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アイデア印刷術 6.光る印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 6.光る印刷〔1〕

 

光る印刷〔1〕

光を発するという機能は,人間の視覚に最も強烈に訴える。
 光るとは〔1〕インキが光るもの〔2〕インキが光に反射して光るもの〔3〕印刷される素材が光に反射して光るものがある。

1. 光を蓄えて光る印刷

〔1〕蓄光印刷(硫化亜鉛タイプ)……蓄光顔料をインキ化し印刷したもので,太陽光,蛍光灯に十分に照らした後,暗所で見ると20~30分程度光る。
 〔ポイント〕スクリーン印刷。蓄光印刷部分の下刷りにベタがある場合は,発光の効果が弱まる。従って,蓄光印刷する部分の下地は,白または薄い黄色にすると効果的。
 蓄光インキの原色は,薄い緑がかったクリーム色である。明るい色の蛍光顔料を混合すると色が付く。しかし,発光効果は落ちる。
 印刷面はギザギザ感があるので表面加工したほうがよい。

〔2〕超高輝度蓄光印刷(セラミックタイプ)……蓄光印刷に比べて約10倍の明るさがあり,十分に光を当てた場合,数時間も光っているものもあるが,特殊インキ使用のため高価になる。
 〔ポイント〕スクリーン印刷。色の種類:黄,赤,青,緑など。
 下地は必ず白にし,高輝度で長時間発色させるため,印刷厚を100ミクロン以上にする。印刷厚が厚いため,後加工に注意。
 〔応用例〕本のカバー,表紙,トレーディングカード,CDジャケット,映画のパンフレット,カレンダー,ポスター,パズル,誘導案内板,POPなど

2. 反射して光るインキを印刷

〔1〕ビーズ印刷(再帰性反射印刷)……微細なガラス粒子を混ぜたインキをスクリーン印刷する。ヘッドライトなど光が当たると反射して光る。
 〔応用例〕交通安全ステッカー,学童用バッグ,運動靴の部材,ビーズ入りアイロンプリント転写で,ジョギングウエア,Tシャツ,帽子
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▲ラメ入りUV突起印刷
 撮影:菊池ハルヤ

〔2〕ラメ入りUV突起印刷……点字印刷の盛り上がりのように透明なインキにレインボーホロラメを混ぜドット状に印刷し,レンズを形成する。光が当たると乱反射し,いろいろな色に輝く。レンズ効果を利用している。スクリーン印刷。
 〔応用例〕本の表紙・カバー,ポスター,トレーディングカード,POPなど

〔1〕パール印刷……パール顔料を部分,全面に印刷でき,パール紙と同じ光沢を得る。グラビアまたはスクリーン印刷。
これは下地にオフセットまたはシルク印刷で色ベタ印刷をし,その上にスクリーン印刷でパール印刷をすると,光の屈折で色が変わる玉虫効果が出てオシャレな感じになる。さらに下地をオフセットグラデーションにしても効果的。

3. 反射して光る「箔+印刷」

〔1〕箔押+スクリーン印刷……レインボーホロ箔押しをした後,スクリーン印刷をすると,グラデーション的に光を反射して良い雰囲気が表現できる。
 〔応用例〕中吊りポスター

〔2〕プリズム印刷(デフラサーモ)……紙またはプラスチックフィルムの上に,特定のスタンピングホイル(銀色)を転写し,この上に微細線パターンエンボシングを施し,さらにこの上に特殊な多色印刷をすると独特の光輝性と色彩の変化が生じる。
 〔応用例〕本の表紙・カバー,ビデオ・CDジャケット,グリーティングカード,トレーディングカード,パンフレット,カレンダー,記念乗車券,POP,パッケージなど

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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔2〕

 

