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書体の起源

隷書,楷書,行書,草書の成り立ち(明朝,ゴシックの起源とは)

株式会社イワタ 顧問 橋本和夫

1.書体の概要

2.書体の変遷
 (1)古文の時代(夏,殷,周)
 (2)篆書の時代(秦)
 (3)隷書の時代(漢)
 (4)隷,楷書の過渡期時代(三国)
 (5)楷,行,草書の時代(六朝)
 (6)書体の美の結実(唐)

3.書体と字体の関係

【橋本 和男プロフィール】
1935年 大阪生まれる。
1955年 モトヤに入社。
1959年 写研入社し,石井宋朝体の制作にあたる。

1960年代から90年代の約30年間に,本蘭明朝体など写研で制作発売された書体の監修にあたる。
本蘭明朝体の仮名,教科書体硬筆仮名,横組専用仮名など,各書体の仮名のデザインも担当した。

1997年 写研を退職。
現在  依頼に応じて主として文字の監修作業を行う。

3.書体と字体の関係

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:3.書体と字体の関係

篆書,隷書,楷書,行書,草書の書体は字体の変遷と密接に関係している。「神・神」は,新・旧字体に分類されるが,「神」篆書,「神」隷書・楷書体に字体が対応している。書体は「読む,速く書く」を主目的に発展してきた筆写書体であるが,多書体化の中で現代の標準書体である明朝字体に倣うと,歴史的書体の味わいを損ない別書体の雰囲気になる。歴史書体の変遷を知ることは,印刷書体の明朝体と筆写書体の楷書体などとの異同を認識することでもある。

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 (印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(6)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(6)

 

(6)書体の美の結実(唐)

漢代に芽生えてから,六朝時代まで多彩な楷書,行書,草書の書体,書風が残された。草書,行書は今までの単草体から連綿体に発達し,更に自由奔放な書体をも生まれ,文字書体の機能が広がり芸術の域に達したものである。その中で唐代,最も特筆されるのは楷書であろう。唐代は,初,中,晩唐に分けられるが,それぞれの年代に個性のある楷書体の名品がうまれ,後世の文字書体の規範となる。

*初唐の楷書
 法を重んじる唐代で,文字も厳正な楷書が重宝される。楷書は端正な字形が特徴である。この年代を代表する楷書を,欧法(厳正,勁健,楷書の法則),盧法(自然で穏健,品位),楮法(筆鋒変化の妙,美麗)といわれ,楷書体の原則を習得するには欠かせない書体群である。

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*中,晩唐の楷書
 初唐の厳正,勁健で優雅な楷書から,その反動ともいえる個性的で雄渾あふれる力強い顔法(楷書,行書,草書)が生まれる。初唐の楷書群と共に,後世のどの時代にも書の規範として今日に至っている。

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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(5)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(5)

 

(5)楷,行,草書の時代(六朝)

漢代から萌生えて変遷してきた隷書,草書,楷書が三国の時代の過渡期書体を経て行書体を含めてこの時代に完成の域に達したものと推察できる。この時代以降の楷書の多書体が後世に大きく影響している。書体は地勢風土の違いから,南朝は揚子江沿岸の江南の温雅さ,北朝の野趣と雄渾さとの対照的な書風が生まれる。南帖北碑とよばれるように,南方には「帖に書く」行書,草書類が多く,北方は「碑,磨崖の石刻文字」に使われる楷書が多種である。帖の書体を重んじる帖学派と,石刻書体の碑学派に書風が分かれる。この時代の書体が文字の習得を志す者の手本として今日に及ぼしている。

 *南朝の書
 行書,草書は帖の筆写に適した書体であり,南朝の書体群の楷書,行書,草書のいずれにも毛筆書の基本となりその極限に達した王義之の書が,今日に至るも漢字圏の書体の規範になる。

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*北朝の書
 北朝では仏教関係の造像記,石碑などに適応した書体の楷書体が多く用いられる。北魏の書は,たくましく,気勢のある書体で,整然としている中で自由奔放で,拘束的な要素が少なく個性的な楷書体で種類が多い。現在も六朝風書体として活用されているが,各地に残る老舗の屋号などは碑学派の隆盛で六朝風書体が多い。

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 (印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(4)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(4)

 

(4)隷,楷書の過渡期時代(三国)

漢代の隷意を承けて,徐々に現代の楷書に近い隷楷書体中間とも思える書体が見られる。漢に萌芽した楷書は,この頃に完成の域に達したものと推察することができる

*楷書とは後漢末頃から,隷書の特徴を承けながら,字画が明確で平易な字形の書体である。文字書体の基本になる。

*草書とは隷書から字体を省略して速書のできる書体として草書が生まれる。単草字から何字かの文字を連続して書く草書へと発展する。

*行書とは楷書,草書の中間的な書体で,書き易いために広く使われる書体である。楷書に近い字体から草書風の字体まで多種の字体が表現される。

 

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(3)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(3)

 

(3)隷書の時代(漢)

