実用に十分な高演色LED照明

掲載日:2017年11月1日

印刷物チェックのための5000K高演色蛍光灯の代替え用として、出てきたのが高演色LEDだ。高演色LEDで色校正室を整備した大阪府堺市のキングプリンティング株式会社さんにお邪魔させていただいたので、報告させていただく。

JAGATでは常々「5000Kの高演色蛍光灯で印刷色をチェックしなければいけない」と啓蒙していたのだが、言っている内に環境が変わって蛍光灯でも反エコになってしまい、大手を振って使いづらくなってしまった。もちろんメーカーも将来を見越せば生産を止めてしまうので、今さら蛍光灯の標準光源というわけにもいかなくなってきたのだ。

そこに現れたのが高演色直管式LEDで、一見まさしく蛍光灯なので今まで使用していた機材が使えるのだ。正確には安定器が必要ないので、電気工事士による安定器のバイパス工事が必要になるが、簡単な工事でOKなのだ。工事を必要としないタイプのLEDも存在する。

印刷校正室で使われていた蛍光灯は、40Wの直管式蛍光灯が多いと思うが、5000K(Kは色温度の単位で、ケルビンと発音)の高演色形演色AAAで、平均演色評価数Ra99というものが一般的だったと思う。平均演色評価数とは自然光をRa100として最高値と定義されている。Ra99の最終的な色評価用の蛍光灯は、行き着くところまで来ていた感じなのだ。

ここに登場した高演色タイプのLEDなのだが、現在の平均演色評価数はRa97が多いと思う。しかし、LEDは劣化しないので光量が変わらず、少し使っていると蛍光灯は劣化が激しいので「LEDの方が良いのでは?」と思えてしまうくらいだ。地下鉄でLED車両が来ると直ぐに分かるのは、明るさが大きいと思う。

今回訪問させていただいたキングプリンティングは、元々映画館の看板を描く津村画房として創業した。しかし、生産性や品質が、絵を描く職人の力量にのみ左右されてしまうので、幻灯機による投影で、元画をなぞることで輪郭は安定するというセミオート的な技法をあみ出し、頭角を現していったということである。イラストレーターで作画する場合に原画をスキャニングするのと同じ要領だ。

現在でも「大判はキングプリンティング」と言われるくらいに、ローランドのVLF(UV)を筆頭に、大判のインクジェットプリンタ等を取りそろえている。100枚以上はオフセットという一応の線引きはしているらしい。

そんなわけで色校正室も大型の色校正室の一面を色見面として使っている。写真1が高演色LEDを使用した校正室で、エコリカ製高演色LEDに交換している。写真2が実際に観ている感じのシミュレーションだが、正直な話としては、実用的に全く問題ない。もっとも最初、全灯LEDに変えてしまったら明るすぎてしまい、以前は40Wの直管式蛍光灯が三本ずつ(写真3)二段に付いていたのだが、一段目は2/3に、二段目は1/3にして、結果的に半分の本数になっている(写真4)。これで色見面の上面が1,800luxで、暗い下面が1,300lux、中間の常用域が1,500lux位で使っている。

写真1:高演色LED校正室

写真2:高演色LEDによる照明

写真3:蛍光灯(40W×3列×2段)

写真4:LED(15W×2本+15W×1本)

写真5:従来の蛍光灯校正室

今まで通りの蛍光灯の校正室も残っており、写真5がそうなのだが、一見暗そうなイメージを持たれるかと思う。正確には計測していない。

電力の方なのだが、蛍光灯は40Wで、LEDは15Wなので、電気代は単純計算で15/40W×1/2=0.1875倍になるということである。

このように現時点でも十分実用的な校正室を構築することが可能で、JAGATでも、セミナー室や会議室は常用のLEDに、色を扱う人間の上部は高演色LEDに交換しているが、劣化を考えるとメンテナンスも楽になるというのが現在のイメージである(まだ交換して一年弱)。

この辺の照明、特にLEDに関して印刷業界では熟知する必要がある。まずは高演色LEDについての研究会ミーティング「高演色LEDの実際」を11月21日に行い、印刷業界にとってどのようにLEDと付き合っていかねばならないかを、じっくり考えたいとおもっている。キングプリンティング株式会社の若林新一工場長もお呼びして、実際のところのお話も伺える。もちろんキングプリンティングに導入されたLEDメーカーのエコリカも、講師として招いている。千葉大学の先生によるガイダンス(一般教養)と実践的情報、メーカーからの情報と参加するだけでかなりのエキスは補充できるはずである。

(JAGAT 専務理事 郡司秀明)

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