クロスメディアエキスパート」カテゴリーアーカイブ

【クロスメディアキーワード】消費者購買行動に関するモデルの変化

インターネットの普及とIT(Information Technology)の発展により、消費者の購買行動は変化をしている。商品やサービスの購入について、消費者の行動を段階的に分類する効果階層モデルは、心理学を経営学分野へ応用する初期事例の一つである。

AIDMA(アイドマ)

「AIDMA」はアメリカのサミュエル・ローランド・ホールにより提唱され、消費者が商品やサービスを認知してから購買に至るまでの心理を段階的に分類したモデルの一つである。

1. Attention(注意)
2. Interest(関心)
3. Desire(欲求)
4. Memory(記憶)※
5. Action(行動)
※ Motive(動機)とする説もある

消費者は、商品やサービスを購入する際、上記5 つのプロセスを経る。購買決定に至るプロセスを分類することで、見込み顧客がどの段階にあるかを見極めることが可能となり、マーケティング担当者は、見込み顧客の状態に応じたコミュニケーション戦略を実施することができるようになる。

Web サイトへの応用:Attention(注意)

商品やサービスに関心を持つ見込み顧客を効率よく関連のWebサイトに誘導することが、「Attention」の効果階層に対する施策となる。リスティング広告やブログ、SNS(Social Networking Service)による誘導コンテンツ導入のほか、ダイレクトメールやチラシなどのペーパーメディアに対する2 次元コード掲載に、テレビ放送やラジオ放送でのCM による誘導など、さまざまなメディアからWeb サイトへの誘導方法として期待ができる。リスティング広告の利用では、検索結果ページ上に同様の商品やサービスに関する広告が表示される。そのため、表示順位だけではなく、検索するキーワードに対し、結果として表示される内容についても、Web サイトへ誘導する要因の一つとなる。

Web サイトへの応用:Interest(関心)

見込み顧客を誘引し、興味をそらさないようにする展開は、「Interest」の効果階層に対する施策となる。Web サイトに訪問した見込み顧客は、瞬時にそのWebサイトでコンテンツを閲覧するかしないかを無意識に判断する傾向がある。Web サイトのトップページやランディングページには、閲覧者が興味を持つコンテンツ(ギミックや価値のある文章)を用意することが重要である。また、ユーザビリティーを考慮したインターフェイスデザインや、適切なインフォメーションアーキテクチャーなども、広い意味で「Interest」を誘う要因であると考えられる。

Web サイトへの応用:Desire(欲求)

見込み顧客の購入意欲を高揚させる展開は、「Desire」の効果階層に対する施策となる。製品紹介のコンテンツでは、機能や効用の詳細情報のほか、購入した際のベネフィット(期間限定の特別価格、短納期、長期保証、アクセサリーの無料進呈など)を掲載することが、購買意欲を高める一つの施策として効果が期待できる。

Web サイトへの応用:Memory(記憶)

Web サイトにより、見込み顧客が商品やサービスの詳細を記憶することが購買意欲の促進となり、「Memory」の効果階層に対する施策となる。記憶を維持するためには、定期的な見込客に対するアプローチが必要となる。アプローチ方法としては、メールマガジンの送付や、誕生月のクーポン送付などがある。
また、商品やサービスに関するコンテンツの更新を頻繁に行うことで、見込客が「常に新しい情報を提供しているWeb サイト」といった印象を残すことも、記憶維持を支える一つの施策として期待できる。さらに、Web ブラウザーの「ブックマーク(お気に入り)」への登録を促すほか、RSS を利用し「価格変動情報」や「ベネフィットに関する情報」などを効果的に配信することは、「Memory」以外の効果階層に対する施策としても効果が期待できる。

Web サイトへの応用:Action(行動)

見込み顧客に対し、購買を促す最後の展開が、「Action」効果階層に対する施策となる。「会員割引制度」や「ポイント付与」などのほか、「フラッシュマーケティング」の活用が、購買意欲を高める一つの施策として効果が期待できる。

AIDA(アイーダ、アイダ)

「AIDMA」から「Memory」を除いたAIDA モデルには、広告を中心としたマーケティングやセールス活動へのモデルとして、米国で普及している。偶発的にWebサイトへ訪問した見込み顧客に対し購買を促すECサイトの場合は、AIDAモデルを重視することもある。

その他のモデル

インターネットの普及により提唱された効果階層モデルとして、「AISAS」や「AISCEAS」なども存在する。「AIDMA」の「Desire」と「Memory」を除き、「Search(検索)」「Comparison(比較)」「Examination(検討)」が入り、「Action」の後に「Share(情報共有)」の効果階層が追加され、利用されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年3月号より転載

【クロスメディアキーワード】ソーシャルネットワーキングサービス

SNS(Social Networking Service)は、インターネット上のコミュニケーションツールとして普及し、非常に多くの会員(利用者)を有している。情報の伝達力は、マスメディアに匹敵するほどのメディアとなり、媒体価値を高く評価されるようになり、さまざまな事業を考える上で欠かせないツールとなった。

