最新調査から分析する印刷会社の経営動向 [業績・戦略・設備]

掲載日:2017年8月31日

この調査は印刷会社の(1)業績(2)戦略(3)設備を総合的に調べている。業績と戦略を同時に調べることで、好業績印刷会社の思考特性へのアプローチが可能になる。また、設備投資動向や技術・サービスに関する投資・保有・取り組み状況も明らかになる。

印刷会社の業績~業績改善の流れが一段落

●業績の概要
印刷会社の売上高は2015年に続いて微減で成長しきれない様子が浮き彫りになった。2012年から設備投資主導で進んできた生産性改善も一段落した。営業利益率は3年連続の1%台にとどまり、生産性改善が1人当り人件費の改善につながる好循環が一段落の形になっている。

●売上高と利益率
売上高は、包装の好調、商業と総合の堅調、事務用と出版の不振といった構図になっている。特に出版は14年連続の売上高減少でいよいよ赤字化した。利益率は、東京以外地域が東京を上回り、オフ輪保有会社が非保有会が非保有会社を上回るなど、部分的に従来とは異なる様相を呈している。

●人的資源と投資、財務構造
従業員の高齢化が進む一方、政府の投資促進策を活用した設備の更新投資も進み、財務構造は改善して経営の安定性は増している。しかしこれから先、自律的な生産性向上と成長性獲得をどのように考えれば良いのだろうか。最新調査結果から考察する。

印刷会社の戦略~業績良好企業の特徴に変化

●業績良好企業の平均像
業績良好企業群の経営戦略や思考特性の特徴は以下のようなものだ。事業領域は、自社の強みに専門化した分野におけるワンストップサービスの視点。既存の顧客・市場に新規の技術・サービスを投入する戦略を重視。事業と収益の核は印刷、現在は印刷・加工・配送の強化を考えている。

●営業面、営業訴求
営業面は、既存顧客への深耕を意識。足を運ぶプッシュ型の営業スタイルから、来てもらうようなプル型の営業スタイルへのシフトを模索している。顧客への技術や自社保有工程の訴求に腐心。見積もり技術の向上と充分な費用対効果の説明に重点を置く。

●生産面・管理面
生産面は、品質向上・多能工化・標準化を重要テーマとする。作業時間の短縮など標準原価の改善に結びつく構造的な原価低減努力を続けている。管理面は、自立促進型ともいうべき組織を志向、目標管理を導入、従業員は実力と成果の両面から処遇。定着率・平均勤続年数などで人的資源を管理している。

●設備投資・サービス面も含めた分析を進める
業績良好企業の概略は以上のようになる。最新の経営理論も取り入れて、印刷のものづくりや既存顧客を収益源として再評価しつつ、人手不足の時代の新たなビジネスを確立していこうとする印刷経営である。設備投資などさらに分析を進め、9月下旬のセミナーと報告書で全体像を明らかにする。

(JAGAT 研究調査部 藤井建人)

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9/27・28・29開催セミナー 最新調査にみる印刷経営と戦略、設備2017【東京・岐阜・大阪】

報告書 「JAGAT印刷産業経営動向調査2017」(2017年9月下旬発刊予定)