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page2023で印刷・DTPの入門書、専門書、実務書を販売します

「page2023」展示会場Bホール(文化会館4F)のJAGATコーナーでは、印刷・DTPの入門書、印刷関連の実務書、専門書、『印刷白書』をはじめとするJAGATオリジナルレポート。その他各種書籍を販売します。通常、書店等ではほとんど目にすることができない刊行物を、直接お手にとってお確かめください。 続きを読む

コンビニ売上高は過去最高、スーパーは3年連続増、百貨店はコロナ禍前の9割まで回復

2022年の大手小売業売上高は、スーパーが3年連続増、百貨店とコンビニは2年連続増と回復基調にある。クライアント産業の業績は、印刷会社の需要にどの程度影響するのか。(数字で読み解く印刷産業2023その1)

コンビニ店舗数は横ばい、スーパー・百貨店は減少

印刷産業の得意先産業は、出版、小売、金融、広告などが大きな割合を占めています。
2022年の紙の出版市場は、前年比6.5%減の1兆1292億円(全国出版協会・出版科学研究所推定)にとどまり、2020年、2021年と続いたコロナ特需が終息し、物価高の影響で書籍・雑誌を買い控えたものと思われます。
この間の印刷業の生産金額を見ると、出版印刷は減少傾向が続いていますが、商業印刷は2020年の大幅減から、2021年は増加に転じ、2022年上期は微増となっています(経済産業省生産動態統計)。

2022年の小売業界については、1月下旬に発表された大手小売業の販売概況を見てみましょう。

日本フランチャイズチェーン協会は1月20日、2022年末の全国のコンビニエンスストア店舗数を5万5838店(2021年末は5万5950店)と発表しました。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど、正会員7社の店舗数を集計したもので、2019年2月末の5万5979店をピークに店舗数はほぼ横ばいです。

一方、大手スーパーなどを会員とする日本チェーンストア協会が1月25日に発表した、2022年末の会員企業56社の店舗数は1万683店で、過去最高となった前年の1万1897店から1214店減少しました。

日本百貨店協会が1月24日に発表した2022年末の百貨店店舗数は71社185店(2021年末は73社189店)、地方の不採算店の閉店が続き、ピークだった1999年(140社311店)から4割減少しています。

スーパー売上高は堅調、コンビニは過去最高に

次に2022年売上高を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆2656億円(前年比0.4%増)、2008年以来の高水準で、3年連続で前年を上回りました。
全体の約7割を占める食料品は、4月以降の行動制限緩和で、内食需要が減少傾向となったが、10月の値上げラッシュの影響で堅調に推移しました。また、消費者の行動範囲が広がったことで旅行グッズなどの住居関連品が好調でした。

コンビニの全店売上高は11兆1775億円(前年比3.7%増)で、コロナ禍前の2019年を上回り、過去最高となりました。人流回復に対応した商品開発や品ぞろえにより、おにぎり、弁当、冷凍食品などの売れ行きが好調で、客単価も711.5円(同2.8%増)と8年連続で増えました。値上げラッシュとまとめ買いが客単価を押し上げましたが、来店客数は0.9%増にとどまりました。

百貨店売上高はコロナ禍前の9割まで回復

全国百貨店売上高は4兆9812億円(前年比12.7%増)で2年連続で増加しました。行動制限と水際対策の緩和で客足が増え、コロナ禍前の2019年の9割近くまで回復しました。昨年10月の水際対策の大幅緩和を受け、インバウンド(訪日外国人客)による消費も拡大し、免税売上高は前年比2.5倍の1142億円となりました。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、どちらも1991年と1997年をピークとするM字カーブを描き、2009年に大きく減少しました。その後は、印刷産業出荷額が2011年に6兆円割れ、2018年に5兆円割れとなったのに対して、百貨店売上高は2015年まで6兆円台で、インバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でした。しかし、百貨店業界は新型コロナウイルス感染症の影響を最も強く受けた業界の一つで、2020年には前年比26.7%の大幅減で、印刷産業出荷額を初めて下回りました。

百貨店売上高は、2021年以降2年連続の増加で回復基調にあり、水際対策が続く中国からの訪日客が本格的に戻ってこれば、コロナ禍前を上回ることが期待されます。ただし、専門店の台頭やネット通販の拡大でコロナ禍前から低迷は続いており、百貨店ならではの魅力を強化することが重要な課題となっています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

