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拡大するデジタルプリント市場

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:拡大するデジタルプリント市場

 

富士ゼロックス株式会社 執行役員 プロダクションサービス事業本部 事業本部長 栗原博氏に聞く

 

 ここへきて急速に拡がってきたデジタルプリントの分野で、PODとマーケティングを連動させたビジネスなど新しい事業を展開する、富士ゼロックスに現在の市場と今後の取り組みを伺った。

--現在のデジタルプリント市場について。

栗原 日本の市場は欧米に比べ、市場規模のわりに立ち上がりが遅い。アジア、特に中国などが大きく成長し、日本をはるかに超える台数のPOD機器が中国へ出荷され、一部の市場では中国が上回っている。日本が段階的にデジタル化しているのに対し、中国では輪転機からいきなりPODを導入したり、輪転機よりも先にPODを導入して新規参入したりする会社もある。ビジネスモデル自体が日本とはかなり違う。
日本もようやく市場が拡大してきた。品質も向上し、新しいアプリケーションもできている。さらに印刷会社のお客様のビジネスにどう紐付けるかだ。そのメリットをエンドユーザー側が認識してきたことも大きい。印刷会社のお客様でのニーズがかなり上がってきた。

--現在の販売展開は。

栗原 一般企業では、社内で印刷部門をもつ会社だ。印刷会社に対しては、事務用ではたくさん導入しているが、生産財としては、ようやく数年前に参入したところだ。ちょうどこのタイミングで、富士フイルムの資本が少し増えた。
富士フイルムは印刷市場を熟知している。弊社の商品を印刷市場に投入して、チャネルの一つとして一緒にビジネスを展開するのは、相乗効果としてプラスだ。富士フイルムグラフィックシステムズに印刷に強い販売チャネルとしてかなり注力してもらっている。日本国内、アジアパシフィックエリアでは直接に活動している。欧米には、アメリカのゼロックスを通して参入している。国内では富士フイルムグラフィックシステムズと協業し、海外ではゼロックスというチャネルを通して商品を出す。メーカーとしては、そういうグローバルな戦略を位置付けている。

--マーケティングと販促、印刷、PODの連携は。

栗原 一つはエリアを絞った、エリアマーケティングで、その地域でのデータを層別し、そこに合ったマーケティングを展開するためのツールとしてPODを使う。
もう一つは、企業がもつデータベースの属性を分析し、PODをつなげて、個の点でアプローチをする手法だ。郵政公社と協業し、新しいビジネスモデルが立ち上がってきた。お客様のビジネスを一緒に考え、どういう層のお客様を拡大したいのか、分析をする。結果として、そこに弊社の機械が入るケースもあれば、同じことを印刷会社に依頼することもある。その印刷会社は、ビジネスとしては弊社の機械を使っているところを紹介するが、それでも基本的には使える、役に立つということをまず実感してもらう。

--そういうコンサルティングのビジネスをされているのか。

栗原 お金はいただいていない。ただし、後者のほうは、企業のもつデータベースを全部分析するようなことをする。例えば、保険会社がある層に保険を販売したい場合に、どういう内容に一番反応するのか、属性を細分化して、数回に分けて勧誘のDMを打つ。そういう手の込んだことをやる場合には、コンサルティングフィーをいただく。あるいは、いただかなくてもPODをフルカラーで1枚100円という値段を付けて買っていただく。そこにはマーケティングのノウハウが全部詰まっているので、100円を高いとは言われない。リターンがあれば、「次はどういうキャンペーンを打とうか」という相談が逆に弊社に持ち込まれる。そういう効果が表れなければ、継続できない。マス広告より、費用対効果が明確だ。

--PODが先行しているアメリカのモデルは参考になるのか。

栗原 日本の商習慣、考え方にカスタマイズして導入するほうが、うまくいく。ヒントはたくさんあるが、そのままでは良くない。アメリカは印刷の注文に対して24時間以内に全部納品しろと言われる。そうなるとPODしかない。ロジスティクスまで全部含めての提案が必要だ。今後、日本でもそうなると考えたとき、ビジネスモデルも大きく変わる。印刷会社でもそれに対応するのであれば、従来の印刷機とPODは何の違和感もなく同居し、要求に応じて、これはPOD、これは印刷と決めることになる。近い将来、日本もそれが印刷会社のスタンダードな設備になると思っている。そのきっかけは、エンドユーザーがそういうニーズを喚起し、印刷会社もそれに合わせて業態変革をしていくということだ。

--インライン化については。

栗原 従来は単体の機械があって、きれいに出れば良かったが、今はインプットをいかに自動化するか、アウトプットをいかにインライン化して、いかに簡単に処理ができるのか。それは自社でやるケースと、ホリゾンなどといった専門メーカーと協業しながらやるケースとで、上流から下流まで一貫してやる。そこに新しいワークフローを入れて、標準化し、効率を上げる取り組みだ。画質の向上と品質の安定にプラスして、いかにしてソフトウエアで、後処理機で印刷機並みの効率を上げられるかというのは、本当に大きなチャレンジだ。これから出す機械はすべてそうなる。

--前処理について。

栗原 前処理は非常に重要だ。いくら真ん中が速いといっても、本当の意味での生産性は上がらない。結局、上流工程が何であっても、印刷がいいのか、PODで出すのがいいのか、どちらでも選べるようなワークフローを流して、あとは自動的に判別して、これはPOD、こういう原稿でこの枚数でこの画質を要求するならオフセットということで、ワークフロー自体を統合して一元化する。これは弊社としては、FreeFlowというオンデマンド用と、富士フイルムの印刷用のワークフローをもっているので、統合して、印刷とPOD、どちらでも使えるようなワークフローを提供していくことに注力している。drupa2008には、それをもっと分かりやすく、使いやすいものにしたいと考えている。

--今後の市場について。

栗原 日本の印刷会社は極めて丁寧な仕事をし、品質に非常にこだわる。そのことが多少PODの発展を妨げている面はあると思う。海外は、国にもよるが、そこまでやらない。とにかくぱっと見て同じならいいのではないか、PODでも問題ないという判断に立てば、そこまで施設を揃えずに処理してしまおうということだ。「むしろ印刷会社としては仕事の幅がもっと広がる」という発想になるには、その辺が多少バリアとして、ほんの少し残っているのではないか。
印刷会社の場合にはビジネスライクに商品を納品して、「あとはちゃんとメンテナンスやりますから」というだけではなく、少しウェットな関係の構築も、ビジネスとして必要ではないかというのは、一方では感じている。

富士ゼロックス株式会社
〒107-0052 東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン
TEL 03-6271-5111(代表)

 

 

(2007年8月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

※本記事の内容は掲載当時のものです。
事業紹介インタビュー:「早く、美しく、環境に優しい」が付加価値を生む

 

日本アグフア・ゲバルト株式会社 代表取締役社長 松石浩行氏に聞く

印刷業にとって、環境問題と生産性の両立は最も関心の高いテーマである。アグフア・ゲバルトは「高品質、最大の経済性、トータルな環境保護。これらの課題は、等しく重要である」ことを企業理念に掲げ、現像処理が不要で、高品質と利便性、高耐刷力を兼ね備えた革新的サーマルプレートの分野でリーダー的役割を果たしている。

この4月に日本アグフア・ゲバルト初の日本人社長となった松石浩行氏に、環境問題を中心に日本国内のニーズをどう捉えるかを伺った。

――現在特に力を入れている分野を伺いたい。

松石 基本的なスタンスとしてはワークフローとプレートに力を入れている。 CTPのプレートセッタは技術的には差別化が困難になって、JDFを中心としたワークフローシステムが重要になっている。次世代JDFベースデジタルワークフローシステム「:ApogeeX(アポジーエックス)」では、Adobe PDF Print Engine搭載の次期バージョンを今夏発売する。CIMとの連携をキーワードに開発を進めている。

また、Webベースのプロジェクトマネジメントシステム「:Delano(デラノ)」は顧客からの入稿データをページ校了まで進行させるWeb承認機能と、ページ承認終了後:ApogeeXにページが送信され自動的にプレート出力まで実行する自動製版機能をもつ。顧客とWebを介してやり取りすることで入稿プロセスを効率化し、顧客とのコミュニケーションを向上させ、かつ校了後の自動製版機能により生産の自動化を実現できるという2つのメリットにユーザーの関心が高まっている。

CTPの登場によって、印刷業界は可能性が広がった。オフセット印刷のオンデマンド化が可能になり、4色機や8色機が使いやすくなって、小ロットなどの分野も活気づいた。プレートの需要は今後さらに拡大が予想され、特にケミカルレスプレート市場は急速に拡大するだろう。プレート工場は全世界に8つあって、中国工場が最大規模だ。韓国に建設する新工場は、ケミカルレスプレート「:Azura(アズーラ)」の専門工場とする予定だ。

――:Azuraの特長は?

