディアキーワード】顧客とのメディアコミュニケーション

企業にとってステークホルダー(利害関係者)は複数存在するが、多くの場合、顧客はその中でも重要視される。

コンタクトポイント

顧客が製品やサービスを購入することで、企業は利益を確保できる。顧客とのコミュニケーションは、企業の継続性を担保するために、不可欠なものとなる。情報を顧客へ向けて発信する際、コミュニケーションが発生する点(場)を「コンタクトポイント(顧客接点)」と呼ぶ。
また、インターネットと対応したモバイル端末の普及により、「コンタクトポイント」は大きな影響を受けた。現在は、顧客とのコミュニケーションに対し、インターネットメディアである「電子メール」や「さまざまなWebサイト」を「コンタクトポイント」として企業は活用しているが、「テレビ」や「ラジオ」、「新聞」「雑誌」「電話」「DM(Direct Mail)」などの旧来からのメディアも当然のように併用されている。
企業が顧客との有効な関係を構築するためには、対象となるそれぞれの顧客に向け、「コンタクトポイント」を見極め、「求められている情報」を最適なタイミングで提供することが求められる。また、「顧客が企業や商品に対し抱いていること」を読み取り、素早く回答していくことも必要となっている。

情報とメディア

メディアによるコミュニケーションは、「情報(コンテンツ)」と「メディアの選択」が重要であり、双方の適切な組み合わせにより、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことを実現する。また、顧客が企業となる「B to B(Business to Business)型」の事業を展開する企業にとっては、「顧客となる企業にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」こととなる。
「顧客が求めていない情報を望んでいないタイミングとメディアで提供する」といった、一方的なメディアによるコミュニケーションは、現在でも複数存在している。このようなメディアによるコミュニケーションでは、顧客との有効な関係の構築自体が難しいものとなる。

コミュニケーションプランニング

企業が顧客とのコミュニケーションを設計するには、まず、「顧客を知る」ことが必要となる。顧客の嗜好や行動について知ることが求められる。次に「顧客を知る」に基づき、「顧客が求めている情報を予測する」行動が必要となる。求めている情報が明確であれば、企業が顧客とコミュニケーションを行う大きな機会となる。さらに求めている情報を分析し、「顧客に提供すべき情報を選別する」ことから、企業にとっても有効なコミュニケーションを実現する。最後に「顧客に情報を提供するメディアを選定する」ことで、「顧客にとって必要な情報を最適なタイミングで提供する」ことが可能になる。

顧客の行動

顧客との適切な「コンタクトポイント」を明確にするには、メディアによるコミュニケーションの対象となる顧客が持つ「嗜好」を把握し「行動」を予測する。「顧客視点」によるマーケティング戦略を立案し、「顧客の立場」を最重要視する。
「ソーシャルメディアが一般的に注目されているから」「新商品を開発したから」などの企業側の理由だけで、顧客とのコミュニケーションを図ろうとしても、むしろ、費用だけを要してしまい、成功の可能性を低めていく結果をもたらしてしまうかもしれない。まず「日々、顧客が経験する生活における行動」を理解することが大切になる。
また、顧客の行動を理解するために、顧客の行動を「プロモーションの段階」では「問題認識や情報検索」、「セールスの段階」では「代替品の評価や購買決定」、「アフターセールスの段階」では「購買後の行動」といった分類をして分析することが重要であると、アメリカ合衆国の経営学者である「フィリップ・コトラー」は提唱している。

提供すべき情報

「顧客の行動」を把握し、コミュニケーションの必要性を得ることができたら、「顧客が求める情報」を分析し、「提供すべき情報」を選定する。
EC(Electronic Commerce)サイトから商品を購入する際、「クレジットカードを利用し注文することは可能であるか」「クレジットカードの情報を入力しても安全であるか」「何か問題が発生したときに保証はあるか」などは、顧客にとって大変重要なこととなる。さらに注文後に「正確に注文が行えているか」といった確認も必要であり、「商品の到着日時」などの情報も求められる。
ネット(インターネット)通販を展開する大手の事業者は、前述した情報提供のほか、顧客の行動を詳細に把握し、必要な情報を適切なタイミングで提供することで、顧客から信頼を獲得している。

メディアの選択

「コンタクトポイント」を設定し、「提供すべき情報」の選定後は、コミュニケーションに使用するメディアを選択する。
メディアは多種多様なものが存在するが、「顧客の行動」と「提供すべき情報」によりメディアの選択は大きく影響を受ける。
インターネットを利用できる「パソコン」や「スマートフォン」「タブレット」などとのデバイス(端末)で使用が可能である「デジタルメディア」は、多くの「コンタクトポイント」での活用を見込むことができる。しかしながら「デジタルメディア」は、必ずしも万能なわけではない。「プロモーションの段階」で、大量な電子メールの送付や、ソーシャルメディアへの執拗な投稿は、顧客に不快感を与える可能性もある。
メディアの選択肢が旧来のマスメディアやSP(Sales Promotion)メディアに限られていた時代と比較すると、インターネットの普及は、企業と顧客のコミュニケーションのあり方に、大きな影響を与えている。大切なことは、手段を優先せずに「顧客の立場」を考慮したメディアによるコミュニケーションにより、「情報」と「メディアの選択」を慎重に組み合わせることにある。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年8月号より転載

【クロスメディアキーワード】メディアの特性

メディアはインターネットが普及する以前、広告を目的としたものと、SP(Sales Promotion:販売促進)を目的としたものとして位置付け、メディアプランニングを実施するのが一般的であった。

