テレワーク時代、企業は内と外と両方のデジタル化が求められる

掲載日:2020年6月4日

テレワークを実施するためには、顧客に対する対応と社員がスムーズに業務に取り組める環境づくりの両方が必要です。

新しい働きかたとして推奨されるテレワーク

5月25日に東京を含めた全国の都道府県で非常事態宣言が解除され、厚生労働省が公表した「新しい生活様式」に沿った生活が推奨されています。新しい生活様式とは新型コロナウイルスを想定した生活や働き方のスタイルのことで、「人と距離を2メートル空ける」「帰ったらよく手を洗う」といった基本的な対策のほか、「(買い物では)電子決済を利用」「予約制を利用してゆったりと」「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」「会議・名刺交換はオンライン」などが提言されています。

なかでもテレワークは、企業側にとっても働く側にとっても特に注目する項目でしょう。職場と離れた場所(自宅等)でIT技術を活用して仕事をするテレワークはもともと多様な働きかたのひとつとして徐々に広がっていましたが、コロナウイルス感染防止目的で2020年3月以降導入する企業が急増しました。非常事態宣言解除後もテレワークに舵を切り、全面テレワークに方針転換してオフィス面積を縮小するなど積極姿勢を表明した企業も大手やIT系などで増えています。

メリットは「業務効率化」「仕事と生活の両立」

企業にとってのテレワーク導入メリットのひとつが業務効率化です。「積極化している企業の6割以上で労働時間が減少」「単体または組み合わせて導入した企業で13~18%程度の生産性が向上」(※出典:2019年総務省「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」)など、経営課題を解決する手段として期待されています。 ほかにも離職防止や採用強化、BCP対応などのメリットが挙げられます。

働く側にとっては効率化に加え仕事と生活を両立できるのが大きなメリットです。実際に体験してみて「わざわざ大変な思いをして通勤するより自宅で仕事をしたほうが効率的だ。」と感じた人も多く、Googleが2020年5月に公表したアンケート結果でも2人に1人が「テレワークを継続したい」と考えていることが示されています。(→Google「3000人に聞いた今・これからの働き方:「テレワークを継続したい」が「継続したくない」を大きく上回る」 )

国や自治体のほかシステム開発企業からも補助金や各種サポートが相次いで提供されており、今後テレワーク導入はさらに進むと考えられています。

テレワークで求められるデジタル化とは

テレワークを実施するためには、企業側には「外向きのデジタル化」と「内向きのデジタル化」の2方面の準備が必要になります。

ここで外向きのデジタル化と呼んでいるのは、顧客に対する対応のデジタル化です。たとえばZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議ツールを使って商談をしたり、ウェビナー(オンラインで開催するセミナー)で見込み顧客を集めたり。Webサイトから申込ができるようにしたり、問合せをチャットボットに切り替えるということも考えられます。さらに履歴データを社内で共有することも必要でしょう。

内向きのデジタル化とは、働く環境の整備です。 勤怠管理ツールやプロジェクト管理ツールを活用したり、自宅から職場パソコンで操作できるリモートデスクトップを導入したり。社内のコミュニケーションがおろそかにならないようにChatworkやLINE WORKSなどビジネスチャットの導入も考えられます。もちろんセキュリティへの配慮も必要です。

より業務がスムーズに行えるようなしくみを目指すと、バラバラだったデータを全社で一元管理したりクラウド上で情報共有するなど効率化にも手が伸びます。RPAで単純業務はロボットに任せるなど自動化の検討余地もあるでしょう。テレワーク目的で各種ツールの導入をきっかけにデジタル化が進み、結果的にビジネス全体のデジタル変革にまで辿り着く可能性もあります。

オンライン会議ツールだけ導入してもテレワークはできません。外向き、内向きの両方をバランスよくデジタル化したうえで、就業規則の変更や既定の策定などを行う必要があります。

製造、接客など業務特性的に導入が難しい部門はもちろんありますが、導入可能な部門にとってテレワークは多くの可能性を持っています。導入を予定していない企業であっても、自社には無理だと切り捨てる前に「それ、ほんとうにオフィスに出勤してやらなきゃいけないのかな?」「デジタル化したら人がやらなくてもいいんじゃない?」と立ち止まって考えることは無駄ではないはずです。

(JAGAT 研究調査部 中狹亜矢)

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