松石 :Azuraは環境に優しいだけでなく、欠点が一つもないプレートとして、アグフアとしても自信をもっている。機上現像ではないのでヤレ通しが不要で、オフ輪でも使用できることが最大の特長である。独自のケミカルレスCTP技術により、サーマルレーザー露光後、版面を保護するための専用のクリーニングユニットでガム洗浄するだけで完成し、現像液を全く使用しない環境に優しいプレートになっている。画像コントラストの高い高品質の刷版を得られるので、印刷前検版が可能である。プレートの取り扱いやすさはPS版と同等で、オペレーターに負担を掛けることもない。

環境保護印刷推進協議会(E3PA)によるE3PAゴールドステータスに適合し、国内では商業印刷はもちろんチラシ専業者や食品関係のパッケージ印刷などにも導入されている。

drupa2004で発表以来、ワールドワイドで高い評価を得て、導入ユーザー数は世界一となっている。4月に大阪のダイコロに導入された:Azuraが世界2000台目、日本国内ユーザー50社の記念すべきもので、現在の国内ユーザーは60社に達している。

――デジタル印刷分野はどうだろうか。

松石 デジタル印刷の分野では、産業用印刷向けのUVインクジェットプリンタに力を入れている。サインボードや建材印刷、パッケージ市場向けの「:Dotrix(ドットリックス)」は、既にヨーロッパではコンスタントに売れていて、日本でも来年ごろから販売を開始する準備を進めている。:Dotrixが特殊グラビア、フレキソのオンデマンド化を可能にするのに対して、世界初の完全自動ハイブリッドインクジェット出力機「M-Press(M-プレス)」はスクリーン印刷のオンデマンド化を可能にする。ヘッドはザール社との共同開発によるもので、アグフア製のUVインクを使用する。M-Pressの日本国内発売は未定だ。商業印刷・出版印刷向けのPOD分野に参入する予定はない。

――アグフア本社の体制は?

松石 フィルムメーカーとしてスタートして、その技術に関連する事業領域に拡大し、現在はグラフィックシステム事業、ヘルスケア事業、マテリアル事業の3つが柱となっている。しかし、全分野でフィルムが消え、部門共通の開発テーマがなくなって、部門間のシナジーもなくなった。そこで、2008年1月から資本関係のない3つの会社に分かれ、グラフィックシステム事業はAgfa Graphicsとして分社化される。日本ではどのような体制になるかはまだ未定である。

――ユーザー会が盛んだが。

松石 年に2回東京と大阪で「:Apogeeユーザー会」を開催し、合計で300人ほど集まる。ユーザー同士のフェイスtoフェイスの場として、会の中では情報をオープンにして情報交流を促進している。仕事のやり取りまで発展できればと考えている。

IGAS2007には本社から社長または副社長クラスを呼んで、日本のユーザーの声を直接聞く機会として、ユーザー会でコミュニケーションを図る予定である。 アグフア全体の売上比率では、ヨーロッパが半分を占め、残りの半分を北米とアジアが2分している。アジアの中でも日本が最重要国の一つであることは言うまでもない。

――IGAS2007は環境が切り口になるのか。

松石 「Stay Ahead. With Agfa. アグフアと共に一歩先に」をテーマに、「:Azura」および対応CTP「:Avalon(アバロン)LF」「:Acento(アセント)Ⅱ」の実演と導入ユーザーの声とともに紹介する。先行している成功事例として、オフ輪によるチラシ印刷のニシカワや、A倍判の食品関係のパッケージ印刷のクラウンパッケージを紹介する予定だ。また、JDFインテグレーションをキーに、「:ApogeeX」の最新バージョンと「:Delano」をWeb承認機能、Web入稿機能と自動製版機能を中心に紹介する。さらに「だれにでも刷れる高精細印刷」として高い評価を得ているXMスクリーニング「:Sublima(スブリマ)」の展示を行う。

IGASでは印刷機メーカーは「小ロット対応」を売りにしていることから、メイクレディを短縮化しヤレ紙を削減する観点から、複数のメーカーから:Azuraを使ったデモの申し込みもある。

ケミカルレスで一番メリットが大きいのは印刷会社だ。フィルムからCTPに切り替わって、オープン化に逆行してCTPプレートについては現像装置に縛られることになった。しかし、ケミカルレスなら現像装置が不要なので、CTP、プレート選択の自由度が高まることを強調しておきたい。

世界の中でも日本の市場は業種を問わず、最も顧客の要求度の高い国であると言われている。反面、日本市場で受け入れられた商品・サービスのほとんどが、日本以外の多くの国でも評価されている。1950年の設立以来、日本人初の社長として行うべき最大の目標は、日本の顧客に高く評価される商品・サービスを具現化し、お届けすることだと信じている。日本人の「商品・サービスに対する厳しくかつユニークな感覚」を大切にし、顧客と直接接して得た情報・要望を最大限に商品開発・サービスに反映させるべく努力していきたい。

日本アグフア・ゲバルト株式会社
グラフィックシステム事業部
〒153-0043 東京都目黒区東山3-8-1
TEL 03-5704-3140 / FAX 03-5704-3089

 

 

(2007年9月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

製品開発は確かな方向性を常に意識した視点で

※本記事の内容は掲載当時のものです。
 
事業紹介インタビュー:製品開発は確かな方向性を常に意識した視点で

 

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部 副事業部長 吉川俊郎氏に聞く

 

三菱重工業は、色合わせを短時間に完全自動化できる「MAX DIAMOND EYE」を搭載した商業輪転機を「IGAS2007」で発表し、ブランド名を「DIAMOND」に変えた新型枚葉機を市場に投入した。活発な事業を展開している紙・印刷機械事業部の副事業部長の吉川俊郎氏に、印刷業界の市場動向と同社の戦略を伺った。

――印刷市場をどのように捉えているか。

吉川 大手新聞社は紙面のカラー化に力を入れていて、地方紙でも設備投資が進む。地方紙ではページ数は少ないがオールページカラーもある。今後は、地方での新聞印刷の競争は一段と激しくなるだろう。
印刷物そのものの絶対量は、統計的に見てもあまり減っていない。しかし日本国内でも徐々に電子印刷、オンデマンド印刷が増えてきた。一方、グラビア印刷など有機溶剤を使う印刷が減っている。オフセット印刷は、ほぼ横ばいで推移していくのではないか。 フリーペーパーの需要が増え始めた2003年ごろから商業輪転機の出荷台数が増え、国内で年間70台前後だったものが、100台超で推移した。A系列が増えB系列も後から少し増えたが、今年は以前のレベルに戻った。また、新聞輪転機でも、資材や紙の白色度、平滑度を選べばかなりのレベルのカラー印刷ができるため、一部の新聞印刷工場ではフリーペーパーを新聞輪転機で印刷している。

――アジアなど海外の動きはどうか。

吉川 急成長しているBRICsの中でも、中国の印刷物の伸びは大きく、枚葉機の数が急増している。欧州通貨が高いため、ドイツより日本メーカーが有利で、距離的にも近いことから好機だと思う。
中国は紙の生産量と消費量が非常に増えたが、新聞の発行部数は意外に伸びていない。従って、新聞輪転機もそれほど急激には納入されていない。また輪転機の設備計画の動きが遅いので、当面は枚葉機ではないか。インドは、まだ圧倒的に枚葉機だが、輪転機も増えていく時期が近々来て、今の中国より伸びるのではないか。

最近、日本では商業輪転機の小ロット化に対抗する差別化の狙いもあって、枚葉機では両面印刷、厚紙や特殊原反(プラスチックのフィルム)への印刷、さらにニスや箔押しなどの高付加価値印刷をワンパスで行う機械が増えている。従来の枚葉機のような標準仕様で販売しているのは中国くらいで、インドもコーター付きの機械が多い。アメリカ、ヨーロッパでは、いろいろな自動化装置の付いたものが標準的になっている。
昨年、北京に合弁会社を作り、菊半裁枚葉機の現地生産を始めているが、仕様は標準仕様の中国向けの機械だ。昨年は12月までに3台出荷し、今年は年末までに45台出荷する予定である。来年はもう少し増やす計画にしており、自動化や高機能化のオプションも付けていく予定だ。

