約物の組版処理と校正

掲載日:2016年5月2日

日本語組版とつきあう その54

小林 敏(こばやし とし)

和文用と欧文用の約物

約物とは、文字組版で使用する句読点や括弧類などの記述記号をいうが、記号文字を含めていう場合もある。ここでは記述記号に限定にする。

記述記号は、和文で使用するだけでなく、欧文でも使用する。括弧類、コンマ、ピリオド、コロン、疑問符、感嘆符は、欧文でも和文でも使用している。これら共通に使用する約物(記述記号)は、和文では和文用を、欧文では欧文用を使用するのが原則である。

和文用と欧文用の約物の違い

和文用と欧文用の約物(記述記号)の主な違いは、欧文用は原則として字面に応じたボディ(仮想ボディ)をもったプロポーショナルなものであるのにたいし、和文用は原則として、正方形の仮想ボディにデザインされている。そして、和文用の句読点や括弧類は、一般に字面は二分で、その後ろまたは前に二分のアキを持っている。中点(中黒)は、一般に字面は二分で、その後ろおよび前に四分のアキを持っている。

こうした約物は、原稿段階で正しいものを使用し、点検・整理しておく必要があるが、校正でも確認が必要である。

以下では、和文用の約物について、校正と関連させ、組版処理で問題になる事項を解説する。

行頭・行末禁則

行頭または行末の配置を避ける約物がある。どの約物を避けるかは、処理系の設定により変更が可能である。新聞では許容が多いが、雑誌や書籍では、行頭の中点(中黒)を許容するかどうか、二分ダーシの行頭の配置を禁止するか等、いくつかの問題があるが、ほぼ共通しているであろう。

そして、設定さえしておけば、これらの約物が行頭または行末に配置されることは、通常ではないと考えてよい。

しかし、段落記号の直後では、禁止された約物でも行頭に配置でき、また、設定を誤る場合もあり、印刷物でも、ごくたまに行頭禁則違反の例を見掛ける。したがって、校正でも念のために、行頭・行末禁則の違反がないかどうか、といった注意は必要である。

行頭・行末の配置方法

括弧類や句読点などについての行頭・行末の配置方法には、いくつかの方法がある。これらについても処理系でしっかり設定しておけば、自動処理で、それぞれの方法で配置できる。

なお、括弧類の配置については、段落の先頭行と2行目以下の行頭の設定が必要であるが、これらも設定できる。

したがって、最近の書籍や雑誌では、括弧類の行頭・行末の配置について、誤りや乱れはほとんど見掛けないが、ないわけではない。特に段落の先頭行の字下げを空白で処理する場合などで乱れが生じる場合もあり、校正での点検は欠かせない。

括弧類などが連続した場合

括弧類や句読点を連続して配置する場合、約物の二分アキが目立つときがあり、アキを調整する必要がある。この処理も処理系で設定をしっかり行っておけば、ほぼ問題なく自動処理が可能である。

しかし、初期のDTPでは、中点と括弧類が重なった場合など、約物の組合せによっては処理ができない場合もあった。また例外的な約物の組合せや、全角の空白と約物が連続した場合などでは、アキの調整ができない例もある。

したがって、校正でも、約物の連続した場合は注意が必要である。

行の調整処理と約物の前後のアキ

行の調整処理において詰める処理を許容した場合、約物の前後のアキが利用される。この場合、出版社によって、どの約物をどの順序で、どこまで詰めるか決めている。これらの事項は今日のDTPでは、ある程度細かく設定できるようになっており、丁寧に設定しておけば、ほぼ自動処理で処理できると考えてよい。

逆に、個別箇所で手動で調整を行うと、後から文字の挿入・削除があると、問題を起こす可能性があるので、個別箇所での手動の調整は望ましくない。行の調整処理は自動処理が原則である。

問題が見つかった場合、校正段階でその箇所にどのように違反しているか指示しておくことになる。しかし、できるだけ印刷所と相談して、自動処理でどう対応するか相談しておくのが望ましいといえよう。

二分アキとしない例

括弧類や句読点などの前後のアキを確保しないでベタ組にする次のような例がある。

(1)パーレンや山括弧をベタ組にする処理法がある。
(2)漢数字の3桁の区切りにテンを使用した場合、ベタ組にする処理法がある(図1参照)。
(3)図1に示したように漢数字で概数を示す場合、ベタ組にする処理法がある。
(4)漢数字において小数点を中点で示す場合、前後をベタ組(二分ドリ)にする処理法がある(図1参照)。

パーレンや山括弧をベタ組にする(1)の例において、全部のパーレンや山括弧が対象となるのであれば、処理系によっては設定さえ行えば、自動処理が可能になる。また、DTPでは、一般に検索・置換で配置方法(書式)の変更も可能であるので、検索・置換の機能で配置方法を変更してもよい。

しかし、文中のパーレンはベタ組としても、独立した文をパーレンでくくる場合などでは、二分アキにしないといけないこともあるので注意が必要である。

(2)(3)(4)は、一括した処理ができないので、どの箇所をベタ組にするか、個別箇所での処理が必要である。特に(3)については図1に示した例でいえば、“にさん”ではなく、“にとさん”の意味の場合もある。後者の場合はベタ組ではない。 こうした事項は、校正でしっかりとした点検が必要になる。

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(図1)

日本語組版とつきあう (小林敏 特別連載)