企画趣旨
1914年創業、110年を超える歴史を持つ印刷会社 加藤文明社 は、教科書・学参書を中心とした出版印刷において、「歴史」と「実績」に裏打ちされた信頼性を築いてきた。
一方で、出版市場の縮小や電子化の進展により、従来の延長線上では成長が見込みにくい時代を迎えている。こうした環境の中で同社が掲げたのが、「Century Books」というメッセージである。これは、次の100年も本づくりを通じて出版・教育文化を支え続けるという覚悟とともに、印刷・製本にとどまらず、企画、デザイン、流通、デジタル対応までを包含した“トータルな本づくり”への進化を示すものである。
本講演では、その背景にある試行錯誤のプロセスにも踏み込む。加藤文男 氏は、前職の米国駐在を通じて、デジタル印刷の現実を目の当たりにしてきた。そこでは、設備導入だけではビジネスとして成立しないという課題や、多くの企業が直面した失敗の実態があった。逆に成功体験では、ニューヨークのParsons School of Designにおける卒業制作プロジェクトがある。若きクリエイターたちと二人三脚で、デジタル印刷ならではの表現の可能性を追求した。この経験が「伴走型」の本づくりの可能性を見出すきっかけとなった。
さらに本講演では、その実践の場としての「atelier gray」の役割にも焦点を当てる。顧客との接点を上流へと広げ、クリエイティブと生産を一体化させることで、従来にはない付加価値を創出するモデルをどのように構築してきたのか。クリエイティブ面だけでなく、生産力としてのデジタル印刷活用の具体的な取り組みを紹介する。
本研究会では、「Century Books」に込めた思いとともに、その実現に至るリアルなプロセスを通じて、これからの印刷会社のあり方を展望する。次の100年も本づくりを続けていくために、いま何を変え、何を磨くべきか――その実践知を共有いただく機会としたい。