ATL とBTL

広告メディアはマスコミ4 媒体(新聞、雑誌、ラジオ放送、テレビ放送)が主な役割を担い、ATL(AboveThe Line)と呼ばれ、「認知度」を高めることを目的で利用されている。
一方、プロモーションメディアについてはBTL(Below The Line)と呼ばれ、OOH(Out Of Home:交通広告、屋外広告など)、折込広告、DM(Direct Mail)、フリーペーパー、フリーマガジン、POP 広告(Point Of Purchase advertising)などといったさまざまなメディアが含まれており、生活者の「興味」を高めたり、「購入」を促進する目的で利用されている。
ここで「Line」が示す意味は「境界線」を指し、メディア特性に応じてそれぞれを位置付ける考え方とされている。したがって、ATL は主に「ブランディング」を目的としたメディアであり、BTL は主に「プロモーション(販売促進)」を目的としたメディアと位置付けることができる。

インターネットメディア

インターネットの普及と技術の進化に伴い、インターネットメディアはATL とBTL をシームレスに担う第3のメディアとして、地位を確立した。
インターネットメディア(ミドルメディア)は、パソコンのほか、ケータイ、スマートフォン、タブレットなどといったさまざまな端末を通じ、コーポレートサイト、EC(Electronic Commerce)サイト、ネット広告、ブログ、SNS(Social Networking Service)などが展開されている。インターネットメディアでは、電子決済システムとの連携により、告知から販売に至る処理をワンストップで提供することが可能になった。昨今では物流にも影響を与え、生活者の購買行動に変化も及ぼしている。さらに、スマホやタブレットといったモバイル端末が普及することで、インターネットメディアはさまざまな市場に影響を与えることが予想される。また、インターネットメディアには、生活者の購買行動に関する詳細なデータを蓄積できる特性がある。この特性により、行動変数による精度の高いターゲティングや、マーケットバスケット分析による傾向値を踏まえた商品のレコメンド(推薦)などをはじめとするマーケティングを実現している。
さらに、インタラクティブ性と購買行動データを生かし、電子メールやBBS(Bulletin Board System:電子掲示板)をはじめ、「LINE」や「Skype」などのソーシャルメディアによる対話形式のコミュニケーションを行うことも可能になった。「Facebook」や「twitter」などによる口コミ手段の発達により、生活者間の情報交換が盛んに行われることに起因する「バイラルマーケティング」や「バズマーケティング」が手法化された。企業にとって口コミは、広告やプロモーション、人的販売、パブリシティに並ぶ生活者とのコミュニケーション手段として活用されている。

メディア特性

従来の広告メディアやプロモーションメディアに加え、インターネットメディアが普及した昨今では、生活者にとって適切な時間や場所を意識したメディアを選定し、情報の受発信を行うことにより、設定した目的や目標を果たす効果を期待できる。そのためには、さまざまなメディアの特性を理解する必要がある。

【ATL】
<マスコミ4 媒体>
マスコミ4 媒体は、ほかのメディアと比べ「情報伝達の範囲が広い」「注目度が高い」などのメリットがある。しかしながら「多くの費用を要する」といったデメリットもある。
対象については、ある程度のセグメントを意識しすることができるが、不特定多数に対する情報発信となる。企業と生活者のコミュニケーションでは、マーケティングやPR(Public Relations)、IR(Investor Relations)の手段として利用される。また、従来の「ながら聴取および視聴」は、ラジオ放送が主だったものと考えられていたが、モバイル端末の普及により「テレビ放送を視聴しながらスマホでインターネット検索」や「雑誌を閲読しながらタブレットでECサイトから商品を購入」などの行動をとる生活者も増えてきた。

【BTL】
BTL にはさまざまな種類のメディアあり、プロモーションに対し直接的に関与するため、高い到達率が期待できる。例としてOOH とDM を取り上げる。

<OOH>
OOH は、ほかのメディアと比べ広い範囲に設置および掲示できることから「表現に柔軟性を持たせることができる」などのメリットがある。しかし、「多くの費用を要する」「一定期間は変更することができない」などのデメリットもある。対象は設置場所に訪れる生活者となるが、企業と生活者のコミュニケーションではマーケティングやPR の手段として利用される。

<DM>
顧客リストにより対象者に直接送付する紙広告であり、工夫により高いレスポンスが期待できるメディアである。他社との違い(オファー[特典]提供)により、生活者の購買意欲を高めることも重要視される。セグメンテーションを的確に行えば、費用対効果も期待でき、キャンペーンなどでは有効に利用されている。的確に大量な情報を提供することも可能であり、視覚に訴求することができるなどのメリットがある。しかし、「1 件当たりの費用が高い」「送付先の収集が必要となる」「発送までに時間がかかる」「封書の場合、開封率が低い」などのデメリットもある。

企業のメディア戦略

プロモーションメディアは、本稿で取り上げたOOHやDM のほか、チラシやPOP 広告、フリーペーパー、フリーマガジンなどさまざまなメディアが存在する。また、新たなマスメディアが登場する可能性もある。さらにインターネットメディアは、際限なく新たなサービスが登場するほか、モバイル端末の進化も予想され、眼鏡型や腕時計型などのウェアラブルデバイスが普及することが予想される。そのような中、企業が継続的な発展を遂げるには、さまざまなメディアを駆使し、ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを図る必要がある。経営戦略に則ったメディア戦略を実現するために、本稿で取り上げたメディアだけでなく、さまざまなメディアの特性を理解した上で、活用を計画的に行うことが求められる。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年7月号より転載

【クロスメディアキーワード】ステークホルダー(利害関係者)

企業は、さまざまなステークホルダーと関わり合いながら経済活動を行う。企業のメディアによるコミュニケーションでは、情報の受信者がステークホルダーとなる。企業が活動を続けていく上で不可欠となるステークホルダーは、
①生活者(顧客):商品を購入する人や組織、②出資者(株主、金融機関など):資本を提供する人や組織、③従業員:企業の経済活動に従事する人、④取引先:商品を提供するために必要な材料を購入する先となる人や組織、⑤社会:企業が活動を行う拠点がある国やその地域、の5 つを例として挙げることができる。
製品やサービスなどの商品を提供する企業にとって、「顧客」の存在がなければ経済活動が成立しない。また、「出資者」がいなければ、資金調達の選択肢が減り、企業の設立や運営に支障をきたす。「従業員」は、さまざまな事業活動を支えている。すべての生産活動を単独で実施する場合は別だが、「取引先」がいなければ、材料の仕入れができない。例えば通信販売事業を行う企業なら、商品の仕入れが滞り、経済活動を行うことができない。企業は「社会」を構成する要素であり、納税や社会貢献により、存在価値が認められる。
企業はステークホルダーとのコミュニケーションによる相互理解に支えられ、経済活動を行っている。