五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔2〕

2. 色の変わる印刷

色の変わる印刷は,主に温度で色の変わる感温印刷,液晶印刷がある。

〔1〕感温印刷
 温度の変化で色が変わったり,色が消えたり,無色のところに色が現れたりする印刷。この印刷は,染料タイプの感温インキを使う。
 印刷方式は,スクリーン印刷,グラビア印刷,オフセット印刷がある。
 〔色の種類〕
オレンジ,赤,ピンク,紫,青緑,茶,黒,メタリックカラーなど
〔色の変化〕
○有色→無色
○有色A→有色B
〔温度設定〕
 -30℃~+60℃の範囲内に任意の温度で変色
 〔ポイント〕
・耐光性が劣るため,直接日光の下では使用しない。
・体温と気温の温度差を利用する企画では,使用場所の周囲の温度を考慮する。気温が体温を上回る環境では使用不可。特に夏場は難しい。
・下地印刷を隠すには黒が良いが,厚盛りまたは2度刷りすると良い。
 〔企画〕
・コールドタイプ……冷蔵庫で冷やして,氷菓子・冷菓子用,ビールやワインの飲みごろサイン,感温グラス
 ・ウォームタイプ……体温,息の暖かさで変わる企画
・ホットタイプ……熱い湯や,ドライヤーで暖めると色が変化。マグカップ・湯呑み・お風呂の適温・シャワーのお湯を当てる企画
 〔企画の展開〕
ここに紹介した事例のように,特殊印刷も企画次第で,次々に反響が出て仕事が仕事を呼ぶ結果になった。
 東芝の横長TVの画面を触ると,テレビ画面が出てくる。日経トレンディに雑誌広告として掲載され,日経朝刊に出た。
 〔応用例〕
 教材,バッテリーチェッカー,タオル・ハンカチ,Tシャツ,雑誌付録,お風呂カレンダー,マグカップなど
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▲感温印刷

〔2〕液晶印刷
 液晶は,液体と固体との中間的性質をもつ素材で,温度の変化によって,色が変わっていくという不思議な性質をもっている。液晶印刷は,この液晶を20~30ミクロンのマイクロカプセルに封じ込めたものをインキ化し,スクリーン印刷したもの。
 〔ポイント〕
・液晶印刷の下刷りは,黒色または暗色をベースにしたほうが鮮明で効果的。
・耐光性が弱く,屋外常時使用は避ける。また,湿度にも弱い。
・通常,印刷の後,PP貼りする。
・液晶カプセルインキは,発色優先インキと温度精度優先インキがあるので使い分ける。
 〔色の変化〕
 温度が高くなるにつれ,赤茶,緑,藍に変化
 〔温度設定〕
 -20℃~+100℃
〔応用例〕
 温度計,ヘルシーカード,ストレスチェックカード,ポストカード,プレミアム

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▲液晶印刷

まとめ

今回の「香りの印刷」ならびに「色の変わる印刷」は,まさに人間の五感をくすぐる最も効果的な手法の一つといえよう。特に,香りは,テレビCMなどでは表現できない,紙媒体である雑誌などへの香り印刷でしか楽しめない。 また,触ることで何もないところから画像が現れる感温印刷の驚き,これがプロモーションになって話題を生み出す。
 特殊印刷を使って仕掛ければ,日本中に話題を引き起こし,仕事が仕事を呼ぶ波及効果をもたらすことも可能であるので,あなたもその仕掛人になってはいかがであろうか。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 5.五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔1〕

 

五感印刷「香りの印刷」「色の変わる印刷」〔1〕

特殊印刷の五感に訴える印刷の代表格,「香りの印刷」と「色の変わる印刷」について, 企画・応用面を重点的に解説する。

1. 香りの印刷

香りの印刷は,擦(こす)るまたは剥(は)がす,めくる触覚と嗅覚を刺激する。すなわち,そのような仕組みを仕掛けると,読者や消費者が注目して,商品を買うきっかけになるのだ。

