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おにぎり経営~理念の共有と見える化によるマネジメント

急速な環境変化の中で、印刷会社には自ら「変わる」ことが求められている。新しい取り組みや業務改善を行うときには、なんのために取り組むのかという目的を社内に浸透させる必要がある。

株式会社エクシートは1952年に創業した福井県坂井市にある印刷会社である。当社は非常に経営哲学を大事にしており、社是が「おにぎり経営」である。
おにぎりは米粒1つ1つが粘着力を発揮してぎゅーっと固まることで成り立っている。社員1人1人がしっかりと能力を発揮するとともにバラバラになることなくお互いを補い合うような会社を目指している。
その哲学をおにぎりフィロソフィーとして文書化しているほか、社員に親しみを持ってもらえるようにおにぎりのオリジナルキャラクターも作成している。

同社の専務取締役 出口淳氏によると、経営理念とはセクショナリズムや個人の利害を乗り越えるためのツールであるという。
会社のなかではさまざまなことが起こる。忙しさのなかで流されてしまう弱い自分とも出会うし、セクショナリズムの問題も出てくる。
そのときにどう判断して動くのか、共通の価値観をあらかじめリスクヘッジとして決めておく。「弱い自分に対する未来への危機管理」といえる。

同社では案件ごとの収支は納品前に工程別でわかるように「見える化」されている。赤字となったときは、営業と現場とで原因と対策を話し合うというルールになっている。しかしながら、何らかの強制力がないと日々の忙しさに追われて形骸化してしまいがちである。

こうしたときに役立つのが「おにぎり経営」という理念である。
例えばある仕事のDTPの赤字の原因が、入稿のやり方がめちゃくちゃでその整理に苦労したというのは、営業が自分だけ良ければいい、面倒なことをしたくないという行動の結果である。
これは「おにぎり経営」の理念に反しているよね、ということで改善に持っていく。罰則をつくるのではなく共通の価値観を浸透させることによって対応するようにしている。当社で重視しているのは、なんのために取り組むのかという目的、理念の浸透と場作り、空気作りである。

(花房 賢)
Jagat info2019年6月号「見える化による3つのドンブリからの脱却」より抜粋

時間当たり付加価値と働き方改革

「時間当たり付加価値」は京セラのアメーバー経営で重視されている経営管理指標として知られている。働き方改革で脱・長時間労働の機運が高まるなか、「見える化」に取り組む印刷会社においても重視されつつある。

付加価値とは売上―変動費という式で表されるが、変動費に該当する経費を何とするかは、いくつか考え方がある。というか目的によって異なってくる。
印刷業において二大変動費といえるのが、用紙代と外注加工費である。一般的にこの二つが売上に占める比率は40%から60%程度である。用紙代と外注加工費は、比較的容易に受注と紐づけることが可能で把握しやすいので、管理会計で簡易的に日次の付加価値を計算するときには、この二つを変動費として計算することが多い。
その他の変動費として、刷版代や配送費、インキ代、商品仕入れ(ノベルティ商品の仕入など)などがある。月次や年次で付加価値を計算するときには、財務会計でこれらの数字を取り出して計算する。

この付加価値と総労働時間で割ったものが「時間当たり付加価値」である。売上や残業時間が増えているのに付加価値の伸びが伴わないときは要注意である。また、時間当たり付加価値と時間当たり人件費を比較すればわかりやすいKPI指標となる。付加価値以上の給料を払うことはあり得ないからだ。

変動費を文字通り仕事量に応じて変化する費用として考えれば、残業代、電力代、あるいは日常的に発生する消耗品も変動費としてみなすことができる。具体的には、CTPの現像液、印刷のブランケット、湿し水添加剤、ウエス、手袋、断裁機の刃、プルーフのインキや用紙、PODのトナー代やカウンターチャージ、梱包用資材などである。
付加価値向上をつき詰めていくと、これらの経費まで「見える化」する必要がある。「見えない」ものは管理(コストダウン)できないからだ。

