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顧客の良き相談相手になろう-自社を磨くツールとしての資格

自社を磨く方法論は多種多様であろうが、顧客から信頼されパートナーとして相談される会社を目指すという明確な指針のもとカリキュラム、試験問題、更新試験制度などを展開するJAGATエキスパート認証制度を、具体的な人材育成ツールとして活用してみてはいかがであろうか。  

 

JAGATでは様々な機会を通じて、印刷業界の方々との交流や議論の場を設けてきた。例えば、地域のJAGAT大会であるJUMPにおいて、今年度はジョー・ウェブ博士の『未来を創る』を取り上げて、印刷業界の現状と最新動向を踏まえつつ、「自社のビジネスをどう変えていけばよいのか」という大きな課題について各地で意見を戦わせている。また様々な場において、「これからの時代に印刷会社の営業パーソンはどういった役割を果たす必要があるのか」といった話題に盛り上がることもある。
いずれにしても、かつて話題の主役であった技術動向云々の話に取って代わって、各地でこうした議論が中心となってきたのは、印刷会社は旧来のビジネスモデルや営業スタイルのままでは立ち行かなくなってくる、ということが既定路線として共通認識されているためであろう。

そうした中で「印刷会社の生き残り戦略において一番重要なのは良い顧客と付き合うことだ」という意見が出て、その場に参加していた一同が賛同、納得したことがあった。
もちろん、ここで言っている良い顧客とは継続的に仕事を出してもらえるという単方向の関係ではない。単なる受発注の関係であれば常に競合に奪われてしまうかもしれない危険性と隣合わせである。良い顧客とは、互いにWin-Winの関係を維持できる、すなわち相手にとっても良き相談相手である永続的なパートナーシップを築ける顧客のことをいう。

では、そうした良い顧客を得て、付き合っていくためにはどうすべきなのかという話になり、そのためにはやはり相手にとって相応しいパートナーたる自社を磨いていくしか無い、という結論になった。
顧客によりそい、顧客の課題解決に向けて会社全体で取り組める体制づくりが必須になったということである。そして、いまや自社を磨き、差別化を図れるのは設備、機械ではなく人材であることは自明の理であろう。
機械に仕事がついてきた、あるいは機械を稼働させるために仕事を取ってきた時代は終焉を迎え、サービスで課金、利益を確保できる体質への転換が必要となった。そのためにも営業力の底上げとともに彼らを支える企画提案力、印刷・加工技術のみならず付帯サービスや他メディア展開もできる実行力、プロジェクトやコラボレーションを司るマネージメント力など新たなスキルや知識を獲得しなければならない。まさに人材への投資こそが求められているのだ。

JAGATはシンクタンクとして業界の将来を展望し、方向性を示唆し、その方向に沿った具体的な施策講ずるという使命を負っており、また、また教育機関としてそれらが定着すべく様々な手段を通じで人材育成に貢献していかなければならない。
その、一つのソリューションがJAGAT資格認証制度である。

DTPエキスパートは、20年以上にわたって日本のDTPの定着と標準化を促し、そのカリキュラムは業界のデジタル教育のスタンダードとなったと自負している。発足当初は、現場が安定してDTPで良い印刷物が制作できるための正しい知識と、変わりゆく制作環境に対応できる人材を目指したが、現在ではメディア設計のスーパーバイザーとして、印刷会社の強みを最大限に発揮できる人材の育成を目指している。コンテンツを各メディアに編集・管理できるディレクション能力とともに、文字、組版、色、画像など本来印刷会社が持っているノウハウをデジタル時代活かしきるスキルと知識を得て、顧客から信頼される実行力を身につけるものだ。

