空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

掲載日:2014年8月14日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:特殊印刷

Q:空気や水へ印刷はできるのでしょうか。

A:印刷は、元々は版にインキを付けて圧力をかけることによってインキを版から被印刷物に転写させることであり、従来から現在までそのように行われています。また、デジタル技術の発達した現在では、版を用いなくても印刷できるようなシステムも確立し、印刷の概念が従来よりも拡大して解釈されています。また、印刷の原語はprintですが、printは一回限りの表現にも使われています。 
  厳密にいえば、水や空気への印刷はできるのかと問われると答えるのに苦労します。しかし、空中や水中に何らかの方法で絵柄を表現したり又は水を媒体としてプリントのようなことは行われています。
これらのことをさらに拡大解釈して空気や水への『印刷』として捕らえている場合もあり、その例をいくつか挙げます。

●空気への『印刷』
① 空気というより空に『印刷』するということで言えば、オリンピック等の世界的なイベントでジェット機が煙を噴射して五輪のマーク等を空に表現することが挙げられます。

② これと似たようなことで、一機のセスナ機から5つの煙を出す装置を取りつけ、セスナ機が2機で水平飛行して空に文字やマーク等を煙で表現することもきます。
また、イベントのステージでスモークを出し、そこにレーザー光線で映像や文字を写すこともあります。このように空中に絵柄を描いていることになるでしょう。

●水を媒体とした『印刷』
① 水溶紙を使った方法があります。水溶紙は、水に濡らすとすぐに溶ける性質をもっており、軍事用、産業用、医療用の機密文書等に用いられています。重要な機密事項を守るための用紙です。この用紙をディゾルボといって三島製紙㈱の商標となっています。版式は、用紙の性質上、ドライオフセット印刷または水無しオフセット印刷を使います。 しかし、単純に印刷するだけでは水に浸せばすべて溶解します。そこで孔版でゾルインキという 水に溶解しない塩ビ系のインキで印刷すると、水に浸しても紙は溶解するが絵柄だけ水の上に浮いている状態ができます。
これと同じように水で溶解するフィルムもいろいろあります。フィルムといえばオブラートが代表的です。ベースがゼラチンやアラビアゴム等の素材でできています。これにゾルタイプのインキで印刷しておけば水の中に絵柄を残すという同じ効果が出せます。

② 水出し印刷は、水質紙に絵柄がオフセット印刷されており、その上にスクリーン印刷等で水出しインキを印刷して隠蔽し、水をつけると絵柄が出てくることをいいます。水の浸透性に差をつけて絵柄を表現します。具体的には、幼児用玩具、幼児向け本の付録等に使われます。

③ 水圧印刷は、水溶性のフィルムに例えば木目や大理石等のパターンの絵柄をグラビア印刷します。そして、それを水槽に入れるとフィルムが溶解され木目や大理石等のパターンだけが水面に残ります。そこにプラスチックなどの成形品や曲面状のものを水中に浮かぶ絵柄パターンの部分に潜らせて水から引き上げて転写されます。
  水を潜らせるために、複雑に歪曲した部分や凹凸の形状のものにでも転写が可能です。現在では家電製品や自動車のフロントパネルの成形品などに使われています。

④ スライド転写は、ベースの上に水溶性の剥離層を設けその上に絵柄を孔版印刷しさらに接着剤をコートしたものです。そして、それが水で溶解して層が浮き上がり例えばプラスチックモデルの絵付け用シールや学用品などに貼ったり、人の肌に絵柄を写すこともできます。
  工業用としては、ガラスや陶器に貼り、それで焼きの釜に入ると完全に密着して洗ってもブラシで擦っても落ちません。またオートバイのタンクや車のボディへの絵柄付け等に利用されています。水に印刷するのではなく水を媒体にして転写しています。

⑤ 墨流しは、ゼラチンや寒天の上に染料をたらして流し模様のパターンを作り紙に写すことをいいます。寒天の上にドロドロした皮膜でパターンを作りその上に紙や布などを通すことによりパターンが写されます。たとえば製本の小口の部分を墨流しするとマーブルな感じ出て非常に高級感がえられます。

⑥ パウダーを使ってコーヒーや飲み物に星やハートマーク等のマスクをおいて粉ミルクを振り掛けると粉ミルクや粉チーズのマークができことを広く解釈すれば『印刷』といえるかもしれません。
  静電インクというトナーでチャージを与えることによってケーキ等のクリームの上に絵柄を表現できます。このトナーは、且つ食用でないといけません。水ではないですが、水に近いものへの『印刷』です。

  このように水を利用していろいろな印刷物が製作されています。空気や水への印刷というのはあくまで拡大解釈であり、いいかえると空気や水を利用して空中や水中に絵柄を残して情報を伝達できるという意味ともいえるかもしれません。 
 

(2005年2月14日)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)