ところが、これらの経費を手間をかけずに集計できる仕組みがある印刷会社は多くない。消耗品関係は、発注するときに使用部門や用途はわかっているはずなのだが、発注処理は電話やFAXなどのアナログ処理でデータ化されておらず、経理処理するときには経理担当が請求書の明細を見ても内容がわからず、仕入先単位でまとめて処理しているようなケースが多い。
使用頻度の高い消耗品などはシステムにマスター登録しておき、システムで発注処理(発注書の発行)を行うことで、発注日、発注数量、発注金額がすぐに把握、集計できるようにしておきたい。

(研究調査部 花房 賢)

営業プロセスの見える化~結果管理から先行管理へ

案件ごとの収益の「見える化」に取り組む企業が増えている。厳しい受注環境のなか利益を確保するためには、より細かい単位での現状把握とすばやい対処が欠かせないからだ。一方で、営業活動については個々の営業担当者に委ねられ属人的になっていることが多い。 続きを読む

第2期 見える化実践塾

短期間での「見える化」を実現!
”やり切る”サポートと取り組む企業の相互交流と
自己研鑚の場をつくります。

「見える化」という言葉は印刷業界にかなり浸透していますが、実践できている会社はまだ多くはありません。

その原因、ハードルとしては、

  1. 徹底できない(リーダーシップ不足)
  2. システムがうまく活用できない
  3. どこから手をつけてよいかわからない
  4. 社内原価(時間コスト)の調べ方がわからない

などが挙げられます。

本研究会では、座学と見学会、実践と発表を繰り返し、「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、課題解決に向けて後押しします。

概要
日時  2019年4月スタート(1年間)。基礎会員:全5回(8日間)
受講対象  JAGAT会員企業様限定
従業員数 20名から100名程度
MISをすでに導入していること (自社開発でもパッケージソフトでもかまいません)
定員 限定5社。1社4名まで参加可能
受講料 1社 800,000円
※料金は税別、宿泊費、交通費、懇親会費別。
※社内での実践を推進するために1社4名様まで参加できます。
※4名を超える場合は、1名増えるごとに5万円をいただきます。
会場 大東印刷工業株式会社(東京)
株式会社アサプリホールディングス(三重)
作道印刷株式会社(大阪)
公益社団法人日本印刷技術協会 セミナールーム

本研究会では、寄り添うトレーナーの役割をJAGATが、そして、時には厳しい叱咤激励を行うご意見番として先進企業3社の社長が担当します。

成果発表日を最初に設定
実現の期限を決めて必ずやり切る

というスタイルをとります。
座学と見学会、実践と発表を繰り返しながら 「見える化」のつまずきポイントを洗い出し、「できない理由」ではなく「どうしたらできるか」をとことん追求していきます。

関連記事

見える化実践塾をはじめるにあたり

世話役

佐竹 一郎 氏
(大東印刷工業株式会社 代表取締役)
松岡 祐司 氏
(株式会社アサプリホールディングス
代表取締役社長)
作道 孝行 氏(作道印刷株式会社 代表取締役)

