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2021年の印刷ビジネスと技術を総括

コロナ禍によって、社会生活も印刷市場も大きな影響を受けている。例えば、大規模なイベントが中止・延期や規模縮小となり、本来であれば準備すべき印刷物を製作しない、といったことも増えている。コロナが収束するまでの一時的な動きとも考えられるが、印刷物の内容や分野によっては、デジタル配信などへ移行が進むことも考えられる。

そのような中でも、新たなソリューションや技術が開発され、実用化が進んでいる。つまり、新しい手段を活用し、さまざまな課題や困難を克服することで、新しいビジネスの機会が生み出される。

近年は、インクジェットや電子写真方式などデジタル印刷と製本・加工技術が大きく進展している。従来であれば、すべてオフセット印刷で賄っていたところを、オフセットとデジタルを適宜使い分けることが、実用的でリーズナブルとなりつつある。つまり、新たな需要が生まれている。
必要に応じて再少部数だけをデジタル印刷で生産し、配送することも、特別なことではなくなっている。

さらには、急速に成長するデジタルマーケティングとデジタル印刷を融合することで、新たな印刷ビジネスが生まれた事例も数多く見られるようになっている。

「JAGATトピック技術セミナー2021」は、この1年に発表された注目製品・技術をピックアップし、印刷技術のトレンドを見定めるもので、これらの製品・技術を各メーカーに解説していただく。
2021年の印刷ビジネスと技術を総括し、未来を創造するためのヒントを含んだ内容となっている。

■JAGATトピック技術セミナー2021オンライン
12.21 (火) 13:30 – 17:00
JAGAT会員:無料(人数制限なし) 一 般:5,000円(税込)

(研究調査部 千葉 弘幸)

B2B2Cモデルに挑戦する印刷会社

一般に、消費者(Consumer)向けの製品やサービスを提供するビジネスをB to C(Business to Consumer)モデルという。B2Cと表記することもある。それに対して、企業対企業のビジネスが、B to B(B2B:Business to Business)モデルである。

印刷会社の事業は、特定の顧客企業との取引がほとんどであり、典型的なB2Bモデルである。ただし、近年の印刷通販・ネット印刷は、一般ユーザー向けと企業・法人ユーザー向けの両方の取引を含んでおり、B2CとB2Bの混合タイプと言えるだろう。

また、顧客企業のB2Cをサポートするビジネスを、BtoBtoC(B2B2C:Business to Business to Consumer)モデルという。代表的なものとして、商品を消費者に届ける流通業などがある。

近年ではECのマーケットプレイスを指して、B2B2Cモデルということもある。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピング、ZOZOTOWN等々のECサイトを運営する企業は、商品を販売する場所(プラットフォーム)を提供することから、プラットフォーマーとも呼ばれている。

B2B2Cモデルに挑戦する印刷会社

キャラクターや著名人などの画像の権利を保有する企業に対して、フォトブック・カレンダー販売のプラットフォームを提供している印刷会社がある。

Webサイト上でコンテンツを検索し、消費者自身が望む写真を選択して、フォトブック・フォトカレンダーを注文する。そうすると、指定された写真が掲載された製品が届けられる。つまり、この印刷会社はコンテンツを保有する企業にプラットフォームを提供し、消費者、つまりエンドユーザーの注文に応じてフォトブック・カレンダーを製造し、発送する。このようなプラットフォームを通じて、B2B2Cモデルを実現している。

現在、プロサッカーチームに、このプラットフォームを提供している。ファンは自分の好きな選手やシーンの写真を選択し、自分だけのフォトブック・カレンダーを注文することができる。球団は、自社サイトでカスタマイズしたフォトブック・カレンダーを販売することができる。ファンが望む選手や激闘シーンのコンテンツを形にして、ファンに提供することができる。

プラットフォーマーである印刷会社には、営業レスで日々注文が入る、という三社にメリットのあるシステムとなっている。

今後は、スポーツチームを始め、さまざまな分野でコンテンツを保有する企業に売り込む計画だという。

(研究調査部 千葉 弘幸)

関連セミナー: 11/30(金)「フォトイメージングの 現在・未来」

印刷トラブル!と人間模様 『印刷ボーイズに花束を』発売!