漢代になり隷書が正書体となる。篆書は曲線と整斉な形で構成し実用では不便な書体であった。秦代にも篆書とは別様式で,簡易な略書体として隷書が出現し通用している。直線的で速記に適して工夫されたのが隷書であり,楷書に近い字体である。金石碑文に使用され後世に残されている隷書の代表書体はこの時代のものが多い。

*隷書とは隷書には古隷と八分に分類されている。隷書の特徴は横画と左右の払いにリズムをつけ,波打つように筆を動かせてはねだす。波磔と呼ぶが一種の美的表現である。横画に基調があり,横に広い扁平で安定感のある字形である。

◎隷書には古隷―初期のもので波磔が無く,篆味がある。 八分―波磔があり,「八」の左右に広がる意から通称,八分と呼んでいる。印刷書体の明朝体などは,隷書体の字体が影響している要素が多いように考える。

*章草とは漢隷の八分は波磔を含むので速書には不適なのだろう。隷書の字体を省略した行草字体であり,いまの草書体の基になる。隷書から草書への過渡期の書体である。

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 (印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(2)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(2)

 

(2)篆書の時代(秦)

秦代の政策に字体の統一があり,古文(大篆)を基礎に新しい文字を統一して制定した。この書体が篆書であり,古文の大篆に対して小篆(秦篆)ともいわれる。

*篆書とは篆書は筆を回転させて書く書体の意がある。縦長で黄金分割比の文字ともいわれるくらいに,威厳と均整のとれた美しい字形は,字体構成の規範ともいえる。後に説文解字の親字になる

「説文解字」後漢(100)許慎の著は,文字(小篆)を部首によって分類し,各文字の字義,字形の構造などを説いた字書である。文字を部種別に分類した最初のものであり,後世の分類に影響を与えている。

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(印刷情報サイトPrint-betterより転載)

2.書体の変遷(1)

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:2.書体の変遷(1)

 

(1)古文の時代(夏,殷,周)

*甲骨文とは殷代に亀の甲や獣骨などの断片に刻まれた文字であり,主として占卜などの宗教的なものに使われた文字である。直線,折線による構成で簡潔な字画から原始的な文字といわれるが,シンプルでシンメトリーの素朴さの中で漢字の字体構成の原点がここにある。次の時代の金石文へ続く骨組みを備えている。

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*金石文とは周代は青銅器文明の時代であり,儀式用の青銅器に鋳込まれた文字で,鍾鼎文とも呼ばれる。石刻文字で最古の石鼓文を含めて金石学が生まれているように,絵文字から進化した原始文字としての特色といえる多彩で装飾的に富んだユニークな形で表わされている。約三千年の歳月を経ているが,自然の趣があり,興味のある書体群である。古文の研究に貴重な資料といわれる。

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1.書体の概要

※本記事の内容は掲載当時のものです。

書体の起源:書体の概要

 

1.書体の概要

文字は約五千余年前,中国の黄河流域で言葉を伝達・記録するための符号として社会環境などの変化に対応して推移し発展してきた。一方書体は,亀の甲や牛の骨・青銅の器・版木彫刻の文字・毛筆などの用具の書など,文字を記録する媒体によって多彩な様式が生まれる。書体は時代背景や作者の個性が反映す書風などが相俟って,それぞれの書体が完成したものである。書体の変遷は篆書,書,楷書,行書,草書と段階的に推移してきたのではなく,過渡期的な書体があり時代を経て洗練されたものである。後に篆書,隷書,楷書,行書,草書の書体(スタイル・書風)として完成し名称がつけられたものであるが,各書体には固有の字体をもち,書体と字体はともに推移しているのである。

現在の明朝,ゴシック体は,字を記録する媒体に適応してきた歴史的書体の推移のなかで,現代のメディアに適応した読み書きの代表的な印刷書体とし発展し使用されている。

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包装資材用ロール紙に対して、表面を分ける必要は?(012)

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印刷技術情報 : 管理

包装資材用ロール紙に対して、表面を分ける必要は?(012)

【概要】
 包装資材用ロール紙(グラビア印刷)に対して、表面をあえて分ける必要がありますか?両面コート紙上質紙では一見差がないように思われるのですが。

 【解決方法】
 両面コート紙は別にして、紙の表裏で印刷の効果は一般に違ってきます。印刷効果の違いは、要求される品質レベルなどによっても異なり、近年、紙の表裏の性質の差も小さくなっています。(両面フェルト方式の採用により改善された。)
従って、実用上、特に表裏の区別をしなくても、結果として、印刷物に違いがないこともあります。
  ただし,ロール紙(巻き取り紙)では表裏がはっきりしているので,区別する方がよいでしょう。表面に重要な方の紙柄を刷っておけば間違いはありません。

 

「本記事の内容は、JAGATが印刷の技術者を対象として行なっている通信教育講座「印刷技術者トラブル対策コース」
「オフセット印刷技術者コース」の受講生から1993年から2000年までの8年間に寄せられた質問とその回答の中から編集しました。

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)