SNS の歴史

利用者を限定したコミュニティー型情報サービスは、1980 年代のニューメディアといった言葉が使われていた頃から存在していたが、IT(InformationTechnology)の発展により、パソコン通信からインターネット上へと移行した。日本では、ケータイの普及に伴い、ケータイSNS も発展した。
パソコン通信により利用されていた掲示板(BBS:Bulletin Board System)のようなオープンサービスでは、情報発信者の意図とは別に非難や批判が殺到する「炎上」につながる事象もあり、継続的に発展するコミュニケーションの妨げとなることも多かった。その後、情報発信者が、他者によるレスポンス情報の公開をコントロールできる「ブログアプリケーション」のような機能を実現することで、コンテンツの質もコントロールできるようになった。当初のブログは、専門知識を有する人物の情報発信を中心に、アメリカで使用されていた。しかしながら日本では、個人的な日記を公開するために使用され始め、関係者同士のコミュニケーションツールとして急速に発達した。
ブログの目的は、インタラクティブコミュニケーションではなかったことから、閲覧者の管理もコントロールできるツールとして、SNS は登場した。

利用方法の変化

このような背景の中、Facebook は実名登録を原則とし、登録者からの招待がない限り、利用することができなかった。Facebook は大学内の利用から始まり、パーティーに参加することで、面識のない人物との出会いや友人の紹介など、個人から集団へ向けた利用に関する機能を拡張することで、若者の間から定着した。
日本のmixiでは、大学のゼミやサークルなどで、交流のために多く利用された。その後、多くのSNSは登録制となり、次第に招待が無い場合でも登録可能なサービスとなった。登録制になってからもSNSの特徴は保たれ、発信した情報に対し誹謗中傷をされにくく、不快感や不安感の少ないコミュニケーションツールとして普及している。匿名でのレスポンス情報発信が可能であった掲示板とは異なり、SNS は安心と信頼ができる要素が向上したコミュニケーションツールであると考えられる。

SNS とマーケティング

Web クローリング技術を活用することで、ソーシャルメディア上で人々が日常的に交わしている情報や行動に関するデータを収集し、調査や分析を行うことで業界動向把握やトレンド予測、組織、ブランド、製品またはサービスなどに関する評価や評判の理解を深め改善に生かす「ソーシャルリスニング」活動も行われており、重要視される傾向がある。また、SNSは同様な嗜好を持つ人々の集団と捉えることが可能であり、マーケティングの観点から、「口コミ」効果を期待したマーケティング戦略ツールとしての利用が盛んになっている。そのため、SNSを利用する人々の相関関係をマーケティングデータとして活用するために、「ソーシャルグラフ」といった概念が生まれた。
「ソーシャルグラフ」へのアプローチは、生活者の嗜好が多様化し、大きなセグメントに対する傾向分析では、需要の発見や対応が難しくなってきた社会環境によるところが大きい。経済が成熟した環境では、消費者行動は多様化する傾向がある。マスメディアによる品質や価格の訴求だけでは購買意欲の刺激が難しくなっている現状も、「ソーシャルグラフ」に寄せられる期待感を後押ししている。
「ソーシャルグラフ」での話題は、消費行動に影響を与える可能性が高い。知人からの「口コミ」情報は、マスメディアからの情報と比較した場合、倍近く信頼するといった発表もあった。小さなセグメントを対象とするマーケティング戦略には、「ソーシャルグラフ」の活用が重要視される傾向があり、緻密な生活者に対するマーケティング施策の重要性は、高まっていくと考えられる。企業によるマーケティング活動では、「多くの生活者から共感を得るようなメッセージやコンテンツ」だけではなく、「少数の嗜好を共にする集団で話題となるメッセージやコンテンツ」といった情報発信の重要性が増している。

SNS のビジネスモデル

一般的に大規模SNS は、広告収入で運用することで、生活者に無料でサービス提供されることが多い。利用目的を特定した、会費制SNSも存在するが、大規模であっても利用者の格付けを行い、SNS上でバーチャルグッズ売買が可能なプレミアム会員を有料とした、収益モデルの確立も行われている。
利用者にとって、安全性の高いSNSでは、ゲームやアプリケーション、写真などの共有について、信頼性を担保しつつ実現できるため、SNS内での課金サービスについても利用者は増えている。

JAGAT CS部
Jagat info 2014年1月号より転載

【クロスメディアキーワード】競争戦略

企業の経営戦略は、事業拡大の方向性を示す「成長戦略」と、同一市場内での優位性を示す「競争戦略」などから構成される。

競争戦略

競争戦略は、事業戦略の一部であり、企業が活動している個別の事業分野が、他社との相対的な位置関係を有利にするための戦略である。さまざまなメディアを活用しステークホルダーに情報発信を行う際、競争戦略を考慮することで効果的にメッセージを伝えられる。ニッチ市場を対象に情報配信を行う場合、マスメディアにより広範囲に少量の情報を発信することは、効率が良いとはいえない。対象とする市場の特徴に戦略を立案し、展開(戦術)を考える必要がある。

マイケル・E・ポーター(Michael Eugene Porter)