――国内向けの取り組みは。

吉川 「IGAS2007」に出展した商業輪転機で、デモのプレゼンテーションを担当した女性が、自分でアナウンスしながら「私が運転します」とやったくらい、簡単に操作ができることを披露した。それができるのは、「MAX DIAMOND EYE」という全自動色調管理装置で、製版の画像データを基準に濃度を合わせてしまう。新聞輪転機用に開発した装置で、既に各新聞社に相当数納めているが、それを商業輪転機用にバージョンアップした。製版の画像データを基準に、その画像データの画線率に基づいて各インキキーがインキ量を自動的に調整するので、刷り出しの起動ボタンを押すだけで正紙が出てくる。カラーパッチが不要のオンライン全自動色調制御は、世界初の画期的な装置だ。

――枚葉機に掲げた究極の目標値に対して、今、どのくらいのところまで来ているのか。

吉川 「IGAS2007」で披露した枚葉機「DIAMOND300」の開発では、印刷スピードをどうするかを一番議論した。枚葉印刷は小ロット化がさらに進み、生産性向上にスピードが寄与する効果は少ないと判断、スピードより機械が止まる時間を短くすることで、生産性を向上しようという発想で開発した。

1号機を導入した印刷会社では、従来1時間に2ジョブだったものが、DIAMOND300では3ジョブ入れられる。全色同時全自動版交換装置を搭載しているので、ユニット数が4色でも8色でも12色でも、最短75秒で全色版交換できる。
印刷機開発で一番基本的なところは、絶対に印刷品質を落とさないことだ。印刷物の網点のツキや再現性、見当精度、ダブリが出ない、そういう基本的な性能は、従来機より上げても下げないことが基本だ。コストを絞りたいからといって、そのへんの手を抜くことは絶対にやらない。

――これから実現していきたいことは。

吉川 商業印刷の場合は特に顧客が儲かる機械でないといけない。用紙代が印刷コストの中でかなりの部分を占めるので、紙を無駄にしないことが重要だ。それには、例えば輪転機では刷り出し時間が早いことが大切で、MAX DIAMOND EYEのように、全自動かつ短時間で色が合うことや断裁寸法も合うことが、当面の目標になる。その結果、オペレーターの数を減らせるので、商業輪転機で2~2.5人必要なところをワンマンでオペレーションできるものを開発していて、ほとんど完成している。

一番の関心事は環境保護だ。三菱重工には、さまざまな環境対策の技術やノウハウが蓄積されているので、これらの技術を応用することで、印刷産業の環境保護の動きに適した、優れた機械を開発して提供していきたい。

――新聞印刷はビジネスモデルが変わっていくだろうか。

吉川 日本でも、これからの新聞はセクション分けして、その人が必要とするセクションだけを配っていくパターンや、細かい区分の地域版などが出てくるのではないか。現状では、チラシの配布を含めた宅配制度が日本の新聞業界を支えているが、新聞輪転機で印刷していると思われるタブロイド版のフリーペーパーもあることから、この宅配システムをさらに有効活用する方法が開発されるのではないかと思う。

後は、やはり紙である。通常の新聞用紙では線数を上げてもにじんでしまうので、最近の新聞には白色度の高い、厚い紙で見開きカラー広告が入っている。これなら新聞輪転機でもカラー品質はそこそこであり、新聞社はそれによる広告量の確保を考えていると思われる。

――強調していただくところがあれば。

吉川 印刷機の将来の姿を考える中で、MAX DIAMOND EYEのように、メーカーが勝手に考えて開発してヒットする商品も時々ある。 しかし、そういうのはまれで、やはりお客さんである印刷会社、新聞社、あるいは周辺装置の業界の人といろいろな話をしながら、ヒントや方向性を見いだしていくことが大半である。そういう意味では、顧客と良い関係を保ちつつ、実際に設計や開発を担当する者の視点だけではなく、われわれもそうした機会を持ちながら、確かな方向性を常に意識していくことが、絶対に必要であると思っている。

三菱重工業株式会社 紙・印刷機械事業部
〒729-0393 広島県三原市糸崎南1-1-1
TEL 0848-67-2054 / FAX 0848-63-4463

 

 

(2007年12月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

未来志向のマーケットリーダー

※本記事の内容は掲載当時のものです。

 事業紹介インタビュー:未来志向のマーケットリーダー 

 

株式会社メディアテクノロジー ジャパン 代表取締役社長 田丸邦夫氏に聞く

 

大日本スクリーン製造の国内販売部門から分社独立したメディアテクノロジー ジャパンは、柔軟な発想と機動力で、マーケット主導型の事業を展開している。印刷生産工程の効率化を実現するCTPワークフロー、生産・営業・業務・経営を統合するJDFワークフローからデジタル印刷までトータルに顧客満足の実現を目指している。

――まずIGASの反響からお聞きしたい。

田丸 当社はこの6~7年CTPとワークフローに集中してアピールしてきた。「IGAS2007」では、インクジェットによるPODで対応が可能になったサインディスプレイや、新聞業界に求められるトータルソリューションを提案し、今後の展開として、「Truepress Jet(トゥループレス ジェット)520」によるインクジェット新聞についても紹介した。
品質、納期、コストを総合して、封入・封緘まで一気通貫のシステムを構築するニーズがあって、生命保険会社などもかなり内制化が進んでいる。製品単品ではなく、ワークフローやソリューションをセットで考える傾向にある。
CTPやワークフローをある程度整備した印刷会社は次は何をしたらいいか、設備投資や方向性に悩んでいる。そこで、クライアントの課題と技術動向を合わせて次のステップでは何をやるかを、マーケティングの視点から見ている。
従来型の印刷業の売上高は縮小傾向にあって、収益も下がっている。そこで、もう少し付加価値の高い事業分野を模索しているクライアントが多い。産業用インクジェット印刷市場は業容拡大になる。業態変革と言うと、従来の印刷に対して脱印刷のような方向性が必要になる。

――CTP化から新しいワークフローの構築によって、デジタルプリンタにつながるのは、印刷業界としても移行しやすいモデルに思える。

田丸 他社もハイブリッドワークフローを提案しているが、大日本スクリーンのソリューションとして言い換えると、入稿データをRGB/PDFに移行し、一つのオリジナルPDFから「製版印刷側で印刷方式やデバイスに対してそれぞれに最適なデータを出力するワークフローの構築」となる。これを’One Source Multi Print’と表現し、「IGAS2007」のテーマとして位置付けた。
営業スタイルも違ってくるので、ハイブリッドワークフローだけでなく、POD専用ワークフローが必要になる。昨年、帳票などを高速に印刷できるインクジェット印刷装置「Truepress Jet520」を開発し、商業印刷市場では既に多くの実績を残し高い評価を得ている。

――トランザクション系の場合、検査などがあるので、従来型の印刷とは少しイメージが違う。

田丸 トランザクション系だけではないが、クライアントから個人情報を預かる、場合によっては自分のところで管理するとなると、セキュリティの問題だけでなく、個人情報も含めたデータの保存、管理が重要な責任範囲になってくる。ソフトと出力機を購入して、検査装置を付けて封入・封緘装置を整えるだけでなく、セキュリティ管理が非常に重要になってくる。

――ページの発生から全体のセキュリティを含めてトータルにサポートしていくのか。

田丸 そうだ。もちろん個人情報保護は各社でしっかり管理していただかないと難しい。印刷の検査装置は必須だからインクジェットプリントシステムにも標準で付けてある。その先にまた違った管理が必要になってくる。

――情報管理などの責任範囲を業界できちんと考えて新しいビジネスに取り組む必要がある。

田丸 トランザクション系の仕事が一般の印刷会社に普及していくことは考えにくい。設備も高いし、セキュリティ能力、管理能力が非常に問われる。印刷会社もセキュリティの意識は高まって、資格を取ったり、全社的にやっているが、それでもやはりデータベース管理はかなり重い仕事になる。

――印刷会社も単なる印刷だけではだめで、それなりにいろいろな工夫をしている。

田丸 請求書、学習塾、通信教育系などの目的で導入しているクライアントが、カラー化や品質向上のために、「Truepress Jet」のような機械に入れ替えている。今のところかなり限定されたクライアント、印刷会社だけだが、バリアブルプリントの需要はさらに拡大が予想され、従来型の印刷機を補助する形でPODシステムを導入する印刷会社は増えるだろう。
もちろん、生産性、品質、コストの3点で従来型の印刷方式と比較して、効率が良く採算も取れないと広がってはいかない。現時点では、ヘッドが高い、コスト面やヘッドとインクの兼ね合いで品質の安定性などの課題がある。

――オンデマンド関係以外で御社が今取り組んでいるポイントは?