企業のコミュニケーション

企業が行うコミュニケーションは、情報の受信者や発信する情報により区分できる。企業としての理念をステークホルダーに明確に伝達し、企業の姿勢に対する理解を促すために、CI(Corporate Identity)に関するコミュニケーションを実施する。CI は、MI(Mind Identity:理念の統一)、BI(Behavior Identity:行動の統一)、VI(Visual Identity:視覚の統一)から形成され、シンボルマークやカラー、ロゴタイプなどの視覚的なデザインの統一のみを意味するものではない。

生活者(顧客)

「要求を捉え、需要のある商品を開発する」「ダイレクトメールを送付する」「セールスを行う」「商品の購入意思を明示してもらう」「商品を配送する」「商品購入後の意見を聞く」など、多種にわたるコミュニケーションが、企業と生活者の間には発生する。
「収益」を得ることが一つの目的となるので、「顧客」の獲得による売り上げの拡大が重要な課題となる。企業はコミュニケーションにより、単なる「生活者」から「顧客」へと育成を行い、さらに「固定客(リピーター)」になるよう、「マーケティング」などさまざまな施策を講じる。「マーケティング」では、「生活者」が商品を購入したいと感じられる仕組みづくりが目的の一つとなり、昨今では企業と「生活者」によるさまざまな体験を通じた中長期的な関係構築を実現する共創的な取り組みが注目されている。

従業員

「従業員」には、企業の活動目的や戦略の理解を促すことや、業務の指示や報告、会議などによるコミュニケーションが発生する。
コミュニケーションを通じた組織運営は、企業の成長を支える「経営(マネジメント)」により実現する。企業は従業員と目的や価値観などの共有を図るため、イントラネットや社内報により「形式知」や「暗黙知」といったKM(Knowledge Management)を含めた情報発信を行う。また、特定の目的を達成するための組織である「プロジェクト」を運営する「プロジェクトマネジメント」も含まれる。

出資者(株主)

「出資者」とのコミュニケーションは、IR(Investor Relations)と呼ばれ、企業にとって重要な活動の一つとなる。企業の財務状況や事業計画などのディスクロージャー(情報開示)により、株主の企業に対する正しい評価を醸成する。また、適切なIR により、「説明責任」を果たし、有利な資金調達を目指す。

取引先

取引先とのコミュニケーションは、企業が属する業界によりさまざまなものが存在する。SCM(Supply Chain Management)は、取引先を視野に入れたコミュニケーションの代表的なものとなる。

社会

「社会」とのコミュニケーションとして代表的なものは、PR(Public Relations)や社会貢献活動などが挙げられる。企業は社会から理解や信頼を得るため、PRによるコミュニケーションを図る。プレスリリースの発信や、記者会見などの実施がこれに当たる。企業は存立基盤である地域社会の健全な発展を支える、環境や教育、文化などの多方面にわたる貢献活動として、「コーポレートシチズンシップ」といったコミュニケーションを実施する。文化、芸術活動を支援する「メセナ」、社会的な公益活動全般を指す「フィランソロピー」などがある。

コミュニケーションの目的とメディア

企業におけるコミュニケーションの構成要素は、受信者で大別され、メディアも複数存在する。テレビや雑誌などのマスメディアによるコミュニケーションや、屋外広告やパンフレットなどのSP(Sales Promotion)メディアによるコミュニケーション、電話や手紙といったパーソナルメディアによるコミュニケーションのほか、さまざまなメディアの特性を網羅するインターネットメディアなど、企業におけるコミュニケーションでは、目的や状況に合わせ特性を踏まえたメディアによるコミュニケーションが求められる。
紙や立体物、デジタルなど、さまざまな形状やサイズ、素材のメディアが存在し、活字や画像、音声、映像などと、表現方法も複数存在する。情報の受信者となるステークホルダーとの効果的で効率的なコミュニケーションの実現には、専門領域に捉われないメディアコーディネート能力が求められる。
コーディネートにはメディアプランニングの一環として、「認知度を高めるため幅広く情報を伝達する」「興味を高めるため詳細な情報を伝達する」「求める行動を促すため特典に関する情報を伝達する」など、情報内容に合わせ、適切なメディア選択が不可欠になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年6月号より転載

【クロスメディアキーワード】企業とメディア

高度情報化社会が到来し、経営戦略の要が「改善」から「革新」へと変化し始め、効果的かつ効率的な情報の受発信が重要視される。経営戦略におけるメディアは、顧客だけではなく投資家も含めたさまざまなステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーションを支える企業価値の源泉となっている。企業の理念や方向性、商品開発やステークホルダーに対する意識などを伝達することで、事実の正確な認識と理解を社会に対し促す活動が必要とされている。

企業のコミュニケーション

企業の経済活動による目的達成には、明瞭かつ迅速なコミュニケーションが重要となる。
経営戦略は、事業戦略や商品戦略、財務戦略、人材戦略などを足したものだけではなく、経営戦略の下にそれぞれが有機的に統合されていることが望まれる。
広報や宣伝、渉外などの統合的な管理運営には、近年の経済情勢による資源的制約の厳しさの中で、IT(Information Technology)の発展によるインタラクティブメディアの普及、さらに発言力を持つステークホルダーの拡大などを伴う。しかし、明確な戦略に従う組織の横断的な連携によるコミュニケーションをステークホルダーと図る企業は着実に増えている。