ウェブマガジン「GetNavi」に連載中で印刷業界ネタ満載のマンガ『今日も下版はできません!』の書籍版、シリーズ第3 弾の『印刷ボーイズに花束を』が発売された。

印刷トラブル!と人間模様

専門性の高い職業を舞台にしたお仕事マンガは、以前から人気の高いジャンルの一つである。

印刷ボーイズに花束を(表紙)

『印刷ボーイズ』シリーズは、数少ない印刷業界を描いたマンガの一つである。中堅印刷会社の「ナビ印刷」の営業部に所属する刷本正(すりもと・ただし)を中心に、営業部・製版部・工場のスタッフたちが奮闘し、連日のように襲いかかる難題や客先からの無理な注文に対処していくストーリーが魅力的である。

毎回さまざまなトラブルに見舞われては何とか対処していく姿に、思わず笑いがこぼれてしまう。また、一話ごとに印刷に関する知識がストーリー中で解説されているため、一般の読者にも自然に理解できるようになっている。

今回のストーリー中では、「DTPエキスパート試験」「広色域印刷・シズル感」「活版印刷」など、興味深い内容が盛り込まれている。

新人の営業マンが本格的に印刷知識を習得しようとDTP エキスパート試験を目指し、製版部の女性スタッフと勉強会を行っている。それを知った先輩社員(この女性に気がある)は、最初は「試験なんて」と反発していたが、結局は一緒に勉強し、そろって合格する。

また、RGB にこだわるデザイナーの要請から広色域インキで対応することとなり、さらに得意先担当者が「シズル感」に執着したことから、高精細印刷にまで発展したという話も収録されている。その結果、シズル感あふれる立派な料理本が完成し、発売後は大評判になる。

活版印刷の達人が手掛けた名刺が、各界の大物たちに評判の「幸運の名刺」として有名になるというストーリーもある。

トラブルやクレームだけでなく、印刷を通じた夢のある内容も盛り込まれている。

印刷の実体験をベースに

本誌2020年2月号では、作者である奈良裕己氏へのインタビューを掲載している。奈良氏は大手印刷会社の営業マン出身である。愛すべき印刷会社の日常や個性豊かなキャラクターを描きたい、世の中に印刷の楽しさや奥深さを知ってもらいたいという思いで作品を描いていると、熱く語っていた。

また、作品のキャラクター設定は、少し怖いけれど頼りになるような現場の方たち、印刷が大好きで仕事に一生懸命な営業スタッフなど、実在する人をヒントに設定されているそうだ。印刷会社時代にはDTPエキスパートも取得されており、スキルアップの大切さを実感したそうである。

『印刷ボーイズ』シリーズには、印刷会社の日常や楽しさが存分に描かれており、印刷人必読といえるだろう。未読の方がおられたら、電子版ではなく紙版の書籍を購入して読んでもらいたい。
紙版の良いところは、周囲の人と読書体験を共有できることである。ぜひ『印刷ボーイズ』の楽しさを共有してもらいたい。

(資格制度事務局 千葉 弘幸)

※(JAGAT Info 2021.10月号より抜粋)

印刷ボーイズに花束を 業界あるある「トラブル祭り」3
株式会社ワン・パブリッシング

静かに浸透する電子図書館サービス

2020年から2021年にかけて、コロナ禍や緊急事態宣言の余波で公共図書館が相次ぐ事態となった。また、大学でも大学構内や図書館などへの立ち入り制限が行われている。このような状況への対応策として、電子図書館や電子図書館サービスに注目が集まっている。

本格普及が近づく

電子図書館とは、広義ではインターネット経由で書誌・文献を検索するサービス、電子書籍や音声・映像などデジタルアーカイブを提供し、利用するサービス、あるいはこのようなシステムを備えた図書館などの総称である。

