見える化に見る管理とマネジメント、その狭間と誤解

掲載日:2017年5月18日

印刷会社において見える化経営の認知と普及が進んでいる。導入を考える企業からはその難しさを、導入企業からはその効果を聞くが、誤解を主たる原因としてうまくいかないとの声を耳にすることも多い。

財務会計と管理会計の違い、企業価値を持続的に高めるために

会計にはいつくかの種類があり、財務会計と管理会計はその代表格である。特に財務会計は外部に報告するため法的に様式が定められ、あらゆる企業はその作成と処理が義務付けられている。逆に管理会計は内部向けのものであり、任意で作っても作らなくても良いが、意思決定の判断精度を高めて企業価値を継続的に高めていこうとするならあったほうがいい。例えば商品仕入が多く売価還元法などに基づく原価算出が膨大な作業になる企業の場合、財務会計に接続するための商品会計なるセクションを設ける企業もある。多くの企業が管理会計を運用、そのほかに業種・企業特性に応じた独自の会計制度を運用して企業経営に臨んでいると思われる。

「見える化経営」、効用と運用ルールの難しさ

印刷業界で認知と普及が進む「見える化」は管理会計に属する。導入は任意であるが、利益最大化の正しいプロセスを同時に全社員が共有しながら日々の経営をすることの効用に疑いの余地はない。あえて「正しい」と前述したのは、管理会計は法的な定めがあるわけでなく、社内向けであるがために作り方や運用手法が企業の数だけあり、多種多様で「正しい」の判断が分かれる場合があるからだ。「ウチの管理会計(あるいは原価計算など)は正しいのか?」。その「正しさ」に社内から疑義が呈され、本質の議論以前の段階で紛糾して目的を果たさないケースや、セクショナリズムを助長するケースがしばしば見受けられる。

見える化と目標管理に見る管理とマネジメントの誤解

管理会計は業績評価と事業評価に分類できるが、要するに正しい現状認識と正しい意思決定のためのものだ。努力の余地のない情報や解釈が分かれるような情報はできるだけ削ぎ落とし、到達度、問題の箇所、どこを動かせば業績を変えられるかがシンプルにわかることが望ましい。その意味で管理というよりマネジメントと言った方がふさわしい。Managerial AccountingのManagerialが管理と訳されたのだが、日本語で「管理」というとニュアンスが違うように思う。同様に「目標管理制度」と訳されたManagement by Objectivesがある。これもマクレガーのXY理論と正反対のノルマ主義的な手法を想起させる「目標管理制度」より、目標マネジメントといった方がその目的をより適切に表すと思うのだが。「Management」を「管理」と訳したがために反対の解釈を誤導するケースが少なからずあるが、管理会計も目標管理制度も社員の自発的な行動を促すためのシステムである。

(研究調査部 藤井建人)

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