企業とメディア

生活者向けのペーパーメディアであれば、チラシやカタログ、新聞広告、ダイレクトメールなどへの展開が、販売戦略を支える。例えばチラシを発行する場合、配布エリアによって生活者の属性は異なり、発行する時期によって商品に対する需要が変化するため、さまざまな対応が迫られる。
「商品が欲しい」と潜在的に思っている生活者が、紙面を手に取り、商品を購入するためには、過去のメディア展開実績や市場の動向など、さまざまな角度からの分析が必要となる。その分析結果から導き出した仮説を基に、配布する時期や掲載する商品の構成、エリアにより配布するチラシの種別を決定する。ここで立案される戦略は、企業の収益に影響を与えるため、何度も検証を繰り返し、最も効率的かつ効果的な展開を目指して取り組むことが望まれる。また、メディアを使用するキャンペーンでは、各メディアを横串でつないで取り組む施策が取られることもある。
さまざまなメディアが相乗効果を発揮するためには、キャンペーンの骨格が重要であり、組織の横断的な連携が必要なこともある。

生活者の購買行動

生活者を取り巻く環境は、IT の発展とメディアの多様化により、情報過多の傾向にあるといえる。生活者が受動的だけでなく能動的に情報を入手する中、商品の差別化が困難な状況を企業は迎えている。1920 年代にローランド・ホールが提唱した「AIDMA」に見られる生活者の購買決定に至る心理プロセスでは、「注意(Attention)」「関心(Interest)」「欲求(Desire)」「記憶(Memory)」「行動(Action)」といった効果階層による分類をたどる生活者の購買行動が一般的だった。
インターネットの普及により、昨今の心理プロセスの変化を捉え、「検索(Search)」「共有(Share)」を考慮した電通の登録商標である「AISAS」モデルや、ソーシャルメディアを念頭に入れ「比較(Comparison)」「検討(Examination)」を押さえた「AISCEAS」モデル、「共感する(Sympathize)」「確認する(Identify)」「参加する(Participate)」「共有・拡散する(Share &Spread)」により構成される「SIPS」モデルなどが登場した。生活者の心理プロセスを捉えた企業による情報発信には、ストーリー性が不可欠となっている。その中で、販売戦略を包含するマーケティング戦略の一つとして、クロスメディアが一般化している。

クロスメディア

クロスメディアとは、文字や画像、音響、映像などさまざまな表現を用いた、複数メディアによる複合的な情報発信手法を指す。「多様なメディアを駆使し、効果的な情報伝達を行う」といった意味を含む。また、クロスメディアと混同される傾向があるメディアミックスは、ターゲットとなる生活者へ情報を到達させるためのメディア配分を重視する手法を指す。
メディアミックスがメディアの足し算による情報発信であることに対し、クロスメディアは掛け算によるメディアの相乗効果を利用する手法である。クロスメディアにより、ターゲットとなる生活者だけではなく、投資家も含めたさまざまなステークホルダーを動かすためのシナリオ(導線)づくりが実現できる。

メディアコーディネート能力

企業のメディアによるコミュニケーションをコーディネートできる人材は、さまざまなビジネスシーンで求められている。求められる人材には、複数のメディアに関する知識や技術を継続的に学習する姿勢と経験が必要になる。
コミュニケーションを目的とした情報の受発信では、対象や内容、時期、場所などの明示が不可欠である。また、メディアが混在する今日では、メディア特性の理解や取り扱いに関する経験の重要性が高くなる。
メディアに関するサービスが散在する中、関連する知識や技術を習得するには、大きな困難を伴う。しかし知識や技術を習得する方法は無数に存在し、習得から距離を置くことは、高度情報化社会から自身を乖離させてしまう恐れがある。
企業は、多くのステークホルダーとの関係性を視野に入れた、メディアによるコミュニケーションを重要視している。度重なるコミュニケーションにより有効な関係が構築できれば、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上も期待できる。コミュニケーション手段としてさまざまなメディアを活用するのであれば、効果的なコンテンツ(クリエイティブ戦略)やメディア戦略が必要となり、幅広い知識や技術の習得が不可欠となる。
クロスメディアの採用は、さまざまな専門家との連携が欠かせない。そのためメディアのコーディネーターとして、複数のメディアによる効果的な情報発信をコントロールする上では、進行管理能力も重要である。したがって、プロジェクトマネジメントなどコミュニケーションに関する知識や技術の習得も必要である。
IT によるメディアの発展と変化は、際限なく続くことが予想される。メディアのコーディネーターを目指すには、これまでの経験に加え、新しい知識や技術を体系化し、見直しを改めて行う積み重ねが大きな力となる。さらに、少なくとも2〜3 年以上先を見据えたメディアに対する見識も求められる。また、クリエイティブに主眼を置くだけではなく、課題を明確にした上で目的を定め、それを達成することが大切である。企業のメディア活用には、リスクの検証も必要であり、社会の動向をマクロ的視点で捉え、ミクロ的視点で需要や課題を捉える能力が重要となる。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年5月号より転載

【クロスメディアキーワード】HTML5とCSS3

今後のWeb コンテンツの方向性を示す規格であるHTML5 とCSS3 について、その技術の特徴と歴史的背景を確認する。

HTML5 登場の背景

「HTML(HyperText Markup Language)」は、標準化団体「W3C(World Wide Web Consortium)」により策定された、Web ページを記述するためのマークアップ言語である。「HTML5」は、1999 年に勧告となった「HTML4.01」の大幅な改定版であり、「XML(Extensible Markup Language)」の文法で記述する場合は、「XHTML5(Extensible HyperText Markup Language 5)」と呼ばれることもある。
「HTML5」では、文書のマークアップの改善とWebアプリケーションへの応用に向けた対応が図られている。
第一には、マルチメディアに関する仕様が追加されている。第二には、セマンティックWeb の実現を図るため、Web ページのスタイル(視覚的な表現)に関する幾つかのタグが削除され、「CSS(Cascading Style Sheet)」による集中的なスタイル記述といった仕様になっている。