〔1〕カプセルタイプの香料印刷
 通常の印刷物の絵柄の上に,香料を含有するマイクロカプセルをブレンドしたインキで印刷。この印刷物を指先で軽く擦ると,カプセルが壊れ,香りがする。特殊な香料を除いて,通常の香料では3~5年間,保香できる(オフセットは保香が短い)。
 印刷方法は,スクリーン印刷とオフセット印刷がある。スクリーン印刷に使われているマイクロカプセルの粒径20~50ミクロンに対し,オフセットの粒径は3ミクロン以下である。従って,香りを多く盛れるスクリーンは,広告や小ロット物に向き,オフセットは予算の少ない付録や,大量な物に向く。予算があればスクリーン印刷をお勧めする。
 〔ポイント〕
・香りを有効に出すためには,香料面積は2cm2以上が望ましい。
・香料インキは,香料により色が変化し,下地の原稿が写真の場合は,印刷面はマット調になりやや曇ることがある。
・この企画を成功させるには,香りの良い香料を使うことが,最大のポイントである。
・2種類以上の香りを同一印刷面に印刷すると香りが混ざり合い,失敗することがある。
・香りが支給の場合は香油が必要。水に溶ける溶剤(アルコール)で希釈された香料は,カプセル化できないので,カプセル化の可否をチェックすること。
・昇華性の強い香りやガス類は香りが長持ちしない(1~3カ月程度)。
 例 コーヒー,カレー,チョコレート,プロパンガス〔実施例〕
●「月刊Domani12月号(小学館)」香料印刷のしおりの場合
 香油支給→マイクロカプセル化→インキ化→香料印刷→断裁・OP袋入れ→刷本に貼り付け(アタッチャー※で機械貼り)
 (※アタッチャーはサンプルなどを機械で貼り込めるシステム)
●「消臭剤の香料印刷」サンプルカードの場合
 従来は,サンプル入りの小瓶を作成し販促のため配布していたが,費用がかさむため香料印刷に切り替えた。
カモミールティーの香りとワインの香りになった。ワインは難しいとされていたが,カプセル化に成功した。
●「集英社文庫の帯花の香り印刷」の場合
 集英社文庫25周年キャンペーンに花の香り印刷を採用。読者が帯を擦ると,さわやかな花の香りがする。
 〔応用例〕
 雑誌の付録,雑誌広告,香水・化粧品用カード,シール,ポストカード,パンフレット,便せんなど

〔2〕剥がすと香りの出る印刷物
 香水などの香料を直径20~50ミクロンのマイクロカプセルに封じ込めたものをインキ化し,糊とブレンドしたものを,輪転印刷機に連動させたインライン加工機で大量に,かつ迅速に製造可能。
 例えば,2つに折ってある印刷物を手で剥がすことにより,カプセルが開き香りが出る。
 最近では,シート印刷後,前述のアタッチャーシステムで香り入り糊を付け,2つ折することができる。また小ロットであれば,香りの糊をスクリーン印刷し,手折りすれば製造できる。 〔応用例〕
 雑誌広告,パンフレットなど

〔3〕自然芳香タイプ香料印刷
 保香性をもつインキをスクリーン印刷したこともあるが,印刷時に強い臭いが出るため,住宅のある所では公害になり,現在はほとんど印刷されていない。

〔4〕香りのシール
 シールを剥がすと,良い香りが出てくる。香料を透明フィルムに印刷し,ふちの糊も印刷する。両面に香りを遮断するフィルム状のシールを貼って片方が剥がせるようにしたもの。 〔応用例〕
 雑誌広告,チラシ,グリーティングカードなど
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※上記リストには特注品があるのでご注意ください

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 4.隆起印刷関連について〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 4.隆起印刷関連について〔2〕

 

隆起印刷関連について〔2〕

 4.点字印刷
バリアフリーへの意識が高まり,駅の切符売り場や家電製品などにも,点字の表示がされるようになってきた。また,日本の雑誌でも「点字広告」が実施された。
 〔応用例〕
メニュー,パンフレット,絵本,取扱説明書,シール,CD,雑誌広告など。

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▲点字印刷

5.UVクリアー印刷
スポット印刷が可能な艶出し加工。ロゴや強調したい部分に艶出しすることができる。
 〔ポイント〕
 表紙・カバーは,ブロッキング防止のため,マットPPやマットニスを引いた上に印刷する。最近は表面加工なしでもブロッキングしないインキがある。
 〔展開〕
ポラロイド写真をオフセット印刷し,その上にマットPPして,ポラロイドの部分にクリアー印刷を行い,写真1枚分の厚さにエンボス加工すると,本の上にポラロイド写真が乗っているように見え,書店で大変目立つ。
 〔応用例〕
 表紙・カバー,パンフレット,ポストカード,ポスター,建材の見本帳など。