国内では、公共図書館などが紙の図書の貸出しに加えて、電子書籍の貸出しを行う事例が増えており、これらを電子図書館とすることも多い。

公共図書館などで実施されている電子図書館とは、インターネット経由で貸出し可能な電子書籍を検索し、一定の期間内に閲覧することができるサービスである。期間が終わると、自動的に閲覧することができなくなる。図書館に来館し、窓口にて図書の貸出し・返却する手続きも必要ない。

また、大学図書館などでは、電子ジャーナルやデータベース、電子書籍などを随時閲覧するサービスが行われている。特に貸出期限などの概念もなく、必要な箇所を閲覧したり、データ利用することもできる。

電子図書館のメリットとして、第1に挙げられるのは、インターネット経由で24時間、いつでもどこでもアクセス可能であることが挙げられる。電子書籍であるため、テキスト読上げや文字拡大など、アクセシビリティ改善も実現可能である。デジタル化により資料の劣化防止や保管・事務作業を軽減することもできる。ネットワークに接続さえできれば、PCやOS、スマートフォン・タブレットの種類にかかわらず、アクセスして利用することができる。

既存の公共図書館などでは、その規模や立地、蔵書、設備や人員など、個々の施設の充実度は同等ではなく、地域格差が大きいことは明らかである。今後、電子図書館サービスが普及すると、そのような格差を解消することもあるだろう。

一方で、現時点では発展途上のサービスであり、貸出可能な電子書籍やコンテンツが不足していること、公共図書館などでは予算措置が十分でないことなどが課題となっている。

電子図書館サービス事業の特徴

公共図書館の多くは、民間の電子図書館サービスを利用して電子書籍の貸出しを実施している。現在、このようなサービス事業を提供している主な事業者として、下記がある。

■図書館流通センター(TRC) 『LibrariE & TRC-DL』

大日本印刷、日本ユニシス、図書館流通センター、丸善などDNPグループが開発・販売するクラウド型電子図書館サービスであり、国内実績でNo.1となっている。提供しているサービスの『LibrariE』は、後述の日本電子図書館サービスによる。

■メディアドゥ 『Over Drive』

 2014年に米国Over Drive社と戦略的業務提携をおこない、電子図書館サービスに参入した。Over Drive社は、世界No.1規模の電子図書館プラットフォーム企業。

■丸善雄松堂 『Maruzen eBook Library』

丸善雄松堂が開発・運営する教育・研究機関向け電子書籍提供サービスで、専門書や教養書、学術雑誌などを中心としている。

■紀伊國屋書店 『KinoDen(キノデン)』

紀伊國屋書店が提供する学術系和書の電子図書館サービス。

■日本電子図書館サービス(JDLS) 『LibrariE(ライブラリエ)』

2013年、KADOKAWA、紀伊國屋書店、講談社により設立された企業で、電子書籍貸出しサービスを行っている。2016年に大日本印刷、図書館流通センターが資本参加している。

■ネットアドバンス 『ジャパンナレッジ』

2001年、小学館によって設立された企業。80種類以上の百科事典や辞書などを一括検索し、情報を入手できるサービスを展開している。大学図書館を中心に、公共図書館や中高、一般企業向けにも提供されている。

■国立国会図書館のデジタル化事業

国立国会図書館は、2001年から所蔵資料のデジタル化を進めており、インターネット上で閲覧するサービスを提供している。

期待されるサービス

コロナ禍によって、企業ではテレワークの導入が進められている。また、大学や高校でもオンライン授業が増えている状況がある。さらに、小中学校ではGIGAスクール構想が前倒しで進められている。このような状況の中で、図書館の利用形態として、電子図書館サービスの比重が大きくなっていくことは必然だと言える。

電子出版制作・流通協議会が発行する『電子図書館・電子書籍貸出サービス調査報告2020』によると、図書館流通センター(TRC)の図書館向け電子書籍サービスにおける2020年4月の貸出実績は前年比423%、同5月では526%と急増したという。また、同年4月時点の電子図書館導入は96自治体であったが、10月時点では114自治体となった。