カリキュラム

■基礎会員

第0回 事前準備
自社の現状分析と課題抽出  ヒアリングシートの記入
決算書3期分の提出 簡易財務診断
第1回 見える化の進め方を理解する(一泊二日)
日時  2019年4月18日(木)-19日(金)
会場  JAGAT研修室 (東京都杉並区和田1-29-11)
発表 ・自己(社)紹介
・自社の現状(概要)と目標発表
講義 1)「見える化」が求められる背景
2)管理会計と財務会計
3)個別原価管理を実現するには
4)時間コストの算出方法
5)先行管理に向けて(「目標達成見える化シート」の運用)
課題  「見える化チェックリスト」の作成
宿題  利益計画検討表をつかったシミュレーション
第2回 先進見える化企業の視察①(一泊二日) -全員経営を理解する
日時  2019年6月20日(木)-21日(金)
見学  株式会社アサプリ様 (三重県桑名市安永923)
発表 ・「見える化チェックリスト」に基づく自社の現状分析と課題抽出
・自社の取組みスケジュール発表
講義 見える化と理念の共有による全員経営(松岡社長)
・社員のベクトルのあわせ方(理念の共有とは何か)
・管理職を部門経営者にする会議運営
・必達できる売上目標の作り方
・ITを駆使した営業支援、ナレッジ共有
・働き方改革の取組み
宿題  1)作業日報のシステム化
2)自社の時間コストの設定
第3回 先進見える化企業の視察②(一泊二日)-徹底と継続の仕組みを学ぶ
日時  2019年8月
見学  大東印刷工業株式会社様 (東京都墨田区向島3-35-9)
講義 見える化から始める収益改善~社員ひとりひとりに個人事業主意識を~(佐竹社長)
・改革を推進するリーダーシップ
・印刷タクシーメーター(MIS)の運用
・やる気を引き出すインセンティブ制度
発表 中間報告(1)
・各社の課題を共有。「できない理由」の真の原因を明らかにし、
解決方法を議論
宿題  発表内容をもとに各社個別に設定
第4回 先進見える化企業の視察③(一泊二日)
日時  2019年10月
見学  作道印刷株式会社(東大阪市水走1-12-20)
講義 進化(深化)する「見える化」(作道社長)
・「見える化」を収益改善につなげるマネージメント
・営業プロセスの見える化による受注拡大
・改善活動を支える公平な評価制度
発表 中間報告(2)
宿題  発表内容をもとに各社個別に設定
第5回 最終報告
日時  2020年2月
会場  池袋サンシャインシティ文化会館 会議室(東京都豊島区東池袋3-1-4)
発表 各社の結果報告

※カリキュラムは一部、変更となることがございます。

参加お申込み


お申込書に必要事項をご記入のうえ、
03-3384-3168
までFAXにてお送りください。

参加費振込先

参加費は、下記口座に開催日の2日前までに振り込み願います。
なお、お申し込み後の取り消しはお受けできません。代理の方のご出席をお願いします。

口座名:シャ)ニホンインサツギジュツキョウカイ
口座番号:みずほ銀行中野支店(普)202430

お問い合わせ

内容に関するお問い合わせ

研究調査部 花房(はなふさ) 電話:03-3384-3113

ご案内パンフレットはこちら

お申し込み及びお支払に関して

管理部(販売管理担当)   電話:03-5385-7185(直通)

公益社団法人 日本印刷技術協会

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印刷白書2018

印刷白書2018
印刷産業の現在とこれからを知るために必携の白書『印刷白書2018』
第1部「特集 デジタル×紙×マーケティング」
第2部「印刷産業の動向」「印刷トレンド」「関連産業の動向」
第3部「印刷産業の経営課題」
ご注文はこちら発行日:2018年10月25日
ページ数:152ページ
判型:A4判
発行:公益社団法人日本印刷技術協会
定価:9,167円+税
JAGAT会員特別定価:7,685円+税

解説

印刷産業のこれからを知るために必携の白書『印刷白書2018』。
印刷・同関連業界だけでなく広く産業界全体に役立つ年鑑とするために、「印刷白書」は3部構成となっています。
印刷業界で唯一の白書として1993年以来毎年発行してきましたが、2018年版では創刊の1993-1994年版から2018年版までのキーワードと印刷産業の概況・環境変化・課題の推移を一覧表にしました。
印刷関連ならびに情報・メディア産業の経営者、経営企画・戦略、新規事業、営業・マーケティングの方、調査、研究に携わる方、産業・企業支援に携わる方、大学図書館・研究室・公共図書館などの蔵書として、幅広い用途にご利用いただけます。

