2025年10月31日発刊の『印刷白書2025』について、会長網野勝彦よりご挨拶させていただきます。
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2025年を振り返り、そして2026年を見据える今、私たちは事業構造を根底から見直すことを迫る2つの「非連続的な変化」に直面しています。
1つ目は、「AIとデータによる生産性の革新」です。この1年間で、情報伝達手段のデジタルシフトは不可逆的に加速し、特に生成AIの劇的な進化は、クリエーティブ領域だけでなく、生産性やワークフローのあり方そのものを変えようとしています。人手不足が深刻化する中で、このAIという革新的なツールをいかに事業基盤に組み込み、人間の創造性や戦略立案能力を最大限に引き出すかが、競争優位を確立する絶対的な条件となります。
2つ目は、「グリーン・トランスフォーメーション(GX)の経営課題化」です。環境問題への対応は、企業の社会的責任を超え、事業継続そのものに直結する要素となりました。カーボンフットプリントの算定や環境配慮型素材の採用といったGXへの取り組みは、もはやコストではなく投資と捉え、顧客や社会への新しい付加価値として提供し、未来の成長エンジンへとする必要があります。
このような変革期だからこそ、私たちは印刷産業がもつ核となる力を再認識しなければなりません。私たちは、単なる「紙への印刷」を行う製造業という狭い定義にとどまらず、「多様な素材と技術を通じて、情報を最も効果的に、そして情緒豊かに人々の心に届ける情報価値創造業」であると自信をもって宣言すべきです。デジタル情報があふれる社会において、その情報に「信頼性」「手触り」「体験」という確かな付加価値を与え、「人」と「情報」を深くつなぐチカラは、一層その重要性を増しています。
今年の『印刷白書』は、「AIによる生産性の革新」と「GXの経営課題化」を強く意識しながら、印刷業界の喫緊の課題と未来への方向性を幅広く分析しています。皆様にとって本書が、力強い成長と経営の持続可能性の確立の指針となりますよう切に願います。
変化を恐れることなく大胆に挑戦する企業が、次の時代を牽引していくことは間違いありません。
JAGATは今後も、技術革新、AI時代に対応した人材育成、そして業界全体の連携強化を通じて、皆様の発展をしっかりとサポートしていく所存です。皆様の力強いご活躍を心よりお祈り申し上げるとともに、巻頭のご挨拶とさせていただきます。
2025年10月
公益社団法人日本印刷技術協会
会長 網野勝彦
書籍発刊のお知らせ
『印刷白書2025』2025年10月31日発刊