今後も、教育・研究機関において上述のような電子図書館やサービスの利用が増えていくこと、また、公共図書館においても電子図書館サービスがさらに充実されていくことが予想される。

(研究調査部 千葉 弘幸)

定着しつつあるオンライン校正

2020年4月に新型コロナウイルスに関わる最初の緊急事態宣言が発出されて、1年4ヶ月以上経過した。現在も、多くの都道府県で爆発的な感染拡大の状況となっており、未だコロナ禍の収束を見通すことができない。

印刷ビジネスにおいても、クライアントおよび印刷会社の双方で、広くテレワークが実施されている。そのため、従来のような校正紙のやりとりから、オンライン校正に移行するケースが急速に拡大している。

PDFを介した校正や、ワークフローRIPのオンライン入稿・校正・検版機能は、以前から実現されていたが、実際にはそれほど浸透していなかった。校正紙のやり取りに慣れた発注関係者や営業担当者に、新しい業務フローを提案することは容易ではなかったためである。

デザイン制作や出版物の編集制作におけるオンライン校正は、オフィスでも自宅でも校正作業がおこなえ、一斉通知やチャット機能により関係者間のコミュニケーションも容易である。プロジェクト全体の進行状況を共有することもできる。

印刷会社では、印刷入稿から赤字校正・プリフライト・デジタル検版などをオンライン化することで、顧客サービスや納期短縮、品質管理の面で大きな効果を上げることができる。つまり、オンライン校正は印刷ワークフローのDXそのものだと言える。

実際にオンライン入稿・校正に移行した印刷会社のほとんどが、社内業務の大幅な効率化と顧客サービスの向上を実現しているという。クライアントからの評価も高いようだ。

印刷物特有の色校正をどうするかは、引き続き課題とされるだろう。しかし、コロナ禍が収束したとしても、オンライン校正が印刷ワークフローのスタンダードとして、このまま定着することは間違いないといえる。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

デザイン制作スキルが求められるDTPエキスパート・マイスター

2段階制となったDTPエキスパート

DTPエキスパート認証試験は、2020年3月の第53期試験より創設以来の大きな制度変更を行った。つまり、学科試験だけの「DTPエキスパート」と、学科+実技試験の「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制である。これまでに3回、新方式の試験が実施された。

改定以降、「DTPエキスパート」の受験者数が徐々に増加している。やはり、学科試験だけのDTPエキスパートのニーズが小さくなかったことが伺える。例えば、営業部門の方や若手社員にとって、この試験は基本的な知識を習得する機会として、取り組みやすい目標となっているではないか。

マイスター試験とデザイン制作スキル

一方、「DTPエキスパート・マイスター」は従来と同様の学科試験+実技試験である。しかし、実技試験の内容は大幅に変更されており、デザイン制作の能力を審査している。

従来の試験は、「印刷データ」と制作作業を分担するための「制作指示書」を提出するものであった。採点においては、印刷データとしての完成度が最重要であり、デザイン内容を重視しないとの不文律があった。

それに対して、新たな「DTPエキスパート・マイスター」は、印刷データ制作のエキスパートであることはもちろん、デザイン制作のエキスパートでもあることを想定している。クライアントや編集者の意図に応じて、伝えたい内容やターゲットを整理すること、デザイン・レイアウトを通じて表現できることが求められている。

実技課題においては、そのプロセスを「制作コンセプト書」として記述し、「印刷データ」と併せて提出する。

読者にもっとも伝えたいことは何か、全体のバランスや優先度によって重点を置くところはどこか、それらを表現するために、どのようなデザイン・レイアウトを行うのか。コンセプト書では、「全体コンセプト」「レイアウト」「組版」「配色」などの項目ごとに、デザインの考え方、留意した点などを記述する。