対応Web ブラウザー

「HTML5」は2014 年に勧告となる見通しではあるが、2008 年以降に発表された主要なWeb ブラウザー(Internet Explorer、Firefox、Safari、Chrome、Opera など)は、「HTML5」に段階的に対応している。
「HTML5」対応のWeb ブラウザーは、後方互換性を保つために、既にWeb で公開されている「旧バージョン対応」や「誤った文法」で記述されたWeb ページに対し、一貫したふるまいで動作するように規定している。
これは、主要なWeb ブラウザーやWeb オーサリングツールによる「HTML5」への対応が、勧告時点で実現した場合でも、既に公開されている膨大なWebページの対応が、極めて長期間に渡ることが予想され、それを考慮した結果である。
「HTML5」では、プロプライエタリー(ソフトウェアの使用、改変、複製を法的かつ技術的な手法で制限)なプラグインとして提供されている「RIA(Rich Internet Applications)」のプラットフォーム(JavaFX、Adobe Flash、Silverlight など)と代替することを標榜しており、Web アプリケーションに対するプラットフォームとしての機能や、マルチメディア要素が追加されている。

HTML5 における変更点

「HTML5」における主な変更点は、次のとおりである。
・文書構造の表現を充実
・文書構造とスタイルを分離
・マルチメディアの実現(プロプライエタリーなプラグインを代替)
・使用されていなかった要素の廃止
文書構造の表現の充実を目的に、「header(ナビゲーションのグループ化)」「hgroup(セクションのヘッダー)」「section(セクション)」「footer(セクションのフッター)」「nav(ナビゲーションとなるセクション)」などの要素が追加される。この要素は、「EPUB」のようなhtml の応用分野において、重要なマークアップになることが予想される。
一方、文書構造とスタイルを分離するために、「basefont(基本フォント)」「center(中央揃え)」「font(フォント)」「strike(打ち消し線)」「frame(フレーム)」などの要素が削除され、CSSで集中的にコンテンツを表現する。マルチメディアを実現するために、「audio(オーディオの再生)」「video(ビデオの再生)」「canvas(グラフィックスの描画)」などといった要素が追加される。これらの要素により、「API(Application Programming Interface)」を介すことで、動作が可能となる。

CSS3

「CSS」は、文書構造とスタイルを分離するため、「HTML」や「XML」の要素に対してスタイル(フォント、色、文字間など)を指定する規格である。「HTML」の規格と同様に「W3C」により策定されている。
「CSS3(Cascading Style Sheets, level 3)」の仕様はドラフト段階であるが、「HTML5」と同様に、対応したWeb ブラウザーが既に普及している。
「CSS3」の仕様策定では、セレクター、テキスト、カラー、ボックスモデル、バックグランド、ボーダーなどの各仕様がモジュール単位になっている。モジュールごとに承認されるといった期待により、Web ブラウザー開発者には、モジュールごとに段階的に対応していく余裕が与えられている。

CSS3 における追加機能

「CSS3」における主な変更点は、次のとおりである。
・「XPath」のように文書構造を指定できるセレクター
・テキストのハイフネーション、空白文字、揃えについての指定
・カーニングの効果とドロップキャップの揃えについての指定
・ヘッダー、フッター、ページ番号、脚注、相互参照についての指定
・複数コラム(段組み)のレイアウトについての指定
・日本語表示のルビ(横書き、縦書き)
セレクターでは、「XPath(XML Path Language)」のような表現で属性の値を指定し、その要素の内容表示を変更できることから、文書構造とスタイルの分離を可能にしている。ただし、内容の文字列を指定することはできない。指定する場合は、HTML により記述されたコンテンツデータに対する「XSL(Extensible Stylesheet Language)」変換やスクリプトとの組み合わせによる対応が必要となる。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年4月号より転載

【クロスメディアキーワード】消費者購買行動に関するモデルの変化

インターネットの普及とIT(Information Technology)の発展により、消費者の購買行動は変化をしている。商品やサービスの購入について、消費者の行動を段階的に分類する効果階層モデルは、心理学を経営学分野へ応用する初期事例の一つである。

AIDMA(アイドマ)

「AIDMA」はアメリカのサミュエル・ローランド・ホールにより提唱され、消費者が商品やサービスを認知してから購買に至るまでの心理を段階的に分類したモデルの一つである。

1. Attention(注意)
2. Interest(関心)
3. Desire(欲求)
4. Memory(記憶)※
5. Action(行動)
※ Motive(動機)とする説もある

消費者は、商品やサービスを購入する際、上記5 つのプロセスを経る。購買決定に至るプロセスを分類することで、見込み顧客がどの段階にあるかを見極めることが可能となり、マーケティング担当者は、見込み顧客の状態に応じたコミュニケーション戦略を実施することができるようになる。

Web サイトへの応用:Attention(注意)

商品やサービスに関心を持つ見込み顧客を効率よく関連のWebサイトに誘導することが、「Attention」の効果階層に対する施策となる。リスティング広告やブログ、SNS(Social Networking Service)による誘導コンテンツ導入のほか、ダイレクトメールやチラシなどのペーパーメディアに対する2 次元コード掲載に、テレビ放送やラジオ放送でのCM による誘導など、さまざまなメディアからWeb サイトへの誘導方法として期待ができる。リスティング広告の利用では、検索結果ページ上に同様の商品やサービスに関する広告が表示される。そのため、表示順位だけではなく、検索するキーワードに対し、結果として表示される内容についても、Web サイトへ誘導する要因の一つとなる。

Web サイトへの応用:Interest(関心)

見込み顧客を誘引し、興味をそらさないようにする展開は、「Interest」の効果階層に対する施策となる。Web サイトに訪問した見込み顧客は、瞬時にそのWebサイトでコンテンツを閲覧するかしないかを無意識に判断する傾向がある。Web サイトのトップページやランディングページには、閲覧者が興味を持つコンテンツ(ギミックや価値のある文章)を用意することが重要である。また、ユーザビリティーを考慮したインターフェイスデザインや、適切なインフォメーションアーキテクチャーなども、広い意味で「Interest」を誘う要因であると考えられる。