マイケル・ポーターは、ファイブフォース分析やバリューチェーン分析の提唱者であり、競争戦略論の古典とされる「競争の戦略」の著者である。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、競争市場を規定する要因により、市場の分析を行うフレームワークである。ライバルの多い市場では、その市場で収益を得ることに困難を伴い、製品やサービスの購入者が限られる市場では、購入者の取引条件が強く影響する。ファイブフォース分析では、このような要因を5 つにまとめている。
①競争相手の地位や、「強み」や「弱み」を分析した「競争業者の状況」
②特定の買い手が大きな比率を占め集中している場合や、差別化されていない場合の「買い手の交渉力」
③製品やサービスを提供する上で不可欠な原材料やエネルギーなどの「供給業者の交渉力」
④代用の効く製品やサービスなどの有無による「代替品の脅威」
⑤規模の経済性や政策の有無による「新規参入の脅威」
5 つの要因により、市場への参入や撤退について、是非を判断するフレームワークである。市場の状況を知ることで、採用する戦略や戦術について判断を行う。
マイケル・E・ポーターが提唱した競争戦略では、競争相手に対する基本戦略として、①コストリーダーシップ戦略、②差別化戦略、③フォーカス戦略が挙げられる。

コストリーダーシップ戦略

経験曲線による概念が普及したことにより重視されてきたもので、競争相手より低い原価を達成することで、コスト面でのリーダーシップをとる戦略。市場占有率を高め、規模の経済を享受し、さらなるコストダウンを実現させる。この戦略の実現には、効率の良い設備導入や、厳しい原価管理や予算統制、研究開発や広告のための費用を最小限に抑える必要がある。投資や習熟が無駄になってしまうテクノロジーの登場や、製品やサービスのライフサイクルと付随するマーケティング戦略変更の時期を見失ってしまうリスクがある。

差別化戦略

製品やサービスに対し、「独自性」を持たせる戦略。「デザインや品質、機能不可などにより、製品やサービスに関わる特異性を出す」「広告やパッケージにより、社会的認知度の向上やイメージを高める」「販売チャネルやアフターサービスの体制で差をつける」といった政策が採用される。低コストを実現した業者と差別化を果たした業者の間の、コスト差の拡大によるブランドロイヤリティーの低下や、需要の落ち込みなどのリスクがある。

フォーカス戦略(焦点戦略、集中戦略、特化戦略)

市場細分化により、適合する一部のセグメントを対象に焦点を合わせ、コストや差別化の面で優位性を持つ戦略。コストリーダーシップ戦略や差別化戦略は、市場全体に渡る目的達成が狙いとなるが、フォーカス戦略では、競争範囲を特定のセグメントに絞り込むことで、コストリーダーシップや差別化、または、両者の目的を達成しようとする。セグメントの範囲は、顧客や用途、製品などが考えられる。セグメントに対する製品やサービスが、市場全体で需要が高まり差異がなくなることや、さらに、小さなセグメントに対しフォーカス戦略を行う業者との競合といったリスクがある。

バリューチェーン(価値連鎖)分析

戦略を策定する上で必要なことは、戦略の対象となる製品やサービスの「強み」や「価値」の存在である。バリューチェーンは、1985 年にマイケル・E・ポーターが提唱した分析フレームワークである。製品やサービスが顧客に届くまでの一連の事業活動について、事業が生み出す価値構造として体系化したものであり、「主活動」と「支援活動」から構成される。
「主活動」は、①購買物流、②製造、③出荷物流、④販売・マーケティング、⑤サービスといった5 つの活動からなり、製品やサービスを提供する際、直接的に関与する活動である。「支援活動」は、①全般管理(インフラストラクチャー)、②人事・労務管理、③技術開発、④調達の4 つの活動に区分され、製品やサービスの提供には直接的に関与しないものの、「主活動」の遂行に不可欠となる活動である。バリューチェーン分析は、川上から川下への事業活動を個々の活動単位に分割し、最終的に生み出される「価値」に対する貢献度を分析する中で、製品やサービスの「強み」や「弱み」を発見し、戦略の有効性や改善の方向を考察するフレームワークである。これは、経営戦略の策定にも活用が可能であるが、「コスト競争」や「差別化競争」を実行する時の事業戦略を検討する際にも利用ができる。

ほかの競争戦略

マイケル・E・ポーターの「競争の戦略論」は、「市場ポジショニング・ビュー」とも呼ばれ定説化されている傾向があるが、組織内部の経営資源に注目して経営戦略を立案していく考え方として、ジェイ・B・バーニーにより提唱されるVRIO フレームワーク、「RBV(リソース・ベースド・ビュー)」も注目されている。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年10月号より転載

【クロスメディアキーワード】メディアリテラシーとフィルタリング

メディアリテラシーの向上が求められる高度情報化社会において、未成年者の健全な育成を目的としたフィルタリングサービスが提供されている。

メディアリテラシー

メディアリテラシーとは、情報の受信者が主体的に内容を読み解き、メディアを活用する能力である。リテラシーとは読み書きに関する能力であるが、メディアの持つ様式にはメッセージ性があることから、マーシャル・マクルーハンは「メディアはメッセージである」と提言し、メディアリテラシーの重要性を喚起した。メディア特性を踏まえた、受信者の判断と活用が求められるようになったことに起因し、メディアリテラシーの重要性は増している。受信者は、メディアの多様化により、マスメディアのみならずミドルメディア(インターネット)やパーソナルメディアなど、さまざまなメディアから情報を取捨選択できる能力が必要である。受信者はマスメディアのような影響力のあるメディアで発信される情報においても、その情報の確実性を判断できるようになるべきである。情報の発信者はさまざまなメディアの特性を理解し、活用できる能力が求められ、受信者は主体的かつ批判的にメディアに接触する能力が求められる。