誌面データは、印刷データとしての完成度は当然ながら、デザインの完成度が審査される。メインの画像や見出しの配置、書体の選択が適切かどうか、本文の設定や視線の流れに問題はないか、情報が整理されて理解されやすくなっているか、など総合的な観点で採点される。

受験される方は、この機会にデザイン力・デザイン制作スキルとは何か、改めて見直すことをお勧めしたい。大学や専門学校などグラフィックデザインを学んだ方は復習を、そうでない方は関連書籍などで体系的に見直してはいかがだろうか。

「DTPエキスパート・マイスター」の学習を通じて、デザイン制作のエキスパートとしてスキルアップすることを目指してもらいたい。

JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸

■関連セミナー
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生活者の行動様式の変化と成長するネットサービス

コロナ禍による「緊急事態宣言」が初めて発出されたのは2020年4月であり、それから1年余が過ぎた。外出自粛や大規模イベントの中止など、生活者への影響は多大なものとなっている。一方、このような状況下で成長しているビジネスもある。

利用が急増したフードデリバリーサービス

例えば、フードデリバリーは、スマートフォンからメニューを選び、注文するだけで、自宅まで配送してもらうサービスである。複数店舗のメニューを一覧し、注文できる出前・宅配のWebサイトは、10年以上前から存在していた。しかし、2016年にUber EATSが日本に上陸したことで脚光を浴び、フードデリバリー市場全体の活性化につながった。

それまで「出前を頼む」となると、自宅や職場にあらかじめ保管された「メニュー表」の中から食べたいものを選び、直接、飲食店に電話で注文する必要があった。しかし、出前を受け付ける飲食店や対象地域はかなり限定されており、近所の中華料理店・蕎麦店などの一部である。それ以外では、ピザや寿司の宅配専門店程度であった。

現在のフードデリバリーサービスは、 飲食店にとって 追加投資なしに注文を受けることができ、売上を増やせる機会である。事前にメニューを印刷して、近所に配布することも必要ない。注文時の電話対応や配達、料金を受け取るために釣り銭を用意することも不要で、デリバリーサービスが代行してくれる。

スマートフォンのアプリでは、近隣でデリバリー可能な店舗とメニューが一覧表示され、利用者は幅広い中から好きなものを簡単に注文することができる。

そして、2020年より巣ごもり需要などで、利用者・登録店ともに急増し、フードデリバリー市場全体が拡大する状況となっている。当初は、スマートフォンやネットショッピングに馴染みのある若者が中心とされていたが、ファミリー・高齢者世帯など幅広い年齢層の利用が増えているようだ。

ネットスーパーと食材宅配ビジネス

同様に、2020年に市場が拡大したものに、ネットスーパーと食材宅配サービがある。

ネットスーパーは、自宅からスマートフォンのアプリで注文するだけで、買い物を済ませられるサービスである。宅配や店舗受け取りなど、配送方式も多様化している。外出自粛などの影響で、新規登録者数が2倍から3倍に伸長した事業者もあるという。

食材宅配サービスは、生活者のライフスタイルや年齢層に合わせたセットを用意し、さまざまなニーズに応えている。たとえば、栄養バランスや減塩などに配慮した健康サポート食品、子育て世帯に向けた離乳食・幼児食シリーズや忙しい主婦の手間を減らす簡単料理パッケージなどもあり、多くの支持を集めている。

コロナ禍によって、レストランなどで外食する機会が減少している。そのため、自宅で調理を行う内食(ないしょく・うちしょく)、惣菜や弁当などを購入して自宅で食べる中食(なかしょく)の需要が大きくなっている。
食材調達を担うネットスーパーや食品宅配サービスの進化によって、生活者の意識と行動スタイルは大きく変化していくだろう。一過性の現象と見る向きも多いが、多様な年齢層の利用者が増えており、今後も定着していく可能性が高いといえる。

変化に適応することの重要性

フードデリバリーサービスやネットスーパー・食材宅配サービスは、以前から存在はしていたが、それほど大きな潮流とまではいえないものであった。

しかし、生活者の行動様式が変化したことで浸透し、定着しつつある。イノベーター理論でいうアーリーアダプター(新製品や新技術、流行に敏感で自ら判断し購入する層)から、アーリーマジョリティ(新製品に慎重で価格・品質を重視する層)に進展したといえるのではないか。