6.ラメシルク印刷
ラメ片を主にクリアーインキに混ぜ込むことにより,高級感ある表現が可能。特にレインボーホロを使用すると,光の反射で色がキラキラして変わる。
 〔ラメの種類〕
ホロ,金,銀,赤,青緑,それらを混ぜたもの。
 〔ポイント〕
 多少ラメがはがれ落ちる場合がある。
 〔応用例〕
 雑誌の表紙,本の表紙・カバー,パンフレット,ポストカード,ポスター,シール

7.ラメバーコ印刷
バーコの樹脂粉にラメを混ぜ,バーコ印刷のシステム上で,バーコ印刷同様に製造する。
 〔ポイント〕
ラメシルク印刷よりも,ラメ粒子が大きいため,大変豪華に仕上がる。しかし,ラメシルクよりラメが落ちるので,考慮して企画すること。
 〔ラメの種類〕
ラメシルクのラメと同様
 〔応用例〕
グリーティングカード,ポストカード,雑誌広告,ポスターなど。
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▲ラメバーコ印刷 グリーティングカード 雪がレインボーに光る

まとめ

人間の五感である触覚を刺激する隆起印刷,その応用として,ラメを入れた印刷は,さらに視覚への刺激を増大させる。隆起印刷単独でも,下地をマットにして,UV隆起印刷を良いデザインで効果的に表現することが大事である。バーコ印刷の良さ,UV隆起印刷の特長を理解し,使い分けることがポイントであろう。
この使用頻度の多い隆起印刷および今回ご紹介した印刷の実績例をできるだけ多く見ていただき,価値ある作品を生み出されることを祈る。 企画につまずいた時,また売り上げが上がらなくなった時など,これから連載される「特殊印刷」に目を向けていただければ,道が開けるだろう。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 4.隆起印刷関連について〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 4.隆起印刷関連について〔1〕

 

隆起印刷関連について〔1〕

あらゆる企画に利用したい付加価値印刷

長期化する不況のなか,ほかと差別化するにはどうしたらよいか。それは今まで使われたことの少ない手法を活用することだ。人間の五感に訴える,すなわち,視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚を刺激する印刷技術を活用することである。それが特殊印刷と特殊加工で,これらを付加することで,商品の付加価値をグレードアップさせることができる。 この連載講座が,皆さんの企画の「ひらめき」のきっかけになり,素敵な商品を創出することができれば幸いである。

隆起印刷の分類と比較
 〈盛り上げるもの〉

1.UV隆起印刷
 〔特長〕
インキの厚盛りシルク印刷。エナメルのように高光沢で表面が平滑。
 〔ポイント〕
 本の表紙・カバーは通常,ブロッキング防止のため,マットPPやマットニスを引いた上に印刷する。中面の場合もブロッキング対策を施す。断裁は,断ち面の盛り上がりは避けるか均一に盛り上げること。通常,仕上げ断ちは抜き加工で行う。
 〔応用例〕
 本やパンフレットの表紙・カバーにタイトル・イラストを盛り上げると目立ち,重厚感が出て商品の価値が倍加される。
ポスターに使うとパンチが出る。
グリーティングカード,ポストカード,トレーディングカード(トレカ)。

2.バーコ印刷
 印刷した絵柄の上に樹脂パウダーを乗せ,加熱溶融させることにより,絵柄を盛り上げる印刷方式である。
 〔ポイント〕
 高温加熱のため,アートポスト,アート,コート(片面印刷であれば可),芯にアンコの入った紙,表面PP加工したものは不可。これは用紙が火ぶくれ現象を起こすためである。適正用紙と,不適当な用紙があるので注意。
 〔パウダーの色〕
 透明,金,銀,白,パール,ラメ
〔応用例〕
ポストカード,グリーティングカード,名刺,洋服のタグ,表彰状,レターヘッド,カレンダー,本のカバー,パンフレットの表紙,ポスターなどに使え,表面に多少デコボコがあり味わいが出る。

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▲バーコ印刷

 

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▲バーコ印刷 洋服のタグ ブランドロゴ部分がバーコ

 

