借入金の返済は経費にならない!?

掲載日:2017年5月8日


マネジメントゲームをプレイして感じたこと

ソフトバンクグループの創業者である孫正義氏もお気に入りだというマネジメントゲームを年に何回かプレイする機会がある。
マネジメントゲームとはボードゲームの一種で、プレイヤーは会社の経営者となり、設備投資をし、材料を仕入れ、製造、販売などのさまざまな意思決定を行っていく。プレイヤー同士で駆け引きをしたり、思いもよらないリスク(良いこともある)に対応しながら好業績を目指す。現金の入出金を記録していき、期が終わると決算処理を行う。
ゲームに慣れない頃は、目の前のことで精一杯であるが、回数を重ねてくるといろいろなものが見えてくる。

マネジメントゲームは管理会計の一種であるMQ会計という考え方がベースとなっている。Mとは“Mergin”の略で、製品1個当たりの粗利を意味し、Qとは“Quantity”のことで販売個数を意味する。MQとはトータルの粗利額を表す。そして、企業はMQが固定費(F=Fixed Cost)を上回ったときに利益がでることになるので、経営においては売上よりもMQを重視すべきというのが基本的な教えとなる。
また、財務会計の損益計算書には固定費と変動費という区分けがないこと。販売数量という概念がないので、売上の変動があったときに利益がどう変化するか、その原因が何かを特定することができないといったことを学ぶことができる。

それとともに、BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)という会計の仕組みは良くできていると改めて思う。支出の内容によって、当期の経費(人件費や材料費など)となったり、資産(設備など)となったりする。そして、現金の収支と損益計算書の損益とは直接リンクしないことが理屈ではなく実践的に理解できる。

プレイをしていての自分自身の気づきは恥ずかしながら「借入金の返済は経費ではない」ということであった。借入金の返済原資は、税引き後の利益と実際には現金の支出が発生しない経費である減価償却費となる、とは頭では理解していた。しかし、借入金を返済して現金が乏しいにも関わらず、決算上は利益が出ているので税金をきっちりとられると切なくなる。会計上の利益と資金繰りとは別物だと実感した。
また、減価償却費の別の意味合いが見えてくる。設備は時間が経つと老朽化していくので、それにあわせて資産上の価値も償却という形で減っていくと漠然と思っていたが、現金の支払が発生しない経費というのは、借金の返済原資としては非常に貴重だ。

こんな雑談をある会員の経営者としていると「土地には減価償却が適用されないし、建物には減価償却は適用されるが長期となるので借入期間よりも長くなる。土地、建物を借入金で購入すると資金繰りに苦労する」と体験談を交えて話していただいた。
経営における財務、キャッシュ・フローの重要性を再認識するとともに、大掛かりな投資が必要な資本集約型の印刷業において、平均経常利益率が2%そこそこという水準は低すぎると改めて感じた。

(研究調査部 花房 賢)