情報の信憑性

テレビ放送の情報は「正確」で「事実」であると判断することは、メディアリテラシーに欠けると考えられる。発信されている情報は、誰にどのように作られたかといった意図をくみ取る必要がある。広告表現においては利害関係や編集意図が介在し、必ずしも中立的な情報が発信されているとは限らない。しかしながら、メディアリテラシー向上の目的は、広告を否定するものではない。広告の役割や情報バイアス(偏り)を認識する必要がある。

メディア特性

情報化社会の進展により、パソコンやモバイル端末などのさまざまなメディアが生活者に普及することで、マーシャル・マクルーハンにとって想定外の事象が起きた。テレビや新聞、雑誌といった直感的に理解しやすいメディアから、インターネットに接続するさまざまなメディアの登場により、メディア特性を捉えることが難しくなった。
ブログとSNS(Social Networking Service)で見られるように、コンテンツの特性が異なっていても、共通点が多い技術やサービス名称でメディア特性を区分することは、本質的な意味を持たない。「メディア」と呼ばれるものが、すべて同質の「メディア」であるとは限らない。情報の受発信における特徴を考察し、メディアとしての役割や評価などの特性を熟考するべきである。
メディアリテラシーが向上することで、高度情報化社会を正確に捉え、充実したコミュニケーションを図るきっかけを得ることができる。ビデオカメラやインターネットを活用した市民チャンネルやインターネット放送が一般化し、情報の受信者が発信者でもあるような転換が起きている。

フィルタリングサービス

ケータイやスマートフォンなど、未成年者のモバイル端末利用の普及に伴い、コンテンツへの規制が求めらている。インターネット上には、犯罪につながる情報や、未成年者の健全な成長に有害な情報も存在している。ふさわしくない内容のコンテンツやコミュニティーサイトに対するアクセス制限である「フィルタリング」が行われている。
日本における「フィルタリング」は、総務省の要請で、移動体通信事業者が実施しているサービスである。利用者の設定により、有効か無効を切り替えることができる。一般的には、未成年者の保護者が設定を行い、未成年者に受け渡すこととなる。したがって、移動体通信事業者は、保護者に対し「フィルタリング」に関する意思の確認を行う。「フィルタリング」には、ホワイトリスト方式とブラックリスト方式の2 種類が存在する。

ブラックリスト方式

特定のカテゴリーに属するWeb コンテンツやWebサイトをリスト化し、アクセスを制限する方式である。一律的にWeb コンテンツやWeb サイトのカテゴリー分類を行うため、健全な運営を行っているWeb コンテンツやweb サイトにアクセスできない可能性がある。

ホワイトリスト方式

一定の基準を満たしたWeb コンテンツやWeb サイトのみをリスト化し、リストに入っていないWeb コンテンツやWeb サイトは、アクセスを制限する方式である。ホワイトリストへ指定できるものは、膨大な数が存在するWeb コンテンツやWeb サイトと比較すると、極々一部となってしまう。安全性については期待ができる反面、利便性が損なわれてしまう傾向がある。

フィルタリングの課題

「フィルタリング」は、Web コンテンツやWeb サイトごとに分類されており、フィルタリングソフト提供事業者が情報を収集し、移動体通信事業者へリストの提供を行っている。必ずしも内容詳細の解析を行った上で分類せず、特定語句による分類が行われている可能性があり、正確な「フィルタリング」が行われていない可能性が残っている。有用な情報を提供しているにも関わらず、アクセスが制限されてしまうこともあり、コンテンツ提供事業者から問題視されていることもある。

フィルタリングの動向

現在は、新規や既存を問わず、未成年が利用するモバイル端末契約者へ対する「フィルタリング」使用の原則化が完了した。今後は、更なる「フィルタリング」の普及促進がなされると同時に、機能のカスタマイズ化などの画一的な現行モデルの改善策の策定が進められている。一方、一部の地方自治体においては、未成年者に対するモバイル端末の「フィルタリング」を実質的に義務化する動きもある。

メディアリテラシーとフィルタリング

「フィルタリング」は、利用者の利便性が損なわれるだけでなく、メディアリテラシーの向上に対する阻害要因となる可能性を秘めている。未成年者も情報の選別ができるように、メディアリテラシーの向上に考慮した取り組みが必要になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年9月号より転載

産業構造の変化とキャリア開発

技術革新による産業構造の変化は、産業の原動力となる人の働き方と密接に関わっている。
現在私たちが向き合う高度ネットワーク社会は、自律的な最適化を背景にした労働力のパラダイムシフトを引き起こし、価値労働への移行が求められている。