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▲バーコ印刷 パンフレット
撮影 菊池ハルヤ

3.発泡印刷
 塩化ビニールを被膜として揮発性物質をマイクロカプセル化したインキを印刷。通常は,スクリーン印刷の後,同ラインで100~130℃に加熱させ,盛り上がらせる。簡易スタンプの場合は,読者がヘアドライヤーやアイロンで発泡させて遊ぶ。
 〔ポイント〕
 本の表紙カバーには,印刷面が軟らかく耐摩性に弱いため,不向きである。積み重ね加重をかけると,インキが付いてしまうので加重しないこと。
 〔応用例〕
 触覚の世界に近づいている代表は,プリント合板である。木目の印刷プラス年輪や導管の微妙な凹凸は,発泡印刷である。
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▲発泡印刷 簡易スタンプ

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▲発泡印刷 ポスター発泡
 撮影 菊池ハルヤ

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔3〕

 6. 偏光眼鏡立体

印刷物で反射時に偏光を発する物質が研究されているが,シルク印刷でインキ粒子が粗く実用化にはなっておらず,今後の研究課題として残されている。
 映像分野では,映画,3DハイビジョンプロジェクターTV,ハーフミラー利用2台CRT合成TVが実用化されておりテーマパークなどで鑑賞することができる。ここで使用する偏光眼鏡は右眼,左眼の偏光角度を90度位相をずらしたもの。
 偏光角度は水平に対して45度を取るため,両眼の偏光はハの字またはV字のどちらかとなり,投影装置の右レンズ,左レンズも合わせたフィルタを装着する。
 上記の方式では投影装置の偏光角度と,眼鏡の偏光角度を一致させることが立体視の見やすさになっており,顔を10度以上傾けると見にくくなる。
しかしながら立体度が一番表現できる方式でありテーマパーク,文化センターなどの立体シアターでは10~30mも飛び出させることができ,利用度が高くなっている。
 偏光フィルムは古くはセルロースにヨウ素液を浸積させて延伸し黄味がかっていた。現在は酢酸セルロース層の間にPVAを延伸した偏光膜を入れたものが主流。一般眼鏡では透明で,立体視眼鏡では濃度を出すためややグレーのものが主流となる。
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▲(株)NHKテクニカルサービス・立体ハイビジョン

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▲ハーフミラー利用・2台CRT合成TV

7. 液晶シャッター方式

電子的に偏光を変えることのできる液晶と偏光フィルタの組み合わせで,片目ずつ透明・不透明にすべく同期を合わせる回路をとおして,CRT画像の右眼,左眼を同期させて見る方式の眼鏡である。
 一般のTV画面,ビデオ画面ではチラつきが大きいため,画面のフィールド周波数を2倍,4倍にしたものが実用化され,DVD画像として映画,科学の表現で使われている。

終わりに

第5回の裸眼視立体で入れられなかったモアレ模様を利用した技術について紹介する。
これは明和グラビア(株)の特許,特許番号3131771,平成9年出願に関するもので,印刷方式としてオフセットの特殊網点,シルクの特殊網点(模様)にこの使用線数よりややずれた線数の拡大凸微細レンズ配列を並べることで,レンズ効果とモアレ効果の相乗効果で一つひとつの網点が大きくなり,奥行き,飛び出し画像を形成する。
 明和グラビアが印刷各社に実施権を与えたことにより,オフセット印刷物ははがき,ポスター他。シルク印刷は厚レンズで奥行きが出るので,POPに使われる。

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▲モアレ効果を利用した立体印刷

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔2〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔2〕
3. クロマデプス立体

米国のクロマデプス社が開発した右図のプリズム溝フィルムで見るもので,青の寒色系は奥行き画像に,赤の暖色系は飛び出し画像となる。
・色視感度差を利用しているので片目でも立体視できる。
・自然の絵柄は赤系の花が飛び出し画像に適する。
・CGではサイケデリック表現ができ,雑誌もある。
・コンピュータでの映像分野では化学式の立体構造を説明する時に使う。
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▲クロマデプス社のフィルム構造

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▲クロマデプス眼鏡の実施例

4. フーリエ眼鏡

1947年に東レ(株)によって出願された特許によると,文字,画像をフーリエ積分して2次元ホログラム,つまり干渉稿の文字,画像をレーザ光でフィルムに焼き付ける。これを点光源で見ると,光学的逆フーリエ変換が生じ光で文字,画像が復元される。

