印刷に変わる成長分野を探る投資が活発に

掲載日:2021年10月4日

コロナ禍にも関わらず印刷会社の投資意欲は上昇している。

JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の最新の調査結果から今年度(2021年4月から2022年3月)の設備投資予定の集計結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は103名、1社当たりの平均売上高は19.3億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。

本調査の回答時期は2021年の3月から4月にかけてであり、東京に第2回の緊急事態宣言が出されている頃であった。コロナが収束しても売上は従来の水準には戻らないという『8割経済』という言葉や、先が見えない不安定な状況を表わす『VUCA』という言葉を目にする機会も多かったことから投資意欲の大幅な減退が想定された。しかし、調査結果は想定を大きく裏切る結果となった。「前期より大幅に増やす」という回答が、前年の6.8%から12.9%と前年比190%という大幅増となっている。また「前期より増やす」という回答は22.4%あり、回答企業の3分の1以上が前期より投資を増やすと回答している(図)。

経年変化では、2013年度から増加傾向にあった設備投資意欲が2018年度から減退に転じ、2019年度は前期より「やや減らす(17.9%)」と「大幅に減らす(12.8%)」の合算が過去10年で初めて30%を超えた。しかし、2020年度になり設備投資意欲は一気に上昇に転じた結果となっている。
一方で、コロナ後に印刷需要が元に戻るという見方は少ない。既存事業の減少を補う新規事業の立ち上げが急務で、そのための投資を行うというスタンスが参加者のコメントからも見て取れる。「事業再構築補助金やIT補助金、ものづくり補助金など、補助金ありきではあるが、政府の中小企業政策を有効活用しながら、既存設備の入れ替えではなく新たな市場へ挑戦するための礎となる投資をしていきたい」などの声がある。

詳細は2021年10月1日発刊の調査レポート「JAGAT印刷産業経営動向調査2021」をご覧ください。

(研究調査部 花房 賢)