田丸 一つはインクジェット出力機だ。英国のグループ会社、インカデジタルプリンターズでも、産業用UVインクジェットプリンタ「SP320」を中心に売り上げを伸ばした。自社ブランドの大判インクジェットプリンタ「Truepress Jet2500UV」は、サイン・ディスプレイ業界向けで、パネルや建装材など、さまざまなメディアに対応する。
まだ出品はしていないが、産業用カードなどの出力機を、ニッチな分野になるが、PODと少し違った産業分野へのインクジェット出力機と考えている。また、グラビアからフレキソへの展開が徐々に進む中、フレキソCTPや新聞用CTPも出品した。単発のソリューションでシステムとしてはまだ対応していないが、オフセットの印刷機からフレキソ印刷へ、また新聞印刷機も揃えたい。

田丸 –フリーペーパーやイベント関係など、クライアントがいろいろとアイデアを出してくれるかもしれない。 印刷会社のニーズをわれわれ販売会社がキャッチして、商品化のアイデアにすることが必要になってくる。

――御社の優れた画像処理技術はいろいろなチャンスがあると思う。

田丸 画像処理技術、生産技術はかなりのレベルと自負している。時代のニーズに合った商品化を進めたい。毎年一つずつ画期的な製品を出せると、差別化やコストダウンなど、クライアントのお役に立てると思うが、なかなか実現は難しい。

――最後に今後の方向性を伺いたい。

田丸 社員には「アンテナを高く、姿勢(目線) は低く」という姿勢を求めている。アンテナをなるべく高くしてクライアントのニーズをキャッチする一方で、考える姿勢や目線はクライアントと同じ高さでなくてはならないという意味だ。かつてはプロダクトアウトの考え方が主流だったが、今はマーケットドリブンで製造も販売もやっていくべきだ。クライアントが入った協議会や意見交換会、情報交換会は非常に有益だ。今後はレディーバードクラブなどのユーザー会などの場も活用しながら、できるだけ多くの提案を行っていきたい。

「PAGE2007」では「PDFブレイク元年」をテーマに、PDFワークフローのアドバンテージを具現化するソリューションを中心に、ユーザー事例を交えながら具体的に提案した。「PAGE2008」ではPDFワークフローとPOD導入期のワンストップサービスの新しい考え方をアピールしたい。

株式会社メディアテクノロジー ジャパン
〒102-0074 東京都千代田区九段南2-3-14 靖国九段南ビル
TEL 03-3237-3101 / FAX 03-3237-3187

 

(2008年1月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

本格化するデジタルプリント市場をリードする

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:本格化するデジタルプリント市場をリードする

 

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社 プロダクションプリント事業部 事業部長 深沢哲也氏に聞く

 

デジタルプリントが、いよいよ本格的なビジネスになってきた。中小印刷業にも数多くの導入実績を持つ、コニカミノルタビジネスソリューションズに、デジタルプリントの現状と今後の展開を伺った。

――最近のビジネス展開は?

深沢 弊社の親会社が、ワールドワイドでデジタルプリントビジネスを開拓し、今後も拡大していく。弊社は2008年度で1000億円の売り上げ目標としている。 顧客の8割が商業印刷の印刷企業で、メインは中小規模、あるいは大手でオンデマンドの事業を運営している会社だ。後、2割は企業内印刷だ。
オンデマンドへの関心は非常に高い。導入先には、いろいろな事例がある。商業印刷でもマーケティングを重視している企業は、クライアントに対して提案の仕方を持っている。営業開拓も強い。

そうでない場合、商談の中で、導入事例を紹介して、一緒に考えている。具現化する場所として、2007年10月にオープンした、品川の「コニカミノルタ デジタルイメージングスクエア(DIS)」を活用している。2008年から販売店向けの会議で、カラーの勉強会の計画もある。モノクロは堅調だ。

――モノクロの出荷割合と、見通しは?

深沢 台数は、モノクロが堅調である。カラーの伸び率は非常に高い。前年から135~140%くらいに伸びた。プリプレスからポストプレスまでの一貫で販売しているため、純粋にオンデマンドのケースが多い。モノクロとの比較では3対7だ。 単価の問題もある。カラーになると単価が大きく変わる。これは一般のオフィス系も全く同じで、モノクロをカラーに変えて売り上げを確保している。

――印刷会社に導入しやすいモデルは?

深沢 基本的にはショートランの仕事向けだ。最近は納期がかなり厳しく、午前中に入稿したものを昼ごろに納品というケースもある。納期を最優先するケースでは、圧倒的にオンデマンドだ。

――品質に対する印刷会社の理解は?

深沢 オンデマンドの仕上がりを見ると、当然分かるが、そこまで要求しているクライアントか、どうかという見極めは必要だと思う。 絵柄によっては、オイル系のトナーは、光ったコピー系の色になってしまう。弊社の場合、比較的オフに近い色合いが出るという評価を得ている。弊社はトナーの研究が非常に進んでおり、デジタルトナーと言って、微粒子の小粒径化で高画質を実現している。耐光性はオフより高い。

――日本の市場に合う用途は?

深沢 一番分かりやい販売モデルは、年賀はがきである。ほかのオンデマンドプリントではほとんど扱っていなかった。全体の成長がない中で伸びたということで、4、5年前から全面的にコニカミノルタの機械にオフから切り替えるところが出てきた。11月、12月は、フル活動だ。しかし、季節産業のようなもので、後は全然動かない。日本の場合は、カードは欧米などと違って年賀状くらいしかない。確固としたモデルというのが見つけづらい。今後は、バリアブルをもう少しアピールしていく。

――中小規模のトランザクションは?

深沢 そのあたりがポジション的には扱えると思う。圧着はがきなどもDISで販売していく。 企業も、フルライン印刷をやり始めている。中小印刷はそこに提案をしていかないといけない。セキュリティやコンプライアンスのことなど、強いパートナーと手を組んで提案していく。DISには圧着の機械も置いてあるので、いろいろやってみようと思う。

――印刷会社の意識については?

深沢 大手の製造会社で、カタログを作り置きすると、大量に余って捨てざるを得ないということで、ここを何とかしたい。大手だと、その金額が億という単位になるので、そこをオンデマンドの機械でやれないだろうか。
セキュリティの問題もある。中堅では自社のセキュリティもきちんとやろうという動きも確かにある。データが入ってきたら、あまり人が関与しない形で、プリントと後加工の間に検査装置があったり、枚数、納期などの条件でオンデマンドかオフに振り分ける、というものがアメリカでは稼動している。そのソフトは来年くらいに日本語版で入ってくる。面白そうなので、ぜひやっていきたい。

――IT化とオンデマンド印刷の関係では?

深沢 オンデマンドが増えてくると、前工程を極力縮めていくという方向に行く。今はオフでもそういう方向に行っている。 過去からずっとデータを作って持っている印刷会社は、内部の重要な部分に対応しているところはある。そういうところはデータの厳重なセキュリティをやっている。非常にレベルの高いことをやってお客さんの信用を得ているのはある。

――デジタル印刷もだんだん本物になってきた。

深沢 そういう意味では、今売っているメインの製品の、一つ上の部分をやっていきたい。 フルカラー・オンデマンド高速印刷システム「ON DEMAND PUBLISHER C65」にくるみ製本出力処理がインラインでできるオプション「くるみ製本機」を組み合わせた、印刷から製本までを一貫して行えるシステムを訴求している。製本機械はなくてもいいという印刷会社もあるが、用途によっては十分使える。

他メーカーとは違い、オプション的なものも全部内製で、その機械に合わせて一番最適なものを設計している。外から持ってくると、基本設計と合わないとか、エンジンの速度とポストのほうの出が合わない。あるいはメンテナンスの人がそこだけは触れない、違うメーカーのものだとできないなど、不都合があってあまりインライン化されていなかった。 コニカミノルタは開発部も同じチームで、かなり完成度は高い。全体としてコンパクトにまとまり、デザインも同じ形が取れる。

――今後について。

深沢 今は、DISをどういうふうに進化させていこうかと。単に箱を置いているだけではなく、どんどん進化させていきたいと思っている。販売店やクライアントと話しながら、進化させたい。「品川に来て何社か見たが、コニカミノルタが一番良かった」と言ってもらえるような、発信基地のようなところにしたい。プロダクション能力もあり、ここでいろいろな研修などもやっている。ADSLで機械のリモートメンテナンスも入れている。主要な部分はかなり充実している。セミナールームには80名くらいは入れる。11月からはフル活用している。年間280~290件くらいのデモンストレーション、セミナーを行っていく。

 

