利益に貢献「レベニューマネジメント」

掲載日:2018年7月11日

レベニューマネジメント(Revenue Management)とは、在庫の繰り越しができないビジネスにおいて、需要を予測して売上高(レベニュー)の最大化を目ざした販売の管理方法である。近年、IT技術の進歩により、高度化がすすんでいる。供給量が限定される飛行機やホテル業では、完売して欠品になることや売れ残りが生じることがある。この管理方法により、投げ売りをせず売れ残りを防いだり、適切な時価設定など企業収益に寄与するものである。

レベニューマネジメントの特徴

そもそも競争が激しく需要変動の大きい航空業界に起源をもつ経営手法であり、閑散期と繁忙期の料金設定などを中心に管理していた。現在この手法は、レストラン、ゴルフ場、レンタカー、チケット販売など数多くの業界で活用されている。
飛行機やホテルは、供給量に制約がある一方、費用面の多くは固定費のため、利益を最大化するには売上高をより高くすることが重要である。ここで、顧客の需要をコントロールする最大の鍵は価格である。

需要の価格弾力性(価格変動に対する需要の反応度合、差別化が難しい日用品などは価格弾力性の高い商品といえる)が高い業界では、価格を下げるとその分顧客を獲得できるようになる。一方、繁忙期では黙っていてもサービス・商品が売れるので値引きする必要がなく定価を基本に売上高の向上を目指すことが基本だ。また、企業側では早期割引など異なる販売プランを用いて売上目標を目指すことが一般的である。
このようにレベニューマネジメントの具体例は、過去の実績に基づく需要予測と現在の販売状況、サービス・商品の販売時期、対象、チャネル等を考慮し、サービス・商品の販売数や価格を最適化することである。その結果、企業収益を最大化するものだ。さらにレベニューマネジメントは、短期的な売上高の最大化だけではなく、長期的成長に向けた顧客の評判にも配慮する考え方である。

販売管理が高度化するホテル業界

レベニューマネジメントは、ホテル業界にも大きく普及した。その背景には、オンライン旅行代理店(OTA、Online Travel Agent、一方リアル店舗の旅行会社はリアルエージェントと呼ばれる)の存在がある。OTAは購入者にとって利便性が高く、手数料等も低価格のため急速に拡大した。現在、宿泊施設の取引の75%がOTA経由といわれている。OTAは、ホテル側が予約状況や他社の価格を見ながら、販売価格等を決めることができる。

しかしその反面、価格はネット上に公開され、さらにOTA同士を横断的に検索するサイトさえもあり、価格を容易に比較されるようになった。たとえば、ホテルが売れ残り客室を格安価格でOTAに掲載すると既存顧客に知れ、予約の乗り換えというリスクもある。これらを防止するには、正確な需要予測のもと販売計画を立て、売れ残りを出さないようにする販売管理が重要になる。

アパ vs. 東横イン

近年、アパホテルの価格変動の大きさは有名な話だ。同ホテルでは稼働率に単価を掛けた指標をもとに支配人の裁量によって価格を決定し売上最大化を目指している(ただし、正規料金の1.8倍上限設定、下限なし)。結果として稼働率は100%近いという実績だ。
一方、アパとは異なる料金戦略をとるビジネスホテル最大手は東横インだ。ここでは上限7800円(シングル)を設ける経営手法をとっている。余談だが支配人にも女性を登用し「女将のおもてなし」をコンセプトに安心感と値頃感を打ち出し一定価格を貫いている。その他、アパは駅近、ベッドやTVの大きさなどで差別化を図っている。価格変動、皆さまはどうお考えでしょうか。

(西部支社長 大沢昭博)

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