続きを読む

【クロスメディアキーワード】クロスメディアとワンソースマルチユース

クロスメディアとは、ある情報について文字や音響、映像などのさまざまな素材と、プリントメディアやデジタルメディアといった複数のメディアを用い、効果的な情報伝達を行う手法である。
複数メディアの利用については、生活者のメディア導線を予測したシナリオにより、メディアごとに適したコンテンツを用意し情報発信を行う。
メディア利用の概念については、「ワンソースマルチユース」や「マルチメディア」「メディアミックス」など、「クロスメディア」と似たさまざまなものがある。

ワンソースマルチユース

ワンソースマルチユースとは、基となる印刷用データやWebサイト用データなどから、異なるメディアへコンテンツ展開を行う概念である。「マルチ(multi:複数の)」の意味としては、利用するメディアの数や、コンテンツの再利用回数といった解釈も可能であり、ワンソースマルチユースにより、コンテンツの制作効率を高めるといった意味を持ち合わせている。
印刷用に加工されたデータを利用し、ほかのメディアへ展開を行うにはデータの再加工が必要となる。ワンソースマルチユースを実現するために、印刷用データに含まれる寸法や書体指定のような情報は付加せず、ほかの印刷系メディアやWeb 系メディア向けといった複数の出力を想定したデータ作成が求められる。
マルチユースは、「データベースパブリッシング」の考え方と密接な関係がある。データベースパブリッシングは、リレーショナルデータベースを用い、条件に応じて自動レイアウトを行うシステムである。フォーマットがある程度定型化されている大型のカタログやパンフレットなどの制作には欠かせないものであり、データベースに蓄積されたデータの活用は、当初のメディアに対するコンテンツ制作や再利用だけに止まるものではない。リーフレットやWeb、デジタルサイネージなど、さまざまなメディアへのコンテンツ展開を可能にする。
出力メディアを構成するコンテンツに関する情報をデータベース化して、メディアに合わせた検索を行い、データ抽出後に自動レイアウトする手法が普及している。
文書の型を定義付けられるXML(ExtensibleMarkup Language)を利用したデータベースをシステムを中核にし、おのおののメディアに合わせたスタイルシートを用意することで、フレキシブルなコンテンツ展開も実現できる。
XML に対応したDTP アプリケーションを合わせて利用することで、変更や修正を行った箇所をデータベース内のデータに対し同期させることが可能である。データベースにより派生する、ほかのメディアのコンテンツに、自動的に反映することができる。このコンテンツ管理手法が「ワンソースマルチユース」といった概念であり、データベースパブリッシングは効率良く実現するための手段である。

クロスメディア

共通データのデータベース化は、情報のクロスメディア展開の際においても有効な資源となる。
クロスメディアの概念では、必ずしも「基となるデータ」が1 つである必要はない。情報発信の効果を最大限にするため、「基となるデータ」に対しメディア特性を考慮した加工を施すことや、新たな「データ」を追加することが求められる。
現代の生活者は、製品やサービスを購入する際に関連の詳細情報を求める傾向があり、得た情報の結果に満足しないと購買活動へと至らないことがある。
製品の機能を紹介する場合、プリントメディアでは文字や写真、図表での表現となるが、映像や音響の利用により製品の動きや音の表現が可能となり、機能の理解度が飛躍的に高まることが期待できる。映像や音響といった「データ」を追加することで、Webコンテンツにより効果的な製品の機能紹介を実現できる。また、モバイル端末向けWeb サイトを併設する場合、端末の動作を考慮し、コンテンツのデータ量を削減する取り組みも求められることがある。
映像や音響を扱うテレビ放送であっても、製品の詳細機能を訴求するメディアとしての活用が難しい点がある。テレビ放送は、インタラクティブ性や検索性に欠ける部分があり、生活者が情報を得る際、目的の情報を見つけ難いことがある。
クロスメディアを実現するためには、メディア特性を熟慮する必要がある。クロスメディアは、「基となるデータ」を効率よく展開することではない。情報の発信者が想定するシナリオを前提にして、情報の受信者である生活者が行動することを促すために、さまざまなメディアの持つ特性を理解しメリットを最大限に発揮させることが重要である。
コンテンツを構成する情報による相互作用や相乗効果を高めるために、クロスメディアの概念が活用される。また、クロスメディアではQR コードによるWebサイトへの誘導、ICカードを活用した本人認証・決済機能な、ど各メディアの連携をスムーズに行わせる「橋渡しの仕組み」も不可欠である。クロスメディアは制作効率の向上が目的ではなく、情報発信の目的を達成するためのメディア活用手法である。

メディアミックス

メディアミックスは、メディアを組み合わせて情報の到達を最大限にする、クロスメディアと近い概念である。
異なるメディアを組み合わせ、活用することにより、各メディアの弱点を補う手法といった原義がある。
コンテンツは、映像でなければ伝えられない情報や、熟読しないと伝えられない情報など複合的に存在するため、必然的に使用するメディアも複合的になる。映像での情報と紙面(誌面)での情報を連動させ、生活者のコンテンツに対する理解を強化するために、統一したビジュアル表現を採用することもある。個別のメディアにおいても、原則的には個別にコンテンツとして完結することを前提にしている。
現在では、特定の娯楽作品が一定の経済効果を持った時、その作品の副次的作品を数種類のメディアの利用を前提に多数製作することで、ファンサービスと販売促進を拡充する手法を指すことが多い。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年8月号より転載