もう一つの資格認証制度であるクロスメディアエキスパートは、業界が新しい方向へ踏み出す道筋として、印刷メディアが置き換わっていく先のメディア戦略のコーディネーター育成を目指している。
クロスメディアエキスパート認証制度は、JAGATが2002年に発表した提言「印刷新世紀宣言」に端を発している。これは情報伝達が加速度的にネットへとシフトしていく状況、それに伴い印刷サービスの高度化や付帯サービスの開発など得意先のビジネスのパフォーマンスの向上を手掛ける必要があること、技術の進展により印刷の定義や応用範囲を変えるところまで来たということなどを整理して、これからの時代に印刷業界側から切り開いて、価値を生むことができるものは「クロスメディア」と「eビジネス」と「デジタルプリンティング」に集約できる。としたものである。
そこで、顧客のビジネスパフォーマンスの向上、すなわち課題解決のためには印刷というタスクを売るのではなく、タスクが重要とされる戦略を練る能力を売る人材がこれからの業界に必要になってくると考えた。そのためには、ヒアリング能力、分析能力、多様なメディアを組み合わせて最大効果を上げる提案能力などが欠かせない。これらをベースに足掛け4年がかりで有識者を集めカリキュラムを編成し、2006年から資格試験として実施しているものである。

そして両資格を、組織において役割に応じて身に付けるこにより、顧客の課題把握(コミュニケーション、ヒアリング)から提案(企画立案、マーケティング戦略)~実施(マネジメント、サービス、メディア制作)~効果測定(分析、PDCA)~改善(課題抽出、提案)という、パートナーとしての継続な関係を維持できるサイクルが構築できると考えている。

(CS部 橋本和弥)

コミュニケーションデザイン視点を持った人材育成

次期エキスパート認証試験開催2ヶ月前となり、各種対策講座が開講されている。

第44期DTPエキスパート認証試験のベースとなるカリキュラム第11版より採用されている「コミュニケーション概論」について、その設定の背景と試験で問われるポイントについてお伝えする。 続きを読む

第19期クロスメディアエキスパート認証試験合格発表

結果概要

 受験申請者118名中、109名の方が受験した。第1部試験は66名が受験し合格は48名、合格率は72.7%であった。第2部試験は、109名が受験し合格は43名、合格率は39.4%であった。1部2部を合わせた合格者は40名で、最終合格率は36.7%となった。

第2部試験の出題意図

 第19期クロスメディアエキスパート認証第2部試験では、「動物病院事業を展開するサービス・小売」を顧客企業と設定し、コミュニケーション支援事業を展開する中堅印刷会社のクロスメディアエキスパートが、メディア戦略のコーディネーションを行う与件を前提とし、提案書を提出する形式の出題となった。

 動物病院市場は、バブル崩壊の影響を受けず、ペットブームの恩恵を受け拡大してきた。昨今では、動物病院の数が増えるにしたがい飽和状態となり、本格的な生存競争が行われている。

 また、飼い主の権利意識が強くなっており、動物病院ではトラブル対応が重要視されている。 与件では「犬」と「猫」の診療を行う「動物病院事業」を展開する顧客企業が、「アクティブシニア層を対象とした高齢化社会への対応」や「LTV(Life Time Value)の向上」を目的としたメディア戦略の提案が求められた。

 多くの解答では、コーポレートサイトのリニューアルのほか、FacebookやGoogleなどのSNS(Social Networking Service)の活用、「LINE」といった無料通話アプリや「AR(Augmented Reality)」の活用を含む提案が多く見受けられた。

 しかしながら、起点となるメディアへの集客方法や運用方法など、具体的な記載が欠けており論理性の欠如による減点が多かった。

 さらに「ターゲット(アクティブシニア層)」や提案先の「経営理念」「理事長のプロフィール」を意識した提案も少なく、提案の採用可否を決める際の複合的な要素が欠けている解答が多く見受けられる。

 また、提案内容がトレンドに弱く、「コンテンツマーケティング」「ABテスト」「iBeacon」「電子ギフト」「ハイブリッドアプリ」など展示会やインターネット上を賑わせている「手法」や「技術」が使用されている提案もほとんどなく、「時代遅れ」といった印象をあたえる解答も少なくなかった。

 さまざまな例をあげたが、最も問題視されている傾向としては、「顧客はそのメディアやコンテンツを利用するのか?」といった検証が不十分であり、論理性が低い解答が多い点があげられる。

 メディアの利用には、必ず「目的」が伴う。本試験制度では、「ペットの写真コンテスト」や「人気ペットフードランキング」など、ターゲットの心に響く「コンテンツ(内容)」も重要な提案内容となる。

資格制度事務局