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社 プロダクションプリント事業部
〒103-0023 東京都中央区日本橋本町1-5-4
TEL 03-5205-7820 / FAX 03-5205-7821
コニカミノルタ デジタルイメージングスクエア
〒108-0075 東京都港区港南2-16-4 品川グランドセントラルタワー4F
TEL 03-5769-7791

 

(2008年2月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:ビジュアル・コミュニケーション・テクノロジーの創造

 

サカタインクス株式会社 取締役オフセット事業部長 三宅 悟氏に聞く

 

創業112周年を迎えるサカタインクスは、環境経営を最重要課題として、コア事業であるインキ製品では「地球に優しく、人に優しく、そして美しく」を製品開発の基本とし、環境配慮型製品を数多く揃え、さらに基盤技術を駆使した製品の研究開発を推進している。また、北米、ヨーロッパはもちろんのこと、中国、ベトナム、インドなど成長著しいアジア地域での生産拠点の拡充も図っている。
2007年6月にオフセット事業部長に就任した三宅悟氏に今後の事業展開などを伺った。

――環境対応に力を入れ、事業的にも伸びているのか。

三宅 当社は環境配慮を経営の重要課題の一つと認識し、早くから環境対応型インキの開発に着手している。オフセット分野では10年以上も前から大豆油インキを提供しており、今ではほぼすべてのオフセットインキを環境対応型インキで提供している。さらに、軟包装用インキもノントルエン化を進めており、さらなる環境対応型インキとしてのノントルエン・ノンMEKインキや水性インキも販売している。
もともと当社は新聞用インキが発祥の製品であり、フレキソインキは水性。ともに技術面でもリードしており、環境対応製品を早くから提供してきた。オフセット業界で、最近一番注目されているインキに水なしノンVOCインキがある。「水なし印刷」は、オフセット印刷で一番環境に優しい方式であり、多くの企業のCSR報告書や環境報告書などに採用されている。当社は業界初のノンVOCタイプを開発し、提供しており、IGAS2007では新製品「NEXT」も紹介している。
顧客も「環境経営」に関心が高く、最近では中国、インドも環境への意識が高まってきており、最新鋭の環境配慮型インキが求められている。

――フレキソやパッケージの環境対応はどうなのか。

三宅 「フレキソ印刷」は水性インキを使用しているので、環境には一番優しい印刷と言え、欧米ではかなり浸透している。ただ、日本では図柄やデザインなど、印刷物の仕上面に対するクライアントの要望が非常に厳しい面があり、やはり最終的にはどうしても現状はオフセット、グラビアが中心であるが、フレキソを推進している印刷会社も出てきている。
パッケージの場合、埼玉などの環境条例による規制が非常に厳しい。軟包装用では、まだまだ主流はグラビア印刷で、それに適合する設備投資が大きくなっている。インキや溶剤の回収装置など、インキメーカーとして、設備などの紹介・提供などで協力している。原油価格が高騰して、フィルムやインキの材料も随分上がって、ある程度価格に転嫁できないと成り立たなくなっている。

――デジタルプリントの市場も、アメリカなどに比べると日本は非常に伸びが遅い。

三宅 POD分野では、以前からXeikonを扱っていて、出荷台数もある程度伸びている。今はミドルエンドを印刷業界がどうやって取り込むかが注目され、市場規模は5年後には10倍と予想される。当社はハイエンドからミドルエンドまで手掛け、各地でのセミナーなどを開催し、欧米での成功事例などを紹介し、その普及に努めている。
印刷需要が全体的に落ちてくる中、印刷会社は生き残りを懸けて、デジタルプレスやニス加工など、新しいものに挑戦している。当社は、これらニーズを踏まえ、デジタル印刷においても、付加価値の高い印刷物を提案し、各地のセミナーでは、バリアブルの活用法などを中心に、デモンストレーションを交えて紹介している。IGAS2007での「Xeikon 6000」と中綴じ製本機「IBIS Smart Binder」のインライン接続による実演も、この一環として効率化を図る目的での提案である。

――新しいインキの評価を伺いたい。

三宅 急速に拡大したフリーペーパーは「新ジャンル印刷物」として位置付けられるまでになっているが、低級紙が多く使用されていて、印刷トラブルの原因となっている。そこで、フリーペーパー用輪転機用インキ「ウェブマスター エコピュアMEGA J Lite(メガ ジェイ ライト)」を2007年5月に発売した。低級紙とコート系用紙の共存印刷時の紙面品質向上とコストダウンを両立する点が評価されて、順調に伸びている。

また、当社は日本で初めて導入された枚葉8色機用インキを担当して以来、豊富な経験とノウハウをベースに、圧胴適性、水幅適性、セット乾燥性、耐摩擦性をさらに進化させた 「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC J」を同時発売した。従来品「ダイヤトーンエコピュアSOY 8 SPEC」に、新しく樹脂分散技術(IMGM)を採用することで、両面多色枚葉機での印刷時の課題であった、印刷後オフ輪並みのインターバルでの出荷が要求される「高い生産性」と、片面枚葉機と同レベルの「高い紙面品質(表裏差、ベタ・網バランスなど)」を両立している。近年、導入台数が増え続ける8色機用の「基準インキ」と位置付けている。

―― 8色機は色の管理などが難しいし、反転すると計測誤差が生じたり、メーカーによって特性の違いもある。営業担当者が個々の顧客に合わせていくのか。

三宅 技術担当が立ち会って、印刷環境や仕事の種類も見ながら、インキを設定している。

――紙との相性も御社でテストしなければいけないのか。

三宅 顧客のニーズによりマッチしたインキを提供するため一環として行っているもので、紙質検査の試験室を設け、酸性・アルカリ性、通気性や浸油速度などを測っている。いろいろな輸入紙が入ってきているが、日本の紙と特性が違うので、紙の検査をしないとインキの設定ができない。

――広色域のインキも出されているが。

三宅 高彩度インキ「ダイヤトーンエコピュアWCS」は7色のプロセスインキの中から任意選択で、独自のオリジナルプロセスを作成できる。既存設備の中で、最大限に印刷品質を上げ、決まった色数、色相を固定せず、フレキシブルに対応できることが最大の特徴である。

――「IGAS2007」で特に好評だったものや話題になったものはあるのか。

三宅 PDFデータの修正・変更を可能にする製版ソフト「NEO(ネオ)」が非常に好評で、会場で要望のあった検証用としての評価版が200本程度出ている。 また、ベルギーのEskoArtwork社の開発したConcentric(同心円)網点を発表した。AMスクリーンの滑らかさとFMスクリーンのインキ皮膜を薄くする特性を併せ持った画期的な網点で、インキマイレージの向上やモアレの解消などを実現する。最大の特徴は印刷中にインキを盛り過ぎてもドットゲインの増加がほとんどなく安定した色調の印刷が得られることだ。現在検証中だが、結構面白いと思っている。
今後とも顧客の要望を最優先に、新しい製品・サービスを提供していきたい。

サカタインクス株式会社
大阪本社:大阪市西区江戸堀1-23-37 TEL 06-6447-5811
東京本社:東京都文京区後楽1-4-25 日教販ビル TEL 03-5689-6600

 

(2008年3月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

EFIの統合ソリューションが、デジタル印刷の入口から出口までをカバー

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:EFIの統合ソリューションが、デジタル印刷の入口から出口までをカバー 

 

イー・エフ・アイ株式会社 セールスディレクター 南 文輝氏に聞く

 

EFIは1991年に、世界初のプリントコントローラ「Fiery」を発売し、現在までにワールドワイドに150万台以上を出荷している。印刷業界向けにはワークフロー・ソリューションやコントローラ・ソリューションを開発している。最近では、スーパーワイドフォーマットプリンタを含むインクジェットシステムも供給している。 新しい分野に活動範囲を広げているイー・エフ・アイの南文輝氏にお話を伺った。

--先日のPAGEに出展された。

 商業印刷のお客様に、新しいビジネスのご提案ということで出展した。大きな機械だったこと、通常の商業印刷とは異なるアプリケーションということで、注目度としては満足のいく結果だ。

--最近のビジネスについて。

 EFIは、もともとはRIPメーカーで、ほとんどのハイエンドの、主に生産機系のプリンタに対してプリントコントローラ、つまりRIPの部分をOEM供給している。それは今でもビジネスのコアであり、われわれの重要な部分だ。数年前からプルーフのソフトウエアを出しているのを始めとして、昨年からは産業用のインクジェットプリンタにも注力している。
EFIとして、コアであるRIP、もしくはカラーマネジメントというものが強みになっているので、そのRIPを使って、商業印刷でもデジタル印刷機でも、産業用のインクジェットプリンタの分野でも製品を提供しようという戦略だ。