【クロスメディアキーワード】個人情報保護法

個人情報保護法は2005年4月1日から施行されたが、その後も個人情報の漏えい事故は多数発生している。

対策の重要性

個人情報保護法対策では、内部規定や組織体制を整えることも大変な作業だが、実質的に有効な内部管理を実現することも難しい。したがって、個人情報を取り扱う多くの方々は、個人情報保護法を理解し、管理体制のレベルを継続的に高めていくことが必要である。継続的な管理レベルの向上は、個人情報に対する倫理力を高め、個人情報に関する事故を起こしにくい体質への成長を促す。

適用範囲

個人情報保護法は基本法(第一章から三章)として、民間企業だけでなく独立行政法人や地方公共団体などにも厳格な義務を課している。一般法としては、行政機関個人情報保護法や独立行政法人等個人情報保護法、地方公共団体や地方独立行政法人に対する個人情報保護条例がある。民間企業(個人情報取扱事業者)については、個人情報保護法の第4 章以下が適用される。
氏名や住所などを組み合わせた情報から、生存中の個人を特定できる場合は、組み合わせの情報が「個人情報」となり、一定の要件を満たす「個人情報」データベースを事業で取り扱う事業者は、「個人情報取扱事業者」として法的な義務を負うことがある。したがって、自身の所属している組織が「個人情報取扱事業者」に該当するか、適切に判断することが求められる。
監督官庁は、管轄の組織を導くために、個人情報保護のためのガイドラインを策定し、公表をしている。「個人情報取扱事業者」に該当する組織は、該当するガイドラインに従った対策を立てる必要がある。事業免許を取得し事業を行っている場合や、法令に影響を受けて事業を行っている場合には、当該免許を管理している監督官庁がどこであるかを調べるとよい。また、原則としてどのような法人でも、雇用に関する個人情報は厚生労働省ガイドラインが適用される。

「個人情報取扱事業者」は個人情報を取得する際、その利用目的を特定し、本人に通知しなければならない義務がある。取得した個人情報は、本人の同意無く第三者に提供することができないが、裁判所や国税局、警察捜査の協力要請など法的な理由に基づく場合はその限りではない。

個人情報

個人情報とは、特定の個人を識別できる情報である。特定の個人を識別する方法は、名前や住所だけではない。コードや番号などで特定できたり、音声や画像、映像などにより識別される場合も含まれる。
また、個人情報は、個人が秘密にしているようなプライバシーに関する情報とは性質が異なるため、注意が必要である。個人情報保護法は、個人情報の取扱を規制しており、プライバシーの保護をしているわけではない。

個人データ

個人情報保護法が規定する義務のほとんどは、個人データに関する取扱いである。個人情報と個人データは必ずしも一致はしない。個人データは、「個人情報データベース等」を構成する個人情報である。「個人情報データベース等」には、コンピューターのデータ、紙媒体のものも含まれる。映像や音声も検索が可能な状態であれば、「個人情報データベース等」に該当する。

保有個人データ

本人から開示や訂正などに関する要求を受けることが求められるものは、保有個人データである。保有個人データは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去、第三者への提供の停止を行うことができるすべての権限を有する個人データである。これらの権限の一部を有さない場合には、保有個人データにはならない。さらに、6 カ月以内に消去されるものや、存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものは、保有個人データに当たらない。※

   ※保有個人データに当たらない例示
   1. 本人または第三者の生命、身体または財産に危害が及ぶとき
   2. 違法または不当な行為を助長したり、誘発するとき
   3. 国の安全が害するとき
   4. 犯罪の予防、鎮圧または捜査そのほかの公共の秩序の維持に支障が及ぶとき

個人情報保護法の要求事項

個人情報保護法は、個人情報、個人データ、保有個人データに分け、要求事項を規定している。事業者は、これらの要求を理解することが求められる。「取得や収集するときは、個人情報」であり、「取得や収集した後は、個人データ」「本人に対する義務を有するものは、保有個人データ」と簡単な区分けができる。

罰則

主務大臣は、個人情報取扱事業者に対し、報告の徴収、助言、勧告、命令、緊急命令の権限を持つ。不適正な個人情報の取扱いをしている事業者の存在が認められる場合には、命令および緊急命令を行うことができる。事業者が必要な対応を行わない場合は、6 カ月以下の懲役または30 万円以下の罰金が科せられる。

個人情報のリスク

個人情報保護法に違反した場合は、主務大臣からの改善命令を受ける。実際に漏えい事故を起こした場合には、損害賠償や企業イメージの低下による事業上の損失を招く恐れがある。すでに法制度が整備されている海外の企業と円滑に取引を行うためにも、個人情報の適切な取扱いは不可欠なものとなる。

個人情報保護対策

個人情報保護の対策を行うには、個人情報に関するリスク分析が必要となる。リスク評価には、個人情報の質的な要素と量的な要素がある。セキュリティー対策を完全に実施することは、極めて困難である。費用対効果を最大限に考慮し、対策を検討するべきである。漏えいや不適切な利用などの事象が発覚した際には、関係各所に速やかに正確な情報を連絡し、原因の特定とその後の対策を確実に講じることが大切である。個人情報を取扱う組織として、個人情報取扱いに関する規定作成だけではなく、事故対応マニュアルの作成を行うことも個人情報保護対策になる。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年5月号より転載