このような行動様式は、コロナ禍が収束したとしても、定着すると考えられる。このような変化に常に注意を払い、適応していくことが必要といえるだろう。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

DTP導入と印刷工程デジタル化の到達点

『新版DTPベーシックガイダンス 』を発刊

2021年2月、『新版DTPベーシックガイダンス~DTPエキスパートカリキュラム準拠』を発刊した。

本書は以前から販売していたDTPの入門書『DTPベーシックガイダンス』を改訂したものである。DTPに関する基礎的な知識にフォーカスし、豊富な図版を掲載、初心者にもわかりやすい言葉で解説している。

DTP導入と印刷工程のデジタル化

DTPは、Desktop Publishingの略で、日本語では「卓上出版」と訳されることが多い。
しかし、Desktopにはもう一つの意味があり、メニューバーやアイコンが並ぶOSの初期画面のことを指すことがある。つまり、DTPとは、PCだけでPublishing(出版)を完結することを表している。

国内でDTPが導入されたのは、1990年代である。欧米のアプリケーションが日本語化され、話題になった。しかし、当時はフォント環境やカラー品質などの出力環境に制約があり、誰もが使える状況ではなかった。ソフトウェアの完成度もけして高くなく、クラッシュすることも珍しくなかったのである。さらに、欧米発のソフトウェアは日本語組版レベルが低く、縦組みは非実用的であった。

雑誌などの定期刊行物や書籍、大量ページの総合カタログなどの制作工程で、DTPが本格的に採用され、普及したのは、2000年代の半ば頃だろう。この頃には、ネットワーク環境も整備され、一般のオフィスでもPCの導入台数が飛躍的に増えていた。ソフトウェアの完成度も高くなり、実用化レベルといえる。

DTPの普及と同時に進展したのは、印刷工程のデジタル化である。

DTP以前は、写真原稿(ポジフィルム)を製版スキャナーでスキャンし、CMYKにセパレーションしていた。1990年代には一般用のデジタルカメラが発表されたが、画素数も粗く印刷業務には使えないとされていた。その後、高精細・高品質化が進展し、2000年代の後半頃に主流となったのである。フィルムという中間材料や現像コストの存在が、デジタル化を後押ししたと考えられる。

印刷工程では、2000年前後頃にCTPの導入が進んだことで、フィルム製版やPS版に焼き付ける刷版工程が不要となった。同時に平台校正機が徐々になくなり、デジタルデータを出力するインクジェットプルーフなどに置き換わっていった。
さらには、Japan ColorやICCプロファイルを利用した標準印刷の考え方が広まることとなった。

印刷データ制作のデジタル化がほぼ完成したことで、電子写真方式やインクジェットなどの本格的なデジタル印刷機器の導入も増えていった。デジタル印刷機器が本格的に導入され始めたのは2000年代の終わりころではないだろうか。

このように、DTPが実用化されたこと、印刷工程のデジタル化が進んだことで、現在の印刷工程があるといえる。

DTP・印刷工程の基礎を身に付ける

DTPシステムが発展途上の時期には、トラブルを回避するための暗黙知やノウハウが必須であった。
また、毎年のように新しいデジタル技術が登場するため、最新の技術動向や知識をキャッチアップする必要があった。
そのため、DTPや印刷工程の解説書、用語集なども多数、発刊されていたのである。

現在は、DTP・印刷工程は成熟しつつあり、ワークフローの大きな変化を伴う技術革新は少なくなっている。

しかし、初めて印刷業界に関わった方、他の分野から印刷業務に関わるようになった方には、基礎的な知識をしっかり身に付けていただきたい。

DTPエキスパートエキスパート認証試験は、そのための手段としてたいへん有効である。多くの業界人がこの試験を通じて、幅広い知識を習得してきた。基礎的な知識を網羅することができ、印刷工程全体を見通す力を習得できる。