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▲特許原理

用途としては花火大会,クリスマスツリー,夜景などを見て,そこにハート絵柄などが浮き出すファンシー商品に用いられるほか,お菓子のおまけ,雑誌の付録に使用されている。最近,品質向上したEB回折格子ホログラムタイプフーリエ眼鏡が開発されている。
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▲フーリエ眼鏡 ファンシー商品

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▲フーリエ眼鏡 お菓子のおまけ

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▲フーリエ眼鏡 本の付録

5. プルフリッヒ立体

左右の異なる濃度フィルタを入れた眼鏡で動画(スキー,ボート,飛行機など)のビデオCRT画像を見ると,両眼に時間刺激差が生じて立体視できる。この眼鏡は片方を素通し,片方を赤茶系フィルタを入れたものが,スキーなど青系画像に対して反応しやすく,用いられている。動きの方向で時間差が逆になるため,眼鏡を逆にする必要があるということが難点になる。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 3.眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

 

眼鏡を用いた立体印刷〔1〕

古くからある立体写真

2眼レンズ立体は1800年初頭に英国ブリュースターとホルムスが考案し,明治維新の時には2眼カメラが日本に入ってきた。1896~1903年の立体写真は,小学館より1994年に発刊された『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』のほか,日本ステレオ写真の所蔵写真などがある。『立体写真集・NIPPON明治の日本を旅する』には、米国の立体写真販売会社「アンダーウッド&アンダーウッド社」から49点が抜粋されている。
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▲立体印刷を利用した本

1. 2眼レンズ立体

レンズで拡大して見るため,印刷技術として高精細印刷で網点が見えないよう,右の写真本は600線で印刷している。最近ではCG画像を視差角30~45度で出力後,製版するものも増加している。撮影の基本として,仕上がりサイズでの奥行き,一番前の飛び出しズレを±3mm以内にすると視距離30cmで見ることができる。マクロ撮影ではこれが難しいため,1台のカメラを固定しておき被写体を移動し撮影する方法もある。

●原理

下図のようにレンズの半分を使い見るものであり,レンズのプリズム効果で左右の2枚の絵を重ね合わせ,さらにレンズの丸味によりややボカすことで自然な合成をする。大事なことは人間の両眼平均間隔65mmよりも両眼レンズ間隔を広げて,レンズ中心とレンズ内側端の中央間距離を約65mmに設定する。さらに,レンズの焦点距離と大きくしたい印刷絵柄の寸法を計算してレンズ立体を作る。絵柄を大きくしたい場合は,レンズの焦点距離を長くレンズ径を大きく取る。
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2. 余色立体

赤と青の余色である2色のメガネで見ると立体的に見える。赤フィルムで見ると赤刷色は白く,画像が消えて青刷色が黒く見え,青フィルムで見ると青刷色は白く,画像が消え赤刷色が黒く見え左右が重なる。
・写真,CGは2角度からの2枚の写真が必要。
・イラストは印刷製版工程で左にずらすと奥行き画像,右にずらすと飛び出し画像となり,変形左右拡大すると斜め飛び出し画像ができる。入稿時には飛び出し順序をトレーシングペーパーに書き指定する。
 最近Macintoshコンピュータの普及で,従来の余色立体の赤青フィルムの画像に対する減衰量を4色画像に演算させることで,赤青フィルタで4色の2枚画像を重ね合わせて見ると4色再現できるようになった。
・印刷方式はオフセット,グラビア,シルク,インクジェットで可能。
・大きさは「カードサイズ」から「たれ幕サイズ」まで可能で,2眼レンズ立体より優れるが,フィルタを通さず肉眼で見ると見当ズレ印刷物に見えるのが欠点。ずらし量は雑誌±3mm,ポスター10~15mm。
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▲従来タイプ2色・赤青立体印刷
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▲新4色再現・4色刷立体印刷(プロセスインキ)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 2.立体視印刷〔2〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術 2.立体視印刷〔2〕

