紙メディアの特性と優位性、その科学的表現の可能性

掲載日:2016年1月25日

紙メディアは効果や優位性の定量表現の難しさが電子メディアと比べた不利である。印刷メディアの良さを「肌触り」などの感性的表現でなく、科学的に表現するにはどうすれば良いか。page2016の基調講演では、電子メディアと比べた特性及び適切な使い分けを学術的に考える。

紙と電子、その使い分けを科学的に考える

こうしたケースはどのように考えるべきだろうか。会議やミーティングの場合、紙を配った方がいいのか?全員がパソコンを持ち込んでモニターで見たほうがいいのか?「いい」とは、環境面にいいのか、議論の効率化にいいのか、総合的にどうなのか。こうした紙と電子の比較研究は多くないものの、紙と電子の使い分け基準を科学的に示す研究結果がある。そしてその観点はCO2排出量や発話量(=議論の盛り上がり)などがあって興味深い。こうした研究を進め、その結果を知ることは、合理的な基準に基づき紙と電子を使い分けるうえで有用である。

文字校正をする場合、紙・ipad・Kindle・パソコンモニターといったデバイスごとに間違いを見つけるスピードにどのような違いがあるのだろうか? そしてより複雑な前後関係の理解を必要とする文章を読む場合、どのデバイスが向いているのか? そしてそれはなぜなのか? あるいは、紙にはどのような機能があってどのようなシーンで使えるものなのか? 状況に応じて最適なデバイスを選ぶ知識を持つことは、印刷ビジネスに有用なだけでなく豊かな人生を送る上でも有益であろう。

なぜ紙メディアの特性と優位性は知られていないのか

インターネットの特性と優位性は多くの人が知っている。インターネットは新種の後発メディアであり、導入・活用に際して誰もが勉強する必要に迫られたからだ。無形性・双方向性・検索性・同時性などはインターネットの利点として多くの人に理解され、今なお活用シーンは広がり現在に至っている。

翻って紙メディアは、誰しも生まれた時に水や空気と同様に当り前に存在したので、その特性と優位性について感覚的に知っているつもりであり、体系的に勉強した人はほとんどいない。その説明は「五感に訴える良さがある」「肌触りがいい」など感覚的になりがちで、ページビューなど効果測定のしやすいインターネットに比べて説得力を欠く。インターネットの登場から既に20年、そろそろ紙メディアについてもより研究を進めて体系立て、科学的な知識を持っていくべきであろう。

紙と電子、中立的な視点から捉えて判断する重要性

たとえば「印刷物を電子化したのでスギ○○○本相当のCO2を削減」のような表現を見ることがある。これは正しいのか? 単に印刷物のCO2だけを計算するのでなく、モニター表示の電力消費、サーバ稼働電力まで含んだ計算を示さないと本来は判断できない。要するに「紙を減らすことは環境にいい」といった一面的な予断を避けることが大切で、何が本質かを見極めることも大切だ。上述の会議の例でいえば、効率的に良い結論を導き、出席者がその会議プロセスを最大限に共有することが環境面にも恐らく最適なのである。

また、上述のように「紙は五感に訴える」といった感覚的表現も避けるべきだろう。こうした予断や感覚的表現を避けるメディアニュートラルの視点を持つことが説得力を持つ第一歩である。そして科学的な研究結果や知識を知り、それをベースに様々な判断や議論、あるいは説得をすることである。まだまだ紙と電子の比較は研究の余地を多く残すが、既に優れた研究結果もある。どういったものがあるのか、どこまで進んでいるのか、関心を払い、できるだけ知っておくようにしたい。

 (JAGAT研究調査部 藤井建人)

紙と電子の比較に関する関連セミナー

page2016では紙の特性と優位性に関する科学的な表現方法について、学術研究者による客観的な視点から考える。詳細はこちら

[基調講演]紙メディアの特性と優位性、その科学的表現の可能性
[開催日時]2016年2月5日(金)10:00~12:00
[開催場所]サンシャインシティ ワールドインポートマート5F
[パネラー]日本プリンティングアカデミー 学校長 猪股康之氏
       東海大学 工学部光・画像工学科教授 前田秀一氏
       富士ゼロックス 研究主査/東京工科大学 兼任講師 柴田博仁氏
       JAGAT 主幹研究員/早稲田大学メディア文化研究所招聘研究員 藤井建人