最新の「延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

掲載日:2021年3月23日

印刷産業は1年間にどれだけのモノ、サービスを購入しているか。印刷物はどの産業にどのくらい1年間に購入されているか。2015年を基準年とする最新の「延長産業連関表」で見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2021その2)

同業者間取引は年々縮小、プラスチック製品、印刷インキは増加傾向

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。
日本全国を対象とした「産業連関表(基本表)」は、10府省庁が共同で5年ごとに作成していて、「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この「産業連関表(基本表)」をベンチマークとして、「延長産業連関表」を毎年作成していて、1月27日に「平成29年(2017年)延長産業連関表」を公表しました。

延長産業連関表(96部門表)の「013印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります。

『印刷白書2020』では、2020年3月公表の「平成28年(2016年)延長産業連関表」を中心に、印刷産業とその取引先産業やクライアント産業の動きを見ています。「013印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の大きい産業を「原材料等の調達先上位10産業」「販売先上位10産業」としてグラフにしています。今回は2017年延長表の公表を受けて、2017年の上位10産業に関して、2015年からの推移を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質表で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占め、順位に変動はありません。上位5産業で7割を占めています。
印刷市場の縮小を反映して2015年から2017年にトータルで5.1%減となりました。特に「物品賃貸サービス」(産業用機械器具賃貸業、貸自動車業、電子計算機・同関連機器賃貸業、事務用機械器具賃貸業など)が2015年比23.4%減、「印刷・製版・製本」が同14.7%減と大幅に減少しました。一方、「プラスチック製品」は7.5%増、「化学最終製品」(印刷インキなど)は5.0%増と堅調です。

得意先1位は「金融・保険」、出版、新聞は2位に後退

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、「映像・音声・文字情報制作」(出版、新聞など)が長年首位を占めていましたが、2017年に初めて「金融・保険」が1位となり、構成比は3位の「商業」まで同じ規模になっています。
2015年から2017年にトータルで6.9%減となり、「食料品・たばこ」「医療・福祉」だけがプラスとなりました。減少幅が大きいのは、「映像・音声・文字情報制作」17.0%減、次いで「印刷・製版・製本」14.7%減、「研究」「商業」「公務」も2桁台の減少となりました。

『印刷白書2020』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)