立体視印刷〔2〕

2. レンチキュラー立体視および変化印刷

レンチキュラーレンズというのは20世紀初めに考案された。日本語で「かまぼこ」の意味で,つまり長体レンズのことである。横幅は0.15mmから6mmのレンズが一般的である。
 人の標準目間隔は約65mmとされており,標準視距離で約30cmの場合,レンズの視差角度を約13度に設定すると,図2の左画像1,2,センター画像3,右画像4,5が重なって3次元画像となる。 ここでレンズの視差角度を20度以上に広げ1~5まで全く異なる絵柄を入れると,レンズの傾斜により順次1~5の絵柄が見えて変化タイプレンチキュラー印刷となる。
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▲図2

●立体画像の撮影方法
 図3の5眼カメラのような近距離簡易撮影のものがあり,一度に5枚の写真が撮れる。印刷物では5枚では不自然さが見える場合があり,カメラを並べて同調装置を付け,8~12枚で作る。
なお,風景遠距離では各カメラの間隔を約2m以上必要とするため,1本のレールの上をカメラ架台を走らせて撮影する。
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▲図3 3DS-EXP 645 コンポーネント

●画像処理
 (中間デジタル処理)コンピュータの発展に伴い画像1~5までの横幅をあらかじめ5分の1に圧縮したものをコンピュータのクロップ・プレス処理でレンチキュラー・1レンズ幅の5分1で順次並べて画像6の立体画像を作る(図4)。
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▲図4 レンチキュラー処理概要

3. ステレオドットグラフ

1996年ごろに目の焦点を画面より後ろにして見る「平行法」と画面より前にして見る「交差法」が開発された。絵柄を立体情報に合わせて微妙にズラす専用ソフトを使用して作成する。人の視力のほかに副奏力(ふくそうりょく:目を寄せる力)を必要とするため見えない人もいる。

終わりに

レンチキュラーレンズの代替として,黒線スリットを使用する方式・パララックスバリア(ラスターバンド)は,前者より画像が暗くなるためバック照明が必要であり,ディスプレイ,携帯電話本体画面に用いられる。原理はレンチキュラーとほぼ同じである。
このほか裸眼視立体についてはプロジェクターレンチキュラーテレビ,鏡を使用する可変焦点光学系印刷があり,実用化されている。より立体視の発展を望みたい。 
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▲3Dカレンダー

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

アイデア印刷術 2.立体視印刷〔1〕

※本記事の内容は掲載当時のものです。

アナログ博物館:アイデア印刷術  2.立体視印刷〔1〕

 

立体視印刷〔1〕

裸眼視と特殊メガネ視に大きく2つに分かれる。今回は,前者を重点的に解説する。

さまざまに活用される裸眼視技術
 立体視の裸眼視技術は,その機能にとどまらず,さらなる分野として偽造防止,本,カタログ,プレミアムの装填で実用化されたほか,化学分子構造の発表資料,携帯電話モックの表現(変化画像)へと拡大している。携帯電話本体ではパララックスも実用化されている。

1. ホログラム印刷技術の概要

ホログラムは廉価大量複製を可能とするレインボーホログラムと,感光材料にそのつど露光して作成するリップマンホログラムに分かれる。さらに透光用途と反射用途がある。1948年イギリスのDennis Gaborが光の干渉現象を利用した記録原理を考案,1960年に実用化された。
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●ホログラムの撮影原理(図1参照)
 被写体の表面から反射した光を,光の干渉現象を利用することでそのままフィルム全面で受け,それぞれの部分から来る光の方向をフィルム面全体に,元の被写体から送られてきた光と同じ光の状態をそのまま忠実に記録し再現させる。
 下図のように2光束のレーザを用い,被写体を照明すると,この2つの光線が干渉し合って,フィルム面には干渉縞が記録される。被写体から反射した光は,被写体の形状によってレーザ光線の位相が少しずつズレており,このズレがこの被写体の3次元情報をもっている。でき上がったホログラムは,ただの干渉縞が写っているだけであり,これに光を当てると,元あった場所に本物と見間違えるような立体画像が再生される。
この撮影フィルムをレーザ3原色で3回露光するとリップマンカラーホログラムができる。 このフィルムを金型に直しCD作成のようにプレスしたフィルムがレインボーホログラムとなる。

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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)