Web サイトへの応用:Desire(欲求)

見込み顧客の購入意欲を高揚させる展開は、「Desire」の効果階層に対する施策となる。製品紹介のコンテンツでは、機能や効用の詳細情報のほか、購入した際のベネフィット(期間限定の特別価格、短納期、長期保証、アクセサリーの無料進呈など)を掲載することが、購買意欲を高める一つの施策として効果が期待できる。

Web サイトへの応用:Memory(記憶)

Web サイトにより、見込み顧客が商品やサービスの詳細を記憶することが購買意欲の促進となり、「Memory」の効果階層に対する施策となる。記憶を維持するためには、定期的な見込客に対するアプローチが必要となる。アプローチ方法としては、メールマガジンの送付や、誕生月のクーポン送付などがある。
また、商品やサービスに関するコンテンツの更新を頻繁に行うことで、見込客が「常に新しい情報を提供しているWeb サイト」といった印象を残すことも、記憶維持を支える一つの施策として期待できる。さらに、Web ブラウザーの「ブックマーク(お気に入り)」への登録を促すほか、RSS を利用し「価格変動情報」や「ベネフィットに関する情報」などを効果的に配信することは、「Memory」以外の効果階層に対する施策としても効果が期待できる。

Web サイトへの応用:Action(行動)

見込み顧客に対し、購買を促す最後の展開が、「Action」効果階層に対する施策となる。「会員割引制度」や「ポイント付与」などのほか、「フラッシュマーケティング」の活用が、購買意欲を高める一つの施策として効果が期待できる。

AIDA(アイーダ、アイダ)

「AIDMA」から「Memory」を除いたAIDA モデルには、広告を中心としたマーケティングやセールス活動へのモデルとして、米国で普及している。偶発的にWebサイトへ訪問した見込み顧客に対し購買を促すECサイトの場合は、AIDAモデルを重視することもある。

その他のモデル

インターネットの普及により提唱された効果階層モデルとして、「AISAS」や「AISCEAS」なども存在する。「AIDMA」の「Desire」と「Memory」を除き、「Search(検索)」「Comparison(比較)」「Examination(検討)」が入り、「Action」の後に「Share(情報共有)」の効果階層が追加され、利用されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年3月号より転載

【クロスメディアキーワード】ソーシャルネットワーキングサービス

SNS(Social Networking Service)は、インターネット上のコミュニケーションツールとして普及し、非常に多くの会員(利用者)を有している。情報の伝達力は、マスメディアに匹敵するほどのメディアとなり、媒体価値を高く評価されるようになり、さまざまな事業を考える上で欠かせないツールとなった。

SNS の歴史

利用者を限定したコミュニティー型情報サービスは、1980 年代のニューメディアといった言葉が使われていた頃から存在していたが、IT(InformationTechnology)の発展により、パソコン通信からインターネット上へと移行した。日本では、ケータイの普及に伴い、ケータイSNS も発展した。
パソコン通信により利用されていた掲示板(BBS:Bulletin Board System)のようなオープンサービスでは、情報発信者の意図とは別に非難や批判が殺到する「炎上」につながる事象もあり、継続的に発展するコミュニケーションの妨げとなることも多かった。その後、情報発信者が、他者によるレスポンス情報の公開をコントロールできる「ブログアプリケーション」のような機能を実現することで、コンテンツの質もコントロールできるようになった。当初のブログは、専門知識を有する人物の情報発信を中心に、アメリカで使用されていた。しかしながら日本では、個人的な日記を公開するために使用され始め、関係者同士のコミュニケーションツールとして急速に発達した。
ブログの目的は、インタラクティブコミュニケーションではなかったことから、閲覧者の管理もコントロールできるツールとして、SNS は登場した。

利用方法の変化

このような背景の中、Facebook は実名登録を原則とし、登録者からの招待がない限り、利用することができなかった。Facebook は大学内の利用から始まり、パーティーに参加することで、面識のない人物との出会いや友人の紹介など、個人から集団へ向けた利用に関する機能を拡張することで、若者の間から定着した。
日本のmixiでは、大学のゼミやサークルなどで、交流のために多く利用された。その後、多くのSNSは登録制となり、次第に招待が無い場合でも登録可能なサービスとなった。登録制になってからもSNSの特徴は保たれ、発信した情報に対し誹謗中傷をされにくく、不快感や不安感の少ないコミュニケーションツールとして普及している。匿名でのレスポンス情報発信が可能であった掲示板とは異なり、SNS は安心と信頼ができる要素が向上したコミュニケーションツールであると考えられる。

SNS とマーケティング

Web クローリング技術を活用することで、ソーシャルメディア上で人々が日常的に交わしている情報や行動に関するデータを収集し、調査や分析を行うことで業界動向把握やトレンド予測、組織、ブランド、製品またはサービスなどに関する評価や評判の理解を深め改善に生かす「ソーシャルリスニング」活動も行われており、重要視される傾向がある。また、SNSは同様な嗜好を持つ人々の集団と捉えることが可能であり、マーケティングの観点から、「口コミ」効果を期待したマーケティング戦略ツールとしての利用が盛んになっている。そのため、SNSを利用する人々の相関関係をマーケティングデータとして活用するために、「ソーシャルグラフ」といった概念が生まれた。
「ソーシャルグラフ」へのアプローチは、生活者の嗜好が多様化し、大きなセグメントに対する傾向分析では、需要の発見や対応が難しくなってきた社会環境によるところが大きい。経済が成熟した環境では、消費者行動は多様化する傾向がある。マスメディアによる品質や価格の訴求だけでは購買意欲の刺激が難しくなっている現状も、「ソーシャルグラフ」に寄せられる期待感を後押ししている。
「ソーシャルグラフ」での話題は、消費行動に影響を与える可能性が高い。知人からの「口コミ」情報は、マスメディアからの情報と比較した場合、倍近く信頼するといった発表もあった。小さなセグメントを対象とするマーケティング戦略には、「ソーシャルグラフ」の活用が重要視される傾向があり、緻密な生活者に対するマーケティング施策の重要性は、高まっていくと考えられる。企業によるマーケティング活動では、「多くの生活者から共感を得るようなメッセージやコンテンツ」だけではなく、「少数の嗜好を共にする集団で話題となるメッセージやコンテンツ」といった情報発信の重要性が増している。