【クロスメディアキーワード】口コミマーケティングと情報リテラシー

「口コミ」の特徴

「口コミ」とは、商品やサービスに関する評価や評判などの情報が、人々のコミュニケーションにより伝達されることを意味する。現代社会は、企業活動だけでなく、人々の日常生活に至るまで「口コミ」と関係した時代となったといえる。ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も存在するため、企業だけでなく個人にとって「口コミ」は、有効に活用すれば益に結びつくこともあるが、扱い方を誤ると損失を招く恐れもある。

口コミの傾向

「口コミ」は人々の歴史の中で、最も古いメディア(情報伝達手段)である。単なるメディアではなく、情報に対する個人の感情や解釈を加味したメディアともいえる。人々は、自身の感情を共有したいといった傾向がある。共有したい感情は、怒りや不満、恐怖を伴ったネガティブな情報が顕著になることもある。ネットワーク社会においては、情報は速く広範囲に伝達することから、「口コミ」による情報は、利便性と危険性を兼ね備えている。さらに、消費者が商品やサービスにする情報をインターネットの「口コミ」サービスを参考にする場合、ポジティブな情報よりもネガティブな情報を信用する傾向があるといった調査結果もある。

コミュニケーション手段としての「口コミ」

バイラルマーケティングやバズマーケティングは、「口コミ」を活用したマーケティング手法として利用されている。企業活動において「口コミ」は、「広告」や「販売促進」「人的販売」「パブリシティ」に並ぶ顧客とのコミュニケーション手段として活用されている。

バイラルマーケティングは、伝えたい情報を普及させるために、「紹介」や「推奨」といった方法で、人々の間に相互に伝え合うことを促進し、奨励するマーケティング・アプローチである。圧倒的な特徴(画期的、便利、格好いい、楽しいなど)のある商品やサービスの場合、自然発生することが期待できる。ネットワーク外部性が働く商品やサービスでも同様の傾向がある。こうした情報の波及的拡大(口コミ)を人為的に起こすことを狙うことをバズマーケティングという。
消費者への情報伝達の可能性が高く、接触頻度も高い4 マス媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)は、広告費が高額になることが多い。一方、インターネットに代表されるデジタルメディアは、コスト構造が異なっている。インタラクティブ(双方向性)であり、パーソナライズ(個別化)できるため、消費者嗜好の多様化に対応できることから広く普及した。ブログやソーシャルネットワークサービスによる「口コミサービス」は、インターネットの特性を生かし、マスメディアと並ぶ情報伝達や認知形成ができる手段となった。マスメディアの役割の一部をデジタルメディアが担うようになり、消費者行動モデルの「AIDMA」は、マスメディアと非マスメディアの変遷につれて「AISAS」「AISCEAS」といったモデルも提唱されるようになった。「口コミ」は、昨今の消費者行動モデルにおいて、重要な役割を果たしている。

ステルスマーケティングと口コミ

「ステマ」という言葉が話題となった時期があった。これはステルスマーケティングを省略したもので、グルメサイトなどで「やらせ」的な投稿が表面化したことから急速に注目を集めた。報道の論調により、悪いイメージが定着してしまった「ステマ」であるが、本来的には、消費者に悟られることなくマーケティング活動を行うという意味である。
程度の差はあるが、「口コミマーケティング」と呼ばれる形で、ターゲット顧客に効率良く情報を浸透させる手段として、施策を提案してきた事実もある。「口コミマーケティング」の例としては、アルファブロガーと呼ばれた「ブログを通じて、ターゲット層に対して高い情報伝達力を持つ人物」に、企業がインセンティブを与えて情報を発信する手法がある。しかし、そこで発信される情報は、その人物の主観に頼ることになり、情報精度は必ずしも企業が意図した通りになるとは限らないものである。したがって、企業が望む形での情報を的確に発信したいという需要があり、呼応する形でサイトへの投稿を請け負うビジネスが生まれた。
景品表示法を所管する消費者庁のニュースリリース『「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について』(平成23 年10 月28 日)では、

『商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる』
と指摘しているが、法の判断は個々の事例ごとに充分検討した上でなされなければならない。
消費者庁の指摘する問題が発生した場合の処罰は、実際に商品・役務を提供する得意先企業に下される。得意先に対して提案を行う際には、何の目的でソーシャルメディアを使うのかという理由と、リスクと対比してもそれがどれだけの利益を生むのかを明確にし、運用に当たっては、モラルを欠くことのないような人的・システム的仕組みを構築するべきである。
最近ではインターネット上の情報を単純に鵜呑みにしない利用者が増えている。また、不適切な発言が批判され、排除されていくように、インターネット上の情報にはある程度の自浄作用も働く。こういった経験を学習することで、情報の判断におけるリテラシーは徐々に高まっていく可能性がある。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年4月号より転載