--インクジェットプリンタについて。

 基本的には、われわれのコアコンピタンスであるRIPのビジネスでつながっているプリンタと競合しないものという前提だ。今後成長が見込める分野に特化して、一つがVUTEkというスーパーワイドフォーマットで、印字幅が2m以上の、主に野外や看板に使われるもの。 もう一つは、昨年買収したJetrionという製品でラベル、パッケージに対して高速でUVインクを使って運用するものだ。ユーザーは、ラベル印刷をやっている会社が主なターゲットと想定している。アプリケーションとしてバリアブルのバーコードや、当選くじのようなラベルがある。使い方は、フレキソで事前印刷して、可変の部分をインラインで印刷していく。今回PAGE2008で展示したものだ。drupaではフルカラーで白紙から全部可変印刷する製品を展示する予定だ。

--屋外の看板の戦略は。

 世界で最初にスーパーワイドフォーマット市場を立ち上げたのがVUTEk社だ。買収後、EFIとしては溶剤インクからUVインクにマーケットがシフトしているのを後押ししている。UVインクのプリンタとしては最高のスペックを持った製品だ。
また、メディアの相性など、どういうアプリケーションが使えるかというのがキーになるので、そのへんも併せてサポートしながら販売活動をやっていきたい。インクもEFIが供給する。VUTEkチームの中にインク専門事業部があり、開発から製造をアメリカで行っている。
また、Jetrionももともと、アメリカのプリントインクの事業部が母体となっているので、UVインクをJetrionチームが開発している。VUTEkとJetrionの技術者の情報交換もあり、一緒になったシナジー効果が出ている。

--販売ルートは。

 基本的には代理店経由で提供しているが、国内で直接販売してサポートする体制もある。Jetrionは、PAGEへも出展していたコスモグラフと、テイクの2社。テイクは従来からEFIのプルーフ製品の代理店もしている。

--どのような活動をしているのか。

 昨年は業界の展示会出展、セミナーやロードショーといって地方の営業拠点でのセミナーなどを実施した。新しいアプリケーションの紹介を主に行っている。

--お客様や市場の反応は。

 スーパーワイドの印字品質は、常に高い評価をいただいている。従来のEFIの強みであるワークフロー、例えばWeb入稿したものをEFIのRIPで校正出しして、OKであればその後、本機に回すというものがあるが、スーパーワイドフォーマットでもそのワークフローが使えるので、そのへんも評価が高い。
Jetrionに関しては、ほとんどスペック的に競合がない。76m/分(UVインク)で、スピードが圧倒的に早い。インクとメディアの相性も、良好だ。Jetrionは昨年の秋から販売開始したので、これからだ。

--先ほどのワークフローについて。

 Digital StoreFrontとFiery XFというプルーフのソフトウエアがある。デモをすると、パフォーマンスがいいという、高い評価だ。デジタル印刷機を持っている会社や出力センターは自社で開発していたり、FTPを使っていたりということで、それをまだ生かしたいという部分がある。また、インハウス向けの、Eメールでファイルを添付してやり取りしていたようなところは、検討を始めたところだ。今まではメールでやっているが、今後取り入れるならこういうものを検討したいという声を頂いている。Web to Printは、海外では当たり前になってきている。Digital StoreFrontは完全に日本語化しているので、日本市場でも、すぐに導入していただける。

--大判の用途に変化はあるのか。

 従来からある典型的なものは、メディアも変わらない。例えば垂れ幕や、ラッピングフィルムでバスや飛行機に貼るというものはそのまま残っているが、UVになることによって、硬質系が追加の仕事としてできる。ドアに、そのまま印刷していくというのは、UVならではの用途である。
溶剤は溶剤でまだマーケットがあり、EFIではとうもろこしから作ったBioVuインクを提供している。欧米では環境の問題や乾燥の問題でUVにシフトしてきている。印字品質も基本的にUVのほうがいい。さらに、硬質系で、素材を含めて、新たに用途開発するものがいろいろある。それが日本でこれから成長していく、一つのキーになると思う。いわゆるキラーアプリケーション、これが受けるから機械が売れるというようなものを作っていくのがわれわれの役目でもあると思っている。

--Web入稿ソフトについて。

 開発した経験がある会社は、苦労と金額を知っているので、これの金額を聞くと「安い」と言われる。プリントエンジンは、ワークフローを確立させて、あらゆる種類のプリンタを含めてお客様のアプリケーションに合ったものを選んでいただければいい。その選択肢の中で、EFIのVUTEkやJetrionも使ってもらえれば。

--UVのインクジェットは、マテリアルなども含めて、ある意味では各社共通のテーマである。
メディアに関しても、各メディアメーカーともこれからUVになるだろうということで、UVに合ったようなメディアの開発をされている。ワイドフォーマットもラベルもそうなので、間違いなくUVになっていくのではないか。

イー・エフ・アイ株式会社
東京都新宿区西新宿6-8-1 新宿オークタワー14F
TEL 03-3344-3123 FAX 03-3344-3127

 

(2008年4月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

世界にひろがる生活文化創造企業

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:世界にひろがる生活文化創造企業

 

東洋インキ製造株式会社 執行役員 境 裕憲氏に聞く

 

「世界にひろがる生活文化創造企業」を理念として発展してきた東洋インキ製造は、2007年に創立100周年を迎え、「世界に役立つスペシャリティケミカルメーカーとして進化する企業グループ」を企業目標として新たな挑戦を開始している。 印刷・情報事業本部オフセット事業部事業部長の境裕憲氏に、環境調和型製品やスペシャリティ製品を中心に、現在注力している新事業・新製品や今後の展開を伺った。

--drupaでの見どころを伺いたい。

 「drupa2008」には、LED-UV硬化型インキ「FD LEDシリーズ」を出展する。速乾で硬化する点は今までのUVランプと同じだが、ランプ方式と比較して消費電力は約4分の1で、電気代を大幅に節約できるし、UVランプと違って発熱が少ないので、熱に弱い素材にも印刷できる。当面は共同開発先であるリョービの専用資材として供給するが、今後の活用分野は広いと期待している。
導電性銀ペーストインキ「REXALPHA(レックスアルファ)シリーズ」はFPC材料やRFID用アンテナ材料のほか、EMIシールドにも活用可能だ。細線を精密に印刷するための印刷適性を持った銀ペーストで、ほかのメーカーとは視点が大きく違うと思う。さまざまな印刷方式に対応し、従来のエッチング法に比べ小ロットへの対応性や環境調和性が良い。 また、有機溶剤を減らして、大豆油やパーム油などの植物油を使ったオフセットインキを開発しており、オフセットインキは、現在ほぼ100%が環境対応製品になっている。広演色オフセットプロセスインキ「Kaleido(カレイド)シリーズ」や、環境調和型グラビアインキとして、溶剤循環型グラビア印刷システム用インキの「Eco VALUE(エコバリュー)」を展示するので、こちらも注目してほしい。

--Kaleidoの評価や今後も含めた取り組みを伺いたい。

  当初は印刷会社にかなり反響があったが、最近はじわりじわりと、デザイナーやクライアントからの要望が増えている。既存4色機で広演色印刷を実現するために開発されたので、カラーマネジメントができない印刷会社では対応できない。そこで、当社が定めたカレイドプロファイル2.0への準拠を条件に「カレイド印刷可能印刷企業」として当社のサイトで紹介している。 単にインキを販売するという考えではなく、当社のカラーマネジメントセンターでは、プロファイル提供から運用まで印刷会社をサポートし、特に印刷機をどう安定させるかに注力している。
プリプレス上でカラーマネジメントを一生懸命やっても、プレス上でカラーマネジメントができないと意味がない。そこで、定期的にユーザーを訪問して、データを提供してもらって、ある程度時間を掛けて機長たちにも理解してもらっている。 今はオフセットのKaleidが主流となっているが、今後はUV・新聞Kaleidoを広げていきたい。 新聞印刷でもKaleidを使うと明確に違う絵柄になる。新聞の発行部数は減っているが、カラー化が進んでいるし、特に高級ブランドの全面カラー広告などに生きてくるのではないか。
参考だが、アメリカの印刷雑誌『GraphicArts Monthly』の表紙は現在UV Kaleidoで刷られている。アメリカだけでなく、アジア各国でもかなり評判が良く、クライアントからの指定もある。対応できる印刷会社は日本のほうが多いが、シンガポールなどでは実ビジネスが始まっている。