SNS のビジネスモデル

一般的に大規模SNS は、広告収入で運用することで、生活者に無料でサービス提供されることが多い。利用目的を特定した、会費制SNSも存在するが、大規模であっても利用者の格付けを行い、SNS上でバーチャルグッズ売買が可能なプレミアム会員を有料とした、収益モデルの確立も行われている。
利用者にとって、安全性の高いSNSでは、ゲームやアプリケーション、写真などの共有について、信頼性を担保しつつ実現できるため、SNS内での課金サービスについても利用者は増えている。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年1月号より転載

【クロスメディアキーワード】競争戦略

企業の経営戦略は、事業拡大の方向性を示す「成長戦略」と、同一市場内での優位性を示す「競争戦略」などから構成される。

競争戦略

競争戦略は、事業戦略の一部であり、企業が活動している個別の事業分野が、他社との相対的な位置関係を有利にするための戦略である。さまざまなメディアを活用しステークホルダーに情報発信を行う際、競争戦略を考慮することで効果的にメッセージを伝えられる。ニッチ市場を対象に情報配信を行う場合、マスメディアにより広範囲に少量の情報を発信することは、効率が良いとはいえない。対象とする市場の特徴に戦略を立案し、展開(戦術)を考える必要がある。

マイケル・E・ポーター(Michael Eugene Porter)

マイケル・ポーターは、ファイブフォース分析やバリューチェーン分析の提唱者であり、競争戦略論の古典とされる「競争の戦略」の著者である。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、競争市場を規定する要因により、市場の分析を行うフレームワークである。ライバルの多い市場では、その市場で収益を得ることに困難を伴い、製品やサービスの購入者が限られる市場では、購入者の取引条件が強く影響する。ファイブフォース分析では、このような要因を5 つにまとめている。
①競争相手の地位や、「強み」や「弱み」を分析した「競争業者の状況」
②特定の買い手が大きな比率を占め集中している場合や、差別化されていない場合の「買い手の交渉力」
③製品やサービスを提供する上で不可欠な原材料やエネルギーなどの「供給業者の交渉力」
④代用の効く製品やサービスなどの有無による「代替品の脅威」
⑤規模の経済性や政策の有無による「新規参入の脅威」
5 つの要因により、市場への参入や撤退について、是非を判断するフレームワークである。市場の状況を知ることで、採用する戦略や戦術について判断を行う。
マイケル・E・ポーターが提唱した競争戦略では、競争相手に対する基本戦略として、①コストリーダーシップ戦略、②差別化戦略、③フォーカス戦略が挙げられる。

コストリーダーシップ戦略

経験曲線による概念が普及したことにより重視されてきたもので、競争相手より低い原価を達成することで、コスト面でのリーダーシップをとる戦略。市場占有率を高め、規模の経済を享受し、さらなるコストダウンを実現させる。この戦略の実現には、効率の良い設備導入や、厳しい原価管理や予算統制、研究開発や広告のための費用を最小限に抑える必要がある。投資や習熟が無駄になってしまうテクノロジーの登場や、製品やサービスのライフサイクルと付随するマーケティング戦略変更の時期を見失ってしまうリスクがある。

差別化戦略

製品やサービスに対し、「独自性」を持たせる戦略。「デザインや品質、機能不可などにより、製品やサービスに関わる特異性を出す」「広告やパッケージにより、社会的認知度の向上やイメージを高める」「販売チャネルやアフターサービスの体制で差をつける」といった政策が採用される。低コストを実現した業者と差別化を果たした業者の間の、コスト差の拡大によるブランドロイヤリティーの低下や、需要の落ち込みなどのリスクがある。

フォーカス戦略(焦点戦略、集中戦略、特化戦略)

市場細分化により、適合する一部のセグメントを対象に焦点を合わせ、コストや差別化の面で優位性を持つ戦略。コストリーダーシップ戦略や差別化戦略は、市場全体に渡る目的達成が狙いとなるが、フォーカス戦略では、競争範囲を特定のセグメントに絞り込むことで、コストリーダーシップや差別化、または、両者の目的を達成しようとする。セグメントの範囲は、顧客や用途、製品などが考えられる。セグメントに対する製品やサービスが、市場全体で需要が高まり差異がなくなることや、さらに、小さなセグメントに対しフォーカス戦略を行う業者との競合といったリスクがある。

バリューチェーン(価値連鎖)分析

戦略を策定する上で必要なことは、戦略の対象となる製品やサービスの「強み」や「価値」の存在である。バリューチェーンは、1985 年にマイケル・E・ポーターが提唱した分析フレームワークである。製品やサービスが顧客に届くまでの一連の事業活動について、事業が生み出す価値構造として体系化したものであり、「主活動」と「支援活動」から構成される。
「主活動」は、①購買物流、②製造、③出荷物流、④販売・マーケティング、⑤サービスといった5 つの活動からなり、製品やサービスを提供する際、直接的に関与する活動である。「支援活動」は、①全般管理(インフラストラクチャー)、②人事・労務管理、③技術開発、④調達の4 つの活動に区分され、製品やサービスの提供には直接的に関与しないものの、「主活動」の遂行に不可欠となる活動である。バリューチェーン分析は、川上から川下への事業活動を個々の活動単位に分割し、最終的に生み出される「価値」に対する貢献度を分析する中で、製品やサービスの「強み」や「弱み」を発見し、戦略の有効性や改善の方向を考察するフレームワークである。これは、経営戦略の策定にも活用が可能であるが、「コスト競争」や「差別化競争」を実行する時の事業戦略を検討する際にも利用ができる。

