マスター郡司のキーワード解説:ブランディング(後編)

掲載日:2026年3月26日

印刷ビジネスの根幹である印刷物製作ビジネスが多品種・小ロット化していくと、印刷だけでは受注金額面で厳しくなり、それを埋める(BPO)ビジネスを印刷ビジネスとして取り込むことが必要になってくる。要するに「印刷業界はブランディング面でお手伝いできるのでは?」ということだ。

例えば前編で、例として触れることができなかった船橋屋のくず餅(「専務のつぶやき」で触れさせていただいたが)も、印刷物ならお手伝いが可能だと思っている。東京のくず餅が、吉野葛の葛餅に対しても十分魅力的であることを、600字以上(独断的判断)のテキストなら説明ができると思うので、くず餅の箱に入っている説明文(能書き文、私は結構好き)で訴求することが可能だろう。印刷物の本領発揮である。

ブランディングの時代

page2026のカンファレンス【C2】では、『手にとるようにわかるブランディング入門』を執筆された大伸社コミュニケーションデザイン(一色俊慶氏・宮本和佳氏)に依頼し、印刷会社のブランディングビジネスについて話していただいた。以下では、そのサワリだけでも触れさせていただきたい。

講演は「ブランディングの時代へ」という説明からスタートした。図1を見ていただければ分かるが、最初の「市場拡大の時代」には印刷がジャストフィットしていた。いわゆる「Product〈モノ〉の時代」である。その後、1990年代の「市場成熟の時代」に入ると、競合との差別化が必須となって企画・デザインが重要になる。この時代のことを「Function〈機能〉の時代」と呼ぶ。

2000年代は「市場飽和の時代」となり、マーケティングが注目される。「Experience〈コト〉の時代」に脚光を浴びたのがソリューション営業で、時代はコトへと変わっていったのだ。そして2010年代は、市場は再定義・再構築の時代、つまりコクリエーション(共感・共創)の時代としてユーザーをはじめステークホルダーと対話・協働して新たな価値を創り出す、つまりブランディングの時代となる(Purpose〈イミ〉の時代)。

このブランディング時代にはインサイト営業が重要となり、営業手法も変わってくる。そこで、ここにどのように関わっていけるのかという話になるのだが、その前提となるブランディングの基本プロセスについて先に説明しておきたい。すなわち、フェーズ1(以下、P1と表記)「プロジェクト設計」、P2「現状理解」、P3「ブランドコアの定義」、P4「具体化と実行」、P5「効果検証と改善」の5フェーズがあり、P5の結果が悪ければ、P4とP5を繰り返しトライすることになるわけだ。

図1

大伸社が手掛けた事例

大伸社は拡印刷にあらゆる方面からトライした結果、ブランディングビジネスこそ印刷会社がやるべきベクトルであると結論づけて、現在に至っている。それでは、大伸社が手掛けたブランディング事例を一つだけ紹介したい。

それは兵庫県にあるKLASS株式会社で、畳製造機械を開発・製造・販売している会社なのだが、もともとは極東産機株式会社という社名であった。そして、大伸社がブランディングのお手伝いとともにCI(Corporate Identity)まで担当することになり、KLASS(Kyokuto Life Advanced Solution Serviceの頭文字)という社名になったのである。

KLASS株式会社はインテリア関係から畳製造に乗り出したという経緯があるため、入りやすかったのかもしれないが、内部へのインナーブランディングや仲間内へのブランディングは非常に大変だったのではないか。だが、道半ばの現在でも、今後の事業展開は京間、江戸間、琉球畳等々にこだわることもなく、インテリアビジネスの自由な展開が可能になったのではないかと推察する。印刷業界に言っておかなくてはならない「ブランディングビジネスのススメ」である。

(専務理事 郡司 秀明)