『新版DTPベーシックガイダンス』を通して、これらの学習を進めてもらいたい。DTPの経験者にとっても知識の再整理に役立つだろう。

(JAGAT 千葉 弘幸)

第55期DTPエキスパート認証試験 新出題項目

2021年3月14日(日)に実施する第55期DTPエキスパート認証試験の新出題項目を、下記の通り発表します。

■新出題・修正項目

(1)オンライン校正

(2)シャープ処理の方法

(3)写真の切抜き

(4)行の調整と文字アキ量

(5) レイアウトの基本原則

(6)見出しの組み方

(7)PCの文字・フォント環境

(8)UDフォントと教科書体

(9)購買行動プロセスモデルの変遷

(10)USB・ Bluetooth


上記の項目がそのまま問題数と対応するわけではありません。項目によっては2つ以上の出題になる場合があります。
また、新出題にともなって従来問題の入れ替え、統合、削除や改訂を行ないます。その結果、新出題項目を中心として全体の10~20%程度の問題が入れ替わることになります。

ご注意

この発表はあくまでも新項目であり、新問題の発表ではありません。
試験の公平性維持の観点から、詳細な情報提供は行いませんのでご承知下さい。

(JAGAT 資格制度事務局)

デザイン制作のエキスパート「DTPエキスパート・マイスター」

DTPエキスパート、2段階制移行の意義

DTPエキスパート認証試験は、2020年3月の第53期試験より創設以来の大きな制度変更を行った。つまり、学科試験だけの新「DTPエキスパート」と、学科+実技試験の「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制に移行した。

DTPは、言うまでもなくデジタルデータとして印刷物を制作する技術であり、従来のDTPエキスパートでは制作実務を重視していた。そのため、学科+実技試験の両方をクリアすることを合格の条件としていた。

しかし、近年は営業担当者や営業企画部門の方の受験も増えている。DTPエキスパートを通じて社員の教育・スキルアップを図ろうとする関係者の方々からは、「実技試験があるために受験を見送り、結果的に学習の機会を逃している」という声もある。

見方を変えると、DTPエキスパート試験は学科試験だけでもバランス良く知識を身に着け、印刷業界の共通言語を理解することができる、ということである。

そのような議論を重ね行きついた結果が、今回の「DTPエキスパート」と「DTPエキスパート・マイスター」の2段階制である。

デザイン制作のエキスパート「DTPエキスパート・マイスター」

すでに3月、8月の2回の試験を終えた。
「DTPエキスパート」の受験者数が大幅に増加(8月試験、前年同期比約150%)していることから、学科試験だけの新DTPエキスパートのニーズが小さくなかったことが伺える。

一方、「DTPエキスパート・マイスター」は従来の実技試験より、合格率が低下している。
・第54期試験:実技試験合格率(54.1%)
これは、マイスター以降に伴い、出題形式・採点方法を大きく変更したことから、やむを得ないといえる。

従来の実技試験は、「誌面データ」と「制作指示書」を提出するものであった。採点においては、印刷データとしての完成度が重視され、デザイン内容を重視しないとの不文律があった。

新たなマイスター実技試験では、「誌面データ 」と「制作コンセプト書」を提出する。与えられた課題やターゲットに応じて、どのような制作意図を持っているのかを記述すること(制作コンセプト書)、制作意図が誌面に反映されているかを審査している。

すなわち、新たな「DTPエキスパート・マイスター」は、データ制作のエキスパートであることはもちろん、デザイン制作のエキスパートでもあることを想定している。

新「DTPエキスパート」に合格された方も、DTP制作に携わられている方も、「DTPエキスパート・マイスター」の学習を通じて、デザイン制作のエキスパートとしてスキルアップすることを目指してもらいたい。

JAGAT 研究調査部 千葉弘幸

関連セミナー

2020年12月25日(金) DTPエキスパート・マイスター実技ポイント解説<オンライン開催>