コンビニ売上高は過去最高、スーパーは3年連続増、百貨店はコロナ禍前の9割まで回復

掲載日:2023年1月31日

2022年の大手小売業売上高は、スーパーが3年連続増、百貨店とコンビニは2年連続増と回復基調にある。クライアント産業の業績は、印刷会社の需要にどの程度影響するのか。(数字で読み解く印刷産業2023その1)

コンビニ店舗数は横ばい、スーパー・百貨店は減少

印刷産業の得意先産業は、出版、小売、金融、広告などが大きな割合を占めています。
2022年の紙の出版市場は、前年比6.5%減の1兆1292億円(全国出版協会・出版科学研究所推定)にとどまり、2020年、2021年と続いたコロナ特需が終息し、物価高の影響で書籍・雑誌を買い控えたものと思われます。
この間の印刷業の生産金額を見ると、出版印刷は減少傾向が続いていますが、商業印刷は2020年の大幅減から、2021年は増加に転じ、2022年上期は微増となっています(経済産業省生産動態統計)。

2022年の小売業界については、1月下旬に発表された大手小売業の販売概況を見てみましょう。

日本フランチャイズチェーン協会は1月20日、2022年末の全国のコンビニエンスストア店舗数を5万5838店(2021年末は5万5950店)と発表しました。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンなど、正会員7社の店舗数を集計したもので、2019年2月末の5万5979店をピークに店舗数はほぼ横ばいです。

一方、大手スーパーなどを会員とする日本チェーンストア協会が1月25日に発表した、2022年末の会員企業56社の店舗数は1万683店で、過去最高となった前年の1万1897店から1214店減少しました。

日本百貨店協会が1月24日に発表した2022年末の百貨店店舗数は71社185店(2021年末は73社189店)、地方の不採算店の閉店が続き、ピークだった1999年(140社311店)から4割減少しています。

スーパー売上高は堅調、コンビニは過去最高に

次に2022年売上高を見てみましょう。

最も売上規模の大きいスーパーの全店売上高は13兆2656億円(前年比0.4%増)、2008年以来の高水準で、3年連続で前年を上回りました。
全体の約7割を占める食料品は、4月以降の行動制限緩和で、内食需要が減少傾向となったが、10月の値上げラッシュの影響で堅調に推移しました。また、消費者の行動範囲が広がったことで旅行グッズなどの住居関連品が好調でした。

コンビニの全店売上高は11兆1775億円(前年比3.7%増)で、コロナ禍前の2019年を上回り、過去最高となりました。人流回復に対応した商品開発や品ぞろえにより、おにぎり、弁当、冷凍食品などの売れ行きが好調で、客単価も711.5円(同2.8%増)と8年連続で増えました。値上げラッシュとまとめ買いが客単価を押し上げましたが、来店客数は0.9%増にとどまりました。

百貨店売上高はコロナ禍前の9割まで回復

全国百貨店売上高は4兆9812億円(前年比12.7%増)で2年連続で増加しました。行動制限と水際対策の緩和で客足が増え、コロナ禍前の2019年の9割近くまで回復しました。昨年10月の水際対策の大幅緩和を受け、インバウンド(訪日外国人客)による消費も拡大し、免税売上高は前年比2.5倍の1142億円となりました。

印刷産業出荷額と百貨店売上高は規模が近く、どちらも1991年と1997年をピークとするM字カーブを描き、2009年に大きく減少しました。その後は、印刷産業出荷額が2011年に6兆円割れ、2018年に5兆円割れとなったのに対して、百貨店売上高は2015年まで6兆円台で、インバウンド需要の拡大もあって2019年まで堅調でした。しかし、百貨店業界は新型コロナウイルス感染症の影響を最も強く受けた業界の一つで、2020年には前年比26.7%の大幅減で、印刷産業出荷額を初めて下回りました。

百貨店売上高は、2021年以降2年連続の増加で回復基調にあり、水際対策が続く中国からの訪日客が本格的に戻ってこれば、コロナ禍前を上回ることが期待されます。ただし、専門店の台頭やネット通販の拡大でコロナ禍前から低迷は続いており、百貨店ならではの魅力を強化することが重要な課題となっています。

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷メディア産業に関連するデータを網羅し、わかりやすい図表にして分析しています。また、限られた誌面で伝え切れないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信しています。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)