「デジタルコンテンツ白書2016」に見る静止画・テキストの状況

掲載日:2017年12月18日

日本は世界市場の2割弱を占めるコンテンツ大国である。今回は『デジタルコンテンツ白書2016』より、コンテンツの状況を紹介する。

コンテンツ産業は12兆円規模、日本はコンテンツ大国

2015年の日本のコンテンツ産業の市場規模は12兆505億円(前年比0.4%増)。4年連続で拡大、日本は世界市場(71兆円)の2割弱を占めるコンテンツ大国であり、その規模と可能性は大きい。

12兆円のコンテンツは大きく5分類される。①動画(36.2%)、②静止画・テキスト(30.5%)、③ゲーム(14.1%)、④音楽・音声(11.5%)、⑤複合型(7.6%)。書籍・雑誌・新聞・フリーペーパーなど印刷コンテンツは販売額と広告費の両方が「静止画・テキスト」に含まれる。

「静止画・テキスト」にはネットワーク配信売り上げ(電子出版)とフィーチャーフォン向け配信も含まれるが6%に過ぎず、実質的に「静止画・テキスト」はほぼ印刷コンテンツと捉えてよい。

文字物の電子化が進み始めた

動画はネットワーク配信・ステージ・映画とテレビ放送関連が増加した。パッケージ(CD/DVD)が引き続き減少する一方、ネットワーク配信(1410億円、12.4%増)が高成長。新たなサービスの投入、マルチデバイス化とコンテンツの充実に従い認知度が高まった。

映画(2171億円、4.9%増)が高伸長したのは、興行収入トップ10の6本を占めたアニメ作品(洋画3・邦画3)の好調による。静止画・テキスト(3兆6769億円、2.9%減)は減少。雑誌(7801億円、8.4%減)は1年で720億円もの市場が消失して全体に影響した。

電子書籍(1594億円、24.4%増)は高成長。電子雑誌(242億円、66.9%増)が飛躍したのはdマガジン(NTTドコモ)の成功による。これまで静止画・テキスト分野のデジタル化率は低かったが、雑誌において紙からデジタルへの導線ができて勢いが付いた。

コンテンツの流れ方の変化が意味するもの

業種横断的に見ると、各コンテンツの規模感が客観的に分かる。トップ10は①テレビ民放地上波(1兆9561億円)、②新聞販売(1兆614億円)、③オンラインゲーム(1兆475億円)、④インターネット広告(9194億円)、⑤雑誌販売(7801億円)、⑥書籍販売(7420億円)、⑦テレビNHK(6581億円)、⑧テレビCATV(4970億円)、⑨カラオケ(4480億円)、⑩アーケードゲーム(4222億円)。

伸び率トップ10を見ると、コンテンツの流れ方の変化が分かる。①電子雑誌(66.9%)、②電子書籍(29.6%)、③コンサート入場料収入(25.2%)、④ブルーレイレンタル(24.4%)、⑤音楽配信(17.2%)、⑥動画配信(13.5%)、⑦DVDセル(13.0%)、⑧映画興行収入・洋画(12.1%)、⑨テレビ・民間BS(11.5%)、⑩ステージ入場料(11.3%)。

電子化マーケットは小さいが成長性は高い。また、コンサート、映画のように足を運ぶ必要のあるイベントが伸びている。電子化とライブはセットで考えるべき組み合わせなのであろう。人間は、デジタル化で失うモノと引き換えに実体を感じられる何かを必要とする生き物のように思われる。

(JAGAT研究調査部 藤井建人)

「JAGAT info」 2017年4月号に掲載した記事を再構成。
参考資料:「デジタルコンテンツ白書2016」 編集発行:一般財団法人デジタルコンテンツ協会
デジタルコンテンツ白書2017」は2017年9月1日に発売。