2020年の印刷産業出荷額(全事業所)は4兆6630億円(確報値)

「工業統計表 産業編」に該当する「令和3年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」が12月26日に公表された。全事業所の印刷産業出荷額は6.7%減となった。(数字で読み解く印刷産業2022その8)

従業者1~3人も含めた全事業所のデータを公表

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅し、わかりやすい図表にまとめています。

印刷市場を把握する上で最も重要な統計データとして、長年「工業統計調査」が利用されてきました。工業統計調査と経済センサスの関係については、当欄でも何度か取り上げてきましたが、改めて整理すると以下のようになります。

製造業を対象とする「工業統計調査」は2020年(2019年実績)まで毎年実施されてきました。ただし、全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」の創設に伴い、活動調査の実施年には工業統計調査は中止となり、産業別集計(製造業)として集計結果が公表されます。さらに2022年からは「経済構造実態調査」の一部(製造業事業所調査)として実施されることになりました。

『印刷白書』では毎年8月公表の「工業統計調査」の確報値を最新データとしてきましたが、『印刷白書2022』では「経済センサス‐活動調査(製造業・概要版)」を利用しています。そのため、最新の2020年は、従業者4人以上の事業所のデータに限られたものでした。事業所数が2019年の2万から、2020年は9千に激減したのかという問い合わせもいただきましたが、9306事業所は4人以上の事業所の数字で、前年比3.7%減も4人以上の事業所同士の比較です。

12月26日に公表されたばかりの総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 製造業(産業編)」では、従業者1~3人も含めた全事業所における集計が行われています。

印刷産業の市場規模の推移は下表のようになります。

2016~2019年は「工業統計調査」、2015年と2020年は「経済センサス‐活動調査」の数値で、両調査は厳密には連結しない部分があることから、2016年と2020年の前年比は斜体にしてあります。

特に「令和3年経済センサス‐活動調査」は個人経営を含まない集計結果であることから、3人以下の比較が特に困難になっています。

「工業統計調査」は「経済センサス‐活動調査」に合わせて実施時期を12月から6月に変更し、活動調査の産業別集計(製造業)は工業統計調査の項目に合わせて集計されています。ただし、調査対象となる母集団が違っています。

「工業統計調査」では調査実施前に「準備調査」を実施し、整備した独自名簿に基づき調査が行われてきました。これに対して、「経済センサス」は、経済統計を正確に作成するための名簿情報の提供・管理のための重要なインフラとして整備されてきた「事業所母集団データベース」を母集団としています。
「経済構造実態調査」も同じく事業所母集団DBによる調査であることから、2021年以降は経済センサスとのシームレスな接続が可能になるものと思われます。

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

グラフィックデザイナーのためのDTP&印刷しくみ事典

発行日:2022年11月29日
著者:ボーンデジタル編集部
体裁:B5判 272ページ
定価:3,960円(本体3,600円+税10%)
発行:ボーンデジタル

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本書は2000年より毎年刊行されてきたムック『DTP&印刷スーパーしくみ事典』を一冊にまとめた書籍です。

印刷やDTPの分野は幅が広く奥が深い世界、長年築き上げられてきた知識や技術を体系的に網羅しました。内容は各分野のプロフェッショナルが執筆、豊富な図解とともにわかりやすく編纂されています。

本書の内容

■豊富なビジュアルで印刷の仕組みを徹底解説
本書のために書き起こされたCGによる美しいビジュアルで、印刷機の内側からインクが塗布されるしくみまでがわかります。DTPの分野では、パソコンやディスク、プリンタ、スキャナなどのハードウェアの内部構造を図解して解説します。さらに、グラフィックソフトウェアの使いこなし術、カラーマネージメントの運用やしくみについても学べます。
■ワークフローに沿った13章の構成で、仕事の流れがつかめます
プランニングから始まり、編集、レイアウト、組版、データフィニッシュ、刷版出力、校正、印刷、後加工・製本まで、順を追って体験できる構成になっています。新しい潮流のデジタル印刷、Web、電子書籍、クラウドのしくみも概説します。
■さまざまな印刷手法や、実践的な知識を学ぶことができます
代表的なオフセット印刷、デジタル印刷のほか、活版や箔押し、表面加工などの特殊印刷のしくみを解説します。印刷の指定に欠かせない用紙やインキについての理解が深まります。そのほか、ソフトウェアやフォント、著作権、エコロジーなど、現場で役立つ情報をまとめました。
本書は、普段見ることのできない印刷工場の機械や、デザイン処理など、さまざまな視点から印刷やDTPの醍醐味と面白さを伝えます。
この一冊を仕事場に備えておくことで、プロジェクトを円滑に進めるのに役立ちます。
ご注文はこちら

