マスター郡司のキーワード解説:DDES

掲載日:2026年5月12日

先日、日本画像学会のセミナーで講演する機会があった。日本には画像関連の学会として、日本印刷学会・日本写真学会・日本画像学会・画像電子学会の4団体がある。このうち日本印刷学会は大凸を筆頭にした印刷会社がメインになっており、今のところ経営的には安泰だ。それに対して日本写真学会は国内銀塩メーカーの大手2社(海外2社も同様)が写真から遠ざかる方向なので、結構しんどい。日本画像学会は複写機メーカーが中心で、なかでもC社がメインになっていたという経緯もあり、4団体の中で経営的には一番安定しているようにみえる。画像電子学会は、もともとはファクシミリ(FAX)をきっかけにできた学会なので、独自の色合いを持っている。

製版のデジタル化を目指して

日本画像学会はメーカー中心に運営されており、セミナーの聴講者もメーカーの人間や出身者が多い。そのため、休み時間や懇親会では元メーカー同士で気安く世間話をしてしまった。やはりこの歳になると思い出話が中心で、それも年配者ばかりだと、何十年も前のムカシバナシになってしまう。
なかでも一番盛り上がったのが、CEPS(Color Electric Prepress System) と呼ばれるレイアウトスキャナに関する話題であった。とりわけ、共通フォーマットを目指して制定されたDDES(Digital Data Exchange Specification) の話に花が咲いたのであった(さすがメーカーの人間なので、少々マニアック)。

CEPSはDTPの登場前、製版をデジタル化しようとイスラエルのサイテックス社(レスポンス)が開発したレスポンスシステムに始まる。コンピュータの進化の過程と同じく、初期のコンピュータ化はメインフレームに始まり、それがパソコン化していった。CEPSがメインフレームで、DTPがパソコンだと理解すればよい。

このサイテックスに追従したのが、ドイツのDr.Hell社(のちにライノタイプヘル社となる。商品名は「クロマグラフ」) とイギリスのクロスフィールド社(「マグナスキャン」で通っていたが、通称は「レイアウトスキャナ」、正式名称は「トータルスキャナ」で「スタジオ」と呼んでいたと思う?) であった。日本では京都の大日本スクリーン製造(現:SCREENホールディングス)が「シグマグラフ」という商品名で販売し、サイテックスとバチバチ競い合っていた。

その他にもDIC(当時は大日本インキ化学工業)やコニカ、DNP(MPS)などが参戦していた。インキメーカーのもう一方の雄である東洋インキは、サイテックスの世界的な代理店としてプリプレスを引っ張っていた。

標準フォーマット策定の動き

主要なプリプレス関連会社がCEPSメーカーだったので、メーカーや使用する印刷会社同士でデータのやり取りができるように標準フォーマットを策定しようとする動きが出てきたのは、至って自然なことであった。そして、その中心になったのは、やはりサイテックスのフォーマットであったが、画像データはいわゆるビットマップデータで、CMYKやYMCKなど順番の違いはあったものの、4色セットで各ピクセルの色が表せるようになっていた(CMYK4色セットのビットマップデータである)。

DDESも印刷に特化したフォーマットであるため、あくまでも印刷のCMYK4色を前提にしており、ヘクサクロームなどの色数が多い場合にはCMYK4色をダブルで使用するなどして特色などにも対応していた。その他、サイテックスは「ラインワーク」という独自フォーマットで、チントやマスクなどのデータを持っていた。ランレングスデータというラスターデータなのだが、ここから何ピクセルは何番のチントデータ、例えばスタートから121ピクセルはNo.3のチントデータで、中身はY95% M85% C10% K0%という具合である。マスクの場合は、そのようなフラッグを立てておけばよいわけだ。

このようにサイテックスは、印刷データに特化してラインワークというランレングスデータをフォーマットに採用したのが特筆すべきコトであった。さすがユダヤ人のネゴシエーション力というべきであろうか、Photoshopにもサイテックスのフォーマットが採用されていた。また、SCREENの場合は、チントやマスクなどのデザインを作図機で作成し、ベクトルベースで作成したのだが、ラインワークとの互換性を持たせられるようにランレングス展開していたのである。

DTPの登場で過去のものに

しかし、CEPSはDTPの登場とともに、アッサリと姿を消してしまった。従ってDDESという標準フォーマットも、今や思い出話としてしか語られない。本当に短い命であった。

せっかくなので、ここで画像フォーマットの一覧を提示しておく(表1)。

(表1)

一昔前は、PSDなどの印刷に関係したフォーマットだけが重要だったのだが、現在はそんなことも言っていられないので、全てを扱えるようにしておかなければならない。しかし、かつてはコンピューサーブのGIFが画像フォーマットの標準であったが、現在はW3C勧告もあってPNGが標準というのは常識である(昔の業界人は、今でもGIFというかも?)。画像フォーマットの中にはSVGのようなベクトル系もあるので、この機会に覚えておくとよい。

(専務理事 郡司 秀明)