第1部「特集」では「デジタル×紙×マーケティング」をテーマとしています。
デジタルと紙を組み合わせてコミュニケーションを行うこと、デジタルマーケティングで生きる紙メディアのあり方などの現状分析と課題解決に取り組んでいます。
第2部「印刷・関連産業の動向」、第3部「印刷産業の経営課題」では、社会、技術、産業全体、周辺産業という様々な観点から、ビジョンを描き込み、今後の印刷メディア産業の方向性を探りました。
印刷メディア産業に関連するデータを網羅、UD書体を使った見やすくわかりやすい図版を多数掲載し、他誌には見られない経営比率に関する調査比較などのオリジナルの図版も充実させました。


CONTENTS

第1部
第1章 特集 デジタル×紙×マーケティング
[プロローグ]「デジタル×紙×マーケティング」で新規ビジネスモデルを創出する
[特集1]デジタル化された印刷メディアの再定義
[特集2]デジタルマーケティングにおける紙メディアの特性
[特集3]「情報のデジタル化」と「情報処理の高度化」で進化するマーケティング
[関連資料]情報流通量/DTP・デジタル年表
[コラム]情報デザインで相手にわかりやすく伝える

第2部
第2章 印刷産業の動向
[産業構造]印刷ビジネスの可能性はどこまで広がるか
[産業連関表]ビッグデータで印刷需要を考える
[市場規模]印刷業の強みを生かした需要創造へのロードマップ
[上場企業]経営強化で収益改善を達成した上場印刷企業
[関連資料]産業構造/産業分類・商品分類/規模/産出事業所数(上位品目)/産出事業所数・出荷額/調達先と販売先/産業全体への影響力と感応度/最終需要と生産誘発/印刷物の輸出入額と差引額/印刷製品別輸出入額/印刷物の地域別輸出入額/印刷物の輸出相手国・輸入相手国/経営動向/上場企業/生産金額(製品別)/生産金額(印刷方式別)/売上高前期比・景況DI/設備投資・研究開発/生産能力/紙・プラスチック/印刷インキ/M&A

第3章 印刷トレンド
[デザイン]デザインの力で印刷・加工技術とマーケティングを結びつける
[ワークフロー]社外とつながる開かれたシステムで全体最適化の実現を目指す
[オフセット印刷]多品種小ロット対応から全体最適化に向けた挑戦へ
[デジタル印刷]デジタル印刷の有効性訴求で市場拡大へ
[包装印刷]水性フレキソ印刷とデジタル印刷の活用が進む
[後加工]本格的なスマート化で進展する印刷と後加工の連携
[関連資料]デジタル印刷/フォーム印刷業界

第4章 関連産業の動向
[出版業界]出版流通の多様化と出版ビジネスの多様化
[電子出版]独自のビジネスモデルで成長する電子コミック
[新聞業界]新聞メディアのデジタルトランスフォーメーションの進展
[広告業界]紙とデジタルの協同で広告メディアはさらに深化する
[DM業界]行動喚起力と顧客データベースの進展による新たな動き
[折込広告他]活用シーンの変わる折込広告と地域接点としてのフリーペーパー
[通信販売業界]依然としてネット通販が強く市場は7兆円規模へ成長
[関連資料]出版市場/電子出版市場/コンテンツ市場/新聞市場/広告市場/通販市場

第3部
第5章 印刷産業の経営課題
[地域活性化]人口減少と高齢化を見据えた政策動向と地域活性ビジネスの方向性
[経営管理]「見える化」で数字を共有し意識改革と収益の改善を図る
[クロスメディア]コミュニケーション手段としての動画利用の進展と付加価値
[デジタルマーケティング]個人による情報発信とマイクロインフルエンサーが影響力をもつ時代へ
[デジタルイノベーション]ビジネス、メディア、ソーシャルの3方向に進化するAI・SNS・VR
[人材1]採用案内ツールと体験型インターンシップで企業のブランドを伝える
[人材2]印刷業のビジネスビジョンを実現する「越境人材」
[関連資料]地域活性化/クロスメディア/人材
[コラム]”見えない世界”を克服する学びと気づき/進化を続けるICT活用のビジネスモデル

巻末資料
年表/『印刷白書』年表/主な統計調査の概要/印刷産業&関連団体アドレス/図表インデックス