2020年の印刷産業出荷額(4人以上の事業所)は4兆5756億円(確報値)

経済センサス‐活動調査の「産業別集計(製造業・概要版)」によれば、2020年の印刷産業の出荷額等は4兆5756億円、付加価値額は2兆999億円となった。(数字で読み解く印刷産業2022その7)

4人以上の事業所に関する2020年の出荷額・付加価値額を発表

「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(製造業・概要版)」が9月30日に公表されました。従業者4人以上の製造事業所について、2021年6月1日現在の事業所数・従業者数、2020年の製造品出荷額等・付加価値額について、中分類24業種別に集計したものです。

この集計結果は、全産業・全事業所を対象とする「活動調査」の調査結果のうち、以下のすべてに該当する製造業の事業所について集計したものです。

・個人経営を除く事業所であること
・従業者4人以上の事業所であること
・管理、補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと
・製造品目別に出荷額が得られた事業所であること

「産業別集計(製造業・概要版)」から印刷・同関連業(印刷産業)に関して見ると、事業所数は9306事業所(前年比3.7%減)で5年連続の減少、従業者数は23万5105人(同6.6%減)で13年連続の減少となりました。製造品出荷額等は4兆5756億円(同5.6%減)、付加価値額は2兆999億円(同1.4%減)で、どちらも前年の微増から反転しました。ただし、「令和3年活動調査」は個人経営を含まない集計結果なので「工業統計調査」と単純に比較ができないことに注意が必要です。

「産業別集計(製造業)」では、概要版に続いて2022年12月に、品目編・産業編・地域編が公表されます。この集計結果が「工業統計調査」の確報に当たるもので、全事業所のデータや産業中分類「15印刷・同関連業」の内訳までがわかるようになります。

JAGATが毎年10月に発行している『印刷白書』では、毎年8月公表の「工業統計調査」の確報値を最新データとして利用してきましたが、今回は12月の産業編を待つわけにもいかないので、9月公表の「産業別集計(製造業・概要版)」を利用しています。そのため、最新の2020年は、従業者4人以上の事業所のデータであることにもご注意ください。

『印刷白書2022』発刊記念セミナー(2022年11月9日)より

JAGAT刊『印刷白書』では、「工業統計」が全事業所での調査を開始した1955年からの長期データなどを、わかりやすい図表にして掲載しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

『印刷白書2022』発刊のご挨拶

2022年10月21日発刊の『印刷白書2022』について、会長塚田司郎よりご挨拶させていただきます。

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コロナ禍での生活も2年間が過ぎ、今年は3年目となりました。年初の感染拡大も一段落して春になると、経済活動も徐々に戻ってきてアフターコロナの世界を考えた企業も多かったと思います。しかし、夏からは再び変異株が猛威をふるい、それも9月になってようやく収まってきましたが、一方で後遺症に悩まされる人も多くなっている状況です。

2月にはロシアがウクライナに侵攻し、世界中を震撼させました。コロナ禍にありながらも回復基調であった世界経済ですが、各国がロシアに対して制裁を課した影響で原油の高騰を招きインフレ圧力が高まりました。

アメリカ経済は個人消費が回復し、旺盛な労働需要を背景に人材確保のための賃上げの動きが顕著であり、FRBはハイテンポで政策金利を上げています。一方、日銀はゼロ金利政策を継続しているため、金利差により急速な円安となり輸入価格が上昇、食料品や日用品の相次ぐ値上げが家計を圧迫しています。

こうした状況下、企業にとって目下の課題は戦争と円安によるエネルギー価格の急激な上昇です。わが国の経常収支の黒字幅は減少を続け、東京では東京電力が8月に決定した燃料費調整額により、10月からの電気料金が大幅に上昇して企業の活動にかなりの影響を与えることになりそうです。

