【マスター郡司のキーワード解説2020】ウェブ会議システムその2

掲載日:2020年9月28日

今回は「ウェブ会議システム」について考える。

JAGAT 専務理事 郡司 秀明

ウェブ会議システム(大学教育編)

コロナ禍での印刷会社は新規営業開拓が難しくなっていることもあり、ウェブ会議システムの主要ファンクションである「ウェビナー機能」を使って、自社の良いところ(差別ポイント)をアピールしている会社も多い。つまり営業の引っかけに使うのである。特に飛び込み的営業を止めて、展示会・工場見学に営業(新規開拓)の役目を移した印刷会社では、コロナの影響で展示会や工場見学ができないため、代わりをウェビナーを活用している。その後、興味を示したターゲットにウェブ会議システムで、個別アタックするのだ。

今回はウェビナーに関係した話だが、あまり印刷業界では解説されることのない大学等で行われているリモート授業のことについて述べたい。

ほとんどの大学はコロナ禍によって、2020年度の前期はウェブ授業だけになっている。実習や実験のある理系、技術系の大学は、夏休みに実習を集中的に行うようにスケジュールを組んでいるようだ。どのようなソフトを使ってウェブ授業をするかについては、それぞれの大学に任されている。

国立大学、それも旧帝大系は余裕なのか? 先生が好きなソフト(Zoom、Google、Webex、Teams、Moodle等)を使用できるようにしているようだ。

「Moodle」は世界標準(7カ国語に翻訳)を目指しているだけあって、実績等は申し分ないオープンソースのフリー「eラーニングシステム」である(株式会社イーラーニングがサポート)。
これはModular Object-Oriented Dynamic Learning Environmentの頭字語を取ったもので、大学その他の教育システム用に特化して開発されたものである。

JAGATの場合は、こういう時こその勉強ということで、通信教育を全職員に受講してもらった。理事会もウェブ会議で行うことにしている。JAGATの理事会もそうなのだが、印刷会社の会議だと20名から25名あたりが一番多い。ウェブ会議システムの中でも一番普及している「Zoom」だと、この人数くらいがちょうどよい。初めて「Zoom」を使っても、何らストレスなくできると思う。ウェブ会議が一般的になったのが、コロナ禍での数少ない良いことだと思う。ウェブ会議システムだと、一般的な会社では会議に利用するというのが多いと思うが、JAGATの場合はセミナーにも使用する。それぞれで機能が異なるオプションになっているケースも多く、JAGATの場合は「Zoom」プロアカウントにウェビナーオプションを付けて契約している。

 Moodleの開発者であるマーチン・ドウギアマスはCurtin大学(オーストラリア西部のパースにある総合大学、もともとは工科大学)で、従来の商用eラーニング環境にはなかった教育者としての視点を盛り込んだeラーニングシステム「Moodle」の設計・運用に従事した。

「Moodle」はインストールやアップグレードが容易であり、ライセンスコストは不要だ。セキュリティーや使い勝手は良いのだが、難点は基本構成が古いこともあって(プロトタイプが1999年、初期のシステム立ち上げが2001年なので20年も経っていないのだが、IT関連ソフトの進化が早すぎるので)、新しく登場したウェブ会議システムと比較して重い感じは否めない。

私が教えている日本大学芸術学部(以下日芸)では、Google for Educationを使用している。これはG Suite(最近Googleはセットで勝負している)のソフトを組み合わせて大学教育に特化させたシステムで、出欠やレポート提出、資料配付、成績管理等が簡単に行えるようになっている。当初ウェブ会議システムに関心がなかったグーグルも、やっと重たい腰を上げた感じだが、スケジュール管理等も全てリンクするので、クラウドと合わせて巨大ITシステムになる。対する「Zoom」も、スケジュール機能等を追加し始めている(Zoomがここに向かっても勝ち目がないと思うのだが?)。

日芸の場合、指定されたメールアドレスで「Gmail」にアクセスし、「Classroom」であらかじめ登録してある授業に、学生を招待する(セキュリティー対策は万全)。メインソフトがウェブ会議システムの「Meet」で、Microsoft PowerPoint等の画面共有も「Meet」で行い、Photoshop等を画面共有してデモを見せながら実際の授業をする。

私の授業は、現時点で受講生が60名(Max100名まで。近日中に増加予定)程度である。しかし先日の授業ではDTPのデモンストレーションに挑戦したのだが、ガタガタ・カクカクという状況でデモにならなかった(大学のネットワークが混雑している場合には特にガタガタになる)。このような現象は各大学で問題になっていることで、「実験のできないエンジニアや研究者、手術のできない医者、写真の撮れない写真家を育てるのか?」と真面目な先生ほど憤っている。こういった問題はいつの日かクリアされるのだろうが、現在のウェブ授業は、文系の講義でPowerPointの“紙芝居”程度なら有効だが、実体験すると対面授業の重要性を改めて思い知らされる。

(JAGAT専務理事 郡司 秀明)