--インクジェットなど、いろいろOEMで出回っているが、そのへんで動きはあるのか。今後の展開と併せて伺いたい。

  今のメインはワイドフォーマットのインクジェットで、一般の商業印刷、出版印刷、それからエレクトロニクス関係まで視野に入れた開発を進めている。インクジェットは商業印刷、出版印刷、バリアブルプリント分野まで拡大していくと思うが、高品位のバリアブルプリントではHPインディゴがかなりのシェアを確保している。 また、普通のオフセットインキやグラビアインキと変わらない校正用途に関しては、既にナノ分散、顔料合成技術、樹脂合成技術を持っている。ワイドフォーマットのインクジェットの品質は、日本製のインクが世界最高レベルであるので、現在の技術で十分グローバル展開できると考えている。
日本の印刷市場は既に成熟しているので、日本で培った技術を活用して海外でインキ事業を展開していく形になると思う。東洋インキは中国でもかなりのシェアを占めているし、今年6月にインドでもオフセットインキ事業を開始する。

--これまでの国内での100年に対し、これからは地球規模での100年という感じになるのか。

  どの化学メーカーも自動車メーカーも、国内の成長プラス海外の成長で発展をしている。幸い、日本の印刷インキ技術は世界最高レベルなので、どこでも十分ナンバーワンのブランドを確立できるのではないか。

--天然物由来の製品開発の経緯と今後の展開も伺いたい。

  以前より天然色素抽出事業の一環として、紅花などの植物抽出を行ってきた。植物原料として古来より防腐・抗菌の目的で用いられてきたクマササに着目し、独自製法で抽出したササエキスを用いた健康補助食品を2007年に製品化した。「リオナチュレシリーズ」として、天然物由来のスペシャリティケミカル製品事業の柱に位置付けている。 ケミカルメーカーとしては、原材料を化学合成して製品を作り上げるのが主流だったが、今後は、天然物由来の製品開発にも力を入れ、メイン事業として育てていきたい。

--フリーペーパーの台頭など、印刷市場の変化にはどのように対応しているのか。

  オフセット輪転インキの新製品「WD LEO-X(レオエックス)」は高級紙からフリーペーパーまで対応でき、低級紙でもロングランが可能だ。独自の乳化コントロール技術と顔料分散技術により、抜群の高速安定性、ロングラン適性を達成した。予想以上にユーザーのリアクションがいい。いろいろな用紙を使ったカタログも非常に好評だった。 --インキメーカーが紙とセットの見本を作ってくれると、仕事の話がスムーズになる。 紙媒体は、いろいろな意味で多様化している。LEO-XのXはクロスメディアを意識している。PODやインクジェットもあるし、いろいろな媒体との融合を考え、広告媒体も含めて多様なメディアにきちんと対応していきたい。デジタル印刷も、HPインディゴだけでなく、いろいろなデジタル印刷機、今までコンペティターだった製品も取り扱いながら多様化に対応していきたいと考えている。 東洋インキは、インキ事業が会社の大きな柱である。今後世界的にはまだ8%くらいは印刷需要は伸びることが見込まれるので、日本から東洋インキの技術を発信して世界中のマーケットに対応していきたい。

東洋インキ製造株式会社
〒104-8377 東京都中央区京橋2-3-13
TEL 03-3272-5731 / FAX 03-3278-8688

 

(2008年7月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

文字を通じて社会に貢献

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:文字を通じて社会に貢献

 

株式会社モリサワ 専務取締役 営業本部長 森澤彰彦氏に聞く

 

 モリサワは、世界でも初めてという画期的な写真による文字=写真植字を発明して以来、一貫して「文字の未来」を見つめて研究・開発を続け、「文字」をデジタルフォント、「組版」処理を自動編集ソフトとして開発し、時代に対応した製品を提供し続けている。


―貴社の特色を含め、これからの方向性について伺いたい。

森澤 まず、モリサワは2つの顔を持っている会社だということを説明させていただきたい。伝統的な組版を継承して提供できる数少ない会社・フォントメーカーという、印刷に関わるソフトウエアメーカーとしての顔が売り上げの3分の1で、残りの3分の2はMacやWindows、CTPやオンデマンド印刷機など、感材を含めた印刷機材の販売となっている。
印刷業界は今、大きく頭を切り換えなければいけない時期に来ていると思う。広告なりカタログなりはいったいだれが読むのか、どのようにしてその情報を得ようとしているのか、どういう情報が必要なのかを、今まで以上にクライアントと一緒になって考えていくくらいの提案力を持たなければ、将来生き残っていけないだろう。モリサワは2つの特色を持った会社として、文字に関するあらゆるニーズにこたえられる提案を行っていきたい。

―最近の文字に対するニーズは?

森澤 参入障壁があり他業界からの参入が難しかった電算写植機の時代は、出力機にだけ書体を入れておけばよかったが、いまやパソコンのフォントは品質が良い悪いは抜きにして容易に作成することができ、安いものもある。MORISAWA PASSPORTもパソコン1台年間約5万円出せば買えるようになった。参入障壁が下がったことで、今後さまざまな業種の方にご利用いただける機会が増えていくだろう。ニーズとして具体的には、テレビのバラエティ番組ではポップ調を多用したいのでそのバリエーションを増やしてほしいとか、出版社などではトラディショナルな明朝体を増やしてほしいなどの要望が出ている。業界が違えばニーズも違うので、モリサワではこれらの要望にこたえられるよう、ラインナップを拡充していこうと考えている。

―紙へのニーズとは違う?

森澤 初めは違うと思っていた。ある携帯電話メーカーで、われわれの提案したフォントとは違うフォントを採用されたケースもあった。ただ、だんだんそれに見慣れてきてデバイスの精度が上がれば上がるほど、最終的には印刷の書体とほとんど変わらない書体がいいと要望が変わってきている。

―Webのデザインも、表現能力が高くなると、ほとんど紙のデザインと似たような形になってきた。

森澤 まさにそうである。MORISAWA PASSPORTのユーザーでも、Web業界は非常に多い。その中のMORISAWA PASSPORTを多く利用していただいている会社での話だが、その会社では当初全くフォントというものにこだわっていなかったという。ところが、アクセシビリティや見やすさの問題などを突き詰めていくと、どんどん紙媒体に近づいていると自分たちで感じたそうだ。その流れで、では「紙媒体にはどんな文字が使われているのか、どういう書体が人気があるのか」と調べていくうちに、モリサワというキーワードが出てきた。社内にはWebデザインだけでなく、紙のデザインの経験者もいたので、モリサワを使うべきだろうということで、多くの契約を頂くことができた。Webには明らかに有利な点があるが、紙がWebに負けないために、紙に何の付加価値を付けるかは、本当に考えなければいけないだろう。Webと紙をどう連動させるかという一つのパターンだと思う。

―モリサワが持っている業界に対するアドバンテージについて、改めて伺いたい。

森澤  一つは、モリサワは北海道から鹿児島まで営業所を持っているので、主要な都市はほぼカバーできるサポート体制が整っている。もう一つは、ソフトウエアの自社ブランドを除くと独立系の商社なので、ユーザーのニーズによって自社製品とセットで提案するメーカーをいくつも変えることができるのが大きい特徴だろう。メーカー系の販社は、自分のところの商品を売らなければいけないので、どうしても自社商品の良いところを中心に強調して説明しがちである。その点モリサワは、客観的にいろいろなメーカーの商品を判断できる立場なので、より良い提案を行うことが可能となる。
プリプレス分野に関しては、自社開発を行っているので、ユーザーのニーズに合わせたシステムを構築することも可能である。特にプリプレスの自動化はこれからの大きなテーマになるが、ここでモリサワは大いに力を発揮できるだろう。文字をハンドリングする技術は他社にはない技術である。

―先日学生向けに販売を開始した「Student Pack」についてお聞かせいただきたい。

森澤  学生がデザインを志しているのに、学校にフォントがないからという理由で、MS明朝やMSゴシックで平気でサンプルを作ったりしている。そこにクリエイティビティがないとまでは言わないが、非常に在り来りである。これで将来本当にデザインに携わる仕事について活躍できるのか甚だ疑問なところがあり、もう少し学生に使いやすい環境を整えたいという思いと、学校にもMORISAWA PASSPORTを導入しやすくしてもらいたいという狙いがあった。今のところ、間違いなく「Student Pack」は学生に浸透し始めている。MORISAWA PASSPORTを教室で利用してもらうのはもちろんだが、学生は学校で課題をやり切れず家に持って帰ってやっているようだ。これまでは家にはフォントがなくて作れないという問題があったが、「Student Pack」はその問題を解消している。