日本印刷産業連合会は9月14日の日本経済新聞に広告を打ち、高付加価値コミュニケーション産業へと業態を転換させるべく、新たな取り組みにチャレンジしていることにも触れながら、需要家に対しエネルギーや原材料の価格高騰の現状と価格転嫁への理解を求めました。プレーヤーの多い印刷業界においては、積極的に業態を転換させる努力をしている企業も多くある一方で、残念ながらそうでない企業もあって、後者の場合は変化し続ける現代社会のニーズに適合できずにやがて業界周辺の限界的存在となって融資も滞ることが予想されます。今後は業界の再編がさらに進むのかもしれません。

SDGsの観点から現代の自動車を見ると、CO2排出抑制のためハイブリッドカーやEVが増えて、またドライバーの負担を軽減し事故を防ぐためにも自動運転の機能が導入されています。印刷機もこれに似ていて自動運転すればオペレーターの負担が軽減され、高齢者や女性でも扱いやすくなり、小ロット化している印刷物には、何万枚もの耐刷力のあるPS版を使用するオフセット印刷ではなく、デジタル印刷機で生産できれば資源効率が高まることになります。今年のIGASではそのような現実的なインクジェット機が見られるでしょうか。

VUCAの時代と呼ばれる現代の経営には他にもさまざまな課題があります。今年もこの白書が企業の皆様にとって何らかのお役に立つようにと願っております。

2022年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 塚田司郎

書籍発刊のお知らせ

『印刷白書2022』2022年10月21日発刊

印刷白書2022

印刷白書2022
印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2022』
第1章 Keynote 印刷会社の造注・創注戦略
第2章 印刷産業の動向
第3章 印刷トレンド
第4章 関連産業の動向
第5章 印刷産業の経営課題
ご注文はこちら発行日:2022年10月21日
ページ数:128ページ
判型:A4判
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:9,900円(9,000円+税10%)
JAGAT会員特別定価:8,300円(7,545円+税10%)

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2022』

あらゆる産業を顧客とする印刷産業は、さまざまな産業と密接に関わりを持っています。「印刷白書」では、印刷産業の現状分析から印刷ビジネスの今後まで幅広く取り上げています。

印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、社会、技術、産業全体、周辺産業というさまざまな観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。

印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2022年版では海外動向、労務管理、営業戦略などの項目を追加しました。

印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

「第1章 Keynote」では「印刷会社の造注・創注戦略」をテーマに、印刷ビジネスの課題解決に取り組んでいます。「第2章 印刷産業の動向」では印刷産業の現状と課題を俯瞰的に捉え、「第3章 印刷トレンド」では技術課題を整理しました。「第4章 関連産業の動向」ではクライアント産業の動向を探りました。「第5章 印刷産業の経営課題」ではSDGs/ESGから人材まで印刷産業が取り組むべき課題を整理しました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られないオリジナルの図版も充実させました。

CONTENTS

第1章 Keynote 印刷会社の造注・創注戦略
いま印刷業界に必要なのは「創注」

第2章 印刷産業の動向
[産業構造]付加価値創出と事業領域拡大で印刷ビジネスの可能性を広げる
[産業連関表]あらゆる産業を顧客とする印刷産業の取引を見る
[市場規模]共創による課題解決型産業へビジネスモデルの転換を
[上場企業]新しい価値の創出に向けて歩みを止めない上場印刷企業
[海外動向]社会経済視点で価値につなげる印刷ビジネス
*関連資料 産業構造/産業分類・商品分類/規模/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]自社の強みをブランド化し、新たな顧客と出会う
[ワークフロー]オンデマンドビジネスを成功させる3要素
[オフセット印刷/デジタル印刷]紙への回帰と、さらに求められる小ロット化と環境への対応
[用紙]資源価格の高騰に揺れる製紙業界、環境対応への取り組みも続く
[後加工]デジタル化と加飾技術は進展するも製本業界への逆風はやまず
*関連資料 デジタル印刷/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]異業種連携で活発化する出版構造改革
[電子出版]成長が続く電子出版ビジネスと電子図書館サービス
[新聞業界]外部環境変化に戸惑いを隠せない新聞業界
[広告業界]インターネット広告がさらに拡大し、広告市場は大きく回復
[DM業界]デジタルマーケティングで量から質へと進化するDMメディア
[折込広告他]コロナ禍が変える購買行動と地域のイノベーション
[通信販売業界]”通販・EC市場、11.4兆円市場へ拡大 コロナ禍特需の反動でカタログやテレビは伸び悩む
*関連資料 出版市場/電子出版市場/新聞市場/広告市場/通販市場

