最新調査による印刷会社の経営動向2018 [業績・戦略・設備]

掲載日:2018年8月9日

この調査は印刷会社の(1)業績(2)戦略(3)設備を総合的に調べている。業績と戦略を同時に調べることで、好業績印刷会社の思考特性へのアプローチが可能になる。また、設備投資動向や技術・サービスに関する投資・保有・取り組み状況も明らかになる。

印刷会社の経営~収支・財務造・戦略・投資の観点から


■業績の概要

印刷会社の売上高は3年連続の減少。そしてその減少幅は2年連続で拡大、売上高の減少傾向が鮮明になった。営業利益率は4年連続の1%台にとどまった。2012年前後からの設備投資主導による生産性改善が業績と1人当り人件費に好影響を与える印刷経営の好循環局面に明確な区切りがつく一方、次の一手が見つからないまま業績が横ばい推移している。


■収支構造と売上高

売上高の分野別には、包装の堅調、商業・総合・出版の失速、事務用の特需剥落といった構図になっている。商業と総合の下げ幅は近年にない大きさ。特に出版は15年連続の売上高減少。売上高の下げ幅が拡大、出版全体が赤字化して先行きが見えなくなった。事務用はマイナンバーなど一過性需要の減少が大きく影響したようだ。利益率は昨年と同程度ながら、内訳を見ると減価償却費減少の寄与度が大きいため、資金収支面の実情は厳しさを増した可能性が高い。


■財務構造、人的資源と設備投資

従業員の平均年齢は史上最高を記録した昨年に次ぐ高水準。非正規従業員割合は史上最高を記録するほどの活用が進む。そして従業員1人当りの機械装置額は史上最少を更新、脱装置産業的モデルへの姿勢が垣間見られる。人手不足時代において人的資源マネジメントの難しさの増している様子がうかがわれる。設備投資にも充足感が見られ、助成金活用で高性能機へリプレイスして生産性を高める戦略をこれ以上続けるのは難しい。これまでとは異なる、設備投資頼みではないビジネスモデルを構築する必要性が高まっている。


■戦略面と業績良好企業のかたち

業績良好企業のモデルは以下のようになりそうだ。BPO(業務受託)・ワンストップサービスといった必ずしも印刷に依存することなく顧客の課題解決を支援する経営スタンス。営業面では既存の深掘を重視、足を運ぶプッシュ型から工場見学や自社サイトに来てもらうプル型へのシフトを進める。生産面では、品質の向上・多能工化・標準化を重要テーマと認識。そして強化を重視する工程は加工。ここではとてもすべてを書ききれないが、既存顧客と印刷のモノづくりを再評価して強化、新たな価値を創造しようとする印刷経営である。さらに分析を進め、9月下旬のセミナーと報告書で全体像を明らかにする。

(JAGAT 研究調査部 藤井建人)

関連セミナー&レポート

9/26・27・28開催セミナー 最新調査にみる印刷経営と戦略、設備2018【東京・愛知・大阪】

報告書 「JAGAT印刷産業経営動向調査2018」(2018年9月下旬発刊予定)