―人材育成を目指して取り組まれている文字組版の教室についてお聞きしたい。

森澤  モリサワでは、長年にわたり培われてきた美しい文字組版を継承するために、フォントや組版ソフトの品質向上に努めるとともに、美しい文字組版が行える人材の養成を目指して、業界の製作担当者、オペレーターを対象に「文字組版の教室」を開催している。これまで延べ2000人に聞いていただいた。今まではゼロだったということを考えれば、美しい文字組版への意識を持ってもらえただけで、一つの成果ではないか。今後はデザイン学校や専門学校との連携なども考えている。

―その他、今後の展開について。

森澤 これまでもそうだが、モリサワにとっては印刷業界がメインなので、印刷業界がどういう方向に向かっていくのかが、最大の関心事である。 印刷業界で今後大きな伸びを期待できる分野としてオンデマンドがあると思うが、モリサワが持っている技術をどのようにオンデマンドマーケットに結び付けていくかということで始めた製品の一つが、オンデマンドプリンタ用可変印刷ソフトウエア「MVP(モリサワ・バリアブル・プリント)」である。可変データを利用したダイレクトメールや小冊子を体裁良く作成し、高速にプリントするための可変印刷ソフトで、これまでの欧米製の製品では苦手だった縦組みや日本語特有の処理に対応した高品質な組版と、面付け作業までを含む一連の流れを効率良く処理できる製品なので、今後の展開に期待している。 印刷業界に携わる人たちが、今までやりたいと思ってもやれなかったことを実現するための一翼を、モリサワが今後も常に担っていきたい。

株式会社モリサワ
TEL 06-6649-2151 / 03-3267-1231

 

(2008年8月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

お客様のニーズに常に目を向けて

※本記事の内容は掲載当時のものです。

事業紹介インタビュー:お客様のニーズに常に目を向けて 

 

リョービ株式会社 取締役 執行役員 グラフィックシステム本部長 石井浩司氏に聞く

 

リョービは、ダイカストで培った精密加工技術、生産技術をベースに、エレクトロニクスやデジタル技術を融合させることで、印刷機の高速化・自動化・省力化を実現してきた。取締役 執行役員 グラフィックシステム本部長の石井浩司氏に今後の展望を伺った。

 

―まず、貴社の特色について伺いたい。

石井  リョービは印刷機の製造、開発、営業・販売までに関わっている社員が現在900名超おり、すべての社員が常に’お客様が今何を求めているのか、何に困っているのか’について目を向けることを心掛けている。これは日本だけではなく、現在170カ国以上に展開している64の代理店すべてで同じ考えを共有しており、集積された情報をベースにより良い製品の開発、製造、各種サービスが提供できる体制を整えている。つまり「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」という考え方を持って事業を展開しているということである。

―印刷機メーカーとしてリョービのアドバンテージをもう少しお聞きしたい。

石井  お客様に対するサポート体制が充実していることである。アフターサービスを含めたサポートは、現在日本、ヨーロッパ、アメリカにテクニカルサポートセンターという拠点を設け、リョービ独自のきめ細かいアフターサービスを実現している。お客様からもその点への高い評価を頂いている。さらに、リョービがこれから新しく取り組もうとしてこの1年ほどモニターしてきた、「リモートメンテナンスサービス」についても、中型印刷機を中心に10月から展開していく予定である。これにより、現場での問題についてスピーディで効率の良い解決が実現できると考えている。

―マーケットインということであったが、情報源となるのは?

石井  国内の営業担当者から入ってくる情報が一番大きいが、そのほかにも海外担当者が海外のお客様を訪問して得てくる情報も、リョービにとっては製品開発の大きなヒントになることが多い。国内だけの情報ではやはり視野が狭くなりがちなので、広い視野で物事を考える際は海外の情報が果たす役割は非常に大きい。そういった意味で、グローバル展開しているリョービは大きなアドバンテージを持っていると考えている。

―海外展開も広く行っているが、日本と海外でニーズに違いは? また今後の展開についてお聞きしたい。

石井  技術的な面については意外と違いはないようだ。日本の印刷技術は世界でもナンバーワンだと思うので、日本でのニーズに対応できる製品は海外でも十分対応できると考えている。
リョービの現在の国内・海外の出荷割合は3対7だが今後は海外、特に新興国への展開にも注力している。これは景気の後退が日本だけではなく海外の主要国も同様の影響を受けているためである。具体的にはBRICsを中心に、中南米、東欧、東南アジアなどへの展開は重要であると考えている。 日本で培った高い性能を持った製品を海外に広めながら、日本の印刷技術の高さも伝えられればと考えている。

―海外展開において日本以外にも生産拠点は?

石井  将来は分からないが、現在のところ日本以外考えていない。リョービの製品品質を維持するには日本で生産するのがベストと考えている。1モデルに対して1000を超えるバリエーションがあることもあるリョービの印刷機を、海外で生産しようとすると効率がとても悪くなる。それを効率良く行っていくには、機能性の高い生産体制の下でマイスター制度などを導入している日本で、非常に高度な技能者を確保しながら製造していくことがベストだと考えている。

―人材育成について伺いたい。

石井  リョービでは、全社を通じて人材育成に相当な力を入れて実行している。マイスター制度を始め、管理職コースや専門職のエキスパートコースなどを導入しているが、これらは個人の技術スキルアップだけではなく、仕事へのやりがい、働きがいといったモチベーションアップにも役立っている。これらの制度の下で、社員が日々印刷機の開発、製造に従事しているので、お客様に安心して使っていただける、高品質で信頼性の高い製品投入が可能となっている。

―環境対応について、リョービの取り組みは。

石井  あらゆる場面でのリサイクルなども当然実行しているが、例えば機械の検収を効率良く実行して時間を短縮したり、部品加工においては、刃物を変えるなどして部品加工時間の短縮をしたりということで、CO2の削減に取り組んでいる。
それから、この「広島東工場の第2工場」の大きな特長である環境に対応した空調設備でもCO2削減へ貢献している。第2工場は、「限りなき挑戦で、世界のお客様と共に成長する」をコンセプトに2007年9月より本格稼働し、延べ床面積が1万9300m2、1階が組み立て・検収、3階が部品組み立てと組み立て用部品倉庫を備えている。2階は、組み立て・検収を上から眺められる見学通路になっている。地下に空気を通すクールチューブを設けて、自然のエネルギーを活用した省エネ技術を採用しており、温度、湿度を常に一定に保てる品質管理に優れた工場である。

―フォントについてお聞きしたい。

石井  今後は携帯電話の文字や産業用、例えば駅の発着案内表示などへのニーズに対応する機会が増えていくだろう。産業用となると、デザイン性に加え信頼性を求めて実績のあるフォント開発メーカーへのニーズが増えてくるだろうが、リョービはそのニーズにこたえることができる。また高品質な文字を要求しているデザイナーにもリョービのフォントは広く採用されている。今後も印刷機同様、さまざまなニーズにこたえていきたい。

―ユーザー会(リョービ68/75会)についてお聞きしたい。

石井  ユーザー同士で情報交換を行いたいという強いニーズがあって、リョービ68/75会は5年前に設立総会を実施し、中型印刷機のお客様を対象としたユーザー会として設立した。ユーザーの方たちに、事業のお役に立つさまざまな情報をリョービよりいち早くご提供していきたいというのがユーザー会の大きな目的である。また、ユーザーとリョービがお互いの思いや考えを出し合い、両者の関係をより強固にしていく大きなネットワークとして捉えている。

総会は年に1回実施しているが、最近は地域ごとにそれぞれの特色に合った地域情報交換会なども開催している。より細かい技術についての勉強会実施などユーザーの関心も高いようだ。

―最後にメッセージをお願いしたい。

石井  リョービはよく、「小型印刷機のリョービ」と言われる。そういう感覚を根強く持っている人が今でも多いが、現在出荷している印刷機の半分以上は「中型印刷機」である。これまでも各県の印刷工業組合の方々がこの広島東工場を見学されたが、見て驚かれる方が非常に多い。小型印刷機で培ってきたノウハウは大事に生かしつつ、リョービのイメージを変えていくことに今後もっと力を入れていきたいと考えている。drupa2008に参考出品した、’枚葉オフセット印刷機用LED-UV印刷システム’搭載の「RYOBI 525GX」の開発や大型印刷機「RYOBI 1050」への参入などは、そういった考えの表れである。

広島東工場の見学についてはご要望があればいつでもOKなので、経営者だけではなく工場長や社員の方など、いろいろな人たちにぜひリョービの今を体感していただきたい。

リョービ株式会社
グラフィックシステム本部管理部
〒726-0002 広島県府中市鵜飼町800-2
TEL 0847-40-1600 FAX 0847-40-1601

 

(2008年11月)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)