第5章 印刷産業の経営課題
[SDGs/ESG]サステナビリティをいかに事業活動と結び付けるか
[地域活性化]地方創生戦略からデジタル田園都市構想へ
[経営管理]守りの「見える化」と攻めの「営業改革」
[デジタルマーケティング]「受注」「印刷」「配送」など業務視点から印刷会社を最適化
[労務管理]多様性を重視した働き方を実現するための労務管理の在り方
[営業戦略]「付加価値を高める営業」へ進化させるためのデジタル化推進
[人材]動画ビジネス成功のカギは人材育成・人材確保
*関連資料 クロスメディア/デジタルマーケティング/人材

●巻末資料
DTP・デジタル年表/年表/『印刷白書』年表/印刷産業&関連団体アドレス

上場印刷企業33社のうち、21社が増収、22社が増益を達成

2021年度の法人企業統計調査で全産業の経常利益は過去最高となり、印刷産業も大きな伸びを達成した。上場企業の2022年3月期決算は3社に1社が最高益となり、上場印刷企業33社のうち22社が増益となった。(数字で読み解く印刷産業2022その6)

2021年度の経常利益は過去最高を更新~法人企業統計

9月1日発表の財務省「法人企業統計調査」によると、2021年度の全産業(金融業、保険業を除く)の経常利益は、前年度比33.5%増の83兆9247億円で、3期ぶりに増益に転じ、比較可能な1960年度以降で過去最高を更新しました。

製造業は同52.1%増の33兆1940億円、半導体関連の需要が増えた「情報通信機械」や「化学」が増益に寄与しました。非製造業は同23.7%増の50兆7307億円、原油価格の上昇で利益が拡大した「卸売業、小売業」や、前年度に大きく落ち込んだ反動で「サービス業」が好調でした。

売上高は同6.3%増の1447兆8878億円と、4期ぶりの増収でした。設備投資額(ソフトウエアを含む)も同9.2%増の45兆6613億円となり、3期ぶりにプラスに転じました。

印刷・同関連業について見てみると、売上高は同3.2%減の7兆6652億円で、2期連続の減少だが、経常利益は同49.6%増の2779億円で4期ぶりに増益に転じました。設備投資額(ソフトウエアを含む)は同16.8%減の1660億円で、6期連続のマイナスで減少幅は拡大しています。

上場企業は3社に1社が最高益、上場印刷企業22社が増益を達成

2022年3月期決算の上場企業約1890社(金融など除く)のうち、最高益となった企業の比率は30%と約30年ぶりの高水準になりました。日本経済新聞が5月13日までに業績を発表した上場企業を対象に集計したところ、7割の企業の純利益が前期より増え、最高益となった企業の割合も1991年3月期以来の多さでした。

JAGAT『印刷白書』では、社名もしくは特色などに「印刷」とある企業33社を、上場印刷企業としています。前回までは34社で分析してきましたが、トッパン・フォームズが凸版印刷の完全子会社化により2022年2月25日付けで上場廃止となったことから、現在編集中の『印刷白書2022』では33社となっています。各社の業績は決算短信と有価証券報告書で見ていますが、提出時期の関係で2021年6月期決算から2022年5月期決算までを2021年度としています。

ちなみに、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」が、上場企業や大会社に適用されるようになりました。収益認識基準の導入は、既にIFRS(国際財務報告基準)を適用している企業にとって影響はありませんが、日本基準の企業にとっては売上高が減少して見えるほどの大きな影響があります。

2022年8月現在IFRSを適用している上場企業は251社、印刷会社ではNISSHAとプロネクサスの2社が適用しています。

上場印刷企業33社のうち、IFRS適用の2社を除き、2022年3月期~5月期が決算の19社が、収益認識基準を適用していて、そのうち12社が売上高が適用前と比べて減少したとしています。

33社の2021年度売上高合計は3.8兆円(前期比3.4%増)ですが、適用前の数字ならもっと大幅な増収だったことになります。

コロナ禍が続く中で、個人消費や企業活動の停滞、紙メディアの需要減少、原材料価格の高騰など、印刷業界にとって厳しい経営環境にありますが、増収21社、増益22社となりました。

『印刷白書2022』は10月下旬発行を予定しています。上場印刷企業33社の分析では、事業展開の特色と売上高構成比、個別業績による規模・収益性・生産性・安全性・成長性、連結業績による設備投資総額・研究開発費、キャッシュフローバランスなどを比較しています。

限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)