ZOZOTOWNの「ワンコインランチブック」に見る、新たな価値の生み出しかた

掲載日:2018年9月6日

通販で発送する商品と一緒にチラシやカタログを送る同梱サービスは確実に手元に届くのが特徴です。ファッションECのZOZOTOWNが実施しているオマケについて紹介します。

高い開封率で既存顧客外リストにPRできる、同梱サービス

チラシやサンプル、クーポン券、カタログなどを見込み客に届ける手法のひとつに「同梱サービス」があります。これは企業が発送する商品と一緒に他企業のチラシやサンプルを一緒に梱包するもので、大きな会員数を持つ企業が提供していることが多いです。

例えば1500万人の会員を持つ大手通信販売会社の千趣会では、エリアや年齢、子供の有無など条件に合った会員に対してチラシやサンプルを同梱するプロモーションサービスを販売しています。(→参考:千趣会プロモーションサービス

同梱サービスを利用することで、自社で持っていない顧客リストに対してアプローチすることができます。また通販であれば発送する商品に同梱することができます。これは必ず開封され、ほぼ100%手に取ってもらえるという特徴があります。

プロモーションを価値あるオマケに変えたZOZOTOWN

リアル店舗を持たず、さまざまなブランドの商品をオンライン上で販売するファッションECのZOZOTOWNは、過去1年以内に1回以上購入したアクティブ会員数が約550万人いる巨大なサービスです(→参考)。2017年より「ZOZOオマケ」というキャンペーンを実施しています。

これは期間中に商品を購入したユーザーを対象に、何らかの特典を購入商品に同梱して届けるというものです。2018年6月は、コミック配信サービスの「まんが王国」、予約サイトの「EPERK」の1000円クーポン券がオマケとして商品に同梱されていました。そのほかにも電子書店のクーポン券、フォトブックサービスの無料券など、毎回特典内容は変わります。

2018年7月は、食べログと共同で実施した「ワンコインランチブック」がオマケでした。食べログの月額会費制サービス「食べログ ワンコインランチ」の掲載店から50店をピックアップしたもので、もらった人は掲載店に冊子を持っていくと500円でランチを食べられます。

同梱してもらう企業から見ると自社サービスを利用してもらうための販促クーポンです。通販の発送商品にチラシやサンプル商品を同梱している例はたくさんありますが、もらった側にとってみると、「商品・サービスのPR」です。

しかし「オマケ」と位置づけ毎月異なるクーポンや商品を提供することで、ユーザー側にとってはもらってうれしいものと認識され、新たな価値が生まれます。

あるキュレーションメディアの方がネイティブ広告について、「企業にとっては広告だが、有用な内容であれば見せ方次第でユーザーにとって魅力的なコンテンツになる」という趣旨のことを話していましたが、このオマケも同様でしょう。

プロモーションにひとさじ加えて価値を高める

ECサイトのクーポン券は、オンラインやメールで配布する方法が一般的です。日常的にメールマガジンやSNSでユーザーとコミュニケーションをとる機会が多いうえ、印刷物と比較して制作の手間やコストなどの負担が少なくて済むことが理由です。また利用する側にとってもオンラインクーポンは身近なもので、20~30代では紙よりもスマホクーポンの利用率が高いという調査結果もあります。

しかし最近では宛名入りで手元に届くDMの効果が改めて注目されており、ターゲティングした層ごとにカスタマイズした内容を印刷したクーポン付きDMなども増えています。紳士服販売のはるやま商事がユーザーが好みそうな商品を選んで掲載したパーソナライズDMで効果を上げた事例も話題になりました。

ワンコインランチブックの場合では、「ZOZOTOWNで月5000円以上商品を購入する人」で抽出することで、ファッションに関心があり、ネット決済に抵抗がなく、一定の金額を使う層をターゲットにしていると考えられます。

冊子の奥付を見ると、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが発行所です。食べログのワンコインランチ自体はスマホ上でクーポンを表示して利用するサービスですが、同社では「ランチデートにおすすめ」という視点で、お店情報のほかデートのコーデやモテ講座などの特集記事を加えてターゲットに合わせたコンテンツを企画・制作しています。

やみくもにクーポンを同梱するのではなく、自社サービスの世界観に合ったものを選定していることも、ユーザーに受け入れられるポイントのようです。

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オンラインのクーポンは、履歴が取りやすい、SNSで拡散してもらいやすいなど多くのメリットがあります。紙のクーポンには手元に取っておいて期間中に何回か見返したり、冊子であればだれかと一緒に見て選んだりできるといったメリットがあります。

プロモーション企画においては対象や利用シーンを考えて適切な媒体を選択できるスキルが大きな強みになるでしょう。

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(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)