マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの未来

掲載日:2015年12月21日

クリスマス時期になると今年一年を振り返るとともに、翌年のpageの準備も一段落しているのがJAGATの年末である。2015年のJAGATは「未来を創る」のキャッチフレーズで印刷ビジネスの未来を考えてきた。そしてその集大成として、page2016ではマーケティングにも大きくフォーカスしている。

今までの印刷業は品質、安定性、生産性、コスト等を向上するのに一生懸命になってきた。それが間違いなのではなく、世の中が変わり、ニーズも変わってくると新しいニーズにも対応していく必要があるのではないかということなのだ。つまりマーケティングにも印刷業が関与する必要があるということだ。

インターネットが浸透し、社会システムの根幹にIT技術が関与するIT社会になってくると、個々の対象に対して最適なマーケティング活動が可能になり、新しいマーケティングアイディアが次々に生まれてくる。そしてIT技術の根幹に君臨するインターネット技術は新しいアイディアに、いち早く対応することになる。

そんな事を可能にしているのが、デジタルマーケティングの仕組みであり、salesforce.comやEloqua、Marketoといったプレーヤーが活躍している。元々CRM(Customer Relationship Management)といわれる顧客管理をするためのIT機能があり、この情報を元にして(もしくはこの情報を集めることもマーケティング活動に入っている)、分析し、施策を決めて、タイムリーに広告手段を行使していくというのがデジタルマーケティングである。

そして施策を行使するITソリューションをMA(マーケティングオートメーション)と呼ぶのだが、このMAとデジタル印刷をリンクできるとダイレクトマーケティング的な動きも出来るというので、印刷業界を取り巻く環境から俄然注目されているのだ。特に、JAGATが2015年に大きく取り上げてきたWebb博士著「未来を創る」では、マーケティングオートメーションに注目し、印刷ビジネスの可能性にまで言及している。

インターネットと同等な小回りまでは出来ないが、印刷だって小ロット対応が進み、数百部ならアナログ印刷でも不可能ではなくなってきた。もちろんデジタル印刷なら極小ロットやOne to oneプリンティングも可能である。そして印刷はE-Mailのような無味乾燥なものではなく、しっかり五感に訴えかけられるという特長まで有している。

かつての印刷はマスを得意とするものだから「広く知らしめるための広告である撒き餌的な部分を受け持ちます」というのが印刷の役目だったと思う。しかしデジタル印刷の技術もかなり発達した今、DM等のOne to oneメディアだったら十分対応可能になっている。

カタログやパンフなら小ロットのバリュアブルで各ターゲットに特化した印刷だって可能なはずである。そんな仕組みが近未来の印刷ビジネスには必須である。印刷会社はMAに直接関わっても良いし、協力会社として間接的に関わっても良い。ただし単なる印刷の下請け仕事だけでは、下請け先を変更されてしまうし、理屈を理解し、パートナーとして参加できないといけない。

page2016のカンファレンス(基調1)「マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの未来」は、新しいマーケティング方法が蔓延している近未来に対してどのようにしていけば良いか?を考えるセッションである。
日本にもデジタルマーケティング(マーケティングオートメーションをはじめとした)の大家は少なくないが、ほとんどの方はIT出身者で、DM(IT技術者はDMのことをSnail=カタツムリmailと呼んで馬鹿にしていた)やカタログを無用の長物と(本心では)考えている方が少なくない。「印刷費用は高いから、その金でもっと効率的なITシステムを構築すれば良い」という提案をするコンサルタントがほとんどである。そして、その挙句は大抵売り上げを落としているという場合がほとんどである。

そんなデジタルマーケティングコンサルタントの中でシンフォニーマーケティングの庭山社長は、米国ダイレクトマーケティング協会会員でありながら、DM時代からのマーケティングを実践していた方であり、印刷業界の状況や印刷業界がマーケティングに協力して効果を上げる方法を熟知している方だ。

その庭山社長を基調講演者に招き、「マーケティングオートメーションとは何なのか?」等の基本から解説いただき、その後、未来の印刷ビジネスを模索するスピーカー達が庭山社長とディスカッションする。つまりJAGATとしてpage2016の(基調1)「マーケティングオートメーションと印刷ビジネスの未来」は、ここ数年の総決算となるセッションである。これからpage2016の紹介記事も多くなってくると思うが、それぞれが魅力的であり、必ずやご期待に添えるものと信じている。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

page2016基調講演

【基1】マーケティングオートメーションと 印刷ビジネスの未来