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エレクトロニクス事業が好調の大手2社

『印刷白書2018』(10月25日発刊)の上場企業分析では、社名もしくは特色に「印刷」とある33社を対象とした。売上高構成比を見ると、出版印刷、商業印刷を主力とする企業は少数派となっている。(数字で読み解く印刷産業2018その8)

印刷技術を核とする33社をリストアップ

印刷白書では2011年版から上場企業分析を行っていますが、上場印刷企業のリストは毎年少しずつ変化しています。

印刷業からスタートしたヴィア・ホールディングスは、2013年4月に暁印刷を共立印刷に売却し、印刷業から完全撤退したことからリストから消えました。2015年7月にクレステック、2016年3月に中本パックスが上場し、リストに加わりました。

また、三浦印刷は大王製紙によるTOB(株式公開買付)により、2017年5月29日に上場廃止となりました。2017年3月期の決算短信は公開されましたが、有価証券報告書は作成されていないので、従業員の状況、研究開発活動、設備の状況などが不明で、『印刷白書2017』に掲載した図表の一部に数字が入っていません。

現在編集中の『印刷白書2018』では、前年リストの33社のうち、三浦印刷を除き、2018年5月31日上場のラクスルを追加しました。
印刷白書では、各社の業績を決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2017年6月期から2018年5月期までを2017年度としています。そのため2018年7月期が上場後最初の提出となるラクスルに関しては、今回は分析の対象としていません。

そして、10月18日にプリントネットが上場を予定していますので、次年度版の印刷白書のリストはまた変更されることになります。

上場印刷企業33社の2017年度業績を見ると、増収増益が前期の7社から15社に増加しました。上位2社はエレクトロニクス部門の好調により、トッパングループが売上高1兆4527億円(前期比1.5%増)、経常利益546億円(同9.9%増)、DNPグループが売上高1兆4122億円(同0.1%増)、経常利益509億円(同38.7%増)で、前期の減収減益から増収増益に転じました。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

 

関連情報「デジタル×紙×マーケティング」

今年のJAGATのテーマは「デジタル×紙×マーケティング」。2018年10月25日に開催する「JAGAT大会2018」では、これからの経営・マーケティング戦略について考えていきます。参加者にはJAGATの最新刊 『印刷白書2018』 をお持ち帰りいただきます。

『印刷白書2018』(10月25日発刊予定)の上場企業分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。

 

産業連関表を取り上げる理由

印刷産業の生産にどれだけのモノ、サービス、ヒトが投入されているか。印刷産業の生産が国内の他産業へ及ぼす影響はどれくらいか。そのような疑問を解消するカギが「産業連関表」にある。(数字で読み解く印刷産業2018その5) 続きを読む

2016年度の情報通信業売上高は最高値を更新

「情報通信業基本調査」(2016年度実績)によれば、情報通信業の売上高は50兆7,425億円で最高値を更新。個別業種ではウェブコンテンツ配信業と情報処理サービス業が5年連続の増加となった。(数字で読み解く印刷産業2018その3) 続きを読む

「オフセット印刷物(紙に対するもの)」の事業所数は26都府県で第1位

2016年の印刷産業の事業所数(全事業所)は14.3%減、東京、大阪、埼玉、愛知で4割を占める。都道府県別産出事業所数は「オフセット印刷物(紙に対するもの)」が不動の1位となった。(数字で読み解く印刷産業2018その1)

印刷産業(全事業所)の事業所数は、昨年末に公表された最新の調査結果(総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」)によれば、2万2140事業所(2016年6月1日現在)で、前回調査の「平成26年工業統計表 産業編」(2014年12月31日現在)に比べて14.3%減となりました。

都道府県別に見ると、東京都が4256事業所(全国の19.2%)と最も多く、大阪府2420事業所(同10.9%)、埼玉県1543事業所(同7.0%)、愛知県1358事業所(同6.1%)と、都市圏が上位を占めています。増加率では47都道府県のすべてで減少し、最も減少幅が大きいのが東京の23.1%減、次いで大阪・佐賀の17.8%減、愛媛の17.3%減となりました。

次に人口に対する事業所数で見ると、東京に次いで、人口78万人の福井が事業所数241で2位となり、以下大阪、京都、長野、岐阜と続いています(下表参照)。福井県は眼鏡の産地として有名で、一番多い事業所は「眼鏡枠」ですが、次に多いのが「オフセット印刷物(紙に対するもの)」の事業所なのです。47位は人口623.6万人の千葉(事業所数472)、46位が914.5万人の神奈川(同743)、45位が山口、44位が鳥取、43位が長崎、42位が滋賀と、下位6県は前回と同じ顔ぶれとなっています。

1月19日に経済センサスの参考表として、「製造業(品目編)における都道府県別上位1~3位品目の産出事業所数及び出荷金額」が公表されましたが、1位「オフセット印刷物(紙に対するもの)」、2位「その他の製缶板金製品」、3位「その他の製造食料品」と例年どおりの順位となりました。

これを都道府県別にみると、「オフセット印刷物(紙に対するもの)」は東京1217事業所、大阪696事業所、愛知436事業所の3都府県合計で産出事業所数の3割強を占めています。この状況は、現在の品目分類となった2008年調査から変わらないものです。ちなみに2016年調査では26都府県で第1位品目、12道県で第2位品目、4県で第3位品目となっています。

印刷産業の事業所が存在しない県は一つもないことからも、印刷産業の裾野の広さがよくわかります。また、東京だけが1位から3位を「オフセット印刷物(紙に対するもの)」「写真製版」「紙以外のものに対する印刷物」と、印刷・同関連品が独占し、東京の地場産業が印刷産業であることが統計からも明らかになっています。

2008年より前のデータを見ると品目分類は違いますが、1位の「平版印刷物(オフセット印刷物)」が突出し、2位以下が半分程度という状況は、1996年ごろから続いています。ただし、1996年の時点では「凸版印刷物(活版印刷物)」が8位、「写真製版(写真植字業を含む)」が19位と、印刷・同関連品の産出事業所が上位30品目に3品目入っていることが大きな違いです。その後、凸版印刷物は徐々に順位を下げ、2007年の27位を最後にランク外となり、写真製版は2000年ごろまで20位前後を維持していましたが、2002年の29位以降はランク外となりました。平版印刷物の1位は1993年から現在まで続いていて、ここからも印刷需要の根強さがうかがえます。

 

JAGAT刊『印刷白書2017』では印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝えきれないことなどは「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT 吉村マチ子)