【クロスメディアキーワード】プログラム言語とオープンソース

COBOL、FORTRAN、PL/I、Pascal、C 言語などは、コンピューターに実行させる処理を記述するプログラム言語である。ジョブ制御言語(JCL)やオペレーティングシステム(OS)で使用するコマンドは、OSに対し動作指示を行う言語として捉えることができる。
一方、SQL やXQueryなどは、問い合わせ言語とも呼ばれることもあり、主にDB(データベース)からのデータ取得に対する記述をする。PostScript やHTML、XML などは、主にデータの内容を記述するための言語であり、データ記述言語とも呼ばれている。
PostScript やHTML は、主に内容の表示や描画のために使われるようになった。XML は、表示描画機能を切り分け、データに対し意味のある集合体や構造で表現することに主眼を置いた言語である。XML データをディスプレー表示や、印刷する場合は、PostScript やHTML などの形式に置き換え、専用アプリケーションやXSLT などを用いて変換する必要がある。XML データはPostScript やHTML と比較すると、ディスプレー表示や印刷するまでの手順が複雑になる。しかしながら、データ項目を文書構造に合わせて取得することが容易である。UML(Unified Modeling Language)は、ソフトウェア開発においてシステムの構造を表現するためのコンピューター言語であり、モデリング言語の代表的なものである。
プログラミング言語の中で、データを使い行う処理や操作の手順をパッケージ化した独立性があるものを「オブジェクト」と呼ぶ。オブジェクト指向のプログラム言語は、命令から相互に関連し、処理や操作を実行することで、ソフトウェア全体としての動作を制御する。オブジェクト指向は1970 年代から普及し、SmalltalkやCLOSなどオブジェクト指向のプログラム言語が開発された。オブジェクト指向では、すでに存在する「オブジェクト」は、利用の際にその内部構造や動作原理の詳細を知る必要がなく、特に大規模なソフトウェア開発において有効な考え方として知られている。
オープンソースは、無料でソースコードやプログラムが入手できるということを意味しているだけではない。オープンソースに関する定義は、Open Source Initiative(OSI)により策定されている。OSI認定を受けるためには、以下の頒布条件が定められている。

1. 再頒布の自由

「オープンソース」であるライセンス(以下「ライセンス」と略)は、出自のさまざまなプログラムを集めたソフトウェア頒布物(ディストリビューション)の一部として、ソフトウェアを販売あるいは無料で頒布することを制限してはならない。 ライセンスは、このような販売に関して印税そのほかの報酬を要求してはならない。

2. ソースコード

「オープンソース」であるプログラムはソースコードを含んでいなければならず 、コンパイル済形式と同様にソースコードでの頒布も許可されていなければならない。何らかの事情でソースコードと共に頒布しない場合には、 ソースコードを複製に要するコストとして妥当な額程度の費用で入手できる方法を用意し、それをはっきりと公表しなければならない。方法として好ましいのはインターネットを通じた無料ダウンロードである。ソースコードは、プログラマーがプログラムを変更しやすい形態でなければならない。意図的にソースコードを分かりにくくすることは許されず、プリプロセッサーや変換プログラムの出力のような中間形式は認められない。

3. 派生ソフトウェア

ライセンスは、ソフトウェアの変更と派生ソフトウェアの作成、並びに派生ソフトウェアを元のソフトウェアと同じライセンスの下で頒布することを許可しなければならない。

4. 作者のソースコードの完全性(Integrity)

バイナリ構築の際にプログラムを変更するため、ソースコードと一緒に「パッチファイル」を頒布することを認める場合に限り、ライセンスによって変更されたソースコードの頒布を制限することができる。ライセンスは、変更されたソースコードから構築されたソフ
トウェアの頒布を明確に許可していなければならないが、派生ソフトウェアに元のソフトウェアとは異なる名前やバージョン番号をつけるよう義務付けるのは構わない。

5. 個人やグループに対する差別の禁止

ライセンスは特定の個人やグループを差別してはならない。

6. 利用する分野(Fields of Endeavor)に対する差別の禁止

ライセンスはある特定の分野でプログラムを使うことを制限してはならない。 例えばプログラムの企業使用、遺伝子研究の分野での使用を制限してはならない。

7. ライセンスの分配(Distribution)

プログラムに付随する権利はそのプログラムが再頒布された者全てに等しく認められなければならず、彼らが何らかの追加的ライセンスに同意することを必要としてはならない。

8. 特定製品でのみ有効なライセンスの禁止

プログラムに付与された権利は、それがある特定のソフトウェア頒布物の一部であるということに依存するものであってはならない。プログラムをその頒布物から取り出したとしても、そのプログラム自身のライセンスの範囲内で使用あるいは頒布される限り、プログラムが再頒布される全ての人々が、元のソフトウェア頒布物において与えられていた権利と同等の権利を有することを保証しなければならない。

9. ほかのソフトウェアを制限するライセンスの禁止

ライセンスは、そのソフトウェアと共に頒布される他のソフトウェアに制限を設けてはならない。例えばライセンスは、同じ媒体で頒布されるほかのプログラムが全てオープンソースソフトウェアであることを要求してはならない。

10. ライセンスは技術中立的でなければならない

ライセンス中に、特定の技術やインターフェイスの様式に強く依存するような規定があってはならない。

JAGAT CS部
Jagat info 2013年3月号より転載