ほかの競争戦略

マイケル・E・ポーターの「競争の戦略論」は、「市場ポジショニング・ビュー」とも呼ばれ定説化されている傾向があるが、組織内部の経営資源に注目して経営戦略を立案していく考え方として、ジェイ・B・バーニーにより提唱されるVRIO フレームワーク、「RBV(リソース・ベースド・ビュー)」も注目されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年10月号より転載

【クロスメディアキーワード】メディアリテラシーとフィルタリング

メディアリテラシーの向上が求められる高度情報化社会において、未成年者の健全な育成を目的としたフィルタリングサービスが提供されている。

メディアリテラシー

メディアリテラシーとは、情報の受信者が主体的に内容を読み解き、メディアを活用する能力である。リテラシーとは読み書きに関する能力であるが、メディアの持つ様式にはメッセージ性があることから、マーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」と提言し、メディアリテラシーの重要性を喚起した。メディア特性を踏まえた、受信者の判断と活用が求められるようになったことに起因し、メディアリテラシーの重要性は増している。受信者は、メディアの多様化により、マスメディアのみならずミドルメディア(インターネット)やパーソナルメディアなど、さまざまなメディアから情報を取捨選択できる能力が必要である。受信者はマスメディアのような影響力のあるメディアで発信される情報においても、その情報の確実性を判断できるようになるべきである。情報の発信者はさまざまなメディアの特性を理解し、活用できる能力が求められ、受信者は主体的かつ批判的にメディアに接触する能力が求められる。

情報の信憑性

テレビ放送の情報は「正確」で「事実」であると判断することは、メディアリテラシーに欠けると考えられる。発信されている情報は、誰にどのように作られたかといった意図をくみ取る必要がある。広告表現においては利害関係や編集意図が介在し、必ずしも中立的な情報が発信されているとは限らない。しかしながら、メディアリテラシー向上の目的は、広告を否定するものではない。広告の役割や情報バイアス(偏り)を認識する必要がある。

メディア特性

情報化社会の進展により、パソコンやモバイル端末などのさまざまなメディアが生活者に普及することで、マーシャル・マクルーハンにとって想定外の事象が起きた。テレビや新聞、雑誌といった直感的に理解しやすいメディアから、インターネットに接続するさまざまなメディアの登場により、メディア特性を捉えることが難しくなった。
ブログとSNS(Social Networking Service)で見られるように、コンテンツの特性が異なっていても、共通点が多い技術やサービス名称でメディア特性を区分することは、本質的な意味を持たない。「メディア」と呼ばれるものが、すべて同質の「メディア」であるとは限らない。情報の受発信における特徴を考察し、メディアとしての役割や評価などの特性を熟考するべきである。
メディアリテラシーが向上することで、高度情報化社会を正確に捉え、充実したコミュニケーションを図るきっかけを得ることができる。ビデオカメラやインターネットを活用した市民チャンネルやインターネット放送が一般化し、情報の受信者が発信者でもあるような転換が起きている。

フィルタリングサービス

ケータイやスマートフォンなど、未成年者のモバイル端末利用の普及に伴い、コンテンツへの規制が求めらている。インターネット上には、犯罪につながる情報や、未成年者の健全な成長に有害な情報も存在している。ふさわしくない内容のコンテンツやコミュニティーサイトに対するアクセス制限である「フィルタリング」が行われている。
日本における「フィルタリング」は、総務省の要請で、移動体通信事業者が実施しているサービスである。利用者の設定により、有効か無効を切り替えることができる。一般的には、未成年者の保護者が設定を行い、未成年者に受け渡すこととなる。したがって、移動体通信事業者は、保護者に対し「フィルタリング」に関する意思の確認を行う。「フィルタリング」には、ホワイトリスト方式とブラックリスト方式の2 種類が存在する。

ブラックリスト方式

特定のカテゴリーに属するWeb コンテンツやWebサイトをリスト化し、アクセスを制限する方式である。一律的にWeb コンテンツやWeb サイトのカテゴリー分類を行うため、健全な運営を行っているWeb コンテンツやweb サイトにアクセスできない可能性がある。

ホワイトリスト方式

一定の基準を満たしたWeb コンテンツやWeb サイトのみをリスト化し、リストに入っていないWeb コンテンツやWeb サイトは、アクセスを制限する方式である。ホワイトリストへ指定できるものは、膨大な数が存在するWeb コンテンツやWeb サイトと比較すると、極々一部となってしまう。安全性については期待ができる反面、利便性が損なわれてしまう傾向がある。

フィルタリングの課題

「フィルタリング」は、Web コンテンツやWeb サイトごとに分類されており、フィルタリングソフト提供事業者が情報を収集し、移動体通信事業者へリストの提供を行っている。必ずしも内容詳細の解析を行った上で分類せず、特定語句による分類が行われている可能性があり、正確な「フィルタリング」が行われていない可能性が残っている。有用な情報を提供しているにも関わらず、アクセスが制限されてしまうこともあり、コンテンツ提供事業者から問題視されていることもある。

フィルタリングの動向

現在は、新規や既存を問わず、未成年が利用するモバイル端末契約者へ対する「フィルタリング」使用の原則化が完了した。今後は、更なる「フィルタリング」の普及促進がなされると同時に、機能のカスタマイズ化などの画一的な現行モデルの改善策の策定が進められている。一方、一部の地方自治体においては、未成年者に対するモバイル端末の「フィルタリング」を実質的に義務化する動きもある。

メディアリテラシーとフィルタリング

「フィルタリング」は、利用者の利便性が損なわれるだけでなく、メディアリテラシーの向上に対する阻害要因となる可能性を秘めている。未成年者も情報の選別ができるように、メディアリテラシーの向上に考慮した取り組みが必要になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年9月号より転載

産業構造の変化とキャリア開発

技術革新による産業構造の変化は、産業の原動力となる人の働き方と密接に関わっている。
現在私たちが向き合う高度ネットワーク社会は、自律的な最適化を背景にした労働力のパラダイムシフトを